とある神器持ちの日記   作:ウメ種

129 / 195
キパ「あれ……見るはずのない名前が……」

師匠「解せぬ」

まぁ、キパ君と師匠以外は普通に名前出てます。ゼノグラシアさんとか。
ゼノグラシアさんはスパロボにいつか出てくれると信じてる(ぇ


122(白龍日記)

 A月A日

 

 今日は、随分と懐かしい夢を見た。

 まぁ、懐かしいというほど昔の夢でもないのだが。美猴に話すと、美猴もあの男の夢を見たそうだ。

 何か意味があった夢なのだろうか? まぁ、どうでも良い事か。

 あの男――上代徹。

 初めて会った時からずっと気に掛かっていた男。

 赤龍帝と共に居た、いつか戦ってみたいと思った男。

 だが、あの男を知れば知るほどに、今の俺とは次元の違う強さに驚かされたものだ。

 それに、あの男の能力は俺や兵藤一誠の天敵とも言えた。

 ――それでも戦い、勝ちたいと思うのも可笑しな事か。

 何度美猴やアーサーに笑われた事か。

 ああ、本当に懐かしい。

 今ではどうしてか、友人の真似事のような関係なのだ。昔の俺が今の俺を見たらどう思うだろうか?

 ……意味の無い事か。昔と今は違うのだから。

 いつか戦いたいと思う。だが、それはいつかだ。

 今はまだ――このよく判らない関係を楽しみたく思う。

 

 

 

 A月B日

 

 オーフィスは俺が変わったと言った。そう言ったオーフィスもまた、変わっている。

 徹と関わるようになってから、誰もが変わった。

 特にオーフィスの変化は顕著だ。

 目に見えて今までと全く違う行動をする様になった。

 意味がない事、無駄、そういうものを排した存在であったオーフィス。

 そのオーフィスが俺達の頭を撫で、喜び、赤龍帝や上代徹が出ているテレビを見、自身の変化の答えを探している。

 なんとも妙な気分になる。

 自分の感情すら偶に判らなくなるというのに、オーフィスの感情の変化を楽しんでいる。

 喜ぶべき事なのだろうか? よく判らない。

 だが、オーフィスが変わって俺も口数が増えたと言われた。

 自分ではわからないものだが――喜んでいるのかもしれないな。俺も。

 

 

 

 A月C日

 

 オーフィスは、よく徹の事を気にしている。

 俺や美猴、ルフェイやアーサー、フェンリルにも興味を示すようになったが、あの男を最も気にしていると言えるだろう。

 その変化を最も忌んでいるのは、曹操。

 明らかにオーフィスや俺達に隠れての行動が目立ってきている。

 美猴やアーサーに探らせたが、尻尾を出さないのは流石というべきか。

 ――まぁ、そろそろ頃合いだろう。

 先日の黒歌の申し出を受ける事にした。

 徹との会談。……会談というほど、堅苦しくもならないだろうが。

 オーフィスはあの男に敵対しない。

 それは俺も美猴も確信している。そしておそらく曹操もまた、そう確信しているはずだ。

 だが、曹操としては徹とオーフィスが敵対しないのは面白くないだろう。

 何か行動を起こすはずだ――。

 丁度良かったのだ。俺も、曹操も。

 徹との馴れ合いで忘れそうになっていたが、そもそも俺達は気に入らない物は潰す性質なのだ。全力で。

 相手の顔色を窺って、下らない腹の探り合いをする。

 そういうものが必要だとは判っているが、どうにも苦手だ。

 だからこそ――そろそろ、悩みの種を廃させてもらおう。

 

 

 

 A月D日

 

 さて、準備は整った。トオルとオーフィスの会談の事を、黒歌とアザゼルに伝えた。

 後は当日までどうするかだが――どうにもオーフィスが落ち着きがない。

 オーフィスの相手は美猴とルフェイに任せているが、勝手に会いに行かないように釘を刺しておくべきか?

 偶に美猴がオーフィスと徹を会わせている事は知っている。

 それも曹操と敵対する事になった一因であるとも言えるだろう。

 だが、今それをされると困るな――せっかくの会談の場が……まぁ、あまり関係ないか。

 今更だ。徹とオーフィスの関係は、黒歌も知っている事だし。恐らく、徹の眷属にも伝わっているはずだ。

 会談の折には、アザゼルや兵藤一誠にも伝える事になるだろう。

 ……驚くだろうか? 驚くだろうな。

 少し楽しみだ。オーフィスの変化を、悪魔や堕天使がどう捉えるのかが。

 

 

 

 A月E日

 

 徹に会いに行ってもいいとオーフィスに伝えたが、我慢すると言っていた。

 我慢……今までのオーフィスには無かった事だろう。

 良い事だと思う。

 オーフィスの変化――アルビオンもまた、微笑ましく思っているようだ。

 惜しむらくは、その変化の意味をオーフィス自身が自覚できていないという事か。

 徹。あの男は、関わった存在を悉く変えていく――まるで麻薬のような男だ。

 黒歌や俺達のように好ましく思う者もいれば、曹操のように憎む者も居る。

 そう美猴に話すと大声で笑っていた。

 徹の話をすると、美猴は上機嫌になる。徹を相当気に入っているからだ。

 今度また食事に誘うらしいので、付いて行こうと思う。徹との食事は、美味い。

 気を張らなくていい相手というのは、存外少ないのだ。

 

 

 

 A月F日

 

 オーフィスがまた、面白い事をしていた。

 朝、美猴のベッドへ潜り込もうとしたようだ。

 そういう事は徹とするように、とルフェイが言っていた。それもどうかと思うが。

 オーフィスの感情は、好意というよりは興味のほうが勝っているだろう。今はまだ。

 これから先がどうなるかは判らないが。

 そもそも、今の外見に惑わされそうになるが、オーフィスに性別は無い。

 ある意味で徹を想うならば同性愛という形にならなくもないのだ。

 現に、今の姿の前は男――老人の姿をしていたのだし。

 ……ルフェイどころか、美猴やアーサー、アルビオンにまで呆れられた。何故だ?

 

 

 

 A月G日

 

 曹操の動きが判らない。

 判らないからこそ、その意図が判るとも言える。

 オーフィスに叛意を抱くか。そもそも、アレは芯からの英雄だ。

 中華の英雄、曹操の子孫。この時代に産まれた事を、何度呪っただろうか?

 争いを望む気持ちも判る。

 そういう意味では、おそらく俺や美猴はアレと友人になれたかもしれない。

 共に手を取り、永遠の闘争を探し続けるのも悪くないと思える。

 ――だが、それももう遅い。

 オーフィスの変化と徹との会話。

 その楽しみを知ってしまった。オーフィスの変化を眺めながら、徹と他愛のない事を話しながら時間を潰す。

 ああ、確かに。

 美猴が徹は友人だと言っていたが、確かにそうなのだろう。

 少なくとも俺は、彼を友人だと言えるだろう。

 兵藤一誠とは違う。戦いたいとは思わない…ただ、話をして、食事をして、時間を潰す。

 そういう関係。悪くないものだ。

 

 

 

 A月H日

 

 曹操への囮として、美猴にオーフィスの姿を模してもらった。

 オーフィスが興味を示してた。片方は表情を崩し、もう片方は無表情。

 何とも判りやすい変化だと思う。美猴に表情を消すように言うが、しばらくはオーフィスと遊んでいた。

 オーフィスも、自分の笑顔を初めて見たのだろう。興味深そうに表情豊かな自分を見ていた。

 ……いつか、オーフィスも笑うようになるのだろうか?

 その時が楽しみだと思った。

 きっと、徹ならオーフィスを笑わせる事が出来るだろう。

 疑う事無くそう思える事は、あの男の人徳だろうな。

 俺や美猴――テロリストにも変わらず接する。

 どうして俺達を良い人などというのか……よく判らない人間だ。本当に。

 

 

 

 A月I日

 

 オーフィスを模した美猴と、アーサー、ゴグマゴクを連れて行動をしているが、英雄派の戦力が思ったよりも少ない。

 俺達が思っていた以上に、強制『禁手』化で戦力を減らしていたのだろうか?

 それに、曹操や他の『神滅具』持ちも居ない――。様子見だろうか?

 しばらくはこのまま、オーフィスの事は徹達とルフェイに任せる事にした。

 本物のオーフィスの行動はまだ気づかれてないだろう。そう手は打った。

 それに、俺達に英雄派から追手がかかっているという事は、少なくとも美猴をオーフィスと思っているという事だ。

 今の英雄派に俺と徹、二面作戦を行えるほどの戦力は無い。

 

 

 

 A月K日

 

 英雄派の攻撃が激しい。

 俺達を、美猴を本物だと思っているのだろう。

 それにしても、オーフィスは徹との時間を楽しんでいるだろうか?

 そう言うと、兄のようだと言われたが…あまり自覚は無い。

 ただ、そう思ったのだ。

 戦いの最中に、妙なものだ。そんな事を考える余裕があった。

 そもそも、兄というなら日頃からオーフィスの面倒を見ていた美猴が適任だろうに。

 英雄派に攻められ、戦い続けているのに余裕がある。本当に妙な気分だ。

 曹操、ジーク――他の『神滅具』使い達。

 引き摺り出し、仕留める。終わらせよう。

 終わったら……そうだな、その足でオーフィスの様子でも見に行こうか。

 

 

 

 A月L日

 

 ルフェイから連絡が来た。徹達の方でも、英雄派が手を出し始めたようだ。

 オーフィスの所在を気付かれたか。

 だが、こちらにも戦力を回しているという事は、まだどちらが本物か確信が持てていないのだろう。

 徹の傍もそうだが、こちらも俺やアーサーのような主戦力を集めている。

 そう簡単に確信には至れないはずだ。

 気付かれたとしても、ルフェイの術で転移してもらう事になっているので抜かりはない。

 すぐさま徹とオーフィスの元へ行く事は出来る。

 このまま戦力を無駄に潰し続けるか、曹操。

 一軍の長としては、最低の選択だろう。

 

 

 

 A月M日

 

 ルフェイからの報告では、徹の調子があまり良く無いようだ。

 そういえば、徹はいつも能力を使った後は倒れていたというのを聞いた覚えがある。

 あちらはあちらで危険な状態のようだ…これ以上時間は掛けられないか?

 微妙な所だ。

 英雄派の戦力は、もうすぐ底を付く。あとは『神滅具』使いや魔剣使いを片付ければ終わる。

 それまで徹がもつだろうか? それに、徹の体調はよくないが、オーフィスがまだ居る。

 黒歌達も戦っていないという話だったから、向こうの英雄派は徹一人で片付けているという事か。

 相変わらず、デタラメな男だ。

 今は徹を信じよう。それに、まだ黒歌や徹の眷属。兵藤一誠達が居る。オーフィスも徹の為に動くだろう。

 ……心配する必要が無いような気がした。

 

 

 

 A月O日

 

 美猴から、徹とオーフィスが封印された事を聞いた。

 それに、兵藤一誠が生死不明の状態というのも。

 サマエルの呪い。忌まわしい――最悪の龍殺しの力が恨めしい。

 このままでは戦えない。美猴が初代孫悟空殿に掛け合うと言っていたが、どうなるか。

 最悪、この状態で徹とオーフィスを助けに向かわなければならないだろう。

 その為には、曹操を倒さなければならない。

 最強の『神滅具』使いを。

 万全の状態ですら及ばなかったものを、この状態で――今のままでは、難しいか。

 やはり、兵藤一誠のように歴代『白龍皇』の意志をどうにかするしかないのか。

 だが、説き伏せるほどの舌を俺は持っていない。

 力で捻じ伏せるか、それとも受け入れるか。

 ……サマエルの呪いをどうにかするまで、どうせ動けはしないか。

 考える時間は少しはあるようだ。

 

 しかし、自分でもお驚くほどに現状を受け止めている。そして、焦ってもいない。

 徹もオーフィスも無事だろう。封印という形を取ったのは、曹操があの二人を殺す事が出来なかったからだ。

 力を使い果たした徹と、力の大半を奪われたオーフィス。

 それでも、最強の『神滅具』はあの二人を殺せなかった……その事が、少しだけ面白い。

 所詮、英雄もその程度か。

 今度言ってやろう。怒るだろうか?

 兵藤一誠も――この程度で死ぬものか。アイツは俺と戦う運命にあるのだから。

 

 

 

 A月O日

 

 徹の力を使い果たしたのは、数日の時間を掛けて常に徹に『神器』を使わせ続けて疲れさせたかららしい。

 何とも地味な作戦だ。あの男の事だから、もっと派手に動くと思っていた。

 だが、効果的でもある。

 ……しかし、曹操は一つ思い違いもしていると思う。

 徹は疑似空間での決戦の時まで『禁手』の力を使わなかった。

 あの力を使えば、徹は制限なく戦えるはずなのに、だ。

 結局、曹操――英雄派は徹に遊ばれていた、という事か。

 恐らくその事実に曹操も気付いているはずだ。

 どういう心境だろうか? あからさまに手を抜かれ、遊ばれるという事は。

 まぁ、遊んだ結果封印されている徹も徹だが。あいつは、一番最後に大きな失敗するタイプの人間なのかもしれない。完璧な存在など居はしない――そういう所も愛嬌があっていいのかもしれないな。

 最後の最後では、曹操たち英雄派の戦意を根こそぎへし折っていったが。あれは爽快だった。

 徹の魔力の色は綺麗な銀色だ。

 初めて見た訳ではないが、何度見ても美しいと思う。

 ――赤龍帝に『真なる赤龍神帝』が居るように、白龍皇にも何かないか、と考えていた。

 グレートレッドを倒せば、とも思っていたが……悪くないと思う。

 白龍皇の『覇龍』。少しばかりイメージが出来てきた。

 徹、兵藤一誠。次にお前達と逢う時が楽しみだ。すぐに助けるから待っていろ。

 

 

 

 A月P日

 

 初代殿が、サマエルの呪いを打ち消す術を知っているらしい。

 しばらくの間、苦痛が伴うらしいが、助かった。

 呪いさえ解ければ、あとは自力で何とかできる。

 歴代白龍皇の意志も、『覇龍』の暴力も受け入れよう。その上で、俺は更なる『覇龍』へと至る。

 曹操。あの時俺を殺さなかった事を後悔させてやろう。

 今度は俺が――俺達が勝つぞ。

 獲物を殺しきれないなど、三流も良い所だ。

 俺も、徹の眷属も……次はお前に勝つ。英雄を打倒する。

 ドラゴンや魔王、神を倒すのは英雄かもしれない。

 だが、英雄を何度も退ける存在もまた、ドラゴンや魔王、神なのだ。

 

 




12巻書こうと思ったけど、ヴァーリ君書いちゃった。
思ったんだけど、同じ場面(上代家)を書いてたからいけないんだ。
『禍の団』側のヴァーリ君なら新鮮な気持ちで書けた。
……今更そんなことに気付いた俺って……ほんと、ばか……


――なんか、前も似たようなこと言ったような気がするけど気にしない(キリッ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。