とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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DQ3が予想以上に面白すぎた……昨日は投稿できずにすみませんでしたorz
あと、とおる君が一人でバラモス倒して吹いた。(レイナーレさん達は死亡
アイツはやっぱり、こー…主人公的な何かを持ってるんだな(笑


121(黒猫日記)

 

 A月A日

 

 トオルが赤龍帝ちんとリアス・グレモリーの事で愚痴を言ってた。

 なんでもあの二人、お付き合いするんだってさ。

 まぁ、今までが今までだったし、今更かなー…って感じだにゃー。

 だって、スイッチ姫の視線って、判りやすかったし? ま、どうでもいいことだね。興味無いや。

 それにしても、トオルもトオルだにゃ。

 そんなに彼女が欲しいなら、ここに一人、優良物件があるのにね。

 ……溜息しか出ないにゃー。

 トオルは鈍感すぎるよ。ホント。判っててやってるなら、そのうちおねーさんから寝込みを襲われるんだから。

 傍に居ると楽しいんだけどさ…楽しいけど、おねーさんとしては魅力が足りないのかなぁ、って思う訳ですよ。

 これでも結構、自信があるんだけどにゃー……色々と。この家に来てからは、自分の魅力を十二分に利用してると思ってるんだけど、それでも足りないのかな?

 その辺りは、絶対レイナーレより満足させてあげれると思うよ?

 あーあ…惚れた弱味かな? そうだろうね。

 ……だって、楽しんだもん。毎日。

 こういう日がずっと続けばいいと思うけど、ずっと続いてもらっても困る。

 平和すぎるのも複雑だにゃー。

 

 白音の体調も、少しずつ変わってきてる。

 発情期。判りやすいくらいに、トオルを意識してる。

 良い事だと思う。あの子は変に物事を難しく考えるのが悪い癖だ。

 もっと好きなように――気楽に、自分を押し込めないでほしい。

 でも、あの子はそれを否定してる。猫魈の本能を否定しようとしてる。

 どうしてだろう? トオルの傍はこんなに居心地が良いのに、あの子はそれを否定してる。

 んー……好きだっていうのは、誰だって判ってるんだけどにゃー。

 嫌いじゃないって言ってたけど、それって好きって事だよね?

 よく判んないにゃー…。

 

 

 

 A月B日

 

 女の子みたいな吸血鬼。あの子はどうにかならないのかにゃ?

 どうしていつも女装してるんだろう。トオルを惑わさないでほしい。

 ……というか、男の子って判ってても動揺してるトオルもどうかと思う。

 まぁ、可愛いとは思うよ? 否定はしない。というか、出来ない。

 どうしてあの吸血鬼は、仕草が一々女の子っぽいのか。

 まず、体力よりその仕草を治す方が大切だと思うにゃー。

 男っぽい方が良いと思うよ? トオルみたいにさ。

 

 今日は、ロスヴァイセが帰ってきてからレイナーレに魔術を教えていた。

 学校で教師をしてるだけあって、教えるのが上手いと思う。

 多分、私よりも説明上手じゃないかにゃ?

 ……や、嫉妬なんかしてないよ? うん。

 ロスヴァイセも、随分とこの家に慣れてきたと思う。

 良い事なのかどうなのか、まだ判らないんだけどね。

 ――私って、本当に誰かを疑ってばかり。

 しょうがないとはいえ……もっと気楽に生きたいにゃー。

 

 

 

 A月C日

 

 ロスヴァイセから勝負を挑まれた。

 や、勝ったよ? 負けられないからね、あんな頭の中で悩んでばっかりの戦乙女には。

 不思議だね。戦って、傷付け合って、そうしないと判り合えないなんて。私はヴァーリや美猴みたいに、戦闘狂じゃないんだにゃー。

 まぁ、判り合うっていうには、まだまだ壁があるんだと思うけど。

 ロスヴァイセ、悩んでた。何に悩んでるのかまでは判らなかったけど、悩んでくれていたおかげで勝てた。

 ……というか正面から戦うには強すぎだにゃ、あの女。

 火力だけなら、私なんかよりよっぽど高い。多分、今の赤龍帝と同程度か少し劣るくらいの攻撃力はあると思う。私も正面からの勝負より搦め手が得意だから、どうにも相性が微妙だった。

 味方なら、心強いんだけど。

 どっちに付くんだろうね、ロスヴァイセは。

 私を嫌ってくれててもいい。構わない。

 でも、トオルやレイナーレ、白音は裏切らないでほしい。

 あの三人は、きっと傷付くから。私は慣れてるけど……あの三人だけは、傷付けないでほしい。

 甘いかな? 甘いよね……。どうしてこうなっちゃったのかなぁ。

 

 白音もなんだか悩んでるみたいだし――早く自分に素直になればいいのににゃー。

 猫魈の発情期は、心を許した男が傍に居れば、発現してしまう。どうしようもない本能だ。

 好きな男の子供が欲しい。愛した男の子供を残したい。――女の本能だ。

 それは私も同じことなんだけどね?

 ……トオル以外は嫌だな、うん。

 ねー…トオル? 黒歌さん、トオル君の子供が欲しいにゃー。

 ――なんて言ったら、トオルはどう思うかな?

 なんちゃって。まだ早いかな? トオル、学生だし。

 でもいつか、本当に……トオルの子供を産みたいよ。

 『神器』だとか、立場とか、異世界の神だとか――どうでもいい。

 好きだから。

 

 

 

 A月D日

 

 トオルが、赤龍帝ちん達が今度中級悪魔に昇格するって教えてくれた。

 まぁ、どうでも良い事だけどにゃー。

 赤龍帝ちん達にはあんまり興味無いし。

 私が興味があるのは、トオルと私の周りの皆だけだし。にゃん。

 それにしても、白音が昇格試験を受けられないのはショックだ。

 実力的には、確実に中級クラスはあると思うんだけど。

 赤龍帝ちんとか聖魔剣使いとか、グレモリー眷属は濃いのが集まってるからにゃー。

 色々複雑だね? 白音も多分、結構ショックなんだろうなぁ。

 頑張ってるのに、まだまだ報われないもんね。

 折れちゃ駄目だよ? 諦めないでね?

 レイナーレも白音も、まだまだこれからなんだから。

 

 

 

 A月E日

 

 白音って、隠してるつもりなんだろうけど、発情期の兆候が表れてからずっとトオルを目で追ってるよね?

 判りやすいにゃー。

 あれでトオルの事は好きじゃないって言ってるんだから、微笑ましいよね。私の妹は。

 今日、グレイフィアが玩具をたくさん持ってきたんだけど、話半分しか聞いてなかったみたい。

 ずっとトオルを見てたもんね。

 可愛いなぁ。

 

 それにしても、トオルって結構学校じゃ大人しいんだね。

 嫌ならはっきりいえば良いのに。トオルが注意したら、赤龍帝ちんだって大人しくなるだろうけど。

 それをしないのは、トオルの良い所なのかな?

 まぁ、グレイフィアに注意してもらった方がバカップルたちには丁度良いのかもしれないけど。

 未来の義弟の面倒はお願いするにゃー。

 それにしても、今日は楽しかった。

 レイナーレ達がグレイフィアに恋愛の事で授業を受けてた。笑える。

 初々しいね、私達の『女王』様は。

 白音もそうだけど、レイナーレも最近は少しトオルから距離を置いてるから丁度良かったかな?

 本人は、今の立ち位置で満足してるみたいだけど。

 今はトオルの隣より、トオルの『女王』に相応しい存在になりたいって思ってるみたいだし。

 良い事なんだけど、色々複雑だよ。

 ライバルに塩を送られるのは嫌なんだにゃー。

 私はレイナーレと正々堂々勝負して、トオルに選んでほしいよ?

 負けてもさ…それならきっと納得できる。諦める訳じゃないけど。

 諦めは悪いんだよ、黒歌さんは。ま、知ってるだろうけど。

 

 

 ――それにしても。グレイフィアも今日教えてくれたような恋愛をしたんだろうか?

 想像がつかないにゃー。

 実は乙女だったんだね、グレイフィア。ちょっと意外。

 だって、ルシファーの事……尻に敷いてるし。

 

 

 A月F日

 

 シトリー配下が新しい『人工神器』を使うようになるらしい。

 レイナーレが使っているのも結構いいモノなんだろうけど、多分あれより性能は良いんだろう。

 羨ましがるかな、とも思ったけどそんな事は無かったみたい。

 愛着があるらしい。

 判らなくもない。初めてもらったものだしね。

 それに、盾はレイナーレに合ってると思う。トオルを守りたいんだもんね。

 そういうと恥ずかしそうにしてた。相変わらず可愛いなぁ。

 

 色々と、レイナーレと二人で『人工神器』の新しい使い方を考えてみた。今までも何度か考えたけど、レイナーレって不器用だからねぇ。全然生かせないの。戦場で考える暇ないもんね。

 アザゼルだって自分で使ってる『人工神器』を『禁手』化させていたんだから、レイナーレの『人工神器』も『禁手』化できるはずなのだ。

 本人はまだ無理だって言ってたけど。まだ、って言ってる辺り、レイナーレも私と同じくらい諦め悪いよね。良い意味で。

 まぁ、グレモリー眷属を見てると『禁手』のバーゲンセールみたいなものだから、簡単に至れそうな気もするけど。

 実際は何十年と修行しても至れない時だってあるくらい貴重な現象なんだよね。

 そう考えると、レイナーレも伸び代は十二分にあるはずだ。

 『偽りの神槍』と『禁手の盾』。

 それが私の理想だけど、最終的にどうなるかはレイナーレ次第だ。

 ま、努力の虫だし。きっと大丈夫だと信じてる。

 信じてるよ、『女王』様?

 

 

 

 A月G日

 

 白音が我慢できなくなった。

 発情期を我慢できなくて、トオルのベッドに潜り込んでた。

 それを止めない私は、酷い姉かな? 多分そうかもしれない。

 でも、白音には自分の気持ちをちゃんと把握してほしい。

 認識して、受け止めて、受け入れてほしい。

 ……酷いやり方だと思うし、ズルいとも思う。

 でも、好きの気持ちを否定してほしくない。

 相手が徹だからとかじゃなくて、白音の大切な気持ちの一つだから。

 それを否定してほしくないと思う。否定して、隠して、誰にも知られずに――時間とともに消えていく。そんな事をしてほしくないよ、お姉ちゃんは。

 たとえ、白音が私のライバルになっても。

 恥ずかしいだろうけど、白音の…私達の体質の事を皆に説明した。

 そろそろ教えておかないと、後で私が怒られるしね。

 まぁ、受け止めてもらえてよかった。うん。

 ……レイナーレからは、もっと早く教えろと怒られたけど。うん、ごめん。

 でもさ…これで白音は自分の気持ちに気付いたと思う。

 もう否定できないと思う。

 白音はトオルを求めた。

 愛しい男を求める本性は、トオルを選んだ。

 他の男――赤龍帝でも聖魔剣使いでも黒龍でも、その他の有象無象でもない。

 私達と同じ、トオルを求めた。

 ――それでいいんだにゃん。

 白音と同じ人が好きで、半分こ。いいよね。素敵な未来だと思うんだ。

 

 

 

 A月H日

 

 ヴァーリからオーフィスの件で連絡が来た。

 サイラオーグのレーティングゲーム前から何度か連絡を取り合ってたけど、ようやく曹操の目を誤魔化せたらしい。

 武闘派の英雄という割には頭も回るから面倒だ、アイツ。

 でも、その頭が良い英雄がオーフィスと敵対するなんて、少し意外だ。

 最強の『神滅具』は強力無比だが、それでもオーフィスを倒すには力不足も良い所だ。

 多分、私の見立てでは、『神滅具』程度がいくつあっても――全部揃っても、オーフィスには届かない。

 それほどまでにオーフィスは次元違いの存在だ。

 その筈なのに敵対するという事は、勝算があるという事だ。

 ――曹操は、オーフィスがトオルと手を取る事を知っている。

 オーフィスは、トオルに興味以上の感情を抱いた。思い出すのも恥ずかしいが――以前、オーフィスに会いに行った時、トオルの話をすると喜んでいた。あのオーフィスが、笑っていた。

 ……曹操。英雄派の首魁。

 オーフィスとトオルを同時に相手にして、勝てると踏んだのだろうか?

 想像もつかない。

 三大勢力どころか、世界中の戦力を掻き集めても勝てる気がしないというのに…。

 曹操を疑うべきか、トオルを信じるべきか――答えは決まってる。

 トオルはオーフィスと同等…もしくは、それ以上に厄介だ。

 でも、なにかあるかもしれない。私達が気付いていないだけで、どこかに落とし穴があるのかもしれない。

 油断はできない。したくない。

 ――もう、トオルが傷つくのは嫌だ。

 

 アザゼルにも明日の事を伝えておいた。

 ヴァーリから連絡がいってるだろうけど、私からも伝えた。

 驚かれた。というよりも、随分と疲れているようだった。判らなくもない。

 トオルとオーフィス。どちらも世界の中心と言える存在なのだから。

 ……ほんと、よく考えると私って凄い綱渡りをしてるにゃー。

 失敗したら、トオルとオーフィスで戦争が起こるかも?

 ――耐えるには、世界が何個くらい必要かにゃ?

 冗談に聞こえないから性質が悪いよね、私の好きな人は…。

 

 それと、オーディンが動くかも、ってロスヴァイセから言われた。

 あの年寄りはトオルに興味を持ってる。前からそうだった。ロスヴァイセや馬鹿犬を送ってきてからは、それが顕著に表れてきていると思う。

 トオルの『神器』――異世界の神に何を見出して、何を求めているのか…判りやすい。

 神話が示す通り、オーディンは戦神ではなく知識の神だったというわけだろう。

 その知識欲を満たす為なら、何かしらの行動を起こすかもしれない、と。

 ……さて、その情報を教えてくれた真意は何なのだろうか?

 北欧側を裏切ってトオル側に付くのか、それとも私達から信頼を得るためのものなのか

 ――ほんと、そんな事を考えてしまう自分が嫌になる。

 

 

 

 A月I日

 

 トオルとオーフィスの会談はあっさりと終った。

 戦う気は無い。じゃあ仲良くしよう。

 そんな感じ。あの二人って、絶対自分の立場を理解してないよね。どっちも世界を敵に回せる、世界の中心の存在なんだけどにゃー。

 ……多分、そのうちアザゼルって禿げるんじゃないかにゃ? そんな気がした。あと、赤龍帝ちんたちも反応に困ってた。

 オーフィスがこの家に住む事になった。トオルと『無限』が一緒の家に住む。……どっちかを良く思って無い連中からしたら、悪夢だよね。うん。私なら、手を出す気も起きない。下手をしたら、グレートレッドにすら勝負できる戦力だ。というか、勝てるかもしれない。

 アザゼルは赤龍帝ちんの家に置きたかったみたいだけど、オーフィスがトオルの傍を指名した。

 それにしても……本当に、オーフィスは変わった。

 自分以外――自分の望み以外に興味を持ってなかったのに、今ではトオルに興味以上の感情を抱いて、赤龍帝に興味を抱いている。

 この変化は良い事なんだろうか?

 私は良い事だと思うし、他の大多数も良い事だというだろう。

 でも――曹操がオーフィスと敵対した理由も何となく判っちゃう。

 オーフィスとは力の象徴で、絶対の存在。揺らぐ事の無い、不変の首魁。

 そのオーフィスが人間に興味を持った。自分の望み以外の事を知ってしまった。

 不変の存在が、変わってしまった。揺らいでしまった。

 ……少し複雑だにゃー。

 でも、変わらない物は無い――それが世界の真理だにゃ、曹操。

 オーフィスも、私も、ヴァーリ達も変わった。世界はもっと変わる。これからも変わり続ける。

 いつかきっと――トオルが望む、平和に届く。そう信じてる。

 まぁ、だからこそ敵対したんだろうけど。オーフィスの変化は、きっと戦いを無くす。平和に向かう。それを受け入れられなかったんだろう……『英雄』は。

 何を以て『英雄』と称するのか。過去の実績か、今までの行動か、それとも…これからの期待か。

 大きな戦いがなければ、英雄を英雄たらしめる戦場が無い。

 それを、英雄たちは認められなかったのかもしれない。まぁ、私は英雄なんて興味が無いからどうでもいいんだけどにゃー。

 ロスヴァイセにもいつも言ってるけど、英雄とか勇者とか、どうでもいい。興味無い。

 あんなのただの、弱者が求めるだけの体のいい生贄じゃないか。そんなの嫌い。

 トオルは勇者や英雄じゃない。生贄なんかじゃない。誰かに求められる、求められるだけの生贄なんかにさせたりしない。

 

 ……これからどうやって攻めてくるだろうか?

 ロスヴァイセの話だと、オーディンも動くかもって話だ。

 曹操にオーディン。それにいまだに動かない他の神々もどう動いて来るか……ほんと、頭が痛くなりそう。

 

 

 

 A月J日

 

 うーにゃー……私、何もしてないのに。

 私が何かしたわけじゃないのに。

 ……誰も私を信じてくれないにゃー。日頃の行い? 日頃の行いの所為なの?

 ちょっと泣きそう。ぅにゃー……。

 大体、オーフィスもオーフィスだ。

 どうして私の日記を参考にして行動するの? 他に誰か、オーフィスの考えに答えを教えてくれる人は『禍の団』に居なかったの? そもそもどうして、そんなにトオルに無防備なの?

 もうちょっと恥じらいとかそんな感情は無いの? 知識欲と興味だけとか、オーディンより性質が悪いよ、オーフィス。

 というか、なんであの子はああまで無防備なのか……敵になる存在が居なかったからだろうにゃ。うん。トオルは敵じゃないし。

 べったりだった。

 アレは強敵だにゃ。中身はともかく、外見は小さな女の子だからトオルが可愛がってた。頭を撫でてた。羨ましい。

 私が同じ事したら、恥ずかしがって距離を置くのに。まぁ、それはそれでイイモノがあるんだけど。トオルって可愛いよねぇ。

 でも、羨ましいものは羨ましい。

 くそー……流石『無限の龍神』といったところだにゃ。

 白音も行動しようとしてたけど、オーフィスに先を越されちゃってご機嫌斜めだし。

 おねーちゃんに八つ当たりしないでほしいにゃー。

 

 あと、トオルから白音の事で相談を受けた。

 どう接したらいいだろう、だって。

 黒歌さんとしては、白音に優しくして、早く想いを自覚させてほしいね。

 とりあえず、少し距離を置いたら、って言っておいた。

 発情期で参ってる所に、好きな男から距離を置かれる。

 白音ちゃんは、どんな反応を見せてくれるかなぁ?

 

 

 

 A月K日

 

 オーフィスから、トオルの隣の場所を取られた。ショックだ……。

 というか、トオルもトオルだにゃ。オーフィスにくっつき過ぎだと思うんだけど?

 そろそろおねーさんは笑えなくなってきてるよ、トオル君?

 ……レイナーレに慰められた。……レイナーレよりトオルに慰めてほしかったにゃー。

 あと、レイナーレがオーフィスを餌付けしてた。

 や、ご飯を上げてただけだけど。

 なんであんな小動物なんだろうか、『無限の龍神』は……ちょっと可愛いと思った。

 あと、私の日記を読もうとしないでほしい。本気で。

 本当に、オーフィスが興味を持つ基準が判らない。トオルと赤龍帝ちん……そして私の日記。

 明らかに私の日記ってランクが下も下だよね? 訳が判らないんだにゃー……。

 白音は嫉妬してるし、ロスヴァイセは驚いてるし。

 これからどうなるんだか……。

 まぁ、楽しそうなんだけどね。色々と。

 オーフィスって、もっとおっかないんだって思ってたんだけどにゃー。

 トオルは本当に、滅茶苦茶だにゃー。

 ……でも、そろそろ黒歌さんもトオル君ともう少し――もう一歩くらい御近付きになりたいにゃー。

 

 それにしても、本当に曹操はトオルとオーフィスに手を出すつもりなんだろうか?

 今日、トオルの元に英雄派が来たらしい。

 何もせずに帰ったらしいけど……そんな事なんてあるのだろうか?

 多分、何かしらのアクションはあったはずだ。

 トオルは教えてくれなかったけど。

 そんな時でも普通に生活してるトオルには、本当に……なんだろうね。

 呆れるというか驚くというか。笑っちゃうね。

 トオルはどんな時でも、いつも通りだねぇ。

 

 

 

 A月L日

 

 トオルの調子が、あんまりよくない。

 何かしてるわけでもないみたいだけど、気の流れが乱れていた。

 身体が疲れているとは少し違う…魂の疲弊。

 ――『神器』を使った後に見られる症状。

 でも、トオルに聞いたら勉強疲れだって言われた。

 またなにか、やろうとしてる? それとももう、やってるのかもしれない。

 私達に内緒で? 聞いた時に言わなかったのは、何か考えがあるから?

 嘘ばっかり。トオルは判りやすい嘘を吐く。

 詳しく聞こうかと思ったけど、今日は早く寝ちゃって聞けなかった。

 こんな時ばっかり早く寝て…悪知恵が付いてきたよね、トオル。

 ……心配だよ? 心配してる。

 何しようとしてるかまだ判らないけど、教えてもらえないのって傷付くんだからね?

 

 

 

 A月M日

 

 嫌な予感がする。

 トオルの疲労は昨日より酷くなってる。

 眠る事で少しでも回復しようとしてるみたいで、寝てる時間がいきなり増えた。

 今日は、学校から戻ってきた後、オーフィスと話してる途中で我慢できずに寝てた。

 白音から聞いたけど、学校でもあんまり体調が良くなかったみたい。

 本当に、大丈夫なんだろうか? 今日はもう寝ちゃったけど。

 ……聞いても教えてくれないし。勉強のし過ぎにしては、おかしいよトオル?

 嘘を吐くなら、もっと上手に吐こうよ……。

 

 それと、白音の発情期は私の方で少し無理矢理に抑えさせてもらった。

 トオルの調子が明らかにおかしい今、明日にでも何かあるかもしれないし。

 それに、もう十分白音も自覚したみたいだし。

 意地悪? 意地悪だよね。判ってる。

 それでもお姉ちゃんは、妹に諦めるなんて選択肢は選んでほしくないよ?

 諦めるより、喧嘩してでも真っ直ぐぶつかりたい。

 大体さ、白音がトオルを好きになったら、どうして私が傷付くだなんて思うかにゃ?

 想いもまだ伝えてないのに。好きの一言も紡いでいないのに。

 それなのに、気持ちを自覚したら私を傷付けるって決めつける――ほんと可愛いね、私の妹は。 

 そんな事無いのにね?

 好きだよ? トオルも、白音も。

 白音の告白…レイナーレと二人で笑っちゃった。悪い事をしちゃったかにゃ? しょうがないよね。

 私達ってそれくらいで傷付くような、繊細な精神なんて持ってないよ?

 そもそも、トオルだし。

 これからまだまだ、トオルの事を好きになる人は増えると思う。

 私達が好きになった人なのだ――もっと多くの人を惹き付ける。そんな魅力がある。

 そして、それは誇らしい事なんだよ、白音?

 私達の『王』は、誰からも好かれ、誰からも愛される『王』。

 それは誇りなんだよ?

 きっといつか、白音にも判る。判る時が来る。

 その沢山の人の中で、一番になりたい。

 それが白音の願い。想い。

 ……素敵だね。応援する。でも諦めない。

 トオルの一番は私。白音は一番以外。レイナーレもだ。

 

 ねぇ白音? 白音はまだ、妹で我慢できる?

 私は無理だよ。トオルのペットじゃ我慢できないよ。

 

 

 

 

 A月N日

 

 曹操。英雄の末裔。英雄派の首領。最強の『神滅具』の使い手。

 その理由を、思い知らされた。

 槍自体も、上級悪魔を傷付けれるレベルの聖光を放っているし、七つの異能を操る『七宝』なんて能力も発現させていた。

 七つそれぞれに『神器』としての能力を宿していたアレは、そのどれもが厄介極まりない。

 エクスカリバーとデュランダルを混ぜた聖剣や、レイナーレの『偽りの神槍』を簡単に砕くし、

 女性の異能を完全に封じ込めるなんて、私達の天敵みたいな能力もあった。

 他にも攻撃を受け流したり、宙を浮いて高速移動したり…。

 まだ見せてない能力もあるだろうし……底が知れない。

 あれで人間なのだから恐ろしい。

 それに、頭も回る。

 トオルを無力化して、こちらの回復手段を限定させた。

 アーシアの『聖母の微笑』を最初に無力化しなかったのは、こちらの戦力をアーシアの護衛に回す為でもあったんだろう。

 それに、トオルは攻守の要だ。居るのと居ないのでは、精神的にも違う。

 現にヴァーリも赤龍帝ちんも、焦って攻勢に出て返り討ちに遭った。

 大体、向こうが用意した疑似空間に召喚されたのが私達とグレモリー眷属だけの時点でどうかしてる。

 相手のフィールドで戦うなら、相手の想像以上の成長をするか、相手の予想以上の戦力を用意しないといけない。

 ……疑似空間に呼びこまれた時点で、私達は負けていたようなものだ。

 悔しい――完全な敗北だ。

 

 用意も周到で、オーフィスや二天龍対策に『龍喰者』サマエルなんて反則級の龍殺しまでもってくるし、オリュンポスの死神まで協力してた。

 後釜には旧魔王派ときた。シャルバっていう、ベルゼブブの子孫とかなんとか。それに、上位神滅具の『魔獣創造』を持った男。

 中級悪魔の試験場にあそこまでの戦力を用意した辺り、曹操は確実にトオルを封印したかったんだと思う。

 たぶん、オーフィス以上に、だ。

 トオルを無力化した方法も、何日も掛けて準備をしていた。

 曹操にとって、トオルは厄介極まりない存在なんだろう。だが、そこまで確実に封印したかった理由はなんだろうか?

 きっと何か意味があるはずだ。

 トオルもオーフィスも、手を出さなければ敵対しない。その程度は、曹操も知っているはずなのに。

 それなのに、あの男は危険を冒してトオル達と敵対した。

 戦場を望むにしても、もっと何かしらの方法があったはずだ。

 というか、トオルもオーフィスも、自分を大事にしなさすぎなのだ。

 二人とも誰かを守って力を使い切ってる辺り、似た者同士だ。

 おかげで最大の戦力が一瞬で捕まったんだから。

 トオルは傷付いた人を回復させたり、以前から英雄派がちょっかい掛けてたのを『神器』の力でなかった事にしてたらしいし。

 オーフィスは私達を庇ってサマエルに力を食べられるし。

 ……まぁ、その辺りの行動をちゃんと読んでいた曹操が切れ者なんだろうけど。

 曹操の思い通りにしてしまった自分が許せない。

 どうにかして、トオルを助けないと――でも、トオル抜きで曹操に勝てるだろうか?

 ――皆の前では強がって見せたけど…正直、自信が無い。それくらい、曹操は強かった。強すぎた。

 それに、曹操以外の英雄も居る。

 特に厄介なのは上位神滅具の『魔獣創造』。

 トオルは私達を助けるために、最後の力で異界の何者かを召還した。

 人の姿をした者も居れば、異形も居た。千差万別、数多の姿を持った存在達。

 そのおかげで私達は助かったし、それが無かったらきっと曹操に全滅させられていた。

 だが恐らく『魔獣創造』は、あの中からいくらかの存在を覚えたはずだ。

 所有者の想像力の及ばない異界の魔神達を覚えてしまったはずだ。

 それとも戦わないといけないのかも、と思うと眩暈しかしない。

 ……それでも、退けない。諦められない。

 トオルを助けたい。たとえ――死んでもだ。

 

 レイナーレは凄いね。トオルを助けることに迷いがない。

 曹操に負けたのに…もう曹操に勝つための事を考えてる。

 ――強くなったね、本当に。

 

 

 

 A月O日

 

 トオルとオーフィスは封印。赤龍帝ちゃんは生死不明。ヴァーリはサマエルの呪いで大怪我。

 曹操の敵は居なくなったし、『魔獣創造』は徹が召喚した魔神を覚えたかもしれない。

 ……状況は最悪だにゃ。最悪なんて言葉じゃ足らないくらい最悪だ。

 こういう時、どんな言葉を使えばいいんだろうね?

 でも――誰も諦めてないんだよね。

 レイナーレも、白音も、ロスヴァイセも。スコルとハティも。

 今度は、その神殺しの牙に期待させてもらおう。

 ちゃんと働かなかったら、ただ飯喰らいって事で野に放ってやる。

 

 白音と訓練をしていて、初めて負けた。これが実戦なら、終わってる。

 原因は判っている、私が集中していなかった。

 白音はトオルが封印されているからこそ、トオルを助けるために一生懸命に頑張ってる。

 ……私だって不安なんだ。

 怖いよ。トオルが居ない。もう会えないかもしれない……そう思うと、怖い。

 死ぬよりも、トオルと会えない事が怖い。辛い。寂しい――。

 白音が居る。レイナーレが居る…でも、トオルが居ない。

 この家にトオルが居ないと、やっぱり駄目だよ。寂しいよ。

 トオル……会いたいよ。声を聞きたいよ。

 ロスヴァイセは私が強いって言ってくれたけど、そんな事は無い。

 私は弱くなった。トオルが居ないと、こんなにも不安に押し潰されそうになってる。

 ――トオル。無事? 無事だよね? ……声を聞きたいよ。

 

 

 

 A月P日

 

 オーディン。

 今回の騒動の裏で、糸を引いていた一人かもしれない神。

 今日、ロスヴァイセにちょっかいを出してきた。

 トオルが居ないからって、すぐにこの家に来て――本当に嫌な奴。

 それに、トオルが封印された事を気付いていた。知っていた。

 ……それは、ロスヴァイセ以外にも、オーディンに現状を報告している存在が居るという事。

 今度、見つけ出して八つ裂きにしてやる。

 それにあの狸の皮を被った年寄りも。

 トオルが封印された事を喜んでた。どれだけ表情を繕っても、判りやすい。

 内心は狂喜していたんだろう。目が笑っていた。雰囲気が喜悦を纏っていた。

 ――今に見ていろ。好きにさせるものか。

 トオルは助ける。アイツは満足させない――絶対だ。

 

 

 

 A月Q日

 

 ロスヴァイセが、今までの事を告白してくれた。

 まぁ、薄々感付いてはいたんだけどね。

 だって、嘘が下手だし。良い所の御嬢ちゃんなんだもん、ロスヴァイセって。

 白音は気付いてなかったみたいだけど。

 レイナーレと二人で笑ってしまった。

 でも、オーディンへの内通者ってことを告白してくれたって事は、これからは少しは信じられるって事だと思う。

 ……我ながら甘いよね。

 簡単に信用しちゃってさ。

 それに、ヴァーリの傷も治る目処は立ったみたいだし…トオルを助ける時は、力を貸してくれるって言ってくれた。

 まだ、勝ち目はある。

 曹操にも、英雄派にも――私達は、戦える。

 誰を敵に回したのか教えてやる。

 英雄派にも、死神にも、旧魔王派にも――そして、トオルを助ける。絶対だ。

 

 




11巻を詳しく書こうとしたけど、なんだか余計に判らなくなったような気がしないでもないです
スミマセンorz
次回から12巻。
レイナーレさんとオーフィスは11巻から跨いで書こうと思います。
これだけ多くの人で同じ視点を書くことに限界を感じました。
ぶっちゃけると、他日記と見比べながら書いてるので普通にイベントを見落としまくって辛い。

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