とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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『禍の団』、オーフィス、周囲<徹

DQ3始めました。なんとなく。
勇者とおる(いのちしらず
武闘家こねこ(ちからじまん
遊び人レイナーレ(くろうにん
魔法使いくろか(セクシーギャル
……こいつらに世界は救えるんだろうかw


120(白猫日記)

 A月A日

 

 部長とイッセー先輩が正式にお付き合いをするようになった。

 今までもルシファー様や部長の家族公認のような感じで付き合っていたので、今更だとも思うが。

 それでも、これからは彼氏彼女、恋人同士として過ごすようだ。

 ……せめて、人目は気にしてほしいと思うが。

 初々しいというか、見ていて何とも言えない気分になった。

 ああいう事は家の自室でしてほしい。部室で…部員の前でされても、反応に困る。

 名前を呼び捨てにして。出来ない。の問答はもう見飽きた。

 ああいうのをバカップルというのだろうと思う。

 徹先輩と一緒に帰った時、少し辟易していた。

 多分、徹先輩もあの二人の変に暑苦しい関係を見せつけられたんだと思う。

 よく、何かあったら相談事をされてるみたいだし。大変だな、信頼されるというのも。

 ロスヴァイセさんは、単純にあの二人の関係に疲れていた。

 彼氏が居ないというのも大変なようだ。

 

 ――でも、名前で呼んでもらうのは良いな、と。

 そう思った。別に、誰に呼んでほしい訳ではないが。

 

 

 

 A月B日

 

 ギャー君が最近、真面目に体力作りをしている。

 今日も、部活の時間は私と一緒に組み手をした。軟弱だったけど。

 男の子なのに。吸血鬼なのに。半分だけだけど。

 徹先輩に言われて思い出したが、イッセー先輩が入部したばかりの時もこの家の周りを走り回っていた気がする。私も、何度か寄った記憶がある。

 どうしてオカルト研究部の部員は、朝の走り込みや訓練の後、この家に寄るのだろう?

 徹先輩が悩んでいたが、答えは無い。

 まぁ、私としては――寄り易いから、だと思う。

 なんというか…居心地が良い。――私の意見だが。

 この家に来る理由は、人それぞれだろう。

 姉様やレイナーレのように徹先輩が居るからとか。

 

 

 

 

 A月C日

 

 部長とイッセー先輩が、今日も部室でベタベタしていた。

 付き合うようになって結構な時間が経ったのに、いまだにベタベタしている。飽きないのだろうか?

 ……飽きないのだろうな。姉様もそうだし。いまだに徹先輩とベタベタしてる。

 せめて、人前では控えればいいのに。

 ちなみに部長たちは、イッセー先輩のお母様から子供の名前を――と言われたらしい。

 部室でイッセー先輩と部長に惚気られた。

 アーシア先輩の前でよく言えるな、と思う。

 恋人という関係になったら、ああまで変わってしまうのだろうか?

 イッセー先輩達の神経は凄い。そんなイッセー先輩を今でも好きなアーシア先輩は、もっと凄いけど。

 一番じゃなくて、いいのかな?

 ……私は、どうだろう。

 考えても意味の無い事だろうけど、イッセー先輩達を見ていると、嫌でも考えてしまう。

 少し、気分が悪い。

 私も多分、アーシア先輩と同じかもしれない。

 好きな人が私以外を好きになっても、多分私はその人が好きなままだ――。

 ――そもそも、私に好きな人はまだ居ないのだが。

 まぁまず、好きな人が居ないのにそんな事を考える事が間違いだろうけど。

 それとも――私は本当に、徹先輩を好きになってしまったのか?

 ……馬鹿らしい。

 こんな事を考えてしまったのは、イッセー先輩と部長の所為だ。

 あと、何でも判っているみたいな姉様の視線が、少し嫌。

 私は別に、徹先輩の事はどうとも思っていないのだ。

 

 

 

 A月D日

 

 イッセー先輩、祐斗先輩、朱乃さんが中級悪魔に昇格する話が出てきている。

 今までの功績から、私はてっきり上級悪魔に成るとばかり思っていた。

 特に、イッセー先輩は力だけならすでに上級悪魔クラスだと姉様も言っていた。

 私もそう思う。

 イッセー先輩の成長スピードは異常だ。

 姉様は私も才能があると言ってくれてたけど、その私でも追いつけない勢いで成長している。

 若手ナンバー1と言われた、サイラオーグ様すら正面から打倒できるほどの爆発力。

 今では、グレモリー眷属ではイッセー先輩の爆発力は必要不可欠なものだ。

 私の方が先に部長の眷属になったのに、と思う所もあるけど。

 ……本当に私に才能があるのか、と。そう思ってしまった。

 姉様もレイナーレも、あると言ってくれた。

 ロスヴァイセさんも、私は術の覚えが良いと言ってくれた。

 でも――部長の元でも、徹先輩の元でも……私はまだ、何の成果も出していない。

 

 

 

 A月E日

 

 グレイフィア様が来られた。

 「おっぱいドラゴン」のグッズの感想を徹先輩に聞きに来ていた。

 徹先輩としては、「おっぱいドラゴン」をあまり良く思ってないみたい。

 朝、姉様と一緒に見てるけど、私にはあまり見ない方が良いと言ってくるし。

 どういうものかは知っているし、私としてもあまり興味がある内容とは思えない。

 ……でも、徹先輩と一緒にテレビを見ている姉さまは嬉しそうで、幸せそう。

 多分、テレビの内容より「徹先輩と一緒に見ている」のが楽しいんだと思う。

 それがちょっと、羨ましい。姉様と兄様……一緒にテレビを見たら、私も楽しいと思うから。

 もし二人が恋人同士になったら、イッセー先輩達みたいに変わってしまうのだろうか?

 二人の関係、それにレイナーレとロスヴァイセさん。私。

 この今の関係が、好きなのに。

 

 話がずれた。

 今日は「おっぱいドラゴン」グッズの試供品をいくつか貰った。

 新商品の「すぽんじドラゴン」は使いやすいと思う。私は気に入った。

 デフォルメされた赤龍帝も可愛いと思う。

 まぁ、それはともかく。

 試供品の話を少しした後、徹先輩が最近のイッセー先輩の事をグレイフィア様に相談していた。

 判らなくもないと思う。

 ああも毎日、痴話喧嘩のようなものや、ベタベタくっついている所を診せられると、こちらも困ってしまう。

 でも、グレイフィア様からは、しょうがない、という部長たちを擁護する言葉だった。

 若いから、しょうがない…と。

 そのあと、リビングでグレイフィア様を教師にした恋愛授業が行われた。

 ……どうしてそうなったか判らない。

 でも――徹先輩は、周囲のみんなから好かれてるな、というのは再確認できた。

 姉様にレイナーレ……それに多分、ロスヴァイセさんもそう悪く思ってないと思う。

 それに私も。

 ――それが恋愛感情か、と言われると違うと答えるが。

 慕っている。

 学校の先輩として。頼れる人として。姉様の想い人として。兄の様な人として。

 私の好きは、そういう感情だ。

 

 

 

 A月F日

 

 徹先輩から、支取会長の眷属の皆さんが『人工神器』を使う事になったと教えてもらった。

 『人工神器』。レイナーレも使っている、アザゼル先生手製の『神器』。

 私も使ってみたいと思ったが、姉様から止められた。

 私はまず、仙術や妖術を完全に収めてから、と言われた。

 姉様を助けてくれた。救ってくれた。居場所をくれた。傍に居てくれる。

 ――そんな、大切な人の役に立ちたいと思う。

 今のままじゃ、私はまだ役立たずのままで……部長の眷属としても、徹先輩の眷属としても、一番弱い。

 イッセー先輩が羨ましい。

 『神滅具』のような強力な『神器』を持っていて、部長から信頼されて、想われて、愛されて。

 姉様は強いし、頼りになるし、薬の知識もあるし、どんな時でも落ち着いている。

 ロスヴァイセさんは頭が良いし、魔術の知識は姉様以上だし、綺麗だし、誰からも好かれている。

 レイナーレは頑張り屋で、努力家で、料理が出来て、家事も出来る。

 グレイフィア様やアザゼル先生からの信頼もあるし――何より、徹先輩の一番傍に居る。

 私が誇れるものって何だろう?

 思いつかない。

 愛想は悪いし、身体は小さいし、役に立たないし。

 最近、溜息が増えたと思う。

 ――徹先輩関係で。

 そんな私でも、徹先輩は傍に置いてくれている。姉様と一緒に暮らせるようにと、部屋を用意してくれた。

 居心地が良い家に姉様が住んでいて、私の部屋がある。

 その恩返しをするには、どうしたら良いのだろう?

 

 

 

 

 A月H日

 

 ――昨日の事を、思い出したくない。忘れたい。

 いや、今でも徹先輩の事を考えたくない。

 これが猫魈の発情期かと思うと、姉様がいつも徹先輩の傍に居たがるのもよく判る。

 理解してしまう。

 私が…私達猫魈が誰かを好きになるのは、こんな事なのかと。

 昨日、そして今日――四六時中、徹先輩の事が頭から離れなかった。

 どうしようもなく、傍に居たくて、触れたくて、触れてほしくて。

 ……それだけで幸せで、それだけじゃ満足できなくて。

 ――だからもっと、と考えてしまってる。

 触れてもらうその先ばかりを想像してしまっている。

 

 徹先輩から、凄く良い匂いがした。

 傍に居るだけで、幸せになれた。そんな匂い。

 多分アレが、姉様が偶に言っていた、徹先輩の匂い。男の人の匂い。

 ――どうかしてる。自分でも判っている。

 でも……もっと、徹先輩の傍に居たい。近くに居たい。そう思ってる。

 それは悪い事で、駄目な事で――でも、どうしようもない事で。

 発情期の衝動は姉様が抑えてくれた。

 でも、昨日の事は記憶に残ってる。この記憶も消してくれたらいいのに、と思う。

 ……発情した猫は、男を求める。好きな――愛しい男を。

 そんな事は無い。

 違うはずだ。違うに決まっている。

 

 ――そもそも、そんな大事な事を今まで教えてくれなかった姉様もどうかと思う。

 知らなかった私も悪いのだろうけど。

 そんなモノがあるだなんて知りもしなかった。調べなかった。

 最近、徹先輩の事ばかりを考えてしまっていたのは、それが理由なのだろう。

 ……そう判ると、少し寂しいモノがある。

 結局私は、発情したから徹先輩の事を好きになっただけで、私自身は徹先輩の事を好きになった訳ではないのだ。

 それでいい、姉様もレイナーレも傷つけずに済むと思う。

 でも、寂しい。

 それはきっと、私が徹先輩に少なからず好意を抱いているからだろう。

 そう考えること自体、おかしな事だ。

 ……早く発情期が終わればいいのに。

 

 

 

 A月I日

 

 今日、家に『禍の団』のオーフィスと、以前何度か来ていたルフェイさんが来た。

 というよりも、今日から家に数日泊まるらしい。

 どうしてそうなったのか、よく覚えていない。

 駄目だ――今日一日、頭が回らなかった。

 どうしても、徹先輩を目で追ってしまう。

 徹先輩の事ばかり考えてしまう。先輩の事だけを考えてしまう。

 大事な話をしていたんだと思う。

 大切な事を相談していたんだと思う。

 でも、そんな事よりも先輩の事を考えてる――そんな自分が、嫌になる。

 全然徹先輩への感情が治まっていない。明日も、この調子なのだろうか?

 姉様に相談したけど、しょうがないと言われた。

 ――それだけ私が、徹先輩を求めているのだそうだ。

 姉様は意地悪だ。凄く。

 私がこんなに困っているのに、それを見て楽しんでいる。

 ……私が徹先輩を好きになるのを、喜んでる。

 

 

 

 A月J日

 

 自分が判らなくなる。

 好きになりたくないのに、徹先輩ばかりを目で追ってしまっている。

 徹先輩の傍に行こうとしてる。

 隣に居たいと思ってしまってる。

 朝、徹先輩のベッドにオーフィスが潜り込んでいた。

 姉様がそう教えたらしい。……ロスヴァイセさんに怒られていた。当然だと思う。

 けど、たったそれだけの事に、イライラしている自分が居る。

 そもそも、どうして私は朝早くから、徹先輩の部屋へ向かったのか。

 ――今まで、そんなことをした事も、考えた事も無かったのに。

 部屋から徹先輩以外の女の匂いがしただけで、苛立った。

 どうしてそんな事で、怒ってしまったのか……。

 判ってはいるが、認めたくない。

 徹先輩に嫉妬だなんて――。

 

 

 

 A月K日

 

 ……徹先輩から、避けられてる気がする。

 私の考え過ぎだと思うし、その事で助かっていると言えば助かってはいるのだが。

 徹先輩から離れていると、寂しいけど落ち着ける。

 先輩の匂いが届かないなら、私は元の自分でいられる。鼻が良すぎるのも問題だ。

 発情期が完全に落ち着くまでは、この距離を保っていようと思う。

 家を出ようかとも考えたけど、行く宛も無い。

 イッセー先輩の家なら、とも考えたけど――嫌だった。

 今は、徹先輩以外の男の人の匂いを嗅ぎたくない。

 ……自分でも、どうかしてると思う。

 徹先輩の匂いを嗅ぎたくないのに、徹先輩以外の男の人は嫌だと感じている。

 ――でも、避けられていて、徹先輩をどうしても目で追ってしまって、そうしたら徹先輩はオーフィスの事ばかりを見てる。

 イライラしている。

 そんな私の事を何も考えずに、徹先輩はオーフィスの事ばかり。

 早く元に戻りたい。

 こんな私を知られたら、徹先輩から嫌われる――。

 

 

 

 A月L日

 

 徹先輩の調子が、あまり良くないみたいだ。

 顔色が悪いし、フラフラしてた。

 勉強のし過ぎと言っていたけど…あまり無理をしてほしくない。

 今日は早く寝てたけど――明日には体調を戻してくれているだろうか? 心配だ。

 心配で…苦しい。

 ――発情期はもう落ち着いた筈なのに、どうして私はまだ、徹先輩をずっと目で追ってしまっているのか。

 こんなにも苦しい気持ちが続くのはどうしてなのか。

 話せなくて、傍に居られなくて、離れた所から眺めているだけ。

 その事に寂しさ以上の辛さを感じてしまっている。

 ……考えたくない。

 

 

 

 A月M日

 

 姉様が、発情期を完全に抑えてくれた。

 ……出来るなら、最初からしてほしかった。

 ここ数日は何の為にあったのか……本当に姉様は意地悪だ。

 姉様は、私の事を不安定だと言った。

 その不安定さが、私自身を傷付けていると言っていた。

 その意味はまだ分からないけど、一つだけ判った事がある。

 私はどれだけ言い繕っても、姉様を傷付けたくないと思っても……本能が求めてた。

 それが答えだって……。

 傲慢? 不遜?

 それでも、姉様と同じ人を好きになりたくない。

 姉様やレイナーレと好きな人を奪い合うなんて、私は嫌だ。

 ――姉様もレイナーレも、笑ってた。

 それでも良い。そういうものなんだ、と。

 人を好きになるのに正解なんて無くて、好きになったら誰だってその人の一番になりたくて、

沢山悩んで、一生懸命頑張って、何かを切り捨てたり、何かを手に入れたり…誰かを傷付けたり、

自分が傷付いたり。

 仲良くなったり、少しだけ嫌いになったり――そうやって、もっと好きになっていく。

 そういうものかもしれないし、全然違うものかもしれない。

 結局これは、私の初恋でしかないわけで…そして、姉様やレイナーレも初恋のようなものだと言っていた。

 初めての恋は判らない事ばかりで、だから多分…私はいつか二人を傷付けるかもしれない。

 一番になりたい。徹先輩の一番に。徹先輩の隣を私だけのモノにしたい。

 誰かを本気で好きになって、見返りなんか求めずに――傍に居られるだけで幸せだと、二人は笑ってた。

 羨ましかった。羨ましかったから、私も……と思ってしまった。

 私を置いていった姉様を恨んでた。

 徹先輩や、アーシア先輩達を傷付けたレイナーレを嫌っていた。

 それでも先輩はそんな二人を受け入れた。家に居場所を用意して、傍に置いて、一緒に暮らして、仲良くなって――。

 ……何時から好きになったのか判らない。

 この家に住むようになった時からか、徹先輩が二人を受け入れた時か…初めて会った時かもしれない。覚えていない。

 気付いたら、気になってた。気付いたら、好きになっていた。

 二人の事を応援していたし、私は今までの立場で十分だった。

 きっと、二人のどちらかが徹先輩と付き合う事になったら、私の初恋は終わっていた。

 いや、二人じゃなくても、ロスヴァイセさんでも、支取会長でもいい。

 初恋が実らないというのは、いつできた言葉だろうか?

 徹先輩が誰かを好きになったら、私はずっと妹で居られたはずだ。

 

 ――それで満足できない私は、本当にダメな子だ。

 私はもう、妹じゃ嫌だ。

 

 

 

 A月N日

 

 徹先輩が居ない家は、広い。

 ……本当に、この家は広い。広かったんだって…徹先輩が居なくなって、やっと気づいた。

 姉様もレイナーレも、ロスヴァイセさんも――あの場には居なかったけど、スコルとハティも落ち込んでいる。

 家の中の雰囲気が暗いのは……徹先輩が居ないから。

 英雄派の曹操に、封印された。

 私達を助けて、力を使い切って…。

 私達が居なかったら、徹先輩があんな男に負けるわけがない。

 ――私達が弱いから。守られてばかりだから。

 強かったら、守れるくらいの力があれば…英雄に負けない力があれば、こんな事にはならなかったはずだ。

 徹先輩の強さは、誰だって判っている。

 だからこそ、曹操だって徹先輩と正面からの勝負を避けた。

 イッセー先輩やヴァーリさん、グレモリー眷属や私達を相手に圧倒したあの英雄が、たった一人の人間との勝負を避けた。

 それが、私達の『王』。私の好きな人。

 だから…助けよう。

 今まで助けられたから、今度は助けたい。

 それで教えるのだ。私達はもう守られる存在じゃないと。戦えると。守れると。

 ――徹先輩が好きだと。

 まだ気持ちを伝えてないのに、別れるなんて……嫌だ。

 好きだと伝えていない、付き合って下さいと伝えていない、傍に居て下さいと伝えていない。

 私も、姉様も、レイナーレも…多分、ロスヴァイセさんも。

 徹先輩に伝えていない事が沢山ある。

 ……落ち込んでいる時間なんて、一瞬だってない。

 英雄に、負けた。

 だから今度は勝つ。

 勝って、徹先輩を取り戻す。

 だってこの家……徹先輩が居ないと、広くて寂しくて冷たい。

 

 

 

 A月O日

 

 ロスヴァイセさんも、徹先輩を助けるのに力を貸してくれると言ってくれた。

 アザゼル先生は、三大勢力や海外の神々との会談の準備があるからと、学校を休んでいた。

 多分、『禍の団』との決着…徹先輩を取り戻すのは、その後。

 今度こそ――後悔しないように、頑張らないといけない。

 それにしても…イッセー先輩が生死不明なのは、部長たちにとってとても大きな傷跡を残していた。

 徹先輩のように封印された訳じゃない。

 イッセー先輩は『龍喰者』サマエルの呪いを受けてた。

 ヴァーリさんも、その呪いの傷に苛まれている。

 ……でも、『次元の狭間』には徹先輩もオーフィスも居る。

 何らかの理由で『悪魔の駒』だけが返ってきたのかもしれない。

 イッセー先輩が召喚に応じるだけの体力がなかったとか、『次元の狭間』に施された封印が強力過ぎたとか。

 得意な分野ではないが、私の頭でもまだ色々とイッセー先輩が生きている可能性は思い浮かぶ。

 ――好きな人が生死不明なら、しょうがないのかもしれない。

 ロスヴァイセさんも、落ち込んでる部長たちに何も言わなかった。

 今日は、部活は休みだった。

 

 帰ってから、姉様と組手をした。

 ……今日、初めて勝った。

 勝って、判った。姉様も不安なんだ……と。

 

 

 

 A月P日

 

 今日、北欧の主神、オーディンが家に来た。

 徹先輩が居ないのを確認しに――。

 どうしてああも嬉しそうに笑っていたのか……前からあまり好きではなかったが、嫌いになりそうだ。

 表情は隠していたが、雰囲気が違っていた。その辺りは昔から敏感なのだ。気の使い方を覚えてからは、更にもっと感じられるようになっている。

 ロスヴァイセさんに一言二言だけ言葉を残して帰っていった。

 ……その後から、ロスヴァイセさんの様子が良くない。ずっと落ち込んでいた。

 何があったのかは判らないが…元気を出してほしい。

 徹先輩を一緒に助けないといけないのだから。

 

 

 

 A月Q日

 

 ロスヴァイセさんは、徹先輩の味方ではなかったのだろうか?

 今日の話を聞いた時、そう思ってしまった。

 私としては、ずっと仲間だと……そう思っていた。

 たとえ、何か思惑があっても――信じていいんだと、そう思っていた。

 笑われた。私はもっと人を疑うようにと、姉様から注意された。

 レイナーレはそのままでいいと言ってくれたが。

 ……これでも、疑り深い性格だと思うのだが。人見知りもあるし。

 

 今日、ロスヴァイセさんが今までの事を告白してくれた。

 オーディン様に最近まで徹先輩の情報を教えていたと言っていた。

 北欧の主神は徹先輩の『神器』――異世界の神に興味を持っていて、どうにかして徹先輩を戦わせようとしてる、と。

 聞いた時は驚いたけど…それだけだ。

 ロスヴァイセさん、泣きそうな顔をしてた。

 あんな顔をされたら怒れない……私は、甘いんだと思う。

 でも、姉様やレイナーレは怒ると思っていた。

 くやしいけど、私より徹先輩を大切にしてる二人だし。

 ――そんな二人は、気付いてたらしくて泣きそうなロスヴァイセさんを慰めたり、笑ったりしてた。

 なんでもロスヴァイセさんは、最近はもうオーディン様に情報を教えていなかったらしい。

 裏切っていた…ともいえる。

 最初は徹先輩を――今は、自分の故郷を。仕えるべき神を。

 少し、嬉しい。

 ……徹先輩を選んでくれて、嬉しい。

 そして、姉様と仲良くなってくれて……仲間になってくれて。

 

 




徹君は帰ってきたら読者に刺される(多分


感想の方で色々考察していただけると嬉しい限りです。
ですが、あまり熱くなり過ぎないように気を付けてください。
タグにもありますが、この作品は「勘違い」ものです。
原作キャラクターや主人公はもちろん、
私は読者の皆様にも勘違いしてもらえるように書いています。
皆さんでニコニコ笑って、あれじゃね? これじゃね? と、
感想欄で議論を交わしてもらう事、自分の考えを書いてもらう事が一番楽しいです。

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