とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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あけましておめでとうございます


118(会長日記)

 A月A日

 

 リアスと兵藤君が正式に付き合う事になった。

 私の所にも報告に来たが、随分と幸せそうだった。

 学園祭で告白など、青春をしているな、と思う。

 兵藤君はまだ下級悪魔だが、将来は有望な男の人でもある。リアスを幸せにしてほしい。

 彼女は、私の大切な友人だから、

 ……だが、休み時間の度に惚気るのはどうかと思う。

 今までも十分判りやすくあったが、今の彼女はどうにも――。

 まぁ、リアスが幸せならそれでいいとも思うが。

 しばらくすれば落ち着くだろう。その時にでも、からかってやるとしよう。

 上代君の方にも惚気に行っているようで、彼も溜息を吐いていた。

 お互い彼氏彼女が居ない身の上だ。しばらくは友人の惚気に耐えることになるだろう。

 

 

 

 A月B日

 

 前回のレーティングゲームの内容を気にしているようで、匙の調子があまり良くない。

 内容が内容だっただけに、フォローも難しい。眷属の子達が慰めていた。

 前回のゲームの終盤、匙の暴走でゲームは荒れに荒れた。

 『黒邪の龍王』ヴリトラ。

 強力な五大龍王の一つではあるが、今はまだ匙が完全に制御しきれていないのが現状だ。

 レーティングゲームでは切り札足り得るのだが、使いどころが難しい。

 だからこそ、面白くもある――というのは、匙に失礼だろうか?

 理詰めの計算は、自分でも得意だと思っている。

 その計算外の戦力を使うなら、自分でも計算できない結果が現れる。

 今はまだ悪い結果ばかりだが、彼ならきっとこれからプラス方向に成長してくれるだろう。

 ――匙の今後の成長に期待しよう。

 しかし、やはりというか――ドラゴンを宿しているだけに、匙にも力…そして、女性が集まるようだ。

 私の眷属の数人は、彼に恋慕の情を抱いているようだし。

 色々と複雑だ。

 ……弟の成長を見守る姉というのは、こういう心境なのかもしれない。そう思う。

 願わくば、匙が真っ直ぐ、誠実に成長してくれることを。

 

 

 

 A月C日

 

 リアスに、子供の名前の事で相談された。

 ……学校でするような会話ではなかった。絶対に。

 いったい何を考えているのか……友人として色々と複雑だ。

 今までも一番近くで兵藤君を見ていただろうに――恋人同士というのは、そこまで女を変えてしまうのだろうか?

 複雑――なのだろうか? そうなのかもしれない。

 今まで恋の一つもした事は無いが、今のリアスは凄く楽しそうだ。

 あんなリアスを見ていると、恋をするのも悪くないように想える。

 まぁ今は、私自身の夢を追いかける事で精一杯なのだが。

 上代君も同じような質問をされたようで、疲れた様子の彼は――少し笑えた。

 どうして皆は、彼を特別に見ようとするのだろう?

 ああいう姿は本当にどこにでも居る――普通の男の子なのに。

 強すぎる力というのも、考え物だと思う。

 

 しかし、彼から見て、私と匙はどのように見えているのだろうか?

 私としては匙は弟のような感じなのだが、今日上代君にふと「彼氏でも作ろうか」と言ってしまったら、どうしてか匙の名前が出てきた。

 彼は私の眷属の一人だが、恋人と見るには……少し複雑だ。

 他の眷属の皆に、あの子は好かれているのだし。

 まぁ、つまり私にはもう暫くは彼氏が出来そうもない、という事だ。

 親しい男の子と言ったら上代君と匙、兵藤君くらいだし。

 ……我ながら、随分狭い友好関係だ。

 匙は弟、兵藤君はリアスの彼氏。

 上代君は気の許せる友人――私としては、リアスと同じ親友と呼べる男性だ。

 彼が私をどんな風に見ているかは判らないが。

 

 

 

 A月D日

 

 兵藤君は、凄いな……と思う。

 彼は私が出来なかった事を、簡単に叶えてしまっている。リアスの問題を、彼が解決しているとも言える。

 だからこそ、リアスは彼に惹かれ、心を許しているのだろう。

 グレモリー一族は眷属に愛を注ぐと言われるが、彼女は兵藤君から愛を注がれているのだと思う。

 今日の昼休み、兵藤君にリアスの事をお願いした。

 これからは、彼女には私以上に彼が必要になるだろうから。

 これから、きっとリアスの周り間今以上に騒がしくなるはずだ。

 ――男と女としても、貴族としても、『王』と『兵士』としても。

 その時きっと、リアスを支えるのは兵藤君だろうから。

 

 それにしても彼は、律儀というか…堅いというか、変な所は真面目というか。

 きっと、私生活ではリアスはずっとやきもきしていたのだろうと思う。

 そう簡単に判るくらい、彼の言葉遣いというか、私への接し方は…何とも言えないものだった。

 彼はきっと、公の場でも『王』であるリアスの事を大事にするだろう。

 けど、貴族社会にとっては『王』を立てる眷属こそが重要視される。

 『王』を女として大切にする兵藤君、『王』を輝かせるために影になる眷属。

 私達がより『良い』と感じるのは後者だ。

 ……そこは、これからの彼に期待しよう。

 きっと、リアスの為に応えてくれるはずだ。

 

 

 

 A月E日

 

 今日は久しぶりにお姉様と会った。

 本当に、随分と久しぶりだった。

 しかし、聞かれる事は上代君の事ばかり。

 姉妹ではあるが、少し嫉妬してしまいそうだった。冗談だが。

 お姉様は本当に、上代君の事を好きなのか――それとも、ただ単に気に掛けているだけなのか。

 言わずもがな、だ。

 お姉様の喜怒哀楽は判りやすい。上代君の事を話している時のお姉様は、心から楽しんでいた。

 だから私も、私が知っている範囲で上代君の事をお姉様に教えてあげた。

 それにしても、私に嫉妬されても困る。

 私と上代君は友達だ。

 私としては、もう少し踏み込んだ友――親友だと思っている。

 しかし、お姉様は私の応えに不満らしく、男女で友情は成り立たない、と言っていた。

 友情よりも、愛情の方が先に立つ、と。

 そんな事は無い。私と上代君は友達だ。

 それは、私が胸を張って誇れる事だと思っている。

 だから、心配しないでほしい。

 お姉様の恋を邪魔するつもりは無い。

 

 

 

 A月F日

 

 今日から正式に、アザゼル先生が作った『人工神器』のテスターとして、私の眷属を使ってもらう事になった。

 『人工神器』も私達もまだまだ未完成だからこそ、これからまだまだ伸びる事が出来るはずだ。

 それに『神器』ほどでないにしても『人工神器』の爆発力に期待している。

 一日も早く使いこなせるよう、明日からしばらくは特訓の日々だ。

 

 しかし、その事を上代君と話していたら、羨ましがられるとは思っていなかった。

 彼は自分の『神器』をガラクタだと言っていた。

 魔王様方が認め、何度も私達を助けてくれた『神器』をガラクタだ、と断じた。

 どうしてそんな事を、と思ってしまった。

 彼にとって、あの『神器』は何なのだろう?

 魔王や堕天使、天使――海の外の神話体系の神々ですら一目置く『神器』。

 だというのに、彼にとってはただの『ガラクタ』でしかない。

 ……相変わらず、彼には秘密――というよりも、謎が多いというべきか。

 よく判らない彼だ。

 女は秘密が多い、と言ったのは誰だったか。

 けど、男の方が秘密が多い場合、どうすればいいのだろうか?

 ……お姉様の恋は前途多難だな、と思う。

 

 

 

 A月G日

 

 今日、上代君が学校を無断欠席した。

 無断欠席は初めてではないが、こういう時は上代君に何かあった時だ。

 彼は休む時はちゃんと学校へ報告する、模範的な生徒だし。

 丁度お姉様と会う事が出来たので、何があったのか聞いてみた。

 答えは知らない、という事だったが。

 お姉様が知らないとなると、悪魔が関わっていない事――か。

 何があったのだろうか? また危険な事に巻き込まれていないといいが。

 ……上代君は、よく巻き込まれるから。

 それにしても、お姉様は意地悪だ。まぁ、判っていた事だが。

 上代君を心配する私をからかってきた。

 友達なのだから、心配するのは当たり前なのに。

 お姉様の想い人を取るつもりは無いので安心してほしい。

 上代君は、私なんかには勿体無いくらい良い人だ。

 お姉様と幸せになってくれるなら、喜ばしい事だ。

 

 ――そうなると、彼をお義兄様と呼ぶことになるのか。

 くすぐったいな、上代君をお義兄様と呼ぶのは。

 そう呼んだら、どんな顔をするだろうか?

 少し楽しみだ。

 

 

 

 A月H日

 

 今日は普通に、上代君は登校してきた。

 休んだ理由は体調不良と言っていたが、どうも何か隠しているようだ。

 まぁ、彼にも色々あるのだろう、と思っておく。

 ……隠し事をされたのは、少し複雑だが。

 私も随分と、上代君に気を許してしまっていると思う。

 まったく――笑うしかない。

 上代君にだって、誰にも言いたくない事くらいあるだろう。

 私だって、上代君に言えない事はある。

 それと同じだ。

 男と女。性別の違いで話し辛い事は、それこそ沢山あるというのに。

 ――それでも、話してほしいと思うのは……我儘だろう。

 何度も助けられた。何度も相談に乗ってもらった。

 彼と話していると、疲れている時、考えに詰まってしまった時、いつも助けられていた。

 だから、私も助けたいと思うのだ。

 友達だから。当然の事だ。

 

 

 

 A月I日

 

 今日は、匙や他の眷属の子達と買い物に出かけた。

 こういう交流は今まであまりなかったので新鮮な一日だった。

 効率を考えるばかりでは駄目だとは判っているが、私はどうしても効率を重視してしまう。

 これからは、もう少し頭を柔らかくしたら、と言われた。

 ……それでは私が頭が固いような言い方だと思う。これでも、割と融通の利く『王』だと思っているのだが。

 しかし、相変わらず匙は眷属の子達から引っ張り回されていた。

 唯一の男性悪魔だし、仕方がないのかもしれない。それにあの子も、満更じゃないようだったし。

 微笑ましいものだ。

 それにしても、椿姫がリアスの『騎士』に思いを寄せているとは予想もしてなかった。

 彼女は感情を隠すのが上手なだけで、決して私が鈍い訳ではないと思う。

 どうして私があそこで、ああまで鈍いと言われなければならないのか。理解に苦しむ。

 でも、今日は楽しい一日だった。

 これからも、今日の様な時間を作っていこうと思う。

 

 

 

 A月J日

 

 上代君とリアスの眷属である塔城小猫。

 猫魈でもある彼女が、発情期に入ったらしい。

 上代君がこの前学校を休んだのは、それが関係しているらしい。

 発情期は体質なのだから、仕方がないと思う。

 それに、彼は誠実な性格だ。何か間違いがあったなら、責任を取るだろう。

 学生として、そのような間違いが無い事を願うが。生徒会長として。

 まぁ、隠し事があまり得意ではない彼だ、そんな間違いはまだ起きてないだろう。

 起きていたなら、きっと焦るかしているだろうし。

 それにしても、私の眷属たちも女の子だな、と思う。

 耳年増というか、なんというか。

 そんな事を気にする前に、自分の事を顧みるべきだと言っておいた。

 私は――今はまだ、彼氏を作る気は無い。夢を追う事で精一杯だ。

 どうしてか匙が落ち込んでいた。

 あの子もきっと、彼女が欲しいとか考えていたのだろう。

 きっと匙には良い人が見つかると思う。頑張り屋なのだから、報われるはずだ。

 

 

 

 A月K日

 

 『おっぱいドラゴンとスイッチ姫、身分違いの恋』

 リアスと兵藤君の恋は、早くもマスコミのいいネタになっているようだ。

 グレモリー家の次期当主と赤龍帝。

 冥界で子供たちに大人気の「おっぱいドラゴン」と「スイッチ姫」。

 判らなくもないが、複雑だ。

 親友の恋が、マスコミに煽られるというのは。

 ……そんな事に負けず、想いを貫いてほしい。

 兵藤君、貴方に期待しています。

 

 

 

 A月L日

 

 帰宅途中、『禍の団』英雄派の襲撃を受けた。

 相手は六人、こちらは私と匙の二人だけだったが、上代君に助けてもらった。

 といっても、上代君本人ではなく上代君の能力――傷、体力、魔力の回復……時間の巻き戻し、だが。

 しかも、私と匙の二人だけ。英雄派は傷を負い、疲労して、最後には退いていった。

 あの時は助かったとしか思わなかったが、どうして私達が襲われたと上代君は気付いたのだろうか?

 ……考えたくはないが、町全体を巻き戻しているとなると上代君の疲労は一体どれほどなのか…。

 また倒れたりしないといいが……。

 彼は、自分の身を軽く見過ぎている所がある。

 ――それでも、判っていても…助けられている私達が何を言えるわけでもないのだが。

 心配するのだ。

 もっと、自分を大切にしてほしい。

 

 

 

 A月M日

 

 リアス達は英雄派の襲撃を受けていないらしい。

 私達だけだろうか? もしかしたら、ただ単に運が悪かっただけか……そんな事は無いと思うが。

 もうしばらく様子を見ようと思う。何かあったら、アザゼル先生に相談しよう。

 ――そんな考え自体、甘いと思うが。

 リアスの傍には赤龍帝他、強力な配下が揃っている。

 だから襲撃しなかったのか。それとも、私達を襲撃した事に、何か意味があったのか。

 今はまだ判らない。

 ……単純に、私達が下に見られた…とは思いたくない。

 だが、爆発力では遠く及ばないのも事実ではある。

 その事が、悔しくもあり――私の武器は力ではなく頭なのだと、理解させられる。

 使うべきなのは配下であって力ではない。

 それが私の戦い方だ。

 明日からは、襲撃を受けてももっと上手く立ち回れるよう、考えなければならない。

 

 

 

 A月N日

 

 ……少し、混乱している。

 今日、兵藤君達の中級悪魔への昇格試験が行われた。

 行われたはずなのに――その会場が『禍の団』に襲撃された。

 リアス達は無事だったが、兵藤君は生死不明。

 ――上代君は『禍の団』によって封印された、と。

 頭が働いていないのが、自分でも判る。

 現実味が無い。

 上代君を封印するなど、出来るなど、想像だにしていなかった。

 ……それだけ、私は彼の力を過信しすぎていた、という事か。

 彼は人間だ。『神器』は特別だが、誰よりも普通を望むただの人間だ。

 そんな事、判っていたのに。

 

 リアスは大丈夫だろうか?

 あの子は、兵藤君を想っている。愛している。

 生死不明となれば、その心がどれほど傷付いているか……。

 

 

 

 A月O日

 

 リアスは今、グレモリー城で養生中のようだ。連絡が取れない。大丈夫だろうか?

 ……大丈夫ではないだろう。

 彼女の気性は私もよく知っている。

 もしいつもの彼女なら、兵藤君の無事を確かめる為に行動するはずだ。

 その彼女が動かないなら――それだけ、傷が深いのだろう。

 私が今出来る事は、何も無い。

 行動に移る時に動けるよう、親友を支えられるよう、座して待つだけだ。

 それに、私はその場に居なかったが――兵藤君がそう簡単にやられるとも思えない。

 生きている、と信じている。

 そして、上代君も。

 封印されたというのなら、封印を解けば無事という事だ――そう思う。

 甘い考えだが、今はその甘い思考に縋っている。

 ……縋らなければ、不安に押し潰されそうだから。

 

 お姉様が私の様子を見に来てくれた。

 いつも、お姉様は私が一番傍に居てほしい時に、傍に居てくれる。

 元気を分けてほしい時、声が聞きたい時――いつも来てくれる。

 だからまだ大丈夫。頑張れる。

 お姉様と、上代君の話をたくさんした。

 私は、信じている。信じられる。上代君が無事だって。上代君なら、って。

 お姉様が信じている上代君を、私も信じる事が出来る。

 彼なら、無事だと。

 友達だから。親友だから。――今私がしなければならい事は、信じる事だ。

 

 そして――今度は、私が彼を助ける番だ。

 何度も助けられた。

 だから、今度は助けたい。助けられた恩を返したい。

 

 




ドライグ「また進めなくなってしまった……温めてくれぬか?」

徹「―――」(撫で撫で

イッセー「……俺じゃないの?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アルビオン「ねーねー、ヴァーリ? おしっこして良い?」

ヴァーリ「…………」

ヴァーリ「……どう答えればいい、徹?」

徹「」


……アルビオンさんの精神崩壊が酷過ぎる…。
ブラックドラゴン繋がりのおまけ↓


匙「ヴリトラー」




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