とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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11巻が楽しみだ。


110(白猫日記)

 !月R日

 

 今日からレイナーレが居ない。グレイフィア様と一緒に冥界にあるグレモリー家へと修行に行った。

 メイドとしての仕事、そして『女王』としての仕事を覚える為。

 ……どうしてそこまで頑張れるのだろう?

 徹先輩に相応しいメイドになる為に。徹先輩に相応しい『女王』になる為に。

 姉様はそう言った。

 レイナーレがそこまで頑張れる徹先輩の魅力……少しだけ判る、かな?

 夕食…今日は姉様と二人で作った。

 徹先輩に夕食を作るのは、これで二度目だろうか?

 ずっと前、初めて会った頃、夕食を作る為に召喚された。

 あの時以来。

 ――懐かしい。

 美味しいと言ってもらえた。褒めてもらえた。

 嬉しかった。

 ……少しだけ、料理の勉強をするのも悪くないと思った。

 そう思えるのも、徹先輩の魅力かもしれない。

 

 

 

 !月S日

 

 イッセー先輩が部長と喧嘩している。

 理由は簡単で、イッセー先輩が誰も彼もを守ると言うから。

 部長も含めた全員を守ると言うから。

 ……部長は、私に似てると思う。

 きっと、私もそうなる。

 ――好きになったら、私だけを見て欲しくなる。

 そして、徹先輩も……誰も彼もを守ろうとする。

 喧嘩するだろうな。そう思った。

 私はきっと、好きになった人と喧嘩する。……そう思った。

 ヤだな…喧嘩したくないな。

 だからやっぱり、私は徹先輩を好きになりたくない。

 

 ――夕食の席で、徹先輩がイッセー先輩の事を八方美人だの、天然だの、女誑しだの言っていた。

 胸に手を当てて考えてほしい。

 もし判ってて、その上で姉様やレイナーレ、ロスヴァイセさん……それに、私。――私達を傍に置いているのなら、徹先輩はイッセー先輩以上だと思う。

 

 

 

 !月T日

 

 最近、姉様に元気がない。

 徹先輩と話していても、偶に考え込んでいる時がある。

 ……レイナーレの事を心配してる。

 姉様とレイナーレは仲が良い。羨ましいくらい。

 同じ人を好きなのに、どうしてあんなに仲が良いのだろう? 少し不思議だ。

 

 今日はロスヴァイセさんに勉強を見てもらった。

 北欧の戦乙女なのに、教師が似合うと思った。徹先輩もそう言っていた。

 というか、徹先輩は思っていた以上に真面目だ。

 『神器』があって現魔王や堕天使総督、天界に北欧。色々とコネもある。

 それだけあれば、将来は安定してると思う。

 なのに、勉強をしてる。真面目に。

 ……相変わらずよく判らない人だと思う。

 勉強会の後、姉様が拗ねていた。

 拗ねるくらいなら、徹先輩と一緒に勉強をすればいいのに。

 姉様は、変な所で奥手だ。奥手…かどうかは判らないけど。

 

 

 

 !月U日

 

 レイナーレが帰ってきた。

 何事も無くてよかった、と姉様が喜んでいた。いつも通りの関係だった。

 ……レイナーレが居ない間、ずっと心配してボーっとしていた、と伝えたらどんな反応をするだろう?

 少し気になった。

 それと、グレモリーの家ではサイラオーグ様と何度か会ったらしい。

 グレモリー眷属としての、次の相手。

 バアル家の次期当主。

 ――レイナーレの話では、強すぎてまともに戦う事すら出来なかった、と言っていた。

 レイナーレの強さは知っている。並みの上級悪魔とならそれなりに戦える、と姉様が言っていた。

 そのレイナーレがまともに戦えないほどの相手。

 ……負けたくないな、と思う。

 

 

 

 !月V日

 

 明日は、サイラオーグ様とのレーティングゲームだ。

 やれることは全部やった。

 姉様からも、大丈夫だと言ってもらえた。

 でも、レイナーレは複雑そうだった。

 グレモリーの家から帰ってきてから、レイナーレの様子が変だ。

 というよりも、私に遠慮しているような気がする。

 聞いたけど、何でもないと言われた。

 ……丸判りだけど。ロスヴァイセさんも気付いてるみたいだった。

 姉様は、私の応援をしてくれると言ってくれた。

 でも多分、レイナーレはサイラオーグ様を応援するだろうな、と思う。

 ――悲しい? 多分、そうだと思う。それか……寂しい。

 

 

 

 !月W日

 

 勝負には勝った。サイラオーグ様に、私達は勝った。グレモリー眷属は勝った。 

 でも……複雑だ。

 一番最初に脱落したのは私だから。

 足手纏いになりたくない。強くなりたい。負けたくない――そう思っても、強く望んでも、どれだけ努力しても……私はまだ、何の結果も出していない。

 疲れた、眠い。

 ――今日は、何もしたくない。

 

 

 

 !月”日

 

 家に、サイラオーグ様が来た。

 どうやら、徹先輩がまた何かやらかしたらしい。

 私は話を聞いていただけだけど、なんでもサイラオーグ様のお母様を助けたんだとか。

 最近はずっと訓練ばかりで、気にする余裕がなかった。

 ……凄いな、と思う。

 私達が必死になって、ようやく何とか勝てた相手。

 その人の信頼を、徹先輩は簡単に手に入れていた。羨ましい? 少し、羨ましい。

 誰からも信頼を得る事が出来る才能。そう言うのを徹先輩は持ってると思う。

 

 でも、助けたのはお姉様になってた。どういう事?

 聞いたら、本当に助けたのは徹先輩だけど、その事を知られたくなくて、姉様が助けた事になってるらしい。

 姉様は元だけど、テロリストだから…。その事を、考えてくれたんだろう、って。

 徹先輩が居るから誰も文句は言わないけど、やっぱり良く思われていない、悪く思われてる。

 その姉様が上級悪魔を助けた。その事が広まれば、きっと姉様の立場は少しは良くなる。

 凄いな、と思う。本当に。

 尊敬する? うん、尊敬できる。

 信頼も、出来る。

 徹先輩になら、姉様を任せられる。徹先輩なら、姉様を幸せにしてくれる。そう思える。

 ――でも、サイラオーグ様からのお礼の高級な品には少し残念そうにしてた。

 どこまで本気だったんだろう?

 そういう所は……まぁ、結構好き。もちろん、妹として。

 

 

 

 !月#日

 

 ロスヴァイセさんが、ケーキを焼いてくれた。

 サイラオーグ様が持ってきてくれた果物でだ。とても美味しかった。

 姉様も喜んで、褒めていた。

 徹先輩の周りは、やっぱり笑顔が多い。

 ……素敵だと思う。

 その周りの内の一人に、自分が加わっている――あまり、実感はないけど。

 私は笑えているだろうか? 判らない。

 自分の心を持て余している。偶に、自分で自分が判らなくなる。

 今日も――また、甘えてしまった。

 徹先輩の隣は、居心地が良い。徹先輩の傍は、温かくなれる。

 ずっと一緒に居られたら、ずっと傍に居られたら…溺れてしまいそう。

 私は、徹先輩が好き? うん、好きだ。姉様を助けてくれた、救ってくれた、居場所をくれた。

 もっと沢山、好きになった理由がある。

 でも私の好きは、姉様とは違う。同じじゃ駄目。そういう好き。

 好きだけど、好きじゃない。よく判らない好きが、私の好き。

 それでいいと思う。

 

 

 

 !月$日

 

 徹先輩と一緒に帰った。

 夜遅く、学園祭の準備を終わらせて、並んで帰った。

 ……私は、それくらいで良い。

 徹先輩の隣じゃなくて、ただああやって、偶に一緒に居られるだけで良い。

 抱き締めてもらえなくても、抱き締める事が出来なくても。

 それでいい、と思えた。

 徹先輩に、恋人を作らないのか、と聞いてみた。

 付き合ってくれる人が居ない、って言っていた。

 そんな事は無いと思う。徹先輩は素敵な人だ。

 優しいし、気配りが出来るし、温かいし、隣に居るだけで――それだけでいいと、そう思える。

 そんな人を、私は徹先輩以外に知らない。

 姉様――姉様には、徹先輩が必要だと思う。

 私はまぁ、きっといつか良い人が見つかるかもしれないし。

 でも、姉様には、きっと徹先輩しかいない。

 姉様は、徹先輩以外を選ばない。そう思う。

 

 ……でも、やっぱり――徹先輩が姉様と一緒に笑っていると、少し苦しい。

 姉様を取られたから? きっとそうだ。そのはずだ。…そうに決まってる。

 

 

 

 !月%日

 

 徹先輩に嘘を吐いた。

 ……嘘とも言えない様な、小さな言葉遊び。意味の無い、何の価値も無い嘘。

 徹先輩の運命の人。

 占ったのは本当。自信もある。

 でも、徹先輩の恋愛運は、普通だった。良くもなく、悪くもなく。

 だから、嘘を吐いた。

 運命の人。特別な人。徹先輩にとって、特別になる人。

 近いうちに出逢える。

 出逢う。もしくは――気付くか。

 もう少し言葉を選べばよかったと後悔している。どうしてか、徹先輩と話すと緊張してしまう。目を合わせると、声を聞くと、鼓動を感じると……思考が纏まらなくなる。

 少しだけの後悔。

 それは、私のお膳立て。

 徹先輩が好き? 好きだった。それでいい。

 先輩の運命の人は私じゃない。姉様かもしれない、レイナーレかもしれない、ロスヴァイセさんかもしれない。他の誰かかもしれない。

 でも、私じゃない。

 

 

 




明日はDOD3の発売日。後は判るな……?
連続投稿が途切れたらごめんなさい☆(テヘペロ

作品の時期ってどれくらいなんでしょうね?
まぁ、夏休み終わってすぐ修学旅行があってるから…今は10月くらい?
クリスマスに何か書きたいなぁ。なんとなく。

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