何を言って(ry
+月A日
今日はグリゼルダ達が家に来た。と言っても、別に特別な用は無かったんだけど。
普通にお茶を飲んで、話して、帰っていった。
まぁ、警戒しすぎてる私が悪いんだけどね。グリゼルダはともかく、他の天界のメンバーには嫌な思いをさせちゃったかも。グリゼルダはほら、多分私のあんな態度に慣れてる。
レイナーレから慰められた。ちぇ。
……トオルと一緒に暮らしてると、周りを疑ってばかりの私が間違ってるみたい。
そりゃ、私だって誰も疑わないで、皆を信じて暮らすのが楽だと思う。
でもさ、世界は結構悪意に満ちてるのだ。その辺りは、レイナーレも少し疎い。多分、『神の子を見張る者』に居た時は周りを疑うことなく生きてたんだろうなぁ、って思う。
白音も警戒心が薄い。姉妹でこうも違うなんて、今までの生活の差かにゃー。まぁ、良い事なんだけどね? 白音には、綺麗な世界で生きてほしいもん。
トオルなんて、無条件に周りを信じてる所がある。
というか、自分を殺したレイナーレや、テロリストだって判った私を傍に置くなんて、どうかしてる。
――それに、ロスヴァイセも。
ほんと、私のご主人様は優しすぎるにゃー。
そういう所が好きなんだけど。ぅにゃん。
でも、そうやって私が悩んでるっていうのに、トオル君と白音ちゃんは学校で仲良くしちゃってるとか。おねーちゃん怒っちゃうよ?
罰として、家に帰ってきたトオルに、ずっと抱き着いてやった。あったかかった。
トオルは本当に温かいね。ぽかぽかした気分になれる。
それに白音やレイナーレに優しくしてくれたら、私にも優しくしてくれる。誰かを特別にしたりしない。
……そういうのって、誰も彼も出来ないと思うんだ。
そんな所も大好き。
ロスヴァイセのヤツに止められるまで、今日はトオルを堪能できたにゃー。
――でも、どうしようね?
あの戦乙女…どこまで信用していいのやら。
困っちゃうにゃー。
+月B日
レイナーレが最近、いつも以上に訓練を頑張ってる。
たぶん、偽物の神槍を使うコツが判ってきたから、訓練が楽しいんだろうと思う。
自分の努力の結晶。成果の証。そういうものだもんね、あの槍は。今までずっと足手纏いみたいな立場だったのに、少しは戦力になれるって判った。戦力になれる力を手に入れた。
判らなくもない。
私も、新しい術とか覚えたら嬉しくなる。
……でも、ちょっとオーバーワーク気味かな? 倒れるほどじゃないけど。
そんなことまで気にしてあげる私って、本当に丸くなったよねぇ、って思った。
白音に愚痴ると、喜ばれたけど。ちょっと恥ずかしかった。
私の妹は可愛いにゃー。
それにしても、アザゼル。あの堕天使総督。
トオルになんて物を渡してるんだ、と。
グレイプニル。貪り食うもの。フェンリルとの戦いで用意した物の余りだろうけど…。
あんな強力なモノ、争いの種にしかならないって言うのに……。
それをスコルとハティのリードにするのってどうなんだろ? トオルって偶に、突拍子もない事するよね。
まぁ、良いんだけど。これであの二匹も、少しは大人しくなるだろうし。
いざとなった時、手元にあれば私やレイナーレでも使えるし。
特に、レイナーレには身を守る道具はありがたい。『人工神器』は盾だが、脆い。
上級悪魔クラスが相手だと直撃を避けるだけで壊れそうだし。
まぁ、グレイプニルは拘束用の道具なんだけど。
その辺りの使い方も、いろいろ考えないとにゃー。
あー…やる事が多い。黒歌さんが一番働いてるんじゃないかにゃ?
+月C日
今日は、グレモリー家のお茶会にトオルが呼ばれた。私達も一緒にだけど。
やっぱり貴族様は、良いお茶を飲んで、お菓子を食べてるんだにゃー。結構美味しかった。
でも、私はトオルが作ってくれたケーキとか、レイナーレのご飯が美味しいにゃん。
アレだね。私多分、貴族生活とか無理だと思う。贅沢したい、っとも思わないし。
そこはレイナーレも同じみたい。
でも、貴族は見栄も大事なんだってさ。私には判らない世界だにゃー。
それにしても、今日は珍しい相手とも会った。
サイラオーグ・バアル。
バアル家の次期当主。バアル家の特色である『滅びの力』を持たない悪魔。
努力で『力』を手に入れた男。
しかも、悪魔にしては珍しく、礼儀正しい。人間のトオルに挨拶をちゃんとしてた。
トオルは握手だけで限界みたいだったけど。そういう所は、本当にただの人間だよねー。
その後、途中から来た赤龍帝と殴り合ってた。
……そういうのが好きなんだ。よく判った。
トオルに興味を示さなかったのも頷ける。殴り合いが好きなんだね、アイツ。
その後、態とレイナーレを挑発してた。
トオルに殺気を向けて、レイナーレの反応を見てた。
あの男にとっては、トオルよりもレイナーレの方が目に映ったみたい。
それが良い事かどうかは判らないけど。
……トオルを狙った訳じゃないって判ってる。だから、私は受け止められた。
でもレイナーレはそうじゃなかったみたい。
怒ってた。珍しく、口に出すくらい怒ってた。
――若いにゃぁ。でも、挑発に乗らなかったからいいや。
今のレイナーレじゃ、サイラオーグ・バアルどころか赤龍帝にも勝てないだろうし。というか、私でも勝てるかどうか怪しい。アレは、そういうバケモノだ。
今日は舐められた。なら今度、舐められないようにしよう。
+月D日
今日はアーシアが遊びに来た。なんでも、もうすぐ修学旅行だから、お土産は何が良いか、だって。
良い子だにゃー。
なのにどうして、女好きの赤龍帝を好きになるのか……まぁ、良い所もあるんだろうけどさ。
優しくされる事に慣れてないレイナーレが照れてた。あまりに可愛かったんで、トオルと一緒にからかっちゃった。
しょうがないにゃー。可愛いレイナーレが悪い。うん。
+月E日
トオルったら、失礼しちゃうよね?
京都と言ったらなんだろう? で、色々案が出たんだけど。
私に木刀が似合うって何? 私はそんなに物騒に見えるのかにゃ?
冗談でも、普通にショックだ……明日から、少しお淑やかにしよう。多分無理だろうけど。
あと、格好良いは女の子の褒め言葉じゃない。そんな事を言われて喜ぶ女の子なんて居な――くはないだろうけど、少ないよ、トオル?
ほんと、女の子の扱いが下手だよね。
それに付き合う、私も私なんだけどさ。
冗談が通じる私が好きだって言われたけど……素直に喜べないよ、トオル?
まぁ、好きって言われたのは嬉しいんだけど。
その一言で許しちゃう私って、甘いよね。
……惚れた弱味って、こういう事なのかにゃー?
+月F日
美猴が遊びに来た。誰かのお供で来たらしいけど、教えてくれなかった。
誰かにゃー? まぁ、面倒事なら、ああやって顔を出しにも来ないと思うけど。
ちょっと気になるにゃー。最近は『禍の団』の情報も集まらないし、少し不安かも。
まぁ、ヴァーリや美猴なら、トオルじゃなくて赤龍帝みたいなのの方に興味が向くだろうけど。
この前会ったサイラオーグ・バアルとか。
それにしても、美猴ってこの家に馴染んでるよね。
スコルとハティも吠えないし。
というかあの二匹って、誰に吼えるんだろう? ロキと戦った時と、私とロスヴァイセには吠えるけど。
……私もロスヴァイセもこの家に住んでるんだけどにゃー。あの馬鹿犬。
+月G日
今日は、ヴァーリとルフェイが遊びに来た。
京都で『禍の団』の一派が行動を起こしそうだから気を付けろ、って忠告しに来た。
珍しいにゃー。ヴァーリってそういう事は気にしないと思ってた。
トオルのこと、少しは気に入ってくれてるのかにゃ? だと嬉しいにゃー。
それにしてもルフェイ…あんまり趣味に文句は言いたくないけど、「おっぱいドラゴン」が好きなのはどうかと思うよ?
もう少し…ねぇ? アレは女の子が好きになって良いテレビじゃないにゃ。
私も、トオルと一緒じゃなかったら見ないもん。
それにしても、戦隊物の特撮に、トオルはまだ出てこない。
映画だと出てたのに。サタンシルバー。
アレは笑えた。レイナーレも笑ってた。あの時のトオル、ノリノリだったもんね。
その話をすると、トオルが拗ねるけど。後、部屋に閉じこもる。そういう所も可愛いんだにゃー。
それにしても、アルビオンは不憫だにゃー……。
ルフェイも、もう少しアルビオンに優しくしてあげてもいいと思うにゃ。
今日も、トオルがアルビオンの愚痴を聞いてた。
トオル、ドラゴンのカウンセラーにでもなったら? なんちゃって。
+月H日
今日から数日、ロスヴァイセが居ない。京都へ修学旅行へ行った。
ちょっと気が楽だにゃー。
レイナーレから注意された。一緒に住んでるんだから、って。
……まぁ、判ってるんだけどね。
判ってても、ロスヴァイセは北欧の主神――あの年寄りの使いだ。信用できない。
トオルに害をなすかは判らないけど、仲間だと決めつける事は出来ない。
――レイナーレが言う事も判る。信頼を得るには信頼しないといけないってのも。
レイナーレが信頼してくれたから、私もレイナーレを信頼した。
手を伸ばしてくれたから、私も手を伸ばした。
白音に聞いたら、白音からも仲良くしてほしいって言われちゃった。
難しいね。
ホント――難しい。
+月I日
グレイフィアが来て、レイナーレを連れていった。
なんでも、鍛えてくれるんだって。ありがたいね。戦い方なら、私よりもよっぽど教えるの上手だしね、魔王の『女王』は。
それに同じ『女王』だし、心構えみたいなものも教えてほしい。
……まぁ、過保護なのは私も自覚してる。
だがそれは、グレイフィアも同じだと思う。
――私もグレイフィアも、レイナーレに期待している。
才能が無い彼女だからこそ、何処まで強くなれるか期待している。
レイナーレにとっては、いい迷惑かもしれないけどにゃー。
それにしても、レイナーレは何時も大変だにゃー。
掃除洗濯、家事……ホント、私の『女王』様はなんでもできるよね。
それも、グレイフィアの教育のお蔭なんだけど。
私は戦い方しか教えられないから、ちょっと嫉妬しちゃいそう。
冥界から帰ってきたら、少し優しくしてあげようと思う。飴と鞭ってヤツ? そんな感じ。
まぁでも、もう少しグレイフィアと楽しんできてもいいかにゃ?
トオルと二人でキッチンに並ぶのって、結構新鮮。ああいうのもいいね。
二人で一緒に料理を作るとか、なんか新婚みたい? にゃん。
+月J日
ホント、運が良いのか悪いのか……。
冥界でなにか問題が起きたみたい。丁度、レイナーレが居る時に。
グレイフィアとかグレモリー家で対応したみたいだけど、その問題にレイナーレも関わったって。
グレイフィアから謝られた。危険だったみたい。
……生きて帰ってきてくれてよかったよ、レイナーレ。
もう、心配かけて……。
強くなったのを実感してるのは判る。力を試したいのも判る。
足手纏いになりたくない気持ち――判るよ。
でも、無茶をするのは違う。レイナーレはまだ弱い。強くなったけど、まだ弱い。
戦場じゃ、誰だって死ぬ。でも、弱い人から死ぬのが常だ。
そう言った。傷付けるって判ってたけど、言った。
グレイフィアから、グレモリー家の人達から褒められたのを知ってる。それだけ努力した。努力が実った。強くなった。私はレイナーレを近くで見てたから、誰よりも判ってるつもり。強くなったよ、レイナーレ。でも……。
――泣いてるだろうか? 泣いてるかもしれない。彼女は泣き虫だから。
でも…私が言わないといけなかった。
トオルが無茶をしないで、と言ってもレイナーレは聞かなかった。なら、私が言わないといけない。
そのためにグレイフィアは、レイナーレを帰したんだと思う。この家に。トオルの家に。これは、私達の問題だから。
グレイフィアがレイナーレを鍛えてくれるのは善意だ。
だからって、そこまで甘えられないよね。
善意に甘えてたら、トオルに相応しい眷属とは言えない。
+月K日
レイナーレ。色々思う所はあるだろうけど、少なくとも普通だった。
ロスヴァイセも帰ってきたし……また、家の中は元通り。
……だと良いにゃー。
京都でも何かあったみたいで、ロスヴァイセが疲れ切っていた。
もう、どうして問題っていつも重なるのかな?
まぁ、京都の方はヴァーリ達…っていうか、ルフェイが手を貸してくれたみたいだけど。
それにアザゼルも居たしね。
赤龍帝も色々と成長したみたいだし、終わり良ければすべて良し、と言えるのかにゃ?
取り敢えず、だけど。
色々と問題は山積みだ。
動いたのは『英雄派』……曹操を筆頭に、英雄の子孫達。
いつか戦う事になるのかにゃー? ……面倒は嫌いだ。
ロスヴァイセにお帰り、って言うと驚かれた。
似合って無いのは判ってるけど、あそこまで驚かれると傷付くにゃー。
人見知りの激しい猫だって、本当に優しい人には歩み寄るものだにゃ。
……まぁ、今までが今までだから信用してもらえないんだろうけど。
ロスヴァイセ。貴女は優しい? 確かめてあげる。
+月L日
レイナーレから謝られた。私も謝った。
あの時は、私も頭に血が昇ってたし。
一緒に強くなろうね、レイナーレ。白音も――ロスヴァイセも。
強くならないといけない。でも、無茶はしないでほしい。
そう思う私は我儘だ。
無茶をしなければトオルの傍に居られないのを判ってる。
トオルと一緒に居ると言うのは、そういう事だ。
今日は訓練は無し、家事も私がした。レイナーレにはのんびりしてもらった。
そういう時間も大切なんだ、って教えたかった。まぁ、知ってたかもしれないけど。
それでも今日は、のんびりしてもらった。
この前冥界で頑張ったご褒美だにゃん。
メイド服も結構いいもんだね。動きやすい。
今度、メイド服を着てからトオルに迫ってみようかな? なんちゃって。
+月M日
グリゼルダがレイナーレを心配してた。
天界の方でも、この前の冥界と京都の件は把握してたみたい。
まぁ、修学旅行には天使も行ってたしね。紫藤なんとかって天使。
名前は忘れたにゃ。
それにしても、ホントに天界側は騒動に関わって来ない。関わっても、赤龍帝と一緒に居る紫藤なんとかだけだにゃ。
何を考えてるんだか……こんな考えばかりしかない自分が嫌になりそう。
+月N日
白音も色々と悩んでるんだねぇ。お姉ちゃん、嬉しいよ。
レイナーレが『グングニル』って結果を出したから、それに焦ってるみたい。
いいよね、そういう関係。
研鑽し合う、っていうのかな? ライバルとか。そんな感じ。
微笑ましいね。仲が良いのは変わらないし、喧嘩をしてるわけでもない。
でもちょっとギスギスしてて、白音がレイナーレに勝負を挑んでた。
勝ったのは白音だけど、納得できてない顔だったね。そのまま私に挑んできたけど、返り討ちにしちゃった。
白音は強い。仙術も妖術も、覚えるスピードがレイナーレとは段違いだ。流石私の妹。
でも、レイナーレには悪魔の魔法に北欧の魔術、白音よりも引き出しが多い。
最近やっと、少しだけその引き出しを生かせるようになってきてた。
ホント、少しだけだけど。
いいね。きっと二人とも強くなれるよ。
――私達も負けてられないよ、ロスヴァイセ?
まぁ、そのロスヴァイセ。京都では曹操と戦った時は酔っぱらってたみたい。
ちょっと笑っちゃった。
結構面白い人だったりするのかにゃ? ロスヴァイセって。
でも、トオルは喜んでた。怪我をするよりよっぽどいい、って。
なんかトオルらしい答えで嬉しかった。見栄とか栄誉とかより、仲間の心配を出来るから。そんな優しいトオルだから――嬉しいんだよ?
でも、無理をしないでって言ってた中に、私と白音が入ってないのはどうしてかにゃー?
トオル君、その辺りも相変わらずだね。
黒歌さんも無茶するよ? 無理するよ? トオルに心配かけさせちゃうよ?
……なんちゃって。嘘。
トオルの悲しい顔とか見たくないから、無茶も無理も……多分しないから。
+月O日
昨日の夜、ちょっと人肌が恋しくなっちゃった。
なんというか、どうしようもないくらいトオルが欲しくなっちゃった。
まぁ、寝てたから何もしてないんだけどね? 一緒に寝たくらい。隣で。
私って心配性だよね。
昨日の話。無理をしないでって――トオルにも言える事だよ?
まったく……ホント、困ったご主人様だ。
そんな心配をしてる私を怒るなんて、酷いご主人様でもあるんだにゃー。
白音とロスヴァイセに怒られた。判ってたけどね。でも、止められないんだにゃ。
寂しい夜に大好きな人の温もりを求めるのは、女の本能なのだ。なんちゃって
白音はともかく――最近のロスヴァイセ、少しは私に話しかけてくるようになった。
少しだけだけど…また、私の周りは賑やかになった。
……楽しいね。ホントに楽しいよ。
こんな日が、いつまでも続けばいいのに……。
英雄派って、空気が読める人はいるのかにゃ? 私達の幸せを邪魔しないでほしいにゃー。
絵の力って怖い(ぇ
メイド黒歌が可愛すぎて書いた。でも、メイド黒歌は少ししか出てなかったりする。
この場を借りて、朽木_様、本当にありがとうございますっ。
次は誰を書くかなー。