魔法先生ネギま！ 白面ノ皇帝(ハクメンノオウ) 作：ZERO(ゼロ）
「……クソッ」
ホテル嵐山を出て外を散歩するサイは小さくそんな言葉を呟く。
エヴァから言われた『戦力外』だと言う通告、そして『役立たず』の烙印。
表立っては気にする素振りも見せていなかったがその内面は実に複雑だった。
「どうしろってんだよ―――
俺は、俺は戦う以外の事なんて何も出来ねぇ……それ以外の事なんて、考えた事もなかった。
そんな俺が戦う事が出来なくて、何の意味があるってんだよ……クソがっ」
『自暴自棄』とでも言うべきか？
今まで戦い続けて来れたのは、言うなれば己の不死に近い再生能力と圧倒的な法力のお陰だった。
少なくともそれだけではないのだが、現在の力を失ったにほぼ同じなサイにとっては同義だ。
戦場では戦えない者は足手纏いに過ぎない。
今まで生きてきて、完全に記憶は戻らぬにせよその事実は深く刻み込まれている。
だが頭で解っていても、心と言う奴がその事実を認めたがらないのだ。
戦う事しか出来ないと思い込んでいるサイにとっては。
「クソッ！！ 何が魔法だ、何が呪術だ、何が護るだ、何が任せろだっ！！
結局、俺は自分の力じゃ何も出来ねぇじゃねぇか―――テメェで何一つも成せねぇ俺が、何を偉そうに解った振りしてたんだ！！」
空に向かって己の不甲斐なさを愚痴るサイ。
しかしその叫ぶかのような愚痴が、新たな厄介事を舞い込ませる事となった。
「……魔法？ そのフレーズを知っていると言う事は、君は関係者かい？
しかしおかしいな、確か君のような人物が居る事は彼女達の報告に無かった筈だが？」
「……！？ 誰だ！？」
いきなり声がした事に驚き、声のした暗闇の方を見るサイ。
そこからはゆっくりと白髪の見るからに冷たい目付きをしたサイと外見的には同年代の少年が現れた。
一目見れば理解出来る、その冷たい目の人物は只者ではない―――しかも先ほどの言葉から味方ではないだろうし、所謂“魔法関係者”と言う奴だろうと思われる。
「何だテメェは、何モンだ？」
「やあ初めまして……まあ僕は今日は見学に来ただけさ、身構えないで貰えると有難いんだが？」
少年はまるで人形のように表情一つ変えずに淡々と呟く。
その姿は言い表すのならまさに“氷の如く”と言っても間違いが無い程に冷たい気配を滲ませていた。
ふと、其処で先程のこの少年の言葉に今の状況的に考えても“かなり厄介な存在”だと言う事をサイは悟る。
「―――そうか、テメェは魔法使いって奴だな？
それにその口ぶりやさっきの言葉から考えて見れば、昼間の騒ぎはテメェ等が原因って訳か？」
「魔法使いかと言う質問については肯定しよう。
昼間の騒ぎと言う奴は僕が原因ではないが、今の状況を垣間見れば僕達が原因と言う事になるだろうね。
フム……気配から察するに恐らく君は魔法使いではないのだろう？ ならば関わり合いになるのは止す事だ、死にたくはないだろ？」
口調も表情も無表情のまま一切変わらない不気味な人物だ。
だが、少なくとも最後の一言を呟いた瞬間―――目の前の少年の雰囲気が一挙に変わった。
今までとは違い明確な殺意のようなものまで発している、どうやらこの人物は面倒をしたくないタイプなのだろう。
しかし、そんな挑発とも侮蔑とも取れる言葉に怖気付くサイではない。
戦力差は歴然、おまけにサイ自身は殆どの力が使えないほぼ人間と同じ状態―――だがそれでも彼は敵を前にして背を向けて逃げる様な事はしない。
「そう言われて『ハイ、そうですか』と尻尾巻いて逃げるように見えるか？」
サイの手にはいつの間にか七魂剣スサノオが握られている。
予めバッグの中に召喚しておいたものを呼び寄せたのだろう、その事に法力は使わない。
だが、氷のような少年はその姿を一瞥すると呟く。
「ふーん、成る程……君は恐らく僕との実力差を理解しているだろうのにやる気かい？
剣の構え方や足取りなんかを見れば素人ではないようだけど、その程度の気で戦おうと言うのなら止めておいた方が良い」
「五月蝿ぇな、やってみなきゃ解らねぇだろうが！！ 魔法は秘匿しなきゃならねぇモンなんだろ、だったら場所変えようぜ」
サイの言葉に一瞬だけ何か考えるような素振りを見せる少年。
しかし直ぐに『そんな訳が無いな』と一言だけ呟くと、ある方向を指差す。
「向こうに人払いの為の結界を張った場所がある……本来ならば別の用途で使う心算だったのだが、まあ良いさ」
少年はその言葉が終わると直ぐに歩き出す。
その後をサイもまた続き、二人は少年が用意したとされる結界の中に消える。
結界の張られた空間の中で対峙する二人―――其処でふと、白髪の少年がサイに質問を投げかけた。
「そうだ、二つ聞きたい事があるんだけど良いかい？」
「……あん？ 何だよ」
一方のサイはいきなり質問を投げかけられた事に疑問を持ちながらもそれに応じた。
「君はもしや親や兄弟に裏の世界に精通した者は居ないかな？ 僕はかつて君と同じような目をした漢と戦った事があるような気がするのでね」
「……居ねぇな、そもそも俺には肉親なんぞ居ねぇ……当の昔に全員鬼籍(死亡)に入ってらぁ、今は家族の様な連中は居るがな」
サイの返しに少年は『……やはり関係ないか』と小さく呟く。
「もう一つの質問は君の名前を聞いておきたい」
「俺の名は光明司斉だ、つうか人に名を尋ねるなら先にテメェが名乗るのが礼儀じゃねぇのか？」
サイの口ぶりに少年は表情の無いまま呟く。
「僕にはそんな礼儀はどうでも良い、そもそも此処で再起不能になって表舞台から去る事になる君が知る必要など無い」
言い終わった瞬間に少年の周りの空気が一気に変化した。
まるで氷雨に降られたかのようにサイの全身から鳥肌が立ち、全身の毛がまるで獣のように逆立つ。
実力差は理解していた心算だが、目の前の少年がエヴァクラスの実力の持ち主だとサイは改めて認識させられる。
だが相手が何であれサイは態度は決して変えない。
「粋がるんじゃねぇよ三下が―――だったらテメェは最後まで黙ってろ！！
その代わりに俺の名前を忘れるんじゃねぇ！！ テメェをぶっ潰す俺の名前をなぁ！！！」
サイもまた怒気を放ち少年を見据える。
その瞬間、まるで烈火の如く荒々しい闘気がサイ自身から放たれた。
闘気はまるでそれそのものが意思を持つかのように形を代え、サイの全身を包み二本の尾のようなものまで作り出していたのだ。
これこそはサイが法力によって生み出された九尾の内の二尾、サイ自身が本気になった証拠である。
―――だが相手どころか己自身まで傷つけそうな荒々しい気配は一体何なのか？ その問いに答えれる者など此処には居まい。
「ほう、それは気でも魔法でもない不思議な力だ……成る程ね、君の正体は不明だが少なくとも一般人ではないようだ」
少年もまたサイの異質な力に気付いている。
だが大して驚いた表情もせずに彼も魔力を解放した―――禍々しく、エヴァとはまた違った剣呑な魔力を。
「行くぞオラァ！！ 白面九尾派導術 初之伝 焔術・装炎烈火！！」
掛け声と共に七魂剣の平を撫でると、かつて茶々丸をドロールから助けた時と同じく刃に炎が灯る。
しかしこの炎は前とは違い、より激しく、より荒々しく燃え盛っていた―――まるで今のサイを象徴するかの如く。
「刃に炎を灯す、か―――武器に魔法によって付加を与える物とは違う……その力も魔法とは違うようだ、本当に良く解らないね君は」
そんな台詞など無視し、刃を思いっきり振り下ろすサイ。
しかし―――刃は少年に当たる事なく、まるで見えない壁があるように少年の眼前で止まっていた。
「何っ！？」
「ふむ、中々の威力だ―――だけど“その程度”の攻撃では僕の障壁は破れないよ」
呟くや否や、サイの目の前に手を翳す少年。
「石の槍(ドリュ・ペトラス)」
「グッ、何だと！？」
危険を察知して咄嗟に手の平から頭を逸らす。
その瞬間、サイの頭のあった場所に隆起した鋭利な石の槍のようなものが通り抜ける。
「本気(マジ)かよ、なんつうスピードだ」
一瞬でも避けるのが遅ければ確実にサイの脳髄を少年の作り出した石の槍が貫いていただろう。
対して少年は攻撃を避けたサイに敢えて驚きも何もせずにバックステップで距離を取った。
「少しは魔法使い相手の戦闘には慣れているようだね。
でも所詮君はそれだけだ―――それ以上もそれ以下も無い取るに足らない存在だとでも言った所かな？」
「あんだとテメェ！！ だったら今すぐ吠え面かかせてやらぁ！！」
まるで猪のように炎を纏った七魂剣を手に斬りかかるサイ、明らかに冷静さを欠いている。
しかしこの様相はいつもの彼とは違い過ぎる、エヴァに『麻帆良から離れては力が使えない』と言われた事が余程効いているのだろう。
いや寧ろ―――戦えないという事が彼の心に闇を落としていた。
「“猪突猛進”とは、まさに今の君の様な人物の事を言うのだろうね」
いきなり地から隆起してきた槍―――動物的な勘によって急所は避けられるが、それはサイの足を捉えた。
「クソッ、馬鹿な―――魔法ってのは呪文を唱えなきゃ使えねぇんじゃねえのか！？
そうか……成る程な、こいつがキティの言ってた“無詠唱魔法”って奴かよ……」
かつてエヴァと修行をしていたある日に教えられた事。
本来、魔法使いは魔法を放つ為に『詠唱』という呪文を唱えなければ魔法を放てないと教えてくれた時があった。
しかし上位の魔法使いになれば呪文自体を短くする事が出来、更に最上位まで行けば呪文を唱える事無く魔法を放つ“無詠唱魔法”という物が使えると教えられた。
……という事は、無詠唱魔法を使えるこの少年は外見は別としても間違いなく上位の方の魔法使いという事だ。
「意外に博識だね、無詠唱魔法の事を知っているなんて。
だが残念だが僕のこれは無詠唱魔法ではない―――(ボソッ)―――まあ、君に教える義理も無いがね」
その瞬間、隆起した岩から先ほど少年の手の平から放たれたような石の槍が発生してサイの脇腹を抉る。
「クソが、舐めたマネしやがって！！ オラァァァァ！！！！
(何だ？ 今一瞬だけだが野郎の言葉の間に聞こえなかった小さな声があったような気がするが)」
一瞬だけ会話中に間があった事に疑問を持つサイ。
だが、直ぐに疑問を忘れると脇腹を片手で押さえながらも有り得ない攻撃角度から刃を振り下ろす。
完全に奇襲のような攻撃だった為、本来ならその刃が少年の胸を切り裂いている筈だが。
―――“ガキィィィィィン！！”
そんな音と共に、少年の手がサイの七魂剣の刃を止めていた。
「君の戦い方は猪突猛進に見せながら変則的だ、危うく切り裂かれる所だったよ。
だが悲しいかな無駄だね、さっきも言った通りその程度の力で僕の障壁は破れない。
未知の力だと思って楽しめると思ったが、どうやら完全に期待外れの様だ」
無表情に、無常に、冷酷に少年は言った。
●
それからどれだけの時が過ぎただろうか？
何度も何度も攻撃を仕掛けても攻撃を読まれるか、届いたとしても魔法障壁を貫く事は叶わないまま。
「はあっ……はあっ……はあっ……」
苦しそうに肩で息をするサイ。
先程から全力で何合も斬撃を放ち続けているというのに相手は息一つ乱れていない。
それとは逆にサイの方は片膝を地につき、手で押さえている脇腹や足などから血が流れ落ち、大地を赤黒く染めていた。
「そろそろ解ったかな、無駄だという事が。
僕としては未知の力の程度を見終わったから君にはもう興味が無い、悪いけどこの舞台からは退場して貰うよ」
「ふざけんなよテメェ！！
まだだ、まだ俺の心は折れちゃ居ねぇぞ―――ウオオオォォォォォォォ！！！！」
よろよろと力無く立ち上がり、斬りかかろうとするサイ。
しかしその前にサイを打ち払うかの如く、一気に間合いを詰めて少年は高速パンチを出した。
まともに攻撃を喰らって血溜まりに倒れ付すが、再び強引に立ち上がろうとする。
そんなサイの姿を見た少年は表情は変えないが明らかに侮蔑の念を表す。
「下らないね、僕に当てる事も出来ないと言うのに言葉だけは実に立派な物だ。
君では無理だよ、僕の障壁を打ち破る力も無い君ではね……何故そこまでして僕と戦おうとするんだい？」
ふと少年は疑問に思った。
何故此処までして、この『光明司斉』と名乗った人物は戦うのかと。
実力の違いが理解出来ないような愚者ではない事は理解出来る、ならば何故？
そんな人形のような存在の彼は初めて他人への疑問を持った。
「五月蝿ぇな、力の差が明確だろうが何だろうが知った事か！！
俺はテメェを俺だけの力でブッ倒して証明しなきゃならねぇんだよ！！ じゃなきゃ俺は……」
再び立とうとするサイ―――そうだ、証明しなければならない。
戦う事しか出来ない己が唯一出来る事は己自身の力でこの人物を倒し、足手纏いになどはならないと。
だが彼は勘違いしている、己に起こった最悪の状態によって前が見えなくなっていた。
独りで出来る事など高が知れている―――あんなにもネギに諭すように言っていた己の誇りを忘れていたのだ。
其処で冷めた目でサイを見ていた少年は思う。
『このしつこい人物が居ては計画の邪魔になる』―――それを理解した少年は完全に彼を舞台から下ろす為に初めて詠唱を唱え始めた。
「悪いが僕もいつまでも君に関わっている暇など無いのでね、これで終わりとさせて貰おう。
ヴィシュ・タル リ・シュタル ヴァンゲイト―――
小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ その光、我が手に宿し災いなる眼差しで射よ―――
(バーシリスケ・ガレオーテ・メタ・コークト・ポドーン・カイ・カコイン・オンマトイン・ト・フォース・エメーイ・ケイリ・カティアース・トーイ・カコーイ・デルグマティ・トクセウサトー)
『石化の邪眼(カコン・オンマ・ペトローセオース)』！！」
少年の指先から放たれる禍々しき紫の光がサイを貫く。
すると貫かれた部分から見る見るうちにサイの身体が石化し始めたのだ。
「なっ、クソが！！ クソ、クソクソクソっ―――俺は、俺にはまだ……」
瞬く間に喉まで石化し、後は耳と目が残るのみ。
本来のサイなら魔法を『能力無効化(アビリティキャンセラー)』で無効化出来る筈だが、法力の殆どを封印されてしまっている今の状態では無理だ。
「まあ、期待外れとは言えほんの少しは楽しませてくれた礼だ。
一応痛みも無く、苦しみも無く、そのまま舞台から退場出来る筈だよ―――さて、後はチグサがコノエコノカを攫うのを待つだけ、か」
全てが石化し、意識が消えていく中で最後に聞こえたのはその言葉だった―――
●
～Side ？？？？～
「此処は……何処だ……？」
何も無い、何も存在しない、何も見えない光のみの世界。
そんな世界の中でサイは唯独り、力無く倒れていた―――
「そうか……俺は、死んだのか。
結局俺は何も出来ないまま、無駄に命を散らしたってか……全く、滑稽過ぎて涙も出やしねぇぜ」
力無く呟く姿はいつものサイからは想像出来ない。
いや、ある意味では彼は『こうなる事』をどこかで望んでいたような気がする。
失われた記憶の奥底で、もしくは無意識に“思い出したくない”と願っている過去が関係して―――
「……やはり俺には無理だったんだ。
大切なものをその手から全て零しちまった俺が、誰かを護ろうなんて度台無理な話だったって事さ。
それにキティの奴に訳知り顔で散々説教した俺が自分の力だけに固執して意地張って……そんな奴が勝てる訳ねぇんだ。
そんな事、当の昔から解ってた筈なんだ……馬鹿だよな、俺は……テメェの事だけ考えて、何も理解出来てねぇガキに何かを成すなんて事が出来る筈ねぇよ、な……」
自暴自棄のように己を卑下し、遠い目をするサイ。
もう立ち上がる必要は無い―――このままゆっくりと目を閉じれば全てが終わる。
そんな風に考えて、彼はゆっくりと目を閉じようとした。
―――まさに、その時だった。
『オイオイ、もう諦めんのかよお前？ そんなんじゃ何の為に俺達はお前の為に身体張ったってんだよ？』
目を瞑ろうとしたサイの耳に響いたのはどこか懐かしい声。
懐かしさにゆっくりと目を開くと其処には赤い鎧を纏う、白い翼の生えた青年が立っていた。
「―――誰だ、お前？」
『誰だってのは失礼だなお前は、全く。
まああんだけの事があったんだから思い出せねぇのもしょうがねぇが、まあそれは良いや―――それよりお前、こんな所で死んじまう心算かよ？』
やけに馴れ馴れしい人物だ。
だがその人物に会った瞬間、サイは何故か目を放せなくなっていた……しかも懐かしさのような物が胸に木霊する。
「しょうがねぇだろ、身体が動かねぇんだ……もう俺は限界なんだろうよ、誰だか知らねぇが放っといてくれよ」
身体が一切動かない。
死んだなどと認めたくなど無い、だが身体が言う事を聞かなかった。
そんな彼に対して赤い鎧の翼を生やした青年は肩を竦め、不意に真面目な表情になると口を開く。
『何時からお前はそんなにひ弱になったんだ？ そんな寝言を言ってたら、お前と一緒に居る俺達はどうすりゃ良いんだよサイ』
「……俺と……一緒に居る？」
何の事か解らない―――だが、その言葉に自然と心引かれたサイは聞き返す。
その瞬間、倒れているサイを中心にいくつもの眩い光の柱が現れる。
光に目が眩んで眼を瞑るサイ。
光が収まった後に目を開くと、其処には赤い鎧の青年以外の人影があった。
『そうですよ、サイさん……私(わたくし)達は何時だって貴方と一緒に居ます。
それにそんな顔をしないで下さいな、私は前にも言ったように弱い殿方に仕える心算はありませんわよ』
緑の髪の穏やかそうな少女が微笑みながら呟く。
『アンタは本っ当にバカよねぇ、自分勝手に独りなんて勘違いして。
アタシ達がさ、アンタを一人ぼっちにする筈ないじゃない……見えないし、聞こえないけどさ、こうやってアタシ達が居るのは感じられる筈よ？』
勝気そうな表情で笑う少女がそう続けた。
『貴様は私の認めた男だと前にも言った筈だ。
こんな所で立ち止まっている時間があったら、さっさと目を覚まして前を向いて歩め』
獅子のような鎧を纏った人物も静かに笑いながら呟く。
『卿は我輩を倒した誇り高き猛者である筈ぞ？ この常闇の王たる我輩の目が狂っているなどと言う事は在り得ぬわ馬鹿者め』
美麗な顔立ちをした吸血王と呼ばれた人物も言う。
『そうですよ、サイ。
それに私達だけではありません、あの戦いで散った多くの者達は貴方と共に居ます。
貴方は独りで多くの事を背負おうとしていますが、共に居る者達がいる事を思い出してください』
青い髪の聡明そうな女性がどこか心配するような表情でサイに諭す。
そんな人物たちの表情を見ると大切な事を思い出せそうなのだが、そのもどかしさにサイは困惑しながら呟く。
「……だから無理だって、もう俺には立つ力も残っちゃ居ねぇよ……このまま大人しく、死―――」
言葉を続けようとした時、誰かの言葉が被せられた。
『サイ殿、それは違う……貴公はまだ死んでは居ない。
それに我等は皆、戦いの中で負けるなどと思った事は無いではござらんか……信念の強さこそが人の、そして魂獣の本当の強さなのだから』
黄金の鎧を纏う銀腕の騎士がそう語る。
『死とは終わりではない。
今は思い出せぬだろうが、貴様が苦しむ必要などありはしない。
俺達は己の意思で貴様を歩ませる事を選んだのだ―――そして貴様と言う漢の為だからこそ、俺達は心安らかに逝ったのだから』
青き竜を象った鎧を纏う武人が静かに呟く。
『……故……貴殿ハ……マダ……死ンデハ……ナラヌ。
立チ……止マルナ……前ヲ……向ケ……倒レテモ……横道ニ……逸レテモ……良イ……ダガ……最後ノ、最後マデ……生ヲ……諦メ……ルナ……』
黒き闇のような気を纏う死神のような人物もまたそう呟いた。
そして、其処でサイを誰かの手が掴んでゆっくりと立ち上がらせる。
『ほら、早く起きてください―――もう今度は何も奪わせないのですよね？ ならば、この様な所で伏していては駄目ですよ』
天使のような可憐な女性騎士がそう言いながら優しく微笑む。
『そうだそうだサイ！！ オレ達はお前を信じて進み続けたんだぞ、そんなお前が自分を信じないでど～すんだよバカ！！』
小柄で活発そうな獣人の少女がサイに向かって叫ぶ。
『さあ顔を上げてサイ君、かつてのあの時のように。
そして思い出してよ―――僕達が慕い、己自身の意思で見つけた君の“道”をさ』
少年のような少女のような中性的なローブの人物が人懐っこい笑顔を出して何も無い所を指差す。
すると其処には今まで存在しなかった道のようなものが現れていた。
「道、か……そうだ、俺は……俺はかつて気付いたじゃねぇか。
多くの仲間や大切な奴等に見守られて、この“道”を歩いてきた事を―――そしてどんなに強くなっても、力を得ても、独りじゃ意味が無いという事を」
今まで力の入らなかった手足に力が篭る。
ゆっくりと立ち上がるとサイは本当に大事な事を“思い出した”。
思えば自然と目を背けていたのかもしれない。
もう二度と会えない戦友達の記憶を、失った悲しみを、何もする事の出来なかった不甲斐無さを、向けるべき先のない怒りを思い出す事を。
だが違う―――失ってなどない、二度と会えない等と言う事もない。
何故なら戦友達は……サイが家族のように思い、何よりも大事だった戦友達は、何時だって共に居たのだから。
自らと一つとなり、自らの心の中に生き続けているのだから―――
「どんなに強くなったって、お前等が居なきゃ意味が無かった。
そしていつでもお前等は俺と共に居てくれた、何でそんな大事な事を俺は忘れていたんだろうな」
確りと己の足で立ち上がったサイ。
そんな彼の前に七魂剣スサノオと六道拳アスラを持った手が差し出される。
『―――見せてみろサイ、我が誇り高き戦友(とも)よ。
お前が見つけ、一度失い……再び思い出したお前の誇りを、そしてその生き様を……』
煌天の騎神と呼ばれ友でありライバルであった男の差し出した七魂剣と六道拳を受け取る。
六道拳を手に装着し、七魂剣を腰に帯刀するとサイは前を向いた……もう下を向かないように、後ろを振り向かないように、立ち止まらない為に。
そんなサイの背を誰かが愛しそうに優しく抱いた。
いや誰かではない、サイにはもうそれが誰だかは気がついている―――何よりも大切な戦友であり、サイが心から愛した一人の少女だという事を。
『……サイ、忘れないで。
私達が貴方の生きた証だよ―――見えなくなっても、命を失っても、私達はずっと傍に居る。
貴方と一緒に多くの物を見て、多くの物を感じてる……だから自分は独りだなんて思っちゃダメ。
それに今度こそは絶対護るんでしょ？ 大丈夫、今の貴方なら絶対に出来るって私達は信じてるから……』
一度だけサイは肩を抱いてきた人物の手に触れる。
ほんの少しの時間が流れた後に風車の簪を付けた少女がサイから手を放す。
ゆっくりと立ち上がったサイは目元を擦ると、一度だけ後ろを振り返ると笑いながら呟いた。
「ありがとう、ムジナ。
ルーグ、メルト、デヒテラ、カヌキ、ロック、ダレス、ミツキ、アガート、キリク、ギギ、ユーナ、ボルト、バエル……俺は行くよ、俺の信じた道を貫く為に―――」
言い終わるともうサイは後ろを振り返らず歩き出す―――この道の終点、もう一度己の生き様を貫く為に。
彼の後姿を笑って見つめる少女達……姿はだんだんと薄くなり、いつしかその輪郭もぼやけ、宝石のような丸い様々な色の石の姿となった。
其々色取り取りに輝く石は背中からサイに吸い込まれていく。
その全てサイに吸い込まれた後、サイの腰に帯刀する七魂剣の柄に虹色に光る宝珠のような物が装着されていた。
～Side out～
●
石化したサイを一瞥すると背を向けて歩き出す少年、これ以上関わるのは時間の無駄と彼は思ったのだろう。
元々今回は関西呪術協会のある人物に雇われた身の上だ、勝手な事ばかりしていては依頼人(クライアント)に文句を言われてしまう。
そう思ったまさに次の瞬間だった。
異様なまでの覇気を背に感じた白髪の少年は驚いたかの如く肩を震わせる。
「……！？」
圧倒的な、それこそ彼が今迄感じた事すら稀有な覇気を感じ振り向く少年。
其処で彼が見たものは、目を覆いたくなるまでの強烈な光が石化した筈のサイから放たれている姿だった。
「馬鹿な、有り得ない……完全に石化している筈だ、動く事すら間々ならない筈だと言うのに……？」
だが少年の目の前で起こっているのは紛れも無い現実だ。
光と共に皹が入っていく石像―――皹から放たれる光の本流が石像の全身を包んだ時、天をも貫く程の声が放たれた。
「罨 有摩那天狗 数万騎 娑婆訶
(オン・アロマヤテング・スマンキ・ソワカ)
罨 毘羅毘羅欠 毘羅欠曩 南無 娑婆訶
(オン・ヒラヒラケン・ヒラケンノウ・ナム・ソワカ)
南無大天狗 小天狗 有摩那天狗 数万騎天狗 来臨影向
(ナムダイテング ショウテング アロマヤテング スマンキテング ライリンエイゴウ)
悪魔退散 諸願成就 悉地円満 随念擁護 怨敵降伏 一切成就乃加持
(アクマタイサン ショガンジョウジュ シッチエンマン ズイネンヨウゴ オンテキコウフク イッサイジョウジュノカジ)
下劣畜生・邪見即正乃道理―――故其理 滅尽滅相相成
(ゲレツチクショウ・ジャケンソクジョウノドウリ―――ユエソノコトワリ メツジンメッソウトアイナラン)
地・水・火・風・空 五行 偏在 金剛界尊 今遍凶光 滅相奉
(バサラダトバン・ナウマク・サマンダ・ボダナン・アビラ・ウン・ケン・ソワカ)
天地玄妙神辺変通力離 唯我曼荼羅・無量大数―――」
(テンチゲンミョウシンペンヘンツウリキリ ユイガマンダラ・ムリョウダイスウ)
魂獣解放と似ているがまた違う詠唱を唱え終わるとサイは再び叫ぶ。
「―――魂鎧装(ソウルアップ)！！！！！！」
瞬間、天を切り裂くかのような刃の軌跡が少年を襲う。
気付いた少年はそれを避けようとするが避け切れず頬を斬風が撫でる。
「……何！？ 僕が……避け、切れなかっただと……！？」
刃の軌跡は少年の頬を捉えた。
完全に避ける筈だったのだが攻撃の方が一瞬早く、少年は斬られた頬を押さえる。
そしてその目に映ったのは白い狐を象った鎧のような物を身に纏うサイの姿だった。
「何だ、この光は……何だ、この威圧感は？ 君は一体、何者なんだ……？」
少年の疑問も理解出来る。
その外装、その強大な力、震える程の威圧感―――片目のみ紅く光り輝く姿。
極めて異質としか言えない外見を見れば、少年の困惑の意味も理解出来よう―――
「皆が教えてくれた……大切なモノを護る為に戦う事の意味を、強さを、独りじゃないと言う事を。
例え貴様が強かろうとも、例えこの力が封じられていようとも、俺は最後の一太刀まで己が信念を貫き戦う。
それが俺の―――光明司斉の生き様だからな！！」
手に携える七魂剣から放たれる力は今までの比ではない。
荒々しき劫火は輝き燃える烈光となり、その気配すらも先ほどまでとは全く違う。
「行くぜ若白髪！！ この刃、今のテメェが受け止められっか！！！ ウオオオオオォォォォォォォォォ！！！！！！！」
まるで光自体が意思を持っているかのように閃光の渦となり刃に纏われる。
明らかに先程まで彼の使っていた荒々しいだけで半端な攻撃とは段違いなのは理解出来た。
「クッ……拙い、この攻撃を喰らっては……！！」
バックステップで距離を取り魔法を放とうとする少年。
手から放たれるのは散々サイを苦しめた魔法『石の槍(ドリュ・ペトラス)』―――しかし、地から隆起した石の槍はサイの光剣の一振りで根元から消滅した。
「馬鹿な、僕の魔法を消し飛ばすだと……？ 本当に何者なんだい……君は」
表情は今までと同じく無感情のまま。
だが間違いなくその雰囲気は今のサイの力に脅威を感じている事は明白だ。
「覚えとけ若白髪！！ 俺の名は白面大帝サイ！！
かつて世界を護り明日を俺に託し、散っていった多くの戦友達が居た！！
その戦友達の想いを、俺自身の貫く信念を……テメェ如きの魔法なんぞで止められるなどと勝手に思うんじゃねぇぞ、この三下がぁぁぁぁぁぁ！！！！！！！」
サイの構えた刃から放たれる最上級の技。
かつて鬼神と恐れられたサイの祖母が使い、そしてサイに受け継がれた奥義。
一撃に全力を乗せ、目の前の少年の障壁をぶち破らんと放たれた。
「火群流奥義―――不動神剣・八幡大菩薩(はちまんだいぼさつ)！！！！！！」
「なっ！？ 馬鹿な、僕の障壁が！？」
驚愕の声と共に巨大な衝撃音、閃光が放たれる―――辺りは光と土煙に覆われ、どちらの姿も見えない。
しかしこれ程の衝撃が周囲に放たれたのならば、あの白髪の少年がいかに有力者であっても無傷ではいられまい……しかし土煙の中から声が響く。
「ふう、実に驚いたね……まさかそんな切り札があるとは思わなかったよ。
それに先ほどの言葉は訂正させてもらおう、その未知な力や君自身に僕は少し興味が涌いた」
土煙が起こっている所為で少年の姿は見えない。
口調は今までと同じく淡々としていて先程までと全く変わらないようだ。
「今回は此方から引き上げさせて貰おう。
あぁそうだ、先程は君に興味が無かった為に無礼をしたが其処も此処で訂正させてもらうよ。
僕の名はフェイト……フェイト・アーウェルンクス、戦士に対しての礼儀だ」
一度言葉を切ると『フェイト』と名乗った少年は再び口を開く。
「今回の争い事は多分、君には関係の無い事だ……だがそれでもこの戦いの舞台に残るというのならば、また会おう」
その言葉を最後にフェイトの気配は消えた。
やがて土煙も収まり、サイは取り合えず今回の戦いが終わった事を実感する。
「……ヤレヤレ、全く……まさかキティクラスの化物が敵側に付いてるとは思わなかったぜ。
今回は不意を付いたお陰と相手の心変わりで撤退させられた、いや“見逃された”ようなモンだな―――寧ろ、命を救われたのはこっちだ」
其処でサイは立ち上がると天を仰ぐ
その眼差しは最初の時のように自分の力を失った不甲斐無さに焦っていた時とは違い、何処までも真っ直ぐないつものサイの眼差しだ。
「……上等だ、何度でも来いよ。
俺はもう、自分の目の前から何も奪わせたりなんぞしねぇ……それが俺の“信念”だ。
そして……散っていったあいつ等への俺の誓いだ」
強敵との出会い、そして思い出した戦友達との約束。
その二つの事態を胸に秘め、新たなる能力を思い出したサイは決意を新たにする。
―――遂に此処より、本格的な京都での戦いが始まったのであった。
第二十六話の投稿完了致しました
今回の所は原作で言う所の『最初の関西呪術協会の襲撃』の裏舞台って所ですかね
解らない方のために説明しておけば、一日目にネギの不注意で木乃香を攫われてしまった所です
関西側の強敵であるフェイトとの最初のバトルは結果としてはサイが勝ちましたが、内容的にはフェイトの圧勝でしょうね
手も足も出ずにボコボコにされ、サイは一度石化されてしまいました―――しかしエヴァの時と同じく過去の記憶を思い出し、能力を覚醒させた事により九死に一生を得たと言った所でしょう
ちなみにこの覚醒の仕方、エヴァの時と似ていますが意図的なものですんで
ではでは、次回へと続きます
尚、題名の『Stand By Me』は意味を解る方も居るでしょうが一応
これは訳せば『傍に居て欲しい』や『自分の支えになって欲しい』と言う意味
ビートルズの楽曲や同名の映画、最近なんかは映画のドラえもんの副題などで使われてます
能力解説：『桃華・黄泉還り(とうか・よもつがえり)』
サイ自身が『瀕死の者に魂獣の魂の欠片を定着させて半魂獣化させる』と勘違いしているが実際は違う
本来の能力は『受けた致死攻撃のダメージを生命力に変えて死界から帰還させる』というのがこの能力の正体
唱えている古事記の『神産み』の一部は勘違いしている能力を使う際に必要なもの
本当の方はサイの無意識下において行使されていると言うのが真相
(サイが死ぬ程の攻撃を受けても死なずに強化され、後々に冬眠状態になるのは受けた致死攻撃のエネルギーを取り込んで自分の生命力と変える為であり、要は余剰分を自らの戦闘力として解放している)
この能力の根底にはサイ自身の失われた過去の戦友達との約束の一つの『どんな事があっても生きる』と言う強い意志が関わってる故
サイ自身の『自分の為に散って逝った戦友達の為にも簡単には死ねない(＝極端に言えば『生きたい』や『死にたくない』と言う人間が誰でも持つ本能)』が骨子
“至極単純”であり“極当たり前”であるが故に誰もが根底に念頭を置く程までにで願わない意思の具現とでも言うべきだろう
つまり“死ぬ訳には行かない”“生きたい”と言う意思そのものが“死ぬ訳には行かないからこそ黄泉返れ”という渇望へと変わり、サイ自身の内に無意識下に存在する法力(要は生命力そのもの)を変質させている
言うなればこれは『奇を衒った意思(渇望)ばかりが希少ではないと言う一例』
実質の所、この能力がある限りサイはエヴァとはまた違った文字通り『不死身』だと言っても間違いではない
ただし肉体的損傷は当たり前に被る為、死に至る程の傷を負っても死ねないという拷問に等しい難点もある
故に無意識ながら使用には心身面で甚大な負荷が掛かる為か食らう死が強大である程に元通りの彼に戻れる保証はない、平たく言えば常にサイ自身のみは発狂の危険が付き纏う
また副次的能力とは言え瀕死の他者への黄泉還りには相応の代償(サイ自身の生命力)が必要であり、能力を使えば使う程に更に心身共に負荷が掛かる
(黄泉還り＝TVゲームの蘇生などとは違い『死界からの無理矢理な帰還』であるが故
ちなみに『瀕死者への魂の欠片の魂獣化による定着』や『能力の覚醒』などと言うのは所詮はこの能力のおまけに過ぎず、寧ろ強烈なまでの不死性こそが本質)
元ネタはPCゲームメーカー『Light』の代表作
『神座シリーズ三部作』の最終作品である『神咒神威神楽』の主人公の一人、坂上覇吐の能力
詠唱は同作品の『唯我曼荼羅・射干』と『卍曼荼羅・無量大数』の複合
元ネタは『祈祷秘経・天狗経』の一部と『光明真言』の一部を変えたオリジナル
尚、この能力は全てを記すには時間が掛かるので簡単に説明すると『唯我(つまり孤独)の力』が骨子となっている
自分が独りではないと思い出したサイが唱えるには実に皮肉な詠唱と言えるだろう
『魂鎧装(ソウルアップ)』
サイの思い出した魂獣としての能力の一つ。
サイ自身の法力(この場合は敵の攻撃によって得た生命力の余剰分も含む)を鎧として身に纏い、戦闘に適した能力を得る技法
魂獣解放(スピリッツバースト)と同じように思えるが、魂獣解放が『内にある法力を全解放して爆発的な戦闘力を得る技法』だとすれば魂鎧装は『法力を大気中の気と融合させ武装として具現化出来る技法』
その為二つには其々の利点・欠点が存在する
魂獣解放
利点：爆発的で圧倒的な戦闘力を使用者に与える
欠点：全法力を消費する為に短時間しか使用出来ず、解除された後は法力が回復するまで使用不可能
魂鎧装
利点：法力を武装に変える為、法力を消費する事無く長時間戦える
欠点：魂獣解放のように法力を消費して肉体強化するものではない為に使用者自身の能力に左右される
まあ要は短期決戦なら魂獣解放、長期戦なら魂鎧装と言った所
ちなみにこの二つ＋魂獣武装を合わせて解放する事も可能だが、その場合は更に解放していられる時間は短くなり、身体自体に大きなしっぺ返しも受けてしまう