ぶれない台風と共に歩く   作:テフロン

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全4話編成の第10章の1話目です。
10章は、萃夢想の前のお話になります。


第十章 繋いだ手、灯した光、見えてきた明日
失った半分、輝いたもう半分


 幻想郷中に春が戻った。異変が解決され、白玉楼に集まっていた春が幻想郷全体に還元された。

 今住んでいる博麗神社も春を手に入れ、植えられていた桜がこれでもかというほどに満開に咲き誇っている。

 残念ながらつぼみが花開く過程がなかったため、移り変わりを愛でる時間は全くなかった。一気に咲いてしまった花の寿命は全体の半分になってしまっているだろうが、その分の命を燃やすようにより濃い色合いを見せていた。

 

 

「椛、お疲れ様」

 

「和友さんもお疲れ様でした」

 

 

 今、花見という名の宴会の真っ最中である。異変が終われば、仲直りという名目で宴会が開かれる。僕からすれば、仲直りというよりは交流会に近い気がするけれども、おそらく参加者はそんなことを気にしていないはずである。

 参加者は、霊夢、異変を起こした白玉楼の主従、紫、藍、橙、椛、そしてなぜか霊夢の友人、紅魔館の主であるレミリアと咲夜さんも来ていた。

 

 

「紅魔館の人たちや霊夢の友達は、知らないところで異変に関わっていたのかな?」

 

「そうみたいですね」

 

 

 それぞれが各々に好きな場所で談笑に花を咲かせている。

 霊夢のところには紫をはじめとした八雲家の面々が、紅魔館の人たちは今回の異変の首謀者である白玉楼の者たちと異変についての対話をしていた。

 それに対して僕と椛は、ひっそりとたたずみながら近づいてきた人と言葉を交わしていた。特にこちらから話をしてみたい人がいるわけではないし、紫や藍とはまた別の機会に静かに話がしたかったというのもある。そして何よりも名前も覚えていない人に対してこちらから会話を持ち掛けるのが(はばか)られたからだった。

 

 

「和友ちゃん、こっちこっち。こっちにいらっしゃい」

 

「はい。今向かいます」

 

 

 あ、呼ばれた――不意に名前を呼ばれる。呼ばれた声の方向に視界を向けると、そこには空の器をふらふらと揺らしている女性の姿があった。

 ちゃん付けで呼ばれることに若干の恥ずかしさを感じながら、呼ばれた声に即座に反応し、置いてあるお酒を抱えて移動する。

 後方からは、椛がてくてくと足音を立てながら付いてきた。

 

 

「ここに座って。椛ちゃんは妖夢の隣に行って」

 

 

 なぜか、座る場所まで限定される。

 ただ、断る理由もなかった僕はその言葉に従い腰を下ろした。

 正面から見ると左から白玉楼の主、僕、従者、椛の並びになっている。

 僕は、持ってきたお酒を相手の手の中にある傾けられた器に注ぐ。トクトクと音を立てて器にお酒が満たされていく。そして、器に7割ほど注いだところで傾けていた酒瓶を持ち上げ、ひと声かけた。

 

 

「お疲れ様でした」

 

「ふふ、妖夢以外にこうしてお酒を注がれるのもいいものね」

 

 

 注いだお酒が一気に飲み干される。

 一気飲みはよくないってよく聞くが、大丈夫なのだろうか。そんなことを考えながら周りを見渡してみると、霊夢が顔を紅潮させながら酔っているのが確認できた。

 

 

「なんであんたは飲んでないのよ。あんたも飲みなさい」

 

「私ですか……? 藍様、私も飲んでもいいのでしょうか?」

 

「霊夢、橙にお酒を勧めるのは止めろ! 代わりに私が付き合ってやるから。それでいいだろう?」

 

「あー、あんたはそこまで飲まなくていいわ」

 

「なんだ、その言い草は……急に真面目になったな。一体何がしたいのだ?」

 

 

 藍がお酒に酔って絡んでくる霊夢の対応に追われている。そんな藍の頬も僅かに赤くなっている。赤くなる度合いには個人差があるようだったけど、僕が見てきた中では顔が全く赤くならない人は今までいなかった。

 だけど、その例外が目の前にいる。先ほど呼ばれた人の頬を見てみると、真っ白な頬はいまだに真っ白なままだった。

 

 

「お酒はいつ飲んでも美味しいわね~」

 

「私を呼んだということは、何か御用でしょうか?」

 

「あっと、お酒に気を取られて忘れるところだったわ。和友ちゃんはまだ私たちの名前を覚えていないでしょう? 書いてきたからこれで覚えてね」

 

「私からもどうぞ」

 

 

 そう言って、白玉楼に住まう二人から短冊を手渡される。

 短冊には、今まで見た中で最も綺麗な字で西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)と明記されていた。従者の方の名前は、魂魄妖夢(こんぱくようむ)と言うらしい。また難しい漢字の多い名前である。振り仮名がふっていなかったら読めなかったかもしれない。

 そう思った瞬間、疑問が頭の中に湧いて出た。

 紙に名前を表記し、手渡してきたこと。

 読めない漢字に対して振り仮名があること。

 この二つの要素が、ある可能性を示唆している。

 名前とその読み方、それは僕が人を区別するうえで必要になるものである。

 そしてそれは、普通ならば口頭で説明される内容だ。

 

 

「どうして私が名前を覚えていないと?」

 

「紫から聞いているから。物事を区別できないとか、普段どういう方法で覚えているかとか、そこらへんもろもろね」

 

 

 異変の時にも感じたが、紫との関係性は相当に深いようである。聞いている限り、僕の情報はある程度開示されているみたいだ。

 思えば、紫がこうして僕とうまく付き合えていたのは、西行寺さんのような友人がいたからだったのかもしれない。辛いこと、苦しいこと、楽しいこと、嬉しいこと、そういうものを共有できる者がいるということ――それはきっと藍や椛にはなかったことだから。

 横の繋がりが心を繋ぎ止めてくれる。外の世界で生活していたときに、僕にもそういう存在がいたら何かが変わっていたのかも――そんなことを思った。

 そんな、あり得ないことを考えて、考えるのを止めた。

 

 

「それに、私のことは幽々子って呼んでくれればいいわ。気軽にいつも通りの口調で喋ってちょうだい。気を遣われるのも気を遣うのも億劫だもの」

 

 

 幽々子と呼んで欲しいと言った相手は、そこまで言うと急に右の人差し指を頬にあてて少し考えるしぐさを見せる。数秒が経過したころだろうか、悩ましげな表情は何かを思いついた顔に変わった。

 

 

「そうね、私が和友ちゃんって呼んでいるみたいに、幽々子ちゃんでもいいわ」

 

「それではお言葉に甘えて。幽々子ちゃんは幽霊なの? 冥界には死者しかいないって聞いたからそうなのかなって思ったんだけど……僕、幽霊を見るのが初めてで判断できなくて」

 

「ぷっ、幽々子ちゃんって」

 

 

 幽々子ちゃんの正面で紫が飲んでいたお酒を吹き出す。すぐさままるで何事もなかったように表情を戻すと慌てて口元を吹いているが、少し汚くなっている。

 何かおかしいことでも言ったかなと思い、とりあえず一番近くにいる左隣の魂魄さんに視線を向けてみた。魂魄さんは唖然としたまま見つめているだけで何も言おうとしない。さらには、その隣にいる椛も信じられないようなものを見るような瞳でこちらを見つめていた。

 何か失敗しただろうか――幽々子ちゃんに視線を向けてみると、幽々子ちゃんは悶々とした表情で言葉を口にした。

 

 

「……やっぱり幽々子ちゃんは止めてもらえるかしら?」

 

「どうしてですか?」

 

「何だか背中がむず痒くてぞわぞわしちゃうから。それにこのまま呼ばれ続けたら紫に弄られちゃうでしょ? 妖夢も随分と私のことを笑っているようだし……」

 

「え、ええ!?」

 

 

 いきなりの会話の対象の軌道修正で魂魄さんの顔が驚きでいっぱいになる。

 しかし、驚いていたのも束の間だった。魂魄さんは、先ほどのことなどなかったかのようにキリっとした表情ではっきりと明言した。

 

 

「私が幽々子様のことを笑うなんて、そんな失礼なことは致しません!」

 

「本当にそうかしら?」

 

 

 幽々子は、疑問をこぼしながら僕の正座している足に手を置いて妖夢の顔を覗き込む。

 どうして僕の膝に手を置いたのだろうか。並び的には仕方ないことかもしれないが、膝の上に乗った手が若干の冷たさを伝えてくる。そう、体温が奪われている。

 幽霊は体温が低いのだろうか。血が通っていないからか、死体が冷たくなるのと同じように体温が空気と同化している。ちょうど20℃程度だろうか。

 不思議だ、幽霊という存在に頭の中が活気づく。だとしたら――妖夢と呼ばれている彼女の幽霊も同じなのだろうか。それとも彼女自身もそうなのだろうか。そう思って視線を向けてみると、魂魄さんは困った表情のまま一生懸命両手をぶんぶんと振っていた。

 

 

「本当ですから!」

 

「ふーん」

 

 

 幽々子が僕の膝に手をついたまま、流し目で僕の顔を見つめてくる。そして、僕の視線が交わるのを確認すると言葉の矛先を向けてきた。

 

 

「それはそうと……私があの紅白の蝶と戦っている間に強い力の波動を感じたのだけど、あの力の大本は和友ちゃんよね? あれが噂に聞く神力ってやつなのかしら?」

 

 

 幽々子は、どうやら藍と戦っていた僕たちの様子が気になっていたらしい。強い力の波動――きっと祈りを捧げることで生まれるあの力のことだろう。そこまでは幽々子が言っていることの見当がついた。

 しかし、噂になっているのかはさておき――僕には神力という言葉にピンとくるものがまるでなかった。いつも使っているのは霊力だし、それ以外の力を使っている印象があっても、それが神力だと断定できなかった。

 

 

「あれが神力かどうかについては確かめる術がないから分からないけど、僕がやったんだと思うよ。あの時、力を使っていた者は他にいなかったから」

 

「だったらそれ、私にもできる?」

 

「できないと思う。僕は幽々子のことをあまり知らないし……条件が揃えばできるけど、多分今の状態ですぐにやろうというのは無理があると思うよ」

 

 

 祈りを捧げるという行為は簡単なようで難しい。手を合わせて信じるだけではないのかって言われると、やっていることはそれだけではあるのだが、その本質は複雑である。

 祈る――その行為の本質は願いを叶えて欲しいという想いである。

 助けてほしいのか。救ってほしいのか。どうなりたいのか。どうしたいのか。

 それらの願望を届けるのが祈るという行為である。

 そして、祈りを捧げている祈願者の想いを受け取っているのが俗に言う神様だ。

 神と呼ばれるモノは、祈りに縛られている。人間の祈りから生まれている存在のため、祈りを叶えることが存在理由になっているのである。多数の人間から祈られているのならまだ「そこにあること」それ自体を存在理由として持つこともできるだろうけど、僕一人の祈りで作られた神様は僕の願いに対して遵守する義務が生まれる。そうでなくては神として成り立たないからだ。

 つまり何が言いたいのかというと、幽々子の願望と僕の願望が一致しなければ祈りは通らないということである。僕から幽々子に対して本心から望んでいることが全くない現状で、幽々子が何をしたいのか分からない状況では、祈るという行為そのものを同じにすることは不可能だった。

 

 

「条件が揃えば、ってことはできないこともないのね」

 

 

 だがそれは、お互いの願望を聞きさえすれば、同じことができるというのと同義である。誰であろうと、何であろうと、願望が一致すれば神を作ることができる。

 それを察したのか、幽々子は僕に対して質問を投げかけてきた。

 

 

「ここで条件を満たせるかしら?」

 

「少しだけ質問、いいですか?」

 

「なんでもいいわよ。和友ちゃんの質問ならなんでも素直に答えてあげる」

 

 

 幽々子が満面の笑みを浮かべ、さらに距離を詰めてくる。角度的に少し上目使いになりながらすぐそこまで迫っている。

 死んだ相手に何を言っているのかって思われるかもしれないけど、彼女の表情には確かな色があって、瞳には感情の灯が輝いているように見えた。

 

 

「僕から力を貰って幽々子がやりたいことって何かな? そもそも、どうして僕に祈ってほしいの?」

 

「んー、そうねぇ……興味本位が9割かしら。どんな力なのか、どういう印象を感じるのか、どんな気分になるのか。祈って欲しいのは好奇心からね。やりたいことは、そうね……」

 

 

 幽々子の人差し指がゆっくりと伸びて、僕の心臓に当てられる。

 なんだか息苦しさを感じる。

 まるで心臓をわしづかみにされているような――刺された指が突き立てられているような気がした。

 そっと息を飲んで視線を落とすと、若干艶めかしく感じる視線が射抜くように僕を貫いている。膝に置かれている手は未だに退く様子を見せない。そんな少しばかり緊迫した状況の中で瑞々(みずみず)しい唇が僅かに開かれる。

 そこから放たれた言葉は――今の空気を完全に殺した。

 

 

「和友ちゃんの魂の色が見たいわ」

 

 

 一言の響きで―――全員の視線が僕に集まる。

 何かあったのか。何が起きたのか。いきなり空気が変わった空間に全員の意識が集中している。

 だが、その渦中のど真ん中にいた僕にあったのは、困惑の色だけだった。まるで今までがなかったかのように変わってしまった今に、楽しかったはずの宴会が変わってしまった現状に、集まった視線の矛先に動揺する。

 何をすればいいのだろうか。

 魂の色が見たいという願望に対して――僕は何をすれば。

 そう思っていたら、真剣な表情をした紫が正面から割り込んだ。

 

 

「幽々子」

 

 

 名前を読んだだけなのに、凄まじい威圧感がその背後から漏れ出していた。

 少しばかり震えている唇から出た声は、怒っているようにも、悲しんでいるようにも聞こえた。

 けれども、幽々子は紫の言葉を気にしていない様子でさらに語りかけてくる。

 

 

「だって反魂蝶があんなに惹きつけられていたのよ。さぞかし綺麗に輝いているのでしょうね。私もその魂の輝きが見てみたいの。紫は和友ちゃんの心の中を見たことがあるみたいだけど?」

 

「幽々子!」

 

 

 紫の声が、想いが強くなるのに比例するように大きくなる。

 怒気が強まり、感情が顔に表れている。

 今にも立ち上がり、手を伸ばしそうな雰囲気を纏っている。

 それでも、幽々子は気にする様子を見せずに距離を縮めてきた。

 

 

「幽霊になるのだってそんなに悪いことじゃないわ。痛くしないから、優しくしてあげるから、いいでしょう?」

 

「そんなことをしたら、私は一生幽々子を許さないから」

 

 

 禍々しさを感じる妖力が紫の体から僅かに漏れ出している。

 幽々子はそこで初めて紫の存在に気づいたようににこやかにほほ笑むと、突き刺していた手を引き、距離を取った。

 

 

「うふふ、冗談よ、冗談。紫は一度怒らせると中々機嫌が直らないから大変なのよねぇ~」

 

 

 ふざけたように軽快な雰囲気で話す幽々子の声色に空気が息を吹き返す。相変わらず紫から送られる視線は鋭いままだが、出ていた威圧感は息を潜めていた。

 なんだったのだろうか。何が起きていたのだろうか。

 なんにせよ悪い流れだったのは間違いない――僕は、過ぎ去った威圧感に僅かに安堵すると、軽い感じの会話に潜り込み、幽々子のセリフで気になった点を問いかけた。

 

 

「死んで幽霊になると魂の色が見えるの?」

 

「色というと語弊が出ちゃうかもしれないけど、輝き方には個人差が出るわ。人前に立つ者が輝いて見えるなんて言うように、その者には独自の光り方があるの」

 

「だとしたら僕の祈りっていうのは、その人に輝きを与える力なのかもしれないね。みんな同じ色だったし、同じ力だったから」

 

 

 魂の輝き方にも個性がある。

 それはなんてことはない――当たり前のことのように思えた。

 好き嫌いがあるように、当たり前のことのように思えた。

 だとすると、僕の祈りは輝きを与えるものなのだろう。同じ色、同じ雰囲気、同じ力を与える。同調する力、同期する力だ。

 

 

「うん、うん。そっか、そっか」

 

「どうかしたの? そんなに嬉しそうな顔をして」

 

「いや、そう思うとこの能力があっていいこともあったんだなって思っただけ」

 

 

 ずっと毛嫌いしていた。

 ずっと思い悩んできた。

 こんなもの無かったらいいのにって。

 なんで僕がこんな目に合わなきゃいけないんだって。

 

 

「これまでは振り回されるだけだった」

 

 

 なんで僕だけが。

 どうして僕だけなんだって。

 ずっと思ってきた。

 考えることができるようになった時からずっと思っていた。

 そして、それを必死に考えないようにしてきた。

 

 

「周りを振り回すだけだった」

 

 

 なんで選ばれたのかを考えることに意味なんてなかったから。

 どうして自分なんだって考えたら、どうしようもなく寂しくなったから。

 考えれば考えるほど、自分が嫌いになって。

 そして、周りのみんなも嫌いになりそうだったから。

 だから、何も考えなくなった。

 

 

「僕の敵だった」

 

 

 毎日を平凡に暮らすことだけを考えてきた。

 周りにある普通という曖昧なものだけを求めて生活してきた。

 どうやったって普通には成れないから――普通に成りたくて必死だった。

 能力を打ち倒すことだけを考えて。

 能力に対抗することだけを考えて。

 はるか遠くにある、絶対に届かない普通に手を伸ばし続ける。

 遠いと感じるたびに、能力に対する憎悪が顔を覗かせる。

 能力は僕にとって、嫌悪の象徴だった。

 だけど、たった今告げられた一言が一つの光を灯した。

 

 

「だけど、今は誰かの背中を押すことができる。暗いところにいる人に明るさを届けてあげられる。そう思ったら――この能力があってよかったなって思って」

 

 

 悩んでいる人に。

 苦しんでいる人に。

 迷っている人に。

 明かりがない暗がりにいる人に。

 ――与えられる光になれるといいな。

 

 

「家族を守れる光になれたらいいなって思って」

 

 

 ――支えられる優しい人になれるといいな。

 ――大切な家族を守れる優しい光になりたいな。

 そんな願いを通して見てみると、今まで嫌悪していた境界を曖昧にする能力がほんの少しだけ好きになった。

 

 

「幽々子、ちょっと触るけど、ごめんね」

 

「どこでもいいわよ。好きなところに触りなさい」

 

 

 幽々子が自信満々に胸を張る。

 そっと手を伸ばして幽々子の心臓付近に右手をあてがう。女性特有の柔らかさに手がゆっくりと沈み、心音が手を伝って僕の中で響いた。

 

 

「はぁ……」

 

 

 息を吐いて、強く念じる。フランの時のような、藍の時のような、橙の時のような力強い祈りを込めることは残念ながらできないけれど。僕自身が幽々子に対してしてほしい願望もなければ、幽々子がやりたいことに賛同できる心もないから――力の伝わり方は非常に弱くなってしまうけど、その鱗片を味合わせることならできる。

 ありがとう――感謝を込めて祈りを捧げる。

 願わくば、幽々子にも光がありますように。

 

 

「……!?」

 

 

 幽々子の体の周りから白い発光が見られ始める。

 藍や橙の時と比べると遥かに微弱な光ではあるが、確実に力を放っていた。

 幽々子は、じっくりと感触を確かめるように静かに手を開いたり閉じたりする。

 

 

「温かい……これが貴方の魂の温度なのね。とても優しくて、強くて、安心できる力」

 

 

 幽々子の声が空間に伝搬し、耳に届いた瞬間に祈るのを止める。幽々子の胸から手を引き、全身の力を抜いて笑顔を浮かべる。

 すると、幽々子も同じようにほほ笑み返してくれた。

 

 

「ねぇ、和友ちゃんが良かったらうちに来ないかしら? 住む場所ならいっぱいあるし、お世話は妖夢がしてくれる。ちょっとした私の話し相手になってくれればそれでいいから」

 

「幽々子様!?」

 

 

 まさかの提案に魂魄さんが驚愕の声を上げる。

 住む場所を変える、そういう選択肢もなくはない。

 違う場所で、違う人と、同じ生き方をする。

 新しい人のために生きていく。

 自分のために生きていく。

 それも悪くはないと思う。

 誰かのための自分に成れるって思った今なら、悪くないなって――思った。

 

 

「貴方が白玉楼に来てくれれば何かが変わる、そんな気がするのよ」

 

 

 幽々子の口から漏れた言葉は、随分と心のこもった言葉に聞こえた。ずっしりとした重さが感じられた。

 何かしら変化を求めている。足りないものを欲しがっている。

 幽々子の言葉には、そんな想いが込められているような気がした。

 

 

「おい、そこの亡霊。私を差し置いて何をしているの?」

 

 

 そんな幽々子の独壇場に黙っていられなくなったのか、ここで横からの割り込みが入った。

 声がした方向に視線を向けてみると、全てを見通すような鋭い視線が幽々子を射抜いている。黒い羽を広げ、幼い容姿ながらも貫録を備えた力強い瞳が僕たちを映していた。

 

 

「先約を取り付けたのは私よ」

 

「あら? 約束は同意のもと成り立つ契約なのよ? 赤い悪魔さん、あなたの言っているのはただの子供の我儘。決まるのは双方の意思が合致してから。私の言っている意味、分かるかしら?」

 

「そんな安い挑発には乗らないわ。私たちの本質は変わらない。どんな言い方をしたところで、どう取り繕ったところで、結局私たちはお互いに笹原を手元に置きたがっている」

 

 

 レミリアは胸に手を当て、ゆっくりと静かに語りかけるように言葉を紡いだ。

 

 

「何かが変わる気がするから。何か足りないものが埋められる気がするから。違って?」

 

「……そうね、違わないわ」

 

 

 みんな、何かを欲している。

 自分の中で満たされない感情を求めている。

 何かが足りないと感じた瞬間から。

 何かが無いと分かったときから。

 それを埋めようとしている。

 それは、幽霊でも吸血鬼でも妖怪でも人間でも変わらない。

 僕だって、変わらない。

 必死に空いた穴を埋めようとしている。

 レミリアは傍に寄ってくると、そっと足を崩した。

 

 

「で、どうなのかしら? あの時から気持ちは変わって? フランだって会いたがっているし、無礼を働いた分のもてなしはするつもりよ」

 

 

 レミリアの言うあの時――きっと始めて紅魔館に訪れたときのことだろう。

 あの時とは全然違う、優しく差し伸べられた手が物語っている。

 精一杯の譲渡を込めた表情が訴えている。

 差し伸べられるように開かれた心が求めている。

 誰かのために。何かのために。

 そんな何かに成れる可能性を知った今となってはこの手を取ってみるのもありかもしれない。新しい何かが生まれる。思ってもみないことが起こる。

 そして、きっとどんな出来事だって乗り超えていける。

 

 

「…………」

 

 

 そんな生活も悪くないと思った。予想以上の広がりを見せる想像に、即決できずに沈黙が続く。

 悪くない。

 悪くないけど。

 悪くはないと思ったけど――今の僕にとって大事なものを考えると、どうしても僕はここに留まるべきだと思った。これからの僕にとって大事になるものを考えると、ここにいるべきだと思った。これまでに大事にしてきたものを考えると、動くべきではないと思った。

 この手を取ったら、これまでがきっと付いてこないから。みんながいる、この場所にいるべきだと思った。

 

 

「1週間でもいい。いえ、3日でも構わないわ」

 

 

 迷っている僕を攻め立てるように条件がどんどん軽くなってくる。永久ともいうべき最初の条件からは程遠い。旅行で過ごすような感覚の日取りとなっている。

 そして、譲渡の幅が拡大しているのを全く気にする様子もなく、まるで催促を求めるようにさらにレミリアの顔が近づいてくる。笑みを浮かべ、距離を縮めてくる。だんだん大きくなる姿に少しざわついてくる気持ちを抑え込む。

 短い期間滞在するだけなら――3日間ならいいのかな、なんて考えが頭の中に浮かんでは消えていく。

 そのぐらいなら大丈夫だろうという気持ちが好奇心を呼び起こしてくる。

 でも、一度行ってしまえばもしかしたらそのままそこで過ごしていく可能性だってある。一度それを選べば、選ぶという選択肢がなくなってしまうかもしれない。戻れなくなってしまうかもしれない。そう考えると、やはり条件が緩和されても即座に頷くことはできなかった。

 

 

「あー、止めなさい。ほら離れる、離れる」

 

 

 僕が悩んでいると、霊夢が唐突に僕とレミリアの間を割った。レミリアの肩と僕の肩を掴み、左右に広げる形で空間を作り出す。

 無理やり引き離されたレミリアからは不機嫌を匂わせる雰囲気が出ていた。

 

 

「霊夢、どういうつもりかしら。貴方も笹原がここにきて迷惑だって思っているのではなくて?」

 

「確かに和友がいると面倒事が増えるし、頓珍漢なことも言うし、突拍子もないことをする奴だけど、迷惑なんて思ったことはないわ」

 

 

 霊夢から初めて僕についてのまともなコメントを貰った気がした。生き方が間違っているとか、おかしいとか言われることは今までにもあったけど、僕をどういう風に見ているかが分かる初めての言葉だった。

 もしかしたら嫌われているのかもしれない。迷惑って思われているのかなと考えることも多々あっただけに、こうやって直接聞く形で霊夢の気持ちが聞けて思わず嬉しく感じる僕がいた。

 

 

「和友は博麗神社に住んでいるの。本人が出ていきたいというのならまだしも、私の目が黒いうちは横から誘拐するような真似は許さないわ」

 

「だったら和友ちゃんの心を動かしてあげればいいってことね。私だって一朝一夕で仲良くなれるなんて思っていないわ。和友ちゃん、またの機会にね」

 

「まぁいいわ。考えておいて。提案に対して迷いを生じた――今はそれだけで十分よ」

 

 

 幽々子とレミリアが幽雅に手を振り、その場を離れていく。次いで、レミリアに付き従っていた咲夜さんと幽々子の従者である魂魄さんも移動していった。

 霊夢は幽々子とレミリアが確実に僕から手を引くのを見送ると、そっと僕の手を取る。離れないようにと言わんばかりに、思ったよりも小さな霊夢の手が僕の手を強く握りしめてきた。

 導かれるように手を引かれ、立ち上がる。

 

 

「どこに行くの?」

 

「和友が行かなきゃいけない場所よ」

 

 

 僕が立ち上がるのと同時に近くにいた椛も立ち上がる。それを見た霊夢は、椛に向けてはっきりと言った。

 

 

「椛、あんたはここにいなさい」

 

「どうしてですか? 私がいたら不都合なことでもあるのですか?」

 

「何を言っているの? 当たり前でしょ? そうでもなかったらこんなこといちいち言わないわよ」

 

「……いつも話していて思いますが、本当に霊夢さんは信じられない人ですね」

 

 

 予想外の返しに椛の表情が曇る。

 私がいたら迷惑ですかという問いかけは、大丈夫ですかという問いかけによく似ている。答え方にセオリー染みたテンプレートが存在するのである。

 大丈夫ですかという言葉は魔法染みているということは以前にも伝えたが、大丈夫ですかという言葉には大丈夫と言わせる魔力がある。大丈夫ではないと答えると相手に心配をかけるからという理由で、無理やりに大丈夫ですという言葉を作り出すのである。

 迷惑ですかという問いも同じだ。迷惑ですと答えると相手に失礼になる。だから回りくどくなったり曖昧にぼかしたりする。迷惑ではないけど、2人で話したいことがあるから。なんてワンクッション入れる言い方を強制する。

 だけど、霊夢の言葉にはそういう気づかいというか、容赦が一切感じられなかった。ただただ、そうだからそうなのだ。霊夢という人間はそういう性格の人間なのである。思ったことを一直線に伝える姿勢、それを全く問題視していない雰囲気に圧倒されそうになる。

 間違っていないけど、生きにくい生き方。社会の中に混じるとよく分かる。外の世界で学校に通っていた僕も、妖怪の山の天狗の社会にいた椛もよく知っていた。

 

 

「幻想郷でもここ――博麗神社にいるからそうなのかもしれませんね。そういうところがあるから霊夢さんらしいと言えばそうなのですけど」

 

「何よそれ、私に喧嘩売っているの?」

 

「いえ、褒めているんですよ。そんな霊夢さんだからきっとここもこんなにのんびり回っているんだろうなって。他の妖怪たちも自然体でいられるんだろうなって」

 

「ふーん、椛はまだ自然体っていうには程遠い気がするけど? 喋りが相変わらず敬語のままじゃない」

 

「敬語なのはただの癖ですから気にしないでください。そして、私はこれでも大分素の状態ですよ? 素じゃなきゃ、こんなふうに思ったことも言えていません」

 

「だったら後でお酒を注ぎなさいよ。私も注いであげるから私の愚痴にでも付き合いなさい。椛の愚痴も聞いてあげる。和友といると気苦労が絶えないでしょうし、溜まっているものも結構あるでしょ? もちろん私の誘いを断らないわよね?」

 

「ふふっ、断っても来るのでしょう? ここでお待ちしていますよ」

 

「そ」

 

 

 椛はくすくすと笑いながら再び膝を崩し、一人でお酒を飲み始める。

 霊夢は僕の手を引きながら部屋の外へと連れ出した。

 風が強くなっている、たなびく桜は風に煽られてはらはらと散っていく。

 風が頬を撫でる。外の空気は随分と涼しくなっていた。

 

 

「すぅ、はぁ」

 

 

 大きく息を吸い込む。すると――体の中にまで風が通ったような気がした。

 大きく深呼吸していると、唐突に背中がトントンと叩かれる。視線を向けてみると、そこにはある方向に指を向けた霊夢がいた。

 

 

「ほら、あそこにも和友をお呼びの奴がいるわ。行ってきなさい。積もる話もあるでしょ? 邪魔は入れないから」

 

 

 霊夢の指し示す先には、一人の存在が足を宙ぶらりんにさせて座っていた。視線は――何かを待ち望むように桜へと向かっている。

 僕が再び霊夢を見てみると、霊夢は薄く笑い、僕の隣を横切って部屋の中へと戻っていく。律儀にふすまを閉めて外界と内界を遮断した。

 

 

「ふふっ、ありがとう。霊夢」

 

 

 僕は、霊夢の気遣いに思わずクスリと笑うと、藍へと歩みを進めた。

 藍の元へと一歩一歩進む。そのたびに昔のことが思い出され、懐かしい気持ちが湧き上がってきた。マヨヒガで過ごした日々が蘇ってきた。

 

 

「お疲れ様でした」

 

「ああ、和友か。お疲れ様」

 

 

 僕は足と足がくっつきそうなほど、肩と肩がぶつかりそうなところまで近づき、藍と同じように腰を下ろして空を見上げる。

 夜空には輝かしいほどの星が満ちて、舞い散る桜が幻想的な光景を作り出していた。

 

 

「綺麗な桜だな。これまで見た中で最も綺麗に見える。そう思わないか?」

 

「うん、そうだね。僕もそう思うよ」

 

「きっとこれまで頑張ってきた分のご褒美なのだろうな。辛いこともあった。苦しいこともあった。大切なものを失うこともあった。だが、それを乗り越えて、それを取り戻して――私は今ここにいる」

 

 

 藍はこちらを向くこともなく、掌を僕の手に重ねてくる。藍の手は僅かに震えていた。

 僕は自分の手を藍の手の下で反転させ、力強く藍の手を握る。強く握られた感触に反応して藍の顔がこちらを向いた。

 藍はどこか物憂げな、今にも崩れてしまいそうな表情を浮かべていた。

 

 

「藍……」

 

「まだまだやらなければならないこと。解決しなければならない問題。取り組むべき課題。望む未来にたどり着くためには多くの乗り越えるべき壁がある」

 

 

 記憶を取り戻した藍は、記憶を失う前に抱えていた問いを―――苦しみを再び抱えた。

 記憶を失って分かったのは、問題に対して客観的に遠くから見る感覚だけ。

 望みを再び背負って、理想を再び目指したその先には、以前に見た時と全く同じ高さのそびえたつ断崖絶壁がある。

 

 

「まだ、和友を救う術は見つかっていない。紫様を説得する方法も見つかっていない」

 

 

 そこで自覚させられるのが、記憶を失った時と全く同じ場所に立っている自分の存在である。

 

 

「一歩も前に進めていない私には、心の中で聞いた和友の約束を結べる自信もない。その願いを叶えられるだけの覚悟もできていない」

 

 

 1年近くの月日を経て、見上げた先には全く同じ景色が見えている。一歩も進めていない自分に不甲斐なさを感じる。

 

 

「紫様に敗れて心に誓った想いを果たすには、まだ何も足りていないのだ」

 

 

 藍は、記憶を取り戻してからずっと迫りくる終わりの時間に焦りを感じていた。

 思い出したら――すでに半分が終わっていたのだ。目の前で散っている桜のように、知らず知らずのうちに半分の時を失ってしまったのである。

 

 

「やらなければならないことは山ほどある。迷っている暇なんてない。これから突き進まなくてはならない。今日からだって本当は走り出さなければならないのだろう。そんなことは分かっている、分かっているのだ……」

 

 

 藍の瞳に涙が浮かぶ。

 何も変わっていない現実に。

 何も進めていない現状に。

 光の見えない未来に。

 悲壮感と、焦燥感が心を圧迫している。

 常に少年を助けるために動いていた足は歩みを止めていた。

 

 

「だが、今だけは立ち止まっていいだろうか。なぁ、和友――今だけは、泣いてもいいだろうか?」

 

 

 そう問いかけたのは、涙を止めることが叶わなかったから。何も変わっていない自分を悔しく思ったから。そして何より、迷惑をかけると思っていたから。

 必死に涙をこぼすまいと目を開いて堪えている姿が目の前にある。瞬きをしてしまえばきっと涙を零してしまうような大粒の涙を瞳に溜めている藍の顔がある。

 僕はそっと藍の背に手を回すと、ギュッと抱きしめた。

 

 

「大丈夫、大丈夫。大丈夫だから」

 

「っ…………」

 

 

 藍は、許しを得た子供のように嗚咽を漏らす。決して声を上げずに堪えている。

 それを見た瞬間――弱音を吐いた藍を心の中以外で初めて見た気がした。

 思えば、いつだって僕の前では強がっていた。心配する時も不安を打ち明ける時もあったけど、こんなふうに弱い部分を晒しているところは見たことがなかった。

 そう考えたら――藍はいつも一人で頑張っていたことに気付いた。誰もが諦める中で、誰もが理解しない中で、唯一諦めずに動き続けた。

 

 

「ごめんね、僕なら藍の苦しみに気付けたはずなのに。藍が辛そうにしているのを僕が気付いてあげなきゃいけなかったのに。分かってあげるのが遅くなってごめんね。辛かったよね、苦しかったよね、寂しかったよね」

 

 

 僕は分かっていたはずなのに。

 この能力を抱えて生まれてきた僕なら分かったはずなのに。

 能力に対して共に戦ってきた両親を失った僕なら気付いたはずなのに。

 辛かっただろう。

 苦しかっただろう。

 共有できる者の存在がいないことが。

 隣にいてくれる者がいないことが。

 共に同じ願いを叶えようとしてくれる者がいないことが。

 孤独で、一人で戦うのは――寂しかっただろうに。

 藍は最後の最後、紫と戦う時まで僕を救うために努力してくれていた。

 今だってそれは変わっていない。ようやく動き出した時の中で、変わらない想いを抱えている。

 僕は、泣いている藍をさらに包み込むように優しく抱擁した。

 

 

「今までありがとう。これまで藍は僕のために一人で頑張ってきたんだよね。病気の時も、僕を助けようと動いてくれた時も、いつだって藍だけが諦めずに僕を救おうとしてくれた」

 

 

 精一杯の感謝の気持ちを込めて、藍の頭を撫でる。

 誰よりも僕のために頑張ってくれた藍に対して。

 誰よりも近くで応援してくれていた藍に対して。

 今だって、一人で崩れそうになる中でも前に進もうとする藍に対して。

 一人で頑張らせることは二度としないと誓った。

 

 

「だけど、心配しないで。今度からは藍の隣には僕もいるから。藍を一人で頑張らせたりしないから。今度は一人、一人じゃなくて――二人で壁を乗り越えていこう。僕達ならきっと乗り越えられるはずだから」

 

「ああっ……!」

 

 

 藍はもはや声を殺すこともなく、泣きたい感情のままに、叫びたい想いのままに、声をあげて泣いた。

 僕の瞳からも自然と涙が流れた。

 半分の時を失って、幻想郷に来て初めて――僕たちはようやく一つになった。




今回は、宴会での少年とそれにまつわる者たちとの会話でしたね。
少年が能力に対して「あって良かった」と思えたことが今回の話で最も大切なところになったと思います。
長らく能力に対して辛い思いをしてきた主人公にとってこれほどの救いはなかったでしょう。

また、最後に記憶を取り戻した藍と少年が、
初めて会ってからようやく一人と一人ではなく、二人に成れたことを作者としても嬉しく思います。

これからもこの作品をよろしくお願いいたします。

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