ぶれない台風と共に歩く   作:テフロン

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この話は、第7章のまえがき部分になります。


第七章 東方紅魔郷
夢を追いかけるもの、それを応援するもの


 みんなは、何をしているだろうか。

 僕の友達は、何をしているだろうか。

 

 幻想郷に来てから、そういうことを考えるときがある。何でもないとき、暇なときに、空を見上げて考えてみることがある。

 遊んでいるのかな。勉強をしているのかな。運動しているのかな。眠っているのかな。

 

 みんなは、今何をしているのだろうか。

 

 僕の友達は、外の世界にたくさんいる。僕の能力を知らない友達が、いっぱいいる。名前が分からなくなってしまった友達が、大勢いる。

 能力の弊害を知ってしまった今となっては、友達のことを純粋に友達と呼ぶことは難しいかもしれない。友達の定義なんて特にないから、解釈次第なのだろうけど。だから人によっては、僕の友達は一人もいないことになってしまうかもしれないけれども。

 

 僕には、たくさんの友達がいる。

 

 僕が友達と思っていれば、僕の中では友達である。友達の認識なんてそんなものでいい。

 人によって見え方が違うんだから、双方向から友達と思われている必要なんかない。僕が友達と思っていれば、その人は僕にとって友達。他の人から見れば、友達ではないかもしれないけど、僕にとっては友達。相手から友達と思われていなくても、友達だ。

 一方的な友達、それでも別にいいと思う。片思いが許されるなら、片友達も許されるべきだろう。

 

 友達は、相変わらず元気に日々を過ごしているだろう。

 毎日、はしゃいで、楽しんで、悲しんで、面白く過ごしていることだろう。

 僕がいなくなって、何か変わっただろうか。何も変わっていないといいな。変わっていて欲しいけど、変わっていて欲しくないと思う。そんな複雑な気持ちが僕の中にはある。

 僕の影響が悪い方向に働いていませんように。そう祈る。だけど、居なくなってしまった影響が全くないと思うとそれも寂しく思ってしまう。

 なんて天邪鬼だろうか。僕の心は思ったよりも複雑で曖昧なもののようだ。

 

 そんな複雑な心を持っている僕には、夢がある。叶えたい夢がある。

 幻想郷に来てできた夢。外の世界に戻れなくなってしまって新しくなった夢。

 僕が何故生きているのかと問われれば、きっとこう答えるだろう。

 

 ―――夢を叶えるため。

 

 僕の夢は、とても大きい。はたから見たら何を言っているのか、頭がおかしくなったのかと言われてもしょうがないと思っている。

 でも、そうありたいと、そうなりたいと思ってしまったら、我慢なんてできなかった。僕は、その届きもしなさそうな夢を手放すつもりはない。僕の夢は、僕にとっての道標であり、生きる目的である。

 僕の夢は、到底僕一人の力では叶えることができない。お世辞にも、僕には皆みたいな力はないし、叶えようと思ったらあと何十年かかるか分からない。

 だから僕は、協力者を必要としている。

 力になってくれる人は、僕の願いを受け入れてくれる人でなければならない。認めてくれて、それでなお、協力してくれる人でなければならない。最後に大事なものを捨てることのできる人でなければならない。

 今のところ椛一人だけだけど、僕にとっては協力してくれる人がいただけで嬉しかった。僕の気持ちを分かってくれるだけで、もうそれだけで、満たされるような気持ちになった。

 

 夢というのは、僕にとって生きる活力を与えてくれるものだ。

 

 そういえば、僕の友達の夢はなんだっただろうか。夢について語り合ったことは無いけど、それとなく目標を聞いたことがあった。

 どんな夢があっただろうか。

 そっと思い出して、挙げてみる。

 友達の夢は、サッカー選手になること。

 友達の夢は、看護師になること。

 まだ決まっていないっていう意見もあったかな。

 色々あったように思う。もう、誰が言っていたとか、どれが真実なのかとか、余りにも曖昧すぎて断言するのは憚られるけど、言っていたことは確かだと思う。そこまで忘れてしまったことに悲しくなるけど、僕はそう言っていたことを信じている。

 

 目標を持っている人、目的を持っている人。

 そんな彼らは、努力をすることを義務付けられている。努力をしなければならない目標を掲げれば、そうなるための努力が必要になる。僕が普通に生きるという目標を持って生きてきたように。成し遂げるための努力が、積み重ねが求められる。

 きっとそれは、厳しい道だ。辛い道だ。苦しい道だ。舗装された道なんてない。地面はガタガタで、進む先には登れないような壁だってあるだろう。

 だけどそれは、何もないよりもはるかに楽しい道だと思う。何になりたいわけでもなく、将来どうありたいかも曖昧で、何も目標や目的が無いよりもはるかにましな道だ。

 僕は、本当に苦しい想いをしているのは―――何をしていいのか分からない人たちの方だと思うんだ。僕は、椛を見てそう思った。

 椛は、迷っていた。妖怪の山を追い出されて、仲間たちに追い立てられて、自分を作ってきたこれまでを失って、何をしていいのか迷っていた。

 椛は、酷く辛そうだった。真っ暗で何をしていいのか分からないようだった。自分がどこにいるのかも、自分という妖怪が何なのかも、何を想っていて、何を感じていたのか、自分がどうやって生きてきたのか、何もかも分からなくなって、苦しそうだった。

 何とかしてあげたかった。僕の尊敬する椛だからこそ、前を向いて欲しかった。いつものように、自分のしていることを誇ってほしかった。

 別に誰かの道でもいい。誰かが通った道でもいい。誰かについていくような道だってかまわない。誰かに敷かれたレールの上でもいいじゃないか。

 僕が歩いているこの道だって、誰かがすでに歩いたことのある道かもしれない。誰かが敷いたレールの上なのかもしれない。誰かの掌で踊らされているだけなのかもしれない。

 だけど、もし仮にそうだとしても、僕には特に何も思うことは無い。僕は、初めてになりたいわけではない。僕はあくまでも、その夢を叶えたいだけなんだから。

 大きな足音で踏み鳴らせ。ここが自分の道だと胸を張って歩けばいい。そうすれば、きっとその道を自分のものにできるはず。

 後悔することもあるだろう。悩むことだってあるだろう。

 だけど、自分で選んだ―――自分の道だって、大声で叫べるだけの想いを抱えていれば、乗り越えられるはずだから。

 

 みんなの夢は、なんですか。

 みんなの目標は、なんですか。

 みんなの目的は、なんですか。

 僕の夢は、心の中に明確にある。

 僕の目標は、視線の先にはっきりと映っている。

 僕の目的は、目指すべき明日に立てられている。

 だから―――迷わずに明日を迎えられる。

 

 大事なのは、認められるかということ。

 自分の進む道に、納得できるかということ。

 後悔しないのなら、やってしまえ。

 とことん、最後までやってしまえ。

 それが例え、上手くいかずに終わってしまうことになっても。

 それさえも、後悔になりはしないのだから。

 

 ねぇ、椛の夢って何ですか。

 僕は、貴方に夢を持って付いてきてほしいと願っています。

 願わくは、椛の夢の手助けに成れたら―――すごく嬉しいです。

 

 




更新に1カ月かかったのにもかかわらず、文章短くて申し訳ありません。
主人公が空を見上げている時に考えていることが少しだけ書かれております。
各章に設けられている(6章だけない)まえがきは、主人公のことを分かってもらうために書いている短文になります。
少しでも、理解の足しになればと思います。


現在の進捗状況ですが
ようやく修正が半分を超えて、佳境に入りつつあります。
更新がまた、来月になるかもしれませんが気長にお待ちください。
修正が終わり次第、次話を投稿いたします。

小説については、ツイッターでも情報を発信しているので、もしあれでしたらご確認ください。

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