インフィニット・ストラトス -我ハ魔ヲ断ツ剣也-   作:クラッチペダル

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再開、そして再会

今回はまだデモベ分が薄いです。
申しわけありません。


02 Resume&Reunion

織斑一夏という少年の周囲の評価は大抵決まっている。

 

『なんかしらんが変わった奴』

『不思議な奴』

『変な奴』

『肉体派文科系』

etc... etc...

 

……いろいろ言われているが、総じて変人扱いである。

その理由の大半は、彼のオカルト分野への造詣の深さゆえだろう。

ならば彼は大多数のそういう趣味を持つ者のように嫌われているのか?

それは否である。

 

何故嫌われていないのか。

まずそんないかにもアングラな、悪く言ってしまえば根暗な趣味を持っていながら、彼は人付き合いが非常にうまい。

そんな趣味を持っていながらも卑屈にならず、その趣味を人に押し付けることもなく、普通の人と話す際はその相手の話にあわせた会話をきちんとこなす。

会話した相手は口を揃えて言う。

 

「まるで年上の相手と話していたようだ」と。

 

そんな理由もあり、彼は奇特な趣味を持つ割にはわりかし人に受け入れられていた。

実際、同好の士はもちろんの事、趣味とは関係ない友人も彼には多い。

もっとも、彼が受け入れられている本当の理由は……

 

「あの、織斑くん、手紙読んでくれた?」

「あぁ、読んだぜ」

「だったら、返事は……?」

「……ごめん、俺好きな奴がいるんだ」

 

……受け入れられている理由はただ単にイケメンだからという理由である。

 

 

※ ※ ※

 

 

「お、帰ってきたか一夏」

「弾。待たせて悪かったな」

 

とある中学校の校門前で一夏が一人の男子生徒と合流する。

男子生徒の名前は五反田弾。

一夏の友人の一人である。

 

「数馬は?」

「あぁ、あいつは先に帰った。なんか用事あるんだとよ」

 

会話を交わしながら、彼らは帰宅の路へつく。

その会話はテンポがよく、彼らの友人関係がそれなりに長いことが容易に分かる。

気心の知れた何とやらと言うわけだ。

 

「……で、お前はまた断ったのか? 告白」

「あぁ。ま、あの子にゃ悪いとは思ったんだけどな」

「贅沢だねぇ。あの子、結構男子のファン多い優良物件だぜ? よく断れるよなぁ。俺なら良く考えずに即OKだってのに。畜生、なんで俺と数馬はもてないんだよ……」

「けどなぁ、俺には……」

「はいはい、好きな奴、いるんだろ? また会えるかどうかも分からない、が頭につくけど」

 

弾の言葉を聞き、一夏の表情が変わる。

まるで何かを懐かしむような表情になり、そしてまるで遠くを見るような目になったのだ。

友人関係が長く、今まで何度かそんな一夏の表情を見てきた弾だが、一夏のこの表情を見るたびに思う。

 

--こいつはいったい何者なのだろうか。

 

弾自身も、馬鹿なことを考えているという自覚はある。

だが、それでも、この表情の一夏を見るたびに、まるで一夏が自分とは住む世界が違う存在のように感じられてしまう。

そしてそんな考えが浮かぶたび、自身を恥じるのだ。

 

--一夏は親友。それは変わらないだろ。

 

そして、最後はこうやって自分を納得させて終わるのだ。

だから、こんな思いを切り替えるためにあえておどけたように話題をそらす。

 

「ま、それはどうでもいいか。それより、もうすぐ受験だな。一夏はどこ行くんだっけ?」

「ん? あぁ、確か……藍越だったかな? そこそこ学費安くて、それなりに就職率高いとこ」

「お前の頭ならもっと上いけそうだけどなぁ」

「千冬姉の負担を少しでも減らそうと思ってさ。でも安くても卒業後の進路が不安なところはいやだってことで藍越にした」

 

現在、一夏の家は一夏の姉である織斑千冬の収入で成り立っている。

両親は一夏が物心つく前に蒸発。

故に姉弟が幼かった頃は馴染みがあった篠ノ之家の世話になっていた。

が、その篠ノ之家もある事情から一家離散となり、現在は先ほども言った様な状況になっているのだ。

 

故に、彼は姉の負担を少しでも減らそうと今の志望校へと向かうことを決めたのだ。

当然もっと上のランクの高校も狙えると教師にも説得されたが、一夏の決心は非常に固く、折れたのは教師の方だった。

 

「まぁ、理由は置いといて、お前が藍越行くならまた同じ学校だな。向こうでもよろしく頼むぜ? 一夏」

「当然だろ? こっちこそよろしくな? 弾」

 

そう言い合い、互いの握った拳を軽くぶつけ合う。

侵し難い、男の友情という物が、確かにそこにはあった。

 

 

※ ※ ※

 

 

「あった……筈なんだけどなぁ」

 

--弾、どうやら俺はお前との約束は果たせないようだ。

 

一夏は周囲の存在と目を合わせないように周囲を見渡す。

周囲にいるのは女、女、女。

見事に女だらけ。

今いる教室にいるのも全員女、廊下から教室を覗いているのも女。

360度、自分以外は女しかいなかった。

 

(何でこうなったんだ? 俺は本当は藍越に入学して弾と数馬と一緒に高校デビューのはずだったのに、どうしてこうなったんだ!? 陰謀か? CIAあたりの陰謀か!?)

 

浮かんでは消える、夢の高校生活。

あぁ、さらばドリーム。

その言葉の如く、泡沫と消えよ……

 

「……り……ん、おり……ら……ん、おりむ……くん、織斑君、織斑君!」

「は、へ?」

「こら、先生を無視するのはあまりよくないなぁ」

 

あぁだこうだと自身がたどるはずだったifの世界に思いをはせていると、頭に軽い衝撃。

それと同時に耳に入る言葉。

その言葉に顔を上げると、そこには……

 

(うお! でけぇ!!)

 

大きな夢が詰まった物がそこにはあった。

が、じっとそれを見てるとさすがに失礼であり、なおかつ大変不名誉な称号を賜ることになってしまうため、視線を引っぺがし、さらに上へと動かす。

そこには苦笑と呆れと、ほんのちょびっとの怒りを混ぜたような表情をした、メガネをかけた一人の女性……と呼んでいいのだろうか?

少なくとも、身長はかなり小さく、その点だけ見れば高校生と同等、下手すれば中学生と捉えられてもおかしくない。

が、胸はでかい。

 

そんな彼女が腕を胸の下で組み、ぷりぷりと怒っているものだからもうなんといえばいいのだろうか。

やっぱり胸という物はロマンが詰まっているんだろう、恐らく。

 

が、そんな事をずっと考えているわけにもいかない。

なぜなら彼女自身が言ったように、彼女は教師であり、自分は生徒なのだから。

 

「はぁ、すんません」

「……一応状況が状況だけに、いた仕方ないですけど、これから気をつけましょうね? と言うわけで織斑君、次の自己紹介は貴方の番よ?」

「……あぁ!」

 

教師の言葉に思わず手のひらをぽんと叩く。

そういえば自己紹介をするとか何とか言う話を聞いていた気がする。

ならばと一夏は黒板の前へと歩を進め、振り返る。

視界には、見事に女だらけ。

やっぱり怯む。

が、ここで黙ってたところで話は進まない。

勇気を振り絞れ織斑一夏!

 

「あー、えーっと、ども、織斑一夏です。趣味はオカルト的な話で、特技……ってほどじゃないけど家事は一応一通り。これから三年間、この『IS学園』ですごすことになりました。今のところたった一人の男子ですが、まぁよろしくお願いします……?」

最後が疑問形になった。

この自己紹介でほんとに良いのか自信がなかったからだが、少なくとも生徒から白けたような雰囲気は感じられない。

掴みは可も無く不可も無くといったところな様だ。

もっとも、これは一夏にとって最良の結果である。

 

ただでさえ注目されているこの状況、これ以上注目されてなるものか。

 

一夏が自己紹介を終えると同時に、教室の扉が開く。

入ってきたのは黒のレディーススーツを着こなす目つきが鋭い女性。

その女性は教室を見回し、ついでメガネの女性の下へと向かった。

 

「山田先生、HRを押し付けてしまい申し訳ない」

「いえ、お気になさらずに。私は副担任ですから」

その後も山田先生と呼んだ女性とあれこれと話した女性は、ようやく生徒の方へ向き直り、言葉を発した。

 

「諸君、私がこの一年一組の担任の織斑千冬だ。これから諸君を一年間でヒヨっこから使えるヒヨっこに育て上げるのが私の役目だ。私の指示には『はい』か『YES』、または行動で答えろ、いいな? 異論は認めん!」

「ちなみに私は副担任の山田真耶です。織斑先生ともども、よろしくお願いします」

 

千冬が傍から聞けば傍若無人はなはだしい事を言ってのけ、それに続くように真耶が自己紹介をする。

彼女達の言葉、正確には千冬の言葉を聞き、生徒達は静まり返る。

そして……

 

爆発した。比喩的な意味で。

 

 

※ ※ ※

 

 

(あ、頭が痛ぇ……)

 

朝のHRが終わった教室。

一夏はげっそりとやつれた顔で机にへばりついていた。

理由は気疲れ。

女の園に放り込まれた事と先ほどの女子の大爆発、さらに今現在も教室のいたるところから、また廊下のいたるところから自身へ向けられる視線がその原因だ。

 

(これだったらまだ依頼で無理強い聞いてた方がまし……っと)

 

浮かんできた考えは、すぐに振り払った。

 

(思い出すな。思い出せば余計に求めちまう……)

 

一夏の今の考えは、果たして何を意味するのかは、今は分からない。

ほかでもない、一夏本人以外には。

 

そんな事を考えながらうなだれる一夏の元へ、一人の少女が歩み寄る。

そして一夏の傍に来ると深呼吸を数回した後、一夏へ声をかけた。

 

「少し、いいか?」

「んぁ? どちらさん? ……って」

 

かけられた声に、一夏はうなだれたまま、それでも顔だけは動かして声の主を見上げた。

声をかけてきたのは一人の少女。

長い髪をリボンでポニーテールにした、気の強そうな少女だ。

一夏は、彼女を知っている。

そして彼女も、当然一夏の事を知っていた。

 

「おお、久しぶりだな」

「そうだな、少し、いいか?」

 

そう言うと少女は一夏に背を向け、教室から出て行こうとする。

それの意味するところを察した一夏は、すぐさま少女の後を追いかけた。

 

途中、この様子を見ていた女子生徒がなにやら色めき立っていたが、一夏はそんなことは無かったと現実から逃げた。

 

……彼をヘタレと言わないで上げて欲しい。

 

少女は、迷う事無く階段を上へ上へと登っていく。

そしてたどり着いた先は、この学校の屋上。

朝のHRが終わったばかりと言う時間帯だということで、屋上には他の生徒の姿は無かった。

ここならば、ゆっくり会話できるだろう。

 

「改めて久しぶりだな……箒」

「あぁ、お前も久しぶりだな、一夏」

 

少女、箒は懐かしむように、一言一言をかみ締めつつそう言った。

 

「しかし一夏、何故お前がここにいる? 何があってISなんぞを動かした? いったい何が……」

「あータンマタンマ。一度に質問されても答えれねぇって」

「う……それは、まぁそうだな」

 

自身の言葉に若干気落ちする箒を見て、一夏は内心嘆息する。

昔から、熱くなると周りが見えなくなる少女だったが、どうやらその欠点は直っていないようだ。

 

もっとも、それを口にして言ったらかっとなった彼女にが何をするか分からないため口にはしない。

その代わりに、しっかりと彼女の質問に答えることにする。

 

「ま、その質問に答えるからしっかり聞いてくれや。まず話す前に、ニュースは見てるよな?」

「ああ、ニュースでお前の名前が出たときはたまげたぞ」

「俺もあんな事になってたまげた。っと、それは置いといて、だったら入試会場襲撃事件って知ってるか?」

 

入試会場襲撃事件。

一夏がIS学園に入学するきっかけになってしまった事件の事である。

概要を言うと、IS学園の試験会場に現在の女尊男卑に反対する組織の過激派がテロ行為を仕掛けたという物騒な事件だ。

女性しか扱えないはずのISを男である一夏が起動させたというニュースで多少霞んでしまったが、それでもかなり大きな事件として連日ニュースに取りざたされている。

 

当然、箒もニュースなどは毎日見ているため、この事件についても知っている。

 

「その事件があった試験会場、俺が本来受けるはずだった藍越学園の入試会場にめちゃくちゃ近くてさ、藍越の入試試験終わった瞬間に大爆発が起こって会場は混乱の坩堝、で、俺も当然避難してたんだが人の波に押されてあれよあれよと言う間にIS学園側の入試会場に押し出されいまったみたいでな。そこでISに触れちまってここにいるって訳」

 

つまり、かなり不幸な偶然が重なった結果、彼はここにいるということである。

 

「……何と言うか、運が悪いというか、間が悪いというか……なんというか馬鹿じゃないのか? と言いたくなる出来事だな」

「せめて歯に衣着せれ。俺の心がえぐられるから」

 

そんなやり取りをしているうちに、チャイムが鳴り始める。

予鈴だ。

 

「っと、予鈴か。わりぃな、せっかくこうして会えたのにろくに話せなくて」

「あ、あぁ、別に構わん。それより急ごうか」

 

二人は授業に遅れないように教室へ向かって早歩きで向かっていく。

その最中、一夏は思い出したように隣で同じく早歩きしている箒へ顔を向け口を開いた。

 

「そういや、お前剣道全国大会優勝したんだって? おめでとさん」

「……そ、そうか、ありがとう」

 

まっすぐに自身を向いて放たれた賞賛の言葉に、箒は顔を背けて答えた。

 




と言うわけでIS学園入学辺りの話です。
前書きで言ったとおり、まだデモベ分が薄いのが悩みです。

これから徐々にデモベ分を増やして生きたいと思います。

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