学園黙示録 ゲンブンオブザデット   作:ダス・ライヒ

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タイトル通りご都合主義倉庫で小室一行の装甲車両がグレードアップします。

最初は敵側とオメガの視点です、あの戦ヴァルの白い準皇太子が登場。


オーバーホール

倉庫まで展開しているワルキューレの戦闘部隊を避けながらリヒター達がバウアー達を案内している頃、静岡県某市のワルキューレの拠点にて金髪碧眼の青年がヘリから降り立った。

 

「総員、傾注せよ!」

 

ワルキューレには珍しい礼服のような軍服を着た男の将官が大声を出し、整列していた兵士達に敬礼するよう指示を出す。

次にもう一人の将官が青年の名を大きな声で口にする。

 

「マクシミリアン・ガイウス・フォン・レギンレイヴのご到着である!全員、敬意を表せっ!!」

 

「あの人格好いいけど、名前長くない?」

 

「うん、私もそう思う」

 

整列している女性オペレーターの二人は聞こえないようにやりとりしていた。

青年の服装は軍服風味のスーツ姿で、王子様な服装をすれば似合う容姿だ。

この指揮所は女性の兵士しか居なかったが、マクシミリアンが来るという予定が入ってからは、男性兵士が多くなった。

故に、整列している兵士の大半は軍隊同様男なのである。

整列する兵士に見られながら、マクシミリアンは指揮所に入った。

中にいる職員が全員立ち上がって、入ってきたマクシミリアンに向けて敬礼する。

 

「ご苦労、楽にして良いぞ」

 

入ってきた青年が言った後、職員達は自分の作業に戻った。

席に座ったマクシミリアンは机の上に置かれた書類に目を通す。

 

「どうでしょうか、日本の現状は・・・?」

 

以下にもゴマすりな容姿の副官が書類を見るマクシミリアンに問い掛ける。

 

「一番見に入ったのはこの報告書だ」

 

青年から渡された報告書を読んだ副官は口を開く。

 

「これは来る途中で報告にあった感染者のことですな!下っ端の女兵士共が油断して歩く死体に噛まれて、似たような状態になって。あれでまだ生きてるのだから驚きですよ」

 

媚びるように言う副官の返答にマクシミリアンは少し苛立ちながら、日本支部の司令官であるアレクサンドラを呼び出すよう女性通信員に指示した。

 

「日本支部に通信を繋げ、この感染者の件を片付けたい」

 

「コピー!」

 

早速日本支部に通信を繋いだ通信員は出来たと報告する。

 

「通信繋がりました。映像に出ます」

 

『こちら日本支部、通信を繋いだのは貴官か?』

 

「この余だ。感染者の件を片付けたい次第で通信を繋がせた」

 

喋り方に不穏に思ったアレクサンドラは、気難し顔をしながら目の前の青年に隔離された感染者の音声無しの映像を見せた。

 

『これが感染者の状況だ。ウォーカーに噛まれた者と疑いがある者は入れて対策を取ってあるが・・・』

 

檻の中には自分の手を食べている感染者と、装備を剥がされた痛々しい傷が残る者や傷口を隠している者が入れられており、中にはまだ成人していない少女の姿まで見える。

右側にはM1919A4機関銃などを構えた軽歩兵が囲んでおり、何か起こった時に備えて衛生兵まで待機していた。

複数の防護服を着た者達が、噛まれた装備がない軍服のままの戦乙女等にAEK-971を突き付けながら檻の中に入れ込もうとしたが、嫌がった戦乙女の一人が逃げ出した。

直ぐさま防護服達が持つ突撃銃が火を噴いて、逃亡を図った戦乙女を蜂の巣にしてしまう。

死体も一緒に檻の中に入れ込まれ、中にいる者達の顔付きが恐怖のどん底に変わり、口の動きで分かるように檻の外にいる兵士達に「出して」と叫んでいる。

 

「酷たらしい光景だ・・・」

 

マクシミリアンが呟いたその直後、噛まれた者の一人が吐血し始め、藻掻き苦しんだ後、息絶えた。

暫く時間が経てば息絶えた筈の者が感染者となって蘇り、近くにいた少女の首に噛み付く。

首を噛まれた少女は叫び声を断末魔の叫びを上げて息絶え、動かなくなった少女の肉を感染者は貪り食う。

辺り一面が血に染まっていく中、檻の中にいる者が悲鳴を上げ、それに気付いた感染者達はまだ感染してない者達に襲い掛かる。

忽ち檻の中は地獄絵図と化し、檻の中から生ける者達の腕が見え、床に血が広がっていき、内臓や人体のパーツ等が檻の中から飛び出してきた。

機関銃を構えた者達が、余りの惨事に嘔吐し始める。

この場にいる者達も吐き気に襲われたのか、映像に目を背ける者が多発する。

 

「ひぇ・・・!恐ろしや恐ろしや・・・!」

 

同じく映像を見ていた副官は呟いており、この場で動じずにこのスプラッター映画の様な映像を見ていられるのはマクシミリアンだけだ。

防護服の集団も耐えきれなくなったのか、その場から退場していく。

見かねた青年がアレクサンドラに指示を出した。

 

「殺せ。見ていたらこっちまで吐きそうだ」

 

『了解した。機関銃、掃射開始』

 

隣にいた士官が頷いてから受話器を取り、機関銃部隊の長に指示を出す。

防護服の集団が全員退避した後、まだ生きている者が居るにも関わらず、右側に配置されていた機関銃が後ろにいた士官の怒号で一斉に火を噴いた。

檻の中にいる感染者達が無数の銃弾を食らってバタバタと倒れていく。

ベルト給弾から7.62㎜×63弾が切れた後、残っていた感染者が起き上がって、機関銃を構えた者達に向かってきた。

空かさず後ろにいた士官がSIG P225をガンホルスターから抜いて、大量出血しながらも檻から手を伸ばす感染者の頭を撃ち抜いた。

映像が終わり、アレクサンドラの顔が映し出される。

 

『見苦しい映像を見せて済まなかった。それで、ウォーカー噛まれて感染した者はどう対処する?』

 

向こう側から問い掛けてくるアレクサンドラに、マクシミリアンは答える。

 

「射殺しよう、そのままにしておけばこちらも被害が拡大するだけだ。全指揮所に通信を繋げ、感染者は射殺せよと。感染の疑いのある者は徹底的に調べろ、以上」

 

アレクサンドラが「了解した」と言った後、支部との通信が終わった。

椅子に座ってから受話器を取って総司令部に連絡する。

 

「余は上級司令官のマクシミリアン・ガイウス・フォン・レギンレイヴだ。聞こえるか総司令部、新たな命令だ。ウォーカーに噛まれた感染者は即座に射殺せよ、疑いのある者は徹底的に調べろ。全世界の支部にこの司令を伝達するのだ」

 

そう総司令部に要請し「分かった」と声がした後、マクシミリアンは受話器を戻した。

次に小室一行の報告書を見始める。

 

「この高校生の一団が気になる。子奴等だけが以上に生存率が高い、どういう仕組で生き残ってるのか興味がある」

 

その言葉で副官の不思議そうな表情に変化したが、青年は気にもせず続ける。

 

「他の生存率の高い集団と合流し、一種の勢力にもなり始めている。早急に手を打つ事だ」

 

小室一行が映っている写真を見ながら口を動かす。

 

「それにしても何故、このような集団になるまで放っておいたのだ?これでは一大勢力となり、我々に牙を剥くぞ」

 

「はぁ・・・どうやら大したことが無いと判断して放っておいた様です。奴らが居る地域に包囲網は敷いているらしいですが、何のダメージすら与えていません。いっそのこと奴らが潜む地域を爆撃した方が早いと思いますが・・・」

 

「おそらく却下されるだろう。連中にも強力な対空兵器があるとの目撃情報がある、飛ばすだけ人員と爆撃機の無駄だ。連中がこの地で用事を済ませ、この安全地帯の三つの内どれかに向かうだろう。それを見越して連中をこの地に閉じ込めて兵糧攻めにすることだ」

 

椅子から立ち上がって、一面に日本全体図が広がった机に向かい、床主がある方向を赤いペンで囲む。

 

「この地を軍規模の兵力で包囲するのだ。第2、3世代主力戦車と兵器群で囲む、歩兵装備も対戦車ミサイルを持ってだ。爆撃機や攻撃機を頻繁に飛ばして敵の兵器と食料や水を見付け次第攻撃させ、連中が疲弊したところを一気に叩く。それが余の考えだ」

 

隣で青年の考えに感心する副官は、早速取り掛かろうとしたが、マクシミリアンに止められた。

 

「だが、これはあくまで空論に過ぎん。実際、我が配下の兵力はそれ程の兵力があるが、兵器群は冷戦中の物ばかり。おまけに侵攻してきた外国軍の対策や新たな化け物の対策で兵力が分散している。それが終わっても、補給が終わるまでに連中が待つとは限らん、脱出されるのが関の山だろう。よって連中の対策は現地部隊に任せる」

 

マクシミリアンは副官に告げてから、司令官の席に戻る。

一方、オメガ・グループは千葉県の東京に近い距離にある敷地内に居た。

 

「ここもゾンビでいっぱいか・・・」

 

「トーキョー・オブ・ザ・デットって感じだな」

 

奴らが蔓延る日本の首都である東京を見ながら呟く小松と平岡、田中はツッコミを入れた。

 

「映画の撮影じゃないんですけどね」

 

他の隊員が装備を整えた後、オメガ・グループの隊長が全員に声を掛ける。

 

「全員集合!梅本司令から司令がある!」

 

「全員集合ですよ」

 

「分かってら」

 

田中が知らせた後、オメガ・グループの隊員が、この部隊の作戦司令官である自衛隊の尉官専用の作業服を着て、眼鏡を掛けた梅本と言う男の前に集まる。

 

「諸君等に集まって貰ったのは他でもない!首都奪還作戦が幕僚会議で決定したからだ、我々は陸自の第1空挺団や第1師団と共に鎮圧作戦に入る!諸君等はヘリで廷内に降りて鎮圧活動に入って貰う。全体の鎮圧は主力の第1空挺と第1師団が担当する。以上だ」

 

「共同作業かよ・・・機密保持はどうなったんだ?」

 

「さぁ、知らね」

 

梅本の作戦説明を聞き終えたオメガ隊員達は喋りだし、それを梅本が怒鳴って黙らせる。

 

「静かにしろ、貴様等!日本の命運が掛かっているんだぞ!!」

 

黙った隊員達は米軍から送られてきた二機の大型輸送ヘリCH-53に乗り込む。

隣の野営地にいた第1師団の隊員達は自衛隊全種に採用されていない大型輸送ヘリを珍しそうに見ている。

 

「あれは米軍のCH-53か!?」

 

「SEALsが作戦に参加するって聞いてねぇぞ!」

 

89式小銃を抱えた隊員達が声を上げる。

窓から隊員達の反応を見ていた小松が、彼等に向かって手を振った。

 

「あいつ等、驚いてやんぜ」

 

「そりゃぁ当たり前だろう。採用もしていないヘリが飛んでいるのだから」

 

機内の席に座る小松と平岡が会話を始め、田中が地上にいる第1戦車大隊を見る。

 

「最新式の10(ひとまる)式戦車がある。このところ殆どミリタリー雑誌を見てなかったんだよな~写真に撮っとこう」

 

カメラを取り出して地上に居る三両の10式戦車を写真に納める田中。

第1空挺団のヘリも見えた為、小松は手を振ったが、UH-60JAブラックホークに乗っている89式を脇に抱えた隊員はそれを敢えて無視する。

少し苛立った小松であったが、東京の廷内に到着してしまい、起こる暇もなくヘリは広い敷地内に着陸した。

 

「降りて周囲を警戒しろ!」

 

リーダーの隊員が告げた後、小松等はカスタマイズされたM4カービンの安全装置を外して周囲を警戒する。

 

「クリア!異常なし」

 

「散会して廷内を鎮圧せよ!」

 

隊長が言った後、四人一組になって、手当たり次第建造物に入っていく。

そして奴らを見付けたら即座に頭部に狙いを付けて引き金を引き、死体に変える。

周辺から連続して銃声が鳴り響き、第1空挺団と第1師団も鎮圧に乗り出したと分かる。

手当たり次第奴らを見付けたら始末していくオメガの隊員達、弱点は既に分かっているので、後は迂闊に近付かないようにして片付けていくだけだ。

最後の二階建ての建物に着いた小松のチームは、入る前にスタンドグレネードの安全栓を抜いてから、建物に投げ入れた。

爆発した後、呻り声を上げながら固まっている奴らの頭を次々と撃ち抜いていき、鎮圧を素早く済ませ、部屋という部屋を調べ尽くし、奴らが居れば排除する。

二階を調べる為に銃を構えながら上がり、出会した奴らの頭を撃ってからまた二階にある全ての部屋を調べ回った。

小松が最後の部屋に入った途端、奴らが飛び掛かってきた為、床に倒れ込み、奴らに捕まってしまう。

 

「クソっ、誰か来てくれ!」

 

一度掴まれたら引き離すのは至難の業だ、小松はチームに助けを呼ぶ。

直ぐに平岡が現れ、小松を仲間に入れようとしていた奴らの頭を正確に撃ち抜いた。

 

「大丈夫か、小松」

 

「大丈夫なわけあるかよ、顔に血付いちまったぞ」

 

「大丈夫ですか、小松さん!?」

 

「おう、生きてたか。田中」

 

田中がチームの一員を引き連れて現れた後、小松が苛つきながら言う。

 

「おせぇぞ田中、こういう時は一秒でも早く来ることだ」

 

「はぁ、すんまへん」

 

申し訳ない表情をしながら田中は小松に謝った。

鎮圧を終えた後、オメガの隊員達がヘリが着陸している敷地内に集合する。

 

「誰一人欠けてないな?!では、引き続き我々は第1空挺団の加勢に加わる!」

 

「はぁ~、これで終わりじゃないのか・・・」

 

新しい指示に小松が皮肉った後、オメガ・グループは第1空挺団が担当する地域に向かった。

倉庫に着いたリヒター達は、早速バウアー達を中に案内した。

 

「すげぇ!第二次世界大戦の兵器が丸揃いだ!!」

 

一応軍オタの端くれである山本はかなり興奮している。

 

「それに露助の連中もいるぞ。あいつ等もここに転移してきたか!」

 

バウアーはソ連赤軍の二個機甲大隊を見ながら言う。

ルリとイーディはさほど興味が無かったそうで、向こうで機械弄りをしている小室一行とウィッチ達の方へ向かう。

機械の音が止むことが無く鳴っている事にバウアーは気付き、そこへ向かう。

 

「リヒター閣下、オーバーホールは分かるが少しいらんパーツがある。あれは何をしているのですか?」

 

直ぐにバウアーはディーターや佐武郎等がやっている事を聞き出す。

 

「見た感じはオーバーホールだが、改造しているのだろう。君達も始めた方が良いかもしれない」

 

「それなら話が早いです。あの8.8㎝PaK43を私のティーゲルに付け替えてきます!ヴォル、行くぞ!」

 

「クルツ、俺達も改造だ!丁度、パーツも揃ってる。中隊急げ!」

 

早速ヴィットマンと乗員達は自分のティーガーⅠを改造しに出掛け、バウアー達もこれに負けじと改造パーツを取りに行く。

火星軍の四人組はウィッチ達の所へ来ていた。

 

「やぁ、お嬢さん達。ここは快適かな?」

 

突然現れた奇抜な格好なSTG達にどん引きしたが、イーディが彼等の事を説明した。

 

「この方達は火星という星からやって来た人達ですわ。私達も最初は驚きましたが、フレンドリーな方達ですのよ」

 

「まぁ、この・・・20世紀人の言うとおりだ。君達も20世紀人かい?」

 

「20世紀人・・・?」

 

「西暦の事ダナ。私はエイラ・イルマタル・ユーティライネンだ、よろしく」

 

STGは長い名前に驚きを隠せない。

 

「エイラ・・・イルマテル・ユーティラネン?フィンランド人の名前は長くて覚え辛いな」

 

「正しくはエイラ・イルマタル・ユーティライネンだ。戦闘機部門の教科書にそれに似た名前の人物が載ってある」

 

ゴーグルを付けた隊員がSTGに告げる。

 

「おぉ、そうか。宜しく頼むよユーティライネンちゃん」

 

「こっちもよろしくナ」

 

お互いに握手をした後、黒人の隊員が口を開く。

 

「しかし良くもこんな健康に悪い所に年頃の少女が居るもんだ。成長期の身体に悪影響を起こすぞ」

 

「まぁ、慣れてるから大丈夫ダ」

 

エイラはそう言った後、ルリの居る方へ向かった。

 

「ルリです、よろしく」

 

「サーニャ・V・リトヴャク、よろしく・・・」

 

こちらも握手した後に、エイラがやって来てルリに挨拶する。

後ろから「芳佳」とバルクホルンが叫ぶ声がしたが、三人は気を取り直して初対面の者達に挨拶し回る。

こうして再会を喜び合う小室一行なのであった。




次は原作に戻らなくては・・・

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