重たそうな現代アメリカ陸軍歩兵装備です。
なんらかの実験が始まり、芳佳の視界が真っ白になった後、仮実験室の外では異様な事態となっていた。
「なっ、なによこれ!一体何が起こっているの!?」
仮実験室内部で起こる強力な光が起こった後、その外の格納庫では雷鳴が鳴り響き、屋内にも関わらず雷が起きている。
一人の迷彩服を着た警備兵が、壁に取り付けられている電話機に走り、受話器を取って、ブリッジに居る者達に何が起こっているのかを知らせる。
「こちら格納庫!異常事態が発生しております!船内で雷が、ギャッ!」
雷に打たれて丸焦げとなり、息絶えた。
この異常事態に、セムテは机に身を隠し、震えている。
次々と雷に打たれて格納庫にいる者達が死んでいく中、仮実験室からの光はまだ消えない。
格納庫以外でも異常な事態は起きていた。
突如ブリッジに居た警備兵が、手に持つMP5A5をその場にいた艦長を含む乗員達に撃ち始めたのだ。
そのような光景は練習空母マーリアンの至る所で行われ、乗員同士の殺し合いが始まり、船内は地獄絵図と化した。
一部を除いて、生きている乗員達が居なくなった後、仮実験室に全ての電力を奪われたのか、マーリアンは機能しなくなり、ただ浮いているだけとなった。
仮実験室の中にいた芳佳は、外で起こっている惨劇に気付かず、ただ実験台の上で眠っている。
数分後、先程殺し合い死んでいた乗員達が何故か起き上がり、船内を彷徨い始めた。
乗員達の瞳には生気が無く(俗に言うレイプ目)、死人みたいだが、微かに息はある。
しかし、外見からは死んでいるようにしか見えない。
まるでこの世界を無秩序に変えた原因である歩く死人こと
「ママぁ・・・怖いよ・・・!」
運良く生き延びた白いセーラー服に学生のようなスカートを纏った少女水兵が、懐中電灯片手に暗闇の船内を震えながら歩いている。
その愛らしい顔には血が付いており、白いセーラー服は誰かの返り血で赤く染まっている。
その後ろから後退りながら、M2カービンを抱えた様々な国の海軍が着込む勤務服を纏った事女性務部員と背中がぶつかる。
「キャッ!はっ!?キャァー!!」
突然、出会い頭に背中をぶつけた為か、お互いに悲鳴を上げる水兵と事務部員。
騎兵銃を持っている事務部員は水兵に構え、引き金を引こうとしたが、小動物のように怯える水兵に、安心したのか、銃を下ろした。
「水兵か・・・はぁ・・・」
銃を下ろした後に、溜息を付いた後、怯える水兵に手を差し出す。
「大丈夫?大分怯えていたようだけど」
「だ、大丈夫です・・・漏らしちゃった・・・」
スカートを抑えながら立ち上がる少女に、事務部員は苦笑いする。
「さーてと、貴女以外に生きてる奴は居ない?」
「居ません・・・殺し合いが起こってから、私、隠れてましたから」
「そう、じゃあ、甲板に出ましょうか」
「そうします」
意気投合し、甲板に向かう二人であったが、向かってる途中、鉄パイプや角材、非常用の斧を持った船員達に囲まれる。
「あんた達も、甲板に向かうの?」
水兵が持つ懐中電灯の光に当てられている血塗れの船員達に声を掛けたが、反応は一切無い。
「こ、答えてよ・・・!冗談じゃないでしょ・・・?」
声を掛けても反応がない船員達に、少し死の恐怖を感じた二人。
数秒後、船員達は二人に向かってきた。
「同行するのね?じゃあ・・・こっちに・・・」
事務部員の目の前に来た機関士が、手に持ったスパナを頭に振り下ろした。
頭部に強い衝撃を受けた彼女は視界が
「ひっ!?た、助けて!」
思わず声を上げた少女であったが、後ろから来た血塗れの一団に捕まり、暗闇の中に連れて行かれた。
「や、止めて!痛い、噛まないで!」
肉を食い千切る音が耳に入った蹌踉けている彼女は、錯乱状態に陥り、M2カービンをフルオートにして乱射し始めた。
「キャァァァァァァ!!来るな、来るな来るなっ!!」
狭い通路で銃声が鳴り響き、空薬莢の落ちる音や転がる音がする中、銃弾が船員達の肉体に命中するが、彼女達は痛がりもせず、ただ騎兵銃を乱射する事務部員に近付いてくる。
「来ないで!来るなクソ共っ!ハッ!?」
引き金を引いても銃声が鳴らず、カチカチとした音しか鳴らない。
やがて近付いてきた船員達に囲まれ、彼女は息絶え後、二人は船員達の"仲間入り"を果たした。
一方マーリアンの最下階では、新たな
「ここは何処ですの・・・?それになにか身体が重い・・・?」
暗闇の船内で目覚めたイレギュラー達、しかし、彼等の服装は、完全に現代アメリカ陸軍歩兵完全装備だ。
アメリカ陸軍の主力戦闘服ACU迷彩服にズボンを始め、陸軍用コンバットブーツ、M16/M4突撃銃用バンダリア、M92自動拳銃用ショルダーホルスターにマガジンポーチ、ラジオポーチ、最低限の生活必需品とM16/M4のマガジンが六本入れる事が出来るポーチ付きバックパック、迷彩カバー並びナイトビジョン用アタッチメント付きPASGTヘルメット、インターセプターボディアーマー、トドメは夜間戦闘用アクセサリー付きM4カービンにA1タイプ、M21対人狙撃銃、M249E4、ベレッタM9A1、使い捨てのFFVAT4だ。
狙撃兵、機関銃手、対戦車兵用にはそれぞれの装備品がなされている。
「なんですの、これは・・・?」
目覚めた転移者の一人である少女は、自分が着けている装備品と格好を見て驚く。
「中々動きやすいですが、装備が重たいですわ」
少し身体を動かしてから、アメリカ合衆国陸軍歩兵装備の重さを知り、その後周りで気絶している同じような装備品を着けた者達を起こす。
「アレ、どうして僕はここに・・・?それにイーディさん、なんですかその格好?」
イーディと呼ばれた少女は、まず同じであるが、分隊支援兵装備な金髪の少年を起こした。
「貴方だって同じ様な格好でしょ。それに私は気分がよい日だったのに、突然霧に呑まれた、目覚めたらこの有様ですわ。ホーマー、早くみんなを起こすことよ」
「はい、イーディさん。よいしょっと、ちょっと重いな・・・?」
M249E4の弾薬を多めに持っているので、イーディよりも装備品が重かったホーマー。
最後にイーディが、同じ装備をした少女を起こそうとした瞬間、彼女は驚いた。
「う~ん、確か私は・・・あっ!お姉様!?」
「リコルス!?何故こんな所に・・・?」
その少女はイーディと少し似ており、リコルスと呼ばれた少女は飛び上がり、イーディと対峙した。
「クッ、まさか出し抜いた私を追い掛けて・・・!?て、重い!」
「違いますわ!折角気分が良かったのに、霧に呑まれてこんな状態に・・・」
起こされた者達は、さぞや不思議だろう。
実際にいたらゲイと呼ばれそうなオカマの大男が声を掛けた。
「あんた達、まさか双子なの?」
「そうですわ。彼女は私の自慢の妹、リコルス・ネルソンですわ!」
「本当に似てるとはな・・・」
妹であるリコルスと啀み合っているイーディが答えた後、M21を抱えていた黒髪の以下にも美人狙撃手が言う。
「感動の再会ですね!」
「話を聞いていましたが、まさかこんなにそっくりだなんて・・・」
次に、何かの民族を示すような首にストールを巻いた紺色の女性と、ヒロインなリボンで髪をとめた容姿の少女がイーディとリコルスが似ていることに驚いている。
頭に被っていたフリッツヘルメットを脱ぎ、地面に置いて腰掛け、携帯用ランプを付け、それを囲むように集まる。
「なにから始めましょうか・・・?」
ストールを巻いた女性が、言った後、オカマの大男が何か思い付いて、全員に言う。
「じゃあ、イーディの妹さんに自己紹介でも始めましょうか。私はヤン・ウォーカーって言うのよ、よろしく」
「お噂はお姉様から聞いておりますわ。敵戦車からお姉様を含む五人を守った"漢女"だとか・・・」
「もう、照れるわね~筋肉があれば戦車の一台や二台なんてイチコロよ~」
このリコルスが言ったことに、照れ始めるヤン。
次にピンク色のリボンで髪をとめた少女が名前を名乗る。
「スージー・エヴァンスです。実家は資産家でエヴァンスカンパニーという企業経営をやってます」
「エヴァンス社のことですね。飴は時々買いますわ」
「ありがとうございます」
スージーが礼を言った後、ストールを巻いた女性が自己紹介を始めた。
「私は分隊で唯一のダルクス人のリィンです。少し差別されるかと思いましたが、受け入れて貰って本当に嬉しかったです!」
「流石は私のご自慢のお姉様ですわ!人種差別をしないなんて、理由で差別する連中とは違い、器の大きい女性ですわ。それと恋人とは今も仲が良くて?」
「はい!もうじき結婚に近付いたというのに・・・ワァ~!」
恋人のことを聞かれたリィンは、突然泣き始めた。
うっかり言ってしまったリコルスが、宥めた後、ずっと変な方向を向いている黒髪の女性に声を掛ける。
「そこの貴女、何という名前ですの?」
「マリーナ・ウルフスタンだ・・・話はイーディから聞いているだろう」
「あっ、分隊の狙撃手様ですわね。なんでも可愛い動物が好きだとか・・・」
この言葉に、マリーナは全員から顔を隠す。
次に何故か興奮していたホーマーが名乗り始めた。
「最後まで焦らすなんて、凄く興奮したじゃないか・・・!僕はホーマー・ピエローニさ。姉は世界平和の為、世界中の男達を教育する気なんだ・・・」
ホーマーの凄まじい興奮ブリに、リコルスは引いてしまったのか、苦笑いしながら、興奮している聞こえないように姉であるイーディに小声で話し掛ける。
「ハハハハ・・・そうですか・・・(お姉様、あの人はなんですの・・・?)」
「(あれが俗に言うドMと言う者ですわ・・・下手に殴ると興奮するのですよ!)」
イーディ分隊全員の自己紹介を終えた後、リコルスが自己紹介を始めた。
「私はリコルス・ネルソン、貴方達の隊長であられるイーディお姉様の妹ですわ。お姉様には体力で劣ってますが、歌唱力で勝ってますわ。そのお陰でアイドルデビューに成功し、世界一の工業力を持つ大国で、ライブに向かっていたところ、乗っていた客船が嵐に遭い、海に投げ出されてこんな状態ですわ」
プンプンしながらこの世界に転移するまでの経歴を話したリコルス。
それぞれ自己紹介を終えた後、ヘルメットを被って、それぞれ手に持つ武器の点検を行う。
「おや、ホーマーとマリーナ以外みんなお揃いのライフルですわ」
自分が持っているM4A1カービンを見ながら、イーディは声を上げる。
ちなみにリコルスもイーディと同じM4A1カービンを所持している。
M4カービン所持者は、リィンやヤンにスージーで、M249E4はホーマー、M21対人狙撃銃持ちはマリーナだ。
FFVAT4はヤンが四本も背負っている。
装備の点検を終えたイーディ達は、この練習空母マーリアンの上を目指すことにした。
「それでは、イーディ分隊、出撃!」
「違いますわ。リコルス分隊、出撃!」
「何でですの!?」
お互いに喧嘩をし始めるが、妹のリコルスは士官学校卒業者なので、ここに居るメンバーの中で彼女が一番階級が高いことになる。
よってリコルス分隊とイーディ分隊は改称されたのだ。
「リコルス分隊、出撃ですのよ!」
「クゥ~!」
また妹に出し抜かれたので、イーディは悔しがっていた。
一番重要なことに気付いたスージーが、全員に告げた。
「この暗闇じゃ、まともに動けませんよ?」
「「あっ」」
その後、ヘルメットに着けられるアクセサリーライトに気付いたと言う。
そして実験台に眠っていた芳佳は、惨状の後に目を覚ました。
ギャグっぽくなったな・・・
アメリカ陸軍の現用歩兵完全装備は重たそうだね。