あの世界のモデルはディスオナードのダンウォールです。
短いな・・・
補給を優先
一風変わった先客達を仲間に引き入れた小室一行、モールからの脱出の際に、仲間を一人失ってしまう。
その頃、超大国の傀儡と成り果てた王国では、手負いを負ったストアーが追ってから逃れる為、死体置き場を這いずり回っていた。
「(まさか・・・修行を受けていないただの兵士にやられるとは・・・!)」
人が入れるほどの配管工の中で、傷口から9㎜パラベラム弾を摘出しながら声に出さず思い、痛みで顔を歪める。
全ての傷口から弾丸を摘出した後、何処からか調達した医療道具で治療し、何とか立ち上がった。
死体置き場周辺を巡回している警備兵の動きを見ながら、隙を見て物陰に移動しようとしたが、頭上の橋でコートを羽織った兵士二名が立っているのが見えた。
行く先に視線を向けながら、小銃を肩に掛けながら会話をしていた。
息を殺して、二人の兵士が何処かへ去るのを待つ。
「クソっ匂うな。本当にここは首都なのか?」
「さぁな、一昔前は活気ある首都の一角だったが、大地震や疫病が起こってからこの様だ」
「成る程、地震が起こった後に疫病が流行ったか?」
「あぁ、俺が4歳の頃に地震が起きて、その一年後に疫病の流行って訳だ。そして俺の6歳の誕生日にここは死体置き場に名称変更さ」
互いに笑った後、ポケットから煙草のケースを取り出し、一本出して口を咥えながらまた喋り出す。
「その時はもう引っ越しした後だったから助かったぜ。それとお前は当時何をしてたんだ?」
「俺は田舎出だから親の手伝いをしてたよ。実家は農家さ、俺の代わりに弟が跡取りをする予定だ」
煙草に火を付け「そうか」と呟いた後、煙を吸って吐いた。
もう一人の兵士は煙草を吸う兵士を見て、物欲しそうに告げる。
「おい、俺にはないのか?」
「無いよ。支給品のは全部使ったのか?」
「賭に負けちまってよ、煙草も箱事取られた。紙煙草も作ろうにも上手くできねぇよ」
兵士の視線が互いの目に向いたのを確認したストアーは一気に走り抜けた。
当然の物音に気付いた橋の家にいた兵士達は小銃を手に取り、辺りを警戒する。
再び配管工の中へと入り、大量の死体袋が散乱した場所に出た。
余りの悪臭に鼻を押さえながら移動した。
「なんという悪臭だ・・・!これ程の人間が死んでいるのか・・・?」
余りの光景に口を開いてしまうストアー、上の方に視線を向ければ、まるでゴミ収集車がゴミでも排出するかのようにトラックの荷台を傾け、下へと大量の死体袋を落としていた。
周囲には、マスクをした兵士が死体が下にある大量の死体袋を眺めている。
「死体が溢れてきたな、向こう側に行けるほど積もるんじゃないのか?」
「おい、そんな状態になったらこの国はお終いだぞ!その前にみんな燃やしちまうよ」
上から聞こえる声が、ストアーの耳にも入ってくる。
身を底止ながら様子覗っていると、兵士達とトラックは去っていった。
ストアーは立ち上がり、山のように積まれた死体袋を踏みながら進む。
そしてまだ新しい死体袋の中から、見覚えのある女性の手を偶然にも発見した。
「この手は・・・!?」
声を上げたストアーは直ぐに近付き、死体袋からはみ出ている手を確かめた。
その手の正体は息絶えた自分の妻であった。
何かの間違いだと思って死体袋を開けてみると、自分の妻であり、隣の死体袋の中身は自分の子供達だった。
「う、嘘だ・・・こんなの事・・・ありえない・・・!」
彼にとっては余りのショックであった。
この救出任務の失敗で主に自分の家族を八つ当たりで殺され、さらには友を酷たらしく殺された。
一連の不幸に、空に向けて大声で泣き叫んだ。
「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
暫く泣き叫んだ後、手負いにも関わらず自分の家族の死体全員分を担いで、唯一残っていた地面に埋葬する。
そこへ、叫び声を聞いた追っ手の兵士達がストアーにkar98bを向けていた。
小銃を向けている兵士の顔はガスマスクで覆い隠されており、うっすらと見える眼鏡から細い瞳から目線を感じる。
「わざわざ叫んでくれて有り難いぜ。お陰で早く帰れる」
「おい、早く撃っちまおうぜ?ガスマスクを付けてても悪臭が抑えられない」
「そうだな。さぁ、早く死んでくれや」
そう言って、納得した全員が小銃の引き金に指を掛けた瞬間だった。
怒りに満ちたストアーは、小銃を構えていた兵士達を手刀で切り裂いた。
上半身と下半身を切り裂かれた兵士達は、断末魔を上げることもなく息絶え、上半身を失った下半身の根本から血が噴き出して地面に倒れ込む。
全員分の死体が地面に倒れた後、ポケットからマリの左手を取り出して食べ始める。
左手の一部分を喉の奥へと入れた瞬間、ストアーの傷は一瞬で完治、体力も完全に回復して力が漲り、さらに若返った。
試しに近くにあった建物の残骸を粉々に粉砕、自分が一段階強くなったと確信する。
「凄いパワーだ・・・!だが、これでもあの女は倒せん。もう少し強く成らねば・・・!」
暫し頭を抱えて考え込んだ後、あることを思いついた。
「そうだ、ルリを喰えば奴を越える力が手にはいるかも知れない。そうなればあの世界に戻らねば・・・!」
家族を無惨にも殺したマリへの復讐の為、拳を強く握るストアー、直ぐに行動に移すことにし、死体置き場から去ろうとする。
道中、ルリが居る世界の奴ら複数と遭遇したが、睨み付けた。
驚くことに道を塞いでいた奴らは、ストアーに道を空けたのだ。
「(死体共に命令が出来た・・・?これならあの世界で死者の軍隊を創ることも出来るぞ!)」
新たな能力を発見したストアーは、夜の廃墟を進む。
向かう途中、兵士達の会話を耳にする。
「確か、あの金髪碧眼の女が来てからこの街は荒れ始めたな」
「そうだ。軍装がこのロングコートに変更になったのは、あの女が来るって知らせが入ってからだ」
「これは我が国軍新型のロングコートじゃないのか?この弾帯も小銃も」
「馬鹿言え、こいつは払い下げだぞ」
「新型じゃないのかよ。一体何処の国だ?」
「規制が厳し過ぎる国家さ。旅行でつまらないことナンバーワンのな。それより早く奴を見つけて殺そう、ここはマスクをしてても匂う」
会話を盗み聞きしたストアーは、異世界へと繋がる扉がある地域へと急いだ。
一方、モールから脱出した小室一行は、枢軸国軍混成戦闘団が壊滅した公園にいた。
激戦を物語るかのように、あちらこちらで枢軸国軍や連合国軍の兵器の残骸がある。
しかも戦後型の戦車まであった。
転がっている死体もそのままであり、奴らに喰われた形跡もなかった。
ここへ彼等が立ち寄ったのは、補給と一時的な休息のためだ。
幸いにもワルキューレは枢軸国軍の兵器は回収されて居らず、自分達の兵器は一部放棄したままだ。
何名かが歩哨に立ち、周辺に気を配る中、モールの脱出で力を使った者達が地面に敷いたシーツの上で寝転がって身体を休めてる。
あさみを射殺したことがショックであったコータは、奴らの集団に目を付けるなや、大きな声を上げなげて突っ込んでいった。
近くで手伝いをしていた孝が、奇行に走ったコータを見て、不審に思う。
「なにをやってるんだ平野は・・・!?」
「良いから止めろ!」
誰かが声を上げた後、一人の日本兵が、叫びながらUMP45を乱射するコータの後頭部を三八式歩兵銃の銃座で殴り、大人しくさせる。
次にドイツ兵がやって来て、コータを回収し、シュタイナーの前に差し出した。
「小僧、何のつもりだ?」
シュタイナーの問いに黙って一切答えないコータ、隣にいた部下の一人が蹴り付ける。
「答えろ、この豚めぇ!」
蹴られたコータは、吹っ飛んで仰向けになる。
それと同時に補給が終わり、マイヤーの声が上がる。
「出発するぞ、全員車両に乗り込め!」
「ふん、どうやら死に急いでいるらしいな。全員、搭乗急げ!」
「「「
孝は仰向けになったコータを担いでハンビィーに乗せた後、自分の軍用バギーに乗り込み、激戦区を後にした。
ここでコータ回復を入れるか、警察署に行くか・・・