森に身を隠したZbvを含む枢軸国混成連隊。
周囲から侵攻軍の空挺部隊が居るが、一切混成連隊には気付かない。
もちろんこの混成連隊は、ワルキューレの日本支部に察知されていた。
「EMPの後にトチ狂った反日国家同盟軍の侵攻、次は枢軸同盟と来たか」
森に車両を隠そうとする枢軸国の兵士達を見ながら、アレクサンドラは呟く。
コンピューターに向き合うオペレーターの方へ視線を向けると、指示を出そうとする。
「近くに展開できる部隊は?」
「腿隊長の部隊がEMPの範囲外に待機してます」
「よしそれを動かせ。航空機の使用も許可する」
「
この指示にオペレーターは送信しようとしたが、士官が異議を唱える。
「お言葉ですがアレクサンドラ指揮官、この部隊は二級戦火器部隊です。傘下に最新兵器の部隊がありますが、一個小隊だけです」
「相手は第二次世界大戦下の枢軸国軍、数はこちらの方が上だ。問題はない」
士官はアレクサンドラの言ったことが、正論であったことから引っ込む。
次に彼女は、侵攻部隊の対処に乗り出す。
「沿岸部に上陸してくる侵攻国家の部隊は、我々より数は上だな。周辺国家に展開している部隊はこちらに回せないのか?」
「フィリピンやベトナムに展開している重装備部隊七個師団、空挺部隊二個師団、砲撃部隊一個旅団、対空部隊二個旅団、航空部隊五個軍団が借りられますが」
アレクサンドラは、煙草に火を付けながら答える。
「直ぐに投入だ。九州や四国、北海道にいる自衛軍は動かん。我々だけで本州に居る侵攻軍を片付ける」
指示に従った通信士やオペレーターはそれぞれの仕事を始め、司令部からの指示を受けた腿戦闘指揮官率いるM50/M51スーパー・シャーマン戦車二個中隊、センチュリオン中戦車二個中隊、 歩兵戦車ヴァレンタイン三個中隊、ブラック・プリンス歩兵戦車三個中隊、シャーマン・ファイアフライ中戦車一個大隊、シャールBIS三個中隊、ARL44一個中隊、M5A1ハーフトラック三十両、ユニヴァーサル・キャリア四十両、ダイムラー装甲車七両、M10C17ポンド対戦車自走砲一個中隊からなる旅団が、森に潜む枢軸国混成連隊殲滅するべく床主へと向かっていった。
本州に降下した侵攻軍の空挺部隊を排除すべく、他の機甲部隊や歩兵部隊も出撃していた。
航空部隊も一緒である。
「戦闘が激しくなってるな、それに空中戦も行われている。何かあるな」
上空を見上げたシュタイナーはそう呟いた。
来た方向に地雷原を構築しており、いつでも迎撃の用意は出来ている。
その頃、攻撃部隊の指揮官である腿は、向かう途中に下級兵士二個師団を自分の指揮下に入れ、シュタイナー等が居る森へ、援護も付けさせずに突撃させた。
「情報ではあの森に連隊規模の部隊が潜んでいるな。まずは小手調べだ、行かせろ」
M51スーパー・シャーマンのキューポラから腿は指示する。
前方で固まっていた様々な人種の男ばかりの集団である。
一人が撃ち殺されたと後にシュタイナー等が居る森へとライフルを持って突っ込んでいった。
「俺達は解放されるんだ!!」
『オオォー!!』
銃剣を付けたモシン・ナガンM1891/30やスペイン製の旧式小銃を持った集団が雄叫びを上げながら森へと突っ込む。
当然ながら彼等の進む道には対人地雷が仕掛けられており、それに気付かず突っ込んだ男達は次々と命を落としていく。
爆発の連鎖が起き、人間が高く舞い上がり、断末魔や声にならない叫び、腕や脚が散乱するというおぞましい光景が作り上げられている。
恐ろしくなって逃げ出す下級兵士も居たが、後方にいる戦車の搭載機銃や分隊支援火器、機関銃で撃ち殺される。
「逃げるな!恥を知らずは全員射殺だ!」
腿は拡声器を使い、下級兵士等にもっと前に進むように指示する。
もちろんこの爆音はZbv含む混成連隊に聞かれており、迎撃準備も出来ていた。
「
擲弾兵や降下猟兵、武装SSの兵士達が小銃や機関銃を構え、日本兵達も小銃や機関銃を構える。
歩兵支援用の装甲車も機銃や砲を向ける。
地雷原を突破した下級兵士達はそのまま枢軸国軍へと襲い掛かったが、弾丸や榴弾、機関砲の歓迎を受けた。
雨のように降り注ぐ銃弾の前に次々と倒れていくが、沸いてくるかのように下級兵士は現れる。
三脚付きのMG42を撃ち続けていた擲弾兵は、自分の記録を思い出す。
「まるでイワン共の人海戦術だ!」
「T34やIS-2が居ないだけマシだろう!」
隣でStg44を撃っている兵士が告げる。
やがて数時間以上は経つと、下級兵士部隊は一人も残さず全滅、林に夥しい数の死体が転がっている。
何名かは息はあるが、死ぬのは時間の問題だろう。
混成連隊の兵士達の顔に疲労が見えた。
これを予想していた腿は、自分の部隊を森へと前進させた。
「こいつ等イワンか・・・?」
「いろんな人種が混じってた。それに黒人もいる・・・今度は何が来るか・・・」
ティーガーの車内から外の様子を覗っていたアッシュとコワルスキーは気晴らしに会話し、額に汗を滲ませる。
外で小火器を構えていた兵士達は、林の向こうから聞こえてくる戦車の走行音に恐怖する。
「
「今度は戦車で来たか・・・勝つ見込みはあるのか?」
平八はMP18を構え、昭和一三年正式軍刀を抜く用意する。
日本兵達は、対戦車地雷や梱包爆弾、火炎瓶を用意し、敵戦車に肉追しようと準備をする。
やがてヴァレンタイン歩兵戦車やブラック・プリンス歩兵戦車を先頭にしたワルキューレの機甲旅団がアルベルト混成連隊に襲い掛かった。
上空からも英空軍の戦闘爆撃機ハリケーンが数十機も襲い掛かったが、対空砲の弾幕や高射砲で撃ち落とされていく。
破壊された戦車を避けようとしたシャーマン・ファイアフライが通ろうとするが、対戦車砲に次々と撃破されていき、廃車を増やしす一方。
「今度は
降下猟兵がFG42を撃ちながら叫ぶ。
枢軸国軍の歩兵部隊は疲労が溜まっていたのか、ワルキューレの狙撃兵に撃ち殺される。
横からシャールBIS重戦車三個中隊が現れた。
ディーターは直ぐに迎撃に入る。
「目標、フランス重戦車!
ヤークトティーガーの128㎜Pak44L/55砲を防げるはずもなく、前面装甲でさえ、撃破される。
その後ドイツ駆逐戦車部隊の次々と撃破されていくが、別方向からM50スーパー・シャーマンが現れ、Zbvのティーガーが撃破される。
「うわぁ!なんだあの長砲身は。シャーマン戦車の新型か!?」
ティーガー後期型のキューポラから見ていたアルベルトは、スーパーシャーマンに驚く。
無謀にもⅢ号戦車や九七式中戦車チハが立ち向かうが、後続の戦車にあっさりと破壊されてしまう。
Ⅳ号戦車が撃破された後、ARL44重戦車が現れ、近くで防戦していた三式中戦車チヌもあえなく撃破される。
「圧倒的な戦車じゃないか・・・!」
次々とやられていく自軍や友軍の部隊を見ながら、佐武郎は絶望する。
対戦車猟兵や日本兵の肉追攻撃で、ワルキューレの戦車は次々と潰されるも、後から来た歩兵に寄って駆逐されていく。
「目標はあの知らない型の戦車だ!フォイヤー!」
ブルクハイトは、防空部隊に近付こうとするセンチュリオンに砲撃を命ずる。
側面から撃たれたセンチュリオンは大破、燃え盛る戦車から女性戦車兵の乗員が出てくる。
ヴェスペやフンメルの自走砲部隊がスーパーシャーマンに寄って全滅させられると、防空部隊に危機が迫る。
この状況を重く見ていたシュタイナーは、どうするかを考え始める。
平八は向かってくるワルキューレの歩兵部隊に驚きを隠せない。
美人な女性ばかりであり、少し斬るのを躊躇ったが、自分が身が大切と考え、切り捨てる。
「どうして女ばかり出てくるんだ!?英仏の男共は何をしている!」
一〇〇式短機関銃を撃っていた中隊長柴田貞夫がそれに答える。
「さぁ?どうやら敵軍は女ばかりのようで、最初に突っ込んできたのはおそらく使い捨ての兵隊かと!」
その答えに納得した平八はM5A1ハーフトラックの乗員を排除し、無力化した。
戦闘は数時間にも及び、平面には両軍の死体が折り重なっていた。
枢軸国軍の装甲車の大半が撃破されており、もはや戦闘能力は失せており、防空部隊の半分も潰され、ハリケーンの襲来を許してしまう。
「も、もう駄目だ~!おらは死にたかねぇ~!」
一人の日本兵が逃亡したが、ワルキューレの狙撃兵に頭部を撃たれ、地面に顔を突っ込む。
第二次世界大戦最強を誇るティーガーも、戦後型の戦車に勝てるはずもなく撃破され、残りはアッシュ達とアルベルトのティーガーしか無い。
重戦車並の装甲を持つパンターですら歯が立たない、Ⅲ号戦車はもう既に全滅してしまっている。
「直衛戦車長!このままでは・・・!」
「クソォ、ここまでか・・・!特攻するしかあるまい・・・!」
チハ新砲塔型で奮闘していた直衛文太は、圧倒的な高性能重戦車ARL44に突っ込んでいった。
「うぉぉぉぉ!!お国のためにぃぃぃ!!!」
凄まじい集中砲火を浴びるが、高速で突っ込んでくるために、狙いが合わず、内一両がチハの特攻で大破した。
チハは全滅し、Ⅲ号突撃砲もほぼ壊滅、Ⅳ号戦車の全滅も間近である。
ヘッツァーはワルキューレの歩兵部隊や、援軍に来たAMX-30四両に為す術もなく撃破され、枢軸国軍の壊滅も時間の問題だろう。
指揮車から降りたシュタイナーは、アルベルトが乗るティーガーへ向かったが、ティーガーがタイフーンに寄って撃破される。
キューポラからアルベルトが出てきたので、直ぐに彼を安全な場所に運び込む。
「
「うぅ・・・もうこの部隊は終わりだ・・・」
「大丈夫ですか!?中佐殿!」
苦しみながら言った後、平八が日本軍の衛生兵を連れて来て、治療させる。
一方、指揮車に残っていたシュルツは、指揮車が撃破されると、直ぐに脱出、卑怯にもその場から逃げようとしたが、目の前に現れたボロボロの幼い戦車兵の少女にH&K社の自動拳銃P9Sを向けられ、命乞いを始める。
「ひっ!う、撃たないでくれ!家族が居るんだ!分かるだろ!?」
懐から自分の家族が写った写真を取り出し、分かるように少女に伝える。
その少女はシュルツを睨み付ける一方。
「(く、クソ!どうしてこの俺がこんな小娘に命乞いをしなきゃいかんのだ!だが銃を向けられていては動けん)あぁ、そうだ!チョコがあるんだ。食べるか?」
写真を仕舞って支給品のチョコを取り出したが、少女は全く拳銃を下げない。
しかも撃鉄を引き、シュルツのチョコを持つ右腕を撃ち抜く。
「グァァァ!!う、うわぁ!?た、頼む!殺さないでくれ!!」
味方が壊滅状態の中、この男は拳銃を向ける少女に失禁しながら、情けないにも程があるほど屈辱的に命乞いをしていた。
まるでゴミを見る目線の様に少女は、シュルツの頭部に狙いを付けると、撃鉄を引こうとしたが、突如ワルサーP38の銃声が聞こえ、少女は糸が切れた人形のようにその場に倒れ込む。
何が起こったのか分からないシュルツは、周囲を見渡し、自分の隊長であるシュタイナーが目に入った。
「シュルツ、貴様生きていたのか。丁度敵の攻撃を薄くなっている、脱出するぞ」
「え?あ、あれ。あれ?」
シュタイナーはそのまま、まだ無事なSdKfz 251とトラックを掻き集め、脱出の準備をする。
気付けば殆どの混成連隊が壊滅しており、防空部隊は全滅、駆逐戦車はⅣ号駆逐戦車、ヤークトパンター、エレファントは全滅、あれだけ居たヘッツァーも全滅した。
ヤークトティーガーのみとなり、ブルクハイト等が乗るティーガーも大破した。
「うわぁ、脱出しろ!」
大破したティーガーから脱出したアッシュ達は、直ぐにシュタイナーの元へと集まった。
そこには自分等の隊長であるアルベルトが、もうじき息を引き取ろうとしていた。
「お、俺はもう持たん・・・そしてこの部隊はもうじき壊滅するだろう・・・これより部隊は解散、生き残って脱出するのも良し、敵に特攻するのも良し、自殺するのも良しだ・・・そう言えば我々は本来死ぬべく存在にだったハズだな・・・では、全隊員の無事を祈る」
アルベルトは遺言を残した後、息を引き取った。
見ていたシュタイナーは既に息絶えた彼から認識票を取ると、その場に居た者達に脱出の準備をさせる。
「脱出するのは今がチャンスだ。死にたい者は敵に特攻しろ。生き残りたい者は俺についてこい」
ディーター、平八、佐武郎、貞夫はシュタイナーについていくことにした。
もちろんZbvメンバーも彼に続き、残りの枢軸国将兵達も脱出することにする。
「よし、装備は出来るだけ回収して脱出だ。直ぐに取り掛かれ!」
シュタイナーの怒号で装備を掻き集める枢軸国将兵達は、直ぐさま作業に取り掛かる。
アッシュとコワルスキーは、四式自動小銃、九九式軽機関銃、九六式自動砲を回収しながら疑問に思う。
「そう言えばコワルスキー」
「なんだアッシュ」
「シュタイナーの奴は脱出先を分かってんのかな」
「多分分かってるだろう」
そんな彼等が会話を交わしている間に、ある程度の装備の回収は成功し、生き残った戦闘車を前にしての脱出が行われた。
移送できない重傷者は一人一一年式発煙手榴弾を一個渡され、その場に放置される。
一方の補給と整備をしていたワルキューレの機甲部隊は、混成連隊の残存部隊が脱出していることに気付く。
「報告します。敵軍が脱出しております」
「この腿から逃げられると思っているのか!よし、追撃隊出撃」
「出撃できる車両が少ないです」
「煩い!何が何でも追撃だ!」
腿の指示通り、動ける車両は直ぐに追撃に出た。
これに気付いた貞夫は時間を稼ぐべく、無謀にも一人で立ち向かった。
「ど、何処へ行く気だ!?」
「逃げる時間を稼ぐためです!!」
三式中戦車のキューポラから佐武郎が、貞夫を静止しようとしたが、彼はスーパーシャーマンに爆弾を抱えて肉追し、シャーマンを巻き込んで自爆した。
前方からセンチュリオン四両があり、先頭に居たⅣ号戦車を撃破、プーマを撃破すると、兵員や物資を載せたSdKfz 251とトラックを砲撃しようとしたが、ヤークトティーガーに前に居たセンチュリオンが撃破し、次にⅣ号戦車、Ⅲ号突撃砲、パンター、佐武郎の操る三式中戦車の同時攻撃で撃破、残り二両はパンツァーファウストやパンツァーシュレックに寄って撃破される。
遂に包囲下を脱出することに成功したシュタイナー等であったが、補給を終えたタイフーンの攻撃でパンターを失う。
「前方のパンターが大破しました!」
「構うな、進め!」
SdKfz251に乗るシュタイナーは冷静に指示した。
その後、空は夜空に染まり、周囲から侵攻軍とワルキューレの戦闘などが見えるが、彼等は気にせず、先客が居るショッピングモールへと進んだ。
燃料切れとなったⅣ号戦車やⅢ号突撃砲、その他の車両は道端に放置し、遂にモールへ到達。
追撃の気配が無いと分かると、そのままモールの中へと足を踏み入れ、思い掛けない出会いをしたという。
Zbv壊滅編終わりました~
なにやら物足りない感がありますが・・・次は本編です。
後、生き残っているのは旧日本軍とドイツ軍合わせて20人足らずです。