学園黙示録 ゲンブンオブザデット   作:ダス・ライヒ

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ドイツ語が出ます(は?

そして台詞が改変あり・・・(記録が乏しい・・・


見せしめ

リヒターは、集まる避難民の前で、堂々と立って、演説をしている壮一郎に視線を集中していた。

そしてフォークリフトが猛獣用の檻を壮一郎の元へ運んできた。

中には一体の黒服を纏ったゾンビが鉄格子を叩いて中から出ようとしている。

先の物資調達で壮一郎を庇い、ゾンビに噛まれた彼の部下だ。

ベランダからは小室一行が様子を伺っている。

 

「まさか・・・」

 

壮一郎の行動にリヒターはあることを思いついた。

それは見せしめの為に元部下のゾンビをここの群衆の目の前で殺す事、そして彼の予想通り、壮一郎は鉄格子に囚われていたゾンビを解き放つように近くにいる部下に命じた。

 

夫人(イーレフラウ)百合子、まさかと思うが子供が見ている前で・・・統治者(ヘルシャー)壮一郎はあの生ける屍の首を刎ねるおつもりか?」

 

隣で見守る百合子に質問した。

彼女も分かっていたらしく、それを冷静に答える。

 

「えぇ、壮一郎さんは元からそのつもりでしょうね」

 

「あの者達に取っては、正気の沙汰ではないと思うが・・・」

 

百合子の答えにリヒターは、演説をする壮一郎を嫌な目で見る左翼団体こと市民団体の人々を見た。

そして檻から鍵が外されると、中にいたゾンビは扉を開けて壮一郎に一直線に襲いかかる。

壮一郎は腰に差した刀を抜き、ゾンビの首を飛ばした。

その時、赤子を抱いていた女性が哺乳瓶を落とした為か、壮一郎以外の全員の視線が落ちた場所に向かう。

直ぐに壮一郎に視線を戻したのは、リヒターと百合子だけであった。

頭を飛ばされた死体は壮一郎の前に倒れ込んだ。

赤子が泣く中、ゾンビの頭は廷内の噴水に浮いていた。

ベランダに居る全員は噴水に視線を集中する。

その死体を見た後、壮一郎は集まる避難民に視線を移し、演説を再開した。

 

「素晴らしい友、愛する恋人に家族であった者でもあろうと躊躇わずに倒さなければならない!生き残りたければ・・・戦え!!」

 

演説を終えた後、壮一郎は刀を鞘に戻し、百合子やリヒター、部下達と共に無言で去っていった。

壮一郎の行為を見ていたリヒターは「これは逆効果だ」と市民団体を見ながら彼に伝えた。

 

「失礼、ヘルシャー壮一郎。あれはあの平和主義団体からして、逆効果だ。あの者達は生ける屍をまだ人間と思っている」

 

「承知の上だ、我が友リヒター」

 

答える壮一郎に便乗するように百合子が答える。

 

「壮一郎さんも分かっています。あの市民団体の皆さんがこの世界の現状を理解したくない事を・・・」

 

さらに百合子は続け、リヒターはそれを黙って聞く。

 

「それでも例え一人でも理解できれば、それで壮一郎さんと私達に取っては喜ばしいことです」

 

その答えにリヒターは、感激した。

 

「貴方達は立派な日本人だ、私も敬意を評そう。それよりも今の日本には、軍は存在するのか?」

 

歩きながら壮一郎と百合子に、今の日本について質問する。

第二次世界大戦末期、首都ベルリンをソ連赤軍の津波に呑まれ、ドイツ第三帝国は敗北し、欧州における戦争は終結した。

ドイツ敗北から三ヶ月後、太平洋における戦争は大日本帝国の敗北で終結。

その際日本は屈辱的な条約をアメリカに結ばれ、軍隊を取られてしまった。

数十年後、日本の統治から外れた朝鮮半島で、戦争が起こり、その際アメリカから防衛戦力を再建するように言い渡された。

それが後の自衛隊である警察予備隊の創設である。

そして冷戦の影響下でさらに防衛戦力の拡大に伴い、自衛隊と成った。

冷静終結後の現在隣国の危険性も含めてなのに予算が削減されている・・・・・・。

それとマッカーサーのアテは外れた・・・・・・。

 

一方、ベランダでは、小室一行の一人であるコータの様子がおかしかった。

 

「刀じゃ効率が悪すぎる・・・」

 

壮一郎の行為を見ていたコータはボソリと呟いた。

それを冴子が前に出て意見した。

 

「決めつけが早すぎるよ平野君」

 

「でも、日本刀の刃は骨に当てたら欠けますし、3、4人も切ったら役立たずに」

 

「たとえ剣の道であっても結果とは乗数なのだ。剣士の技量!刀の出来!そして・・・精神の強固さ!!この3つが高いレベルにあれば何人切ろうが刀は戦闘力を失わない!」

 

その冴子に乗じてパッキーが付け足す。

 

「その大和撫子の言うとおりだ。優秀な兵器は、優秀な人材に寄ってさらにその性能を格段に上げる。違うか?」

 

パッキーが日本刀を兵器に例え、意見を述べた後、次に正徳が口を開く。

 

「確かに刀は3、4人を斬っただけで終わる・・・だが、冴子嬢とパーキンスの言うとおり技量と高い精神力があれば刀は何度でも斬ることが出来る!」

 

刀を持つ2人は、コータの意見を否定した。

 

「血油に勝てる訳が・・・」

 

「料理と同じだよ、良い包丁を腕の良い職人が用いた時刃に余計な油が残らない、日本刀と人体でもその理屈はかわらん」

 

「でも、でも銃の方が効率が良い!銃の方が奴らから距離を保てば安全に始末できる!」

 

コータは銃の素晴らしさと効率の良さを口で述べる。

周りにいた軍人達は、そのコータの言動に呆れて物が言えない。

そんな彼を追い詰めるような発言をルリはしてしまう。

 

「でも鉄砲なんて弾が切れたらただの長い鈍器だよ」

 

「ッ!?」

 

その発言に動揺するコータ、さらにルリは続ける。

 

「それに一々整備しないと行けないじゃない。こんな世界でそれをする暇なんてあるの?少ないでしょう。まぁ、弾が切れたら殴ればいい話だけど」

 

愛らしい表情で言われたコータはショックを受けた。

呆然とする彼に孝が声を掛ける。

 

「お、おい。平野・・・もういいんじゃ・・・」

 

宥めようとする孝の手をコータは振り払った。

 

「煩い黙れッ!銃を禄に扱えない奴が言うな!それに小娘共もだ!お前とお前!」

 

コータの堪忍袋の緒がキレたのか、孝を罵倒した後、ルリとバウアーを指差し叫ぶ。

 

「銃を大事に扱えない奴が!誰が整備してやがると思ってんだ!自分の愛銃なら整備しろ!それに鈍器代わりにするな、ボケェ!!それにそんな格好しやがって!ガン少女のつもりか!?この淫売が!!」

 

「平野!あんたいい加減に・・・」

 

それを見ていた沙耶は止めようと思ったが、ルリとバウアーを罵倒した後、部屋を出て行った。

その場の空気が悪くなり、軍人達はコータの行動に唖然する。

原因を作ったルリはと言うと、何が起こったのか分からなかった。




次回は高城のパパとリヒター登場。

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