SR-10やM1A1の全ての弾倉に7.62×51NATO弾を入れ込み終える。
同じく弾倉に7.62㎜弾を入れていた孝がコータに質問した。
「それにしても平野、お前こういうのに詳しいな。モデルガンで練習したのか?」
「いや、本物だよ。アメリカに居る間に民間軍事会社ブラックウォーターの本社で、一ヶ月教えて貰ったんだ。その担当していたインストラクターがたまたま元デルタフォースの隊員だったんだ」
「す、凄いな・・・」
もはや彼にコータの話にはついていけない。
「これはボウガンか?」
ついていけなくなった孝は銃器と同じロッカーに入っていたボウガンを持つ。
「それはクロスボウ、ロビンフットの子孫が作った奴だ。バーネット・ワイルドキャットC5で有名な狩猟クロスボウなんだ」
コータはクロスボウの説明を終えた後、ルリとバウアーが使っていたUMP45やSR-3M、P232やMK107の弾込めを始める。
「グフフ、幻のモーゼルC96じゃないか・・・中国製の十七式拳銃しかないが、まさか生きてる間に生を触れるなんて・・・」
M107の弾倉に5.56×45㎜NATO弾を途中で止めてバウアーのモーゼルC96に不気味に笑いながら触れ、その後彼女等の銃を取ってはブツブツと呟いている。
孝に取っては異様な光景であり、引きそうな光景だ。
その時、浴室から女性陣の声が聞こえてきた。
「流石に騒がしすぎだろう」
「いや、大丈夫なんじゃない?現に騒がしいのは橋の方だし」
「それもそうだな」
「今こそお約束の時間だ!勇者小室よ!」
「だから行かないと言ってるだろ!」
孝の突っ込みが終わった後、付け放しにしていたテレビから抗議の声が聞こえてきた。
『警察の横暴を許すなぁー!』
『許すなー!』
直ぐに2人はテレビがあるリビングに向かう。
映像には橋を封鎖する警察とワルキューレの部隊に対する抗議が行われていた。
映像を見た後のコータはベランダに向かい、双眼鏡を取り出して橋の様子を窺う。
「地獄の黙示録でこんなシーンが・・・」
双眼鏡から見た橋の状況にコータは口を漏らす、孝は映像に映し出されている抗議デモに注目する。
『我々はアメリカ合衆国と日本が共同で開発した細菌兵器に抗議する!』
「連中、設定マニアかな?」
「どちらにしろ目の前から逃げようとしてる・・・」
その孝の言葉の後にベランダからコータが戻って口を開く。
「目の前から逃げて警察に八つ当たりか・・・これからどうなっていくのやら」
橋に視点を移そう。
『殺人病患者に暴力を振るうな!』
橋の上では左翼団体や街から非難してきた人々が抗議デモを行っていた。
そんな馬鹿げた行動を取っている彼等を見ていた西寺は怒る気にもなれない。
「馬鹿な連中だよ、歩く死人をあいつ等をまだ人と呼んでやがる。あそこに参加してる奴らはただのアホか頭のイカレタ奴だけだ」
西寺は抗議デモを行う彼等を見ながら憐れな様に言う。
彼が河川敷の方を見れば、ワルキューレの部隊が架けた架橋を無理矢理渡ろうとした避難民が住宅街にある建造物の屋上にある設置されたM1917水冷式重機関銃の銃撃で射殺され、川に落ちた死体が流されていくのが見える。
他に川を渡ろうとした者も居たが、それぞれに設置された機関銃に撃たれて死んでいく。
「(架橋と川は無理だな。よし、この手で行こう)」
一部始終を安全なところから見ていた西寺は、橋の歩道に居る憲兵や歩哨に声を掛けた。
「済みません、僕は日本政府要人の西寺の息子で名前は葦塚と申します。僕のお迎えさんは居るでしょうか?」
声を掛けられたスターリングMk4を持った歩哨は日本語が分からないらしく、首を傾げる。
もう一度彼は英語で歩哨に告げたが、英語も分からないらしく苛立ち始める。
「だから迎えは来ているのか聞いて居るんだ!」
苛立った西寺は、困惑する女性兵士を怒鳴りつけた。
怒鳴られた歩哨は西寺に銃口を突き付けるが、声を聞いた憲兵に止められ、その憲兵が西寺の話を代わりに聞く。
「どうしましたか?」
「やっと碌に語学の無い受付嬢より言葉の分かる奴が来たか、俺は日本政府要人の西寺の息子善塚だ。それで俺の家の者は向かえに来ているのか?」
「確認してみます、しばらくお待ちください」
憲兵は無線機を取り出し、本部との確認を開始した。
その伝達を橋を警察と共同で封鎖するワルキューレの本部に届く。
「キレイラ16から日本政府要人の家族の迎えは来てるかと来てます」
まるでロボアニメに出てくるオペレーターの容姿をした女性兵士が本部内で指揮をするヨットような略帽を被った女性士官に知らせる。
「え、日本政府から誰か来る予定なんてあったけ?」
言った後、士官はこの橋の封鎖を担当する指揮官が居る部屋に入る。
その部屋には軍服を纏った30代くらいの美しい女性が椅子に座り、靴下を脱いだ綺麗な素足をセーラー服の少女に舐めさせていた。
その光景に士官は少し動揺するが、我に返って西寺の事を報告する。
「チェイニー大隊指揮官殿、政府要人の息子が迎えは来ているのかと聞いております」
「はぁ?そんな話聞いてないし、どうせ嘘でもついてるんでしょ。殺しときなさい」
「ハッ!手早く始末します!」
敬礼した後、士官は部屋から出て行った。
「ほら、早く全部脱いで私に抱きつきなさい」
士官が出て行った後、指揮官は女子高生に「全裸になれ」と命じ、言われたとおり少女はセーラー服を脱ぎ始めた。
一方橋では、ゾンビに噛まれた自分の子を抱いた母親が必死に助けを求めていた。
バリケードの前に居た警官達はミネベチアM60やSWM36の安全装置を外して子を抱えた母親に銃口を向ける。
「子供だけでも助けて!」
必死で助けを求めるも既に息子は手遅れであるために何もすることは出来ない。
彼等に出来ること言えば痛みを感じさせずに親子を直ぐに殺すことだ。
「これ以上近付くと発砲します!」
警告を行った後、母親が抱えていた子がゾンビ化し、母親に噛み付いた。
直ぐさま警官達は発砲を始め、抗議デモをしていた人々は銃声で悲鳴を上げている。
それでも噛まれながら母親は助けを求めた。
「止めてー!撃たないでっ!!」
幾ら警視庁が使用される殺傷能力の低い弾丸でもこれだけ撃たれれば流石に人も死ぬ、何十発も撃たれた母親は死亡したが、生ける屍と化した子は母親の肉に食らいついていた。
流石にゾンビが子供とはいえ、警官達は撃つのを躊躇ったが、鉄骨上にいるワルキューレの兵士達は自動小銃や突撃銃を容赦なく撃ち込む。
上から放たれる雨のようなライフル弾に生ける屍の子は元の形が無くなってしまった。
そして橋に近付こうとするゾンビ達にもライフル弾や狙撃銃などで倒れていく、もちろん、一部始終は左翼団体に見られていた。
彼等の矛先にワルキューレも向けられる。
「無差別に発砲したぞ!我々はあの民間軍事会社に即時日本から出て行くように政府に要請する!」
「出て行けー!」
「日本から出ろ!戦争屋め!」
「虐殺者は出ていけ!」
この抗議の声にワルキューレの兵士達は無視するか、ジャップやイエローモンキーと叫けぶだけで終わる。
丁度その時、橋にオメガ・グループが到着した。
「煩い抗議デモだ、これじゃゾンビ達が集まってきちまうよ」
「高校生の頃、家の前でも似たような抗議をしてたぞ。煩くて勉強も出来やしない」
抗議デモを見ながら小松と平岡の思い出話をし始める。
「架橋には軽装備なネイちゃん達が一個小隊、河川敷にいるのは軽装備兵多数に重装備兵少数」
「橋の上でなんか起きそうだから、起きるまで待つか」
現状を確認した彼等は作戦を練る。
短すぎる作戦会議を終えた後、小松は田中に作戦の事を告げた。
「分かりました、河川敷にいる女性兵士達はやります。他の隊員に伝えましたか?」
「いや、まだだけど」
「ハァ~ホントにこの人は・・・」
田中が聞こえないようにため息をついて文句を言った後、小松が作戦に参加している全オメガ隊員に通達する。
暫く待ち続けていると彼等の目標である西寺が、ワルキューレの軽歩兵に掴まれながら河川敷に連れて行かれるのを目撃した。
「どうする小松、あれは殺されるぞ?」
「もうやるしかねぇな平岡。オメガ10、あのデモのリーダー格を・・・」
『おい、オメガ7。俺は撃つつもりじゃないぞ』
「うだうだ言ってないで早く撃てよ、任務の障害は排除するんじゃなかったのか?」
『し、しかし・・・』
通信機の向こう側で口論をしている間に、デモのリーダー格の男が年輩の警官に射殺された。
それと同時に設置されていた機関銃が火を噴き、兵士達が持つ銃がデモ隊に向けて発砲を開始される。
彼等は逃げようとするが、逃げる先にゾンビ達が居るので逃げられない。
「その必要はないみたいだ、オメガ10。行くぞ、平岡、田中」
MP5SD6の安全装置を外すと、小松と平岡は西寺が居る方向へと向かっていった。
田中もM16A1の安全装置を外してから、M203グレネードランチャーで河川敷にいるワルキューレの兵士達に向けて放った。
飛んでいったグレネードは何人かのワルキューレの兵士達を殺す。
直ぐに兵士達は警戒態勢に入るが、指揮官や重歩兵が小松や平岡、他のオメガ隊員に射殺されているためにパニックに陥る。
西寺を射殺しようとしていた軽歩兵は手に持つAKS-74uを西寺に撃とうとしたが、小松のオメガ使用のP220に撃たれた。
「な、なんだ!?一体何がどうなって!ウ!」
敵を倒しながら来た平岡に袋を被らされた後、彼は暴れるが、小松と平岡に抑え込まれる。
西寺を無理矢理抑え込みながら小松と平岡は田中や他のオメガ隊員に援護されながら河川敷を急いで離れた。
デモ隊の掃討を行っていた橋の上の部隊もオメガに気付いたのか、攻撃をしようとしていたが、空高くに撃ち込まれた閃光弾で何人かが麻痺して一時的に混乱状態になる。
「早くづらかろう!連中、ヘリまで投入しそうだ!」
暴れる西寺を抱えながら小松達は街の奥へと消えた。
視点を孝達に戻そう。
「橋で一体なにが起こってるんだ・・・?」
「うわぁ~吹っ切れて殺しちゃいましたね~」
突然ルリの声が後ろから聞こえてきたため、孝とコータは驚いて机に頭をぶつける。
直ぐにルリの方を見た。
ルリの格好は家政婦の服装、今で言うメイド服であった。
お次はヤバイかも・・・