セルベリアVSマクシミリアンです。
逃げていく女性兵士達を見ながらルリは、死んだ兵士から衣服を拝借してバウアー達との合流に向かった。
所変わって東京に居たオメガ・グループは、マクシミリアンが居る無人島へと向かう準備をしていた。
「また任務かよ・・・全くどれもこれもゾンビの所為だぜ」
装備を纏めた小松は悪態付きながら何時でも離陸可能なCH-53へと他の隊員と共に向かう。
「もうすぐ終わるだろう。それまで我慢しないとな」
平岡は小松の肩を叩きながら笑みを浮かべて告げた。
田中の方はもうすぐこの地獄が終わるとホッとしている。
定員分の人数が乗り込んだ知らせを聞いた機長は、後方ハッチを閉めてから操縦桿を握り、CH-53を離陸させた。
機内で左右の席に座る89式小銃、ミニミ軽機関銃、MP5SD6、AT4等の完全装備のオメガの隊員達は雑談を交わしていた。
「これで最後だといいだけどな」
「俺もそう思いたいぜ。このところ俺達引っ張りだこだったし、極秘部隊だってのに一般の部隊とまで組まされて事もあったしな。給料はもちろん多額だよな?」
腕組みをしながら他の隊員と会話していた小松は平岡の方を向いて、彼に話し掛けた。
「分からんぞ・・・ゾンビ発生騒動が起きてから色々と起こってきたから。復興予算で手当なんか出ないかもしれないぞ」
平岡の返答を聞いた小松を含めた隊員達は怒りの声を上げた。
「おいおいマジかよ、あんだけ使いぱっしりやがって!」
「給料が出ねぇ時はマジ止めてやんだからな!」
機内で騒ぎ出し始めた為、部隊長であるオメガ6が静止の声を上げ、彼等を黙らせる。
「貴様等黙らんかっ!給与はちゃんと出るはずだ。俺が上と掛け合ってみるから、任務に集中しろ」
その言葉で騒ぎが収まったが、小松はイマイチオメガ6の言葉を信用していなかった。
「(ホントに給与は出るんだろうな?)」
睨み付けながら心の中でそう思う小松。
かくして、オメガ・グループを乗せた二機のCH-53はマクシミリアンとハナが向かった無人島へと急いだ。
一方、バウアー達と合流したルリは、そのまま彼等と一緒に目的地である港の近くまで到着。
後数㎞と言う距離までに近付いた途端、意外な人物が彼等を出迎えた。
「大尉、前方に不審な男が」
「ン、なんだあの男は?」
何とか修理したパンターG型に乗るバウアーは、代わりに砲手を務めるクルツの知らせで目的地である港の出入り口前で何かを持って立っている男を発見し、キューポラから出てから双眼鏡で持っている物を確認する。
「港の前に右手にデカイ鈍器のような物と左手に盾を持った男が立っている。また連中が変な奴を送り込んできたのか?」
全員に知らせ、男の様子を覗うバウアー。
それを耳にしたセルベリアも双眼鏡を取り出し、男の姿を見た。
「あ、あの男は・・・!?」
セルベリアはその姿を見て絶句した。
港の前で立っている男に見覚えがあったからだ。
その男は右手に持っている長い鈍器のような物をバウアー達に向ける。
「何をする気だ?」
バウアーは不思議と思い、双眼鏡で長い物の先端を見た。
そこには砲口な様な穴が開いており、そこに青白く光る粒子が集まっていた。
この距離からも充分に青白く光るのが見えた為、見覚えのあるアリシアは声を上げた。
「まさかあれは・・・!?」
彼女が言い終える瞬間に青白い光る粒子がバウアー達に向けて一気に放出された。
それはアリシア達ヴァルキュリア人と同じ、槍から放たれる強力なビーム砲と同等であった。
直ぐに回避命令を出すバウアーであったが、間に合うはずもなく、一瞬で消されると思った瞬間、芳佳達の魔法のシールドで守られた。
「た、助かった・・・」
ちゃっかりついてきた山本は今居るⅢ号戦車N型の車内で胸をなで下ろし、近くにもたれ掛かった。
「何と強力な攻撃だ・・・!一体奴は何者なんだ・・・!?」
「私、分かります」
「なに、分かるのか?」
アリシアがM4A1カービンを握りながらビームを放った男のことで口を開き、バウアーが男について問い質す。
「マクシミリアン・・・まさかあんな物を持ち込んでいるなんて・・・!」
その言葉にセルベリアはようやく自分達を襲撃した男、マクシミリアンと対峙する時が来たと判断した。
一気に一網打尽に出来なかったマクシミリアンは舌打ちし、バウアー達に聞こえるような声量で、彼等を褒めた。
「よもやあの一斉を防ぐとは・・・見事な物だぞ!だが、時は故に残酷、次は逃れられないかもしれん」
マクシミリアンが言い終えた後、彼の後ろから光った巨大な光った球体が現れた。
「な、なんだアレは!?」
パッキーが巨大な物を見て叫んだ瞬間、その球体が突如爆発、周りが光に呑まれていく。
「こ、これは・・・!?」
眩しすぎる光に目を手で守りながら、バウアーは乗車であるパンターごと光に呑まれた。
他の者達もその光に呑まれていく。
数分後、光に呑まれた彼等は一部の者を除く武器と弾薬とセルベリアや山本を残してその場に居た者達は影も形も無く消えた。
車内にいたはずの山本は、セルベリア以外の者達が全て消えたことでかなり動揺していた。
「あ、あれ!ブルクハイトさんは!?それに俺、確かに車内に・・・!?」
動揺する山本を他所に起き上がったセルベリアは、こちらに近付いてくるかつての上官であり、忠誠を誓った主君であるマクシミリアンを睨み付けた。
「殿下・・・いや、貴様・・・彼等を何処にやった・・・?!」
「主君に向けてその口の利き方とは・・・かつての部下とはいえ、聞き捨てならんな。なに、元の世界に帰って頂いただけだ。あの小娘を除いてな」
訳を話した後、マクシミリアンはセルベリアに槍を向けるなり、砲口からビームを彼女に向けて放った。
直ぐに山本は退避し、危機一髪回避したセルベリアはM249を持ち、マクシミリアンに向けて撃つ。
直ぐにマクシミリアンは飛んでくる銃弾を盾で防御し、ヴァルキュリア人と同じ蒼い炎を纏ったが、その前に何発か被弾した。
「ぐっ、そんな物で!」
盾で
ビームが放たれたと同時に射撃を止めてビーム攻撃を回避しようとするセルベリアであったが、回避する際ビームがM249に命中、軽機関銃を失った彼女は次に背中に掛けてあったバレットM82A1を取り出し、安全装置を解除して、マクシミリアンに向けてフルオートで撃ち始める。
12.7㎜弾を防いでいるが、流石に対物ライフルのフルオートは防ぎきれるはずもなく、やや怯んでいる。
「小癪なマネを・・・!」
盾で十発分を防ぎきったマクシミリアンはセルベリアに向けて突進した。
弾切れになったバレッタM82A1を捨てたセルベリアは直ぐSTIナイトホーク4.3を左の脇の下にあるガンホルスターから取り出し、ひたすらマクシミリアンに向けて撃ち続けた。
だが、背中に背負っている装置のお陰で人造的ヴァルキュリア人化しているマクシミリアンには効かず、銃弾が弾かれるばかりであった。
「そんな物は効かん!」
右手に持った槍で横っ腹を強く殴られたセルベリアは吹き飛んだ。
ボールのように地面に強く何度も叩き付けながら跳ね飛び、暫ししてから止まった。
「骨の何本かが折れているな・・・それにその衝撃で全身の骨が折れているかもしれん。それでも私とまだ戦うか?」
マクシミリアンは見下した表情で、地面に仰向けで倒れるセルベリアを見た。
それでも尚立ち上がろうとする彼女に小さく息を吐いた後、セルベリアにヴァルキュリア人に成ることを進めた。
「その怪我では恐らくまともに戦えんだろう。槍と盾はあるはずだ、ヴァルキュリア人と成り、余と等しく戦え」
血反吐を吐きながら立ち上がるセルベリアを見ながら告げるマクシミリアン。
起き上がった泥と血塗れの彼女の手に槍と盾があることを目視したマクシミリアンは笑みを浮かべながら褒めた。
「その息だ。そうでなくては拾った意味がない!」
ヴァルキュリア人となったセルベリアに向けて槍で集中砲火を浴びせるマクシミリアンであったが、相手は本物のヴァルキュリア人であり、その攻撃は容易く回避される。
「クッ、流石は本物。だが、余は負けん!!」
どこから来るのか予想して、マクシミリアンは身構えたが、その強力な攻撃は防ぎきれるはずもなく、形勢が逆転した。
「(何という激痛・・・これが本物のヴァルキュリア人か・・・!)」
少し距離を置いてから反撃に転じようとするマクシミリアンであったが、本物は高速で動ける上、パワーも人造とは桁違いである為、回避された挙げ句、連射ビームを諸に食らった。
防ごうとするマクシミリアンだが、人造とは段違いの火力に耐えきれず、装置が故障。
背中に背負った装置が煙を上げ、結果的にパワーを失ったマクシミリアンは凄まじい副作用に耐えきれず、地面に膝を着いた。
「やはりこの人造装置で本物と一戦交えるのは無理であったが・・・こうもあっさりやられるとは・・・無念・・・!セルベリアよ、早くトドメを刺すのだ。激しい頭痛に嘔吐、それと体中が死ぬほど痛い・・・さぁ、怒りに任せて余を楽にするのだ・・・早くしろ・・・!ゴフッ!!」
血反吐を吐きながらセルベリアに瀕死の自分にトドメを刺すようせがるマクシミリアン。
だが、セルベリアはトドメを刺すこともなく、ヴァルキュリア人から人に戻って、これから死に行く彼の姿を哀れみを込めた瞳で見ているだけだった。
「何故だ・・・何故殺さない・・・?」
「私はもう貴方の部下ではない。そして貴方の命令に従う義理はない」
「な・・・ん・・・だと・・・!?」
マクシミリアンはセルベリアの答えにショックを受けた後、大量の血を吐いて息絶えた。
完全に死んだのを確認した彼女は見開いたまま死んだ彼の瞳を手で閉じ、既に息絶えたマクシミリアンの両手を合わせて、近くにあった花を摘んで、既に動かぬマクシミリアンの上に置き、何処かへ去ろうとしていた。
戦闘が終わったのを見計らって戻ってきた山本はそんな彼女の姿を偶然にも見てしまい、声を掛けた。
「あの・・・何処に行くんですか・・・?」
「目的地だ。お前は来なくて良いぞ・・・」
その声に振り返ったセルベリアは目的地である港に向かうと返し、武器と弾薬を拾って港まで向かった。
その頃、光に呑まれて消えてしまったルリは起き上がった。
「あれ・・・ここは・・・?」
周りの景色を見て、今まで居た世界とは違う場所と気付き、何処以上がないか、自分の身体を触り始めた。
「なんでこの格好・・・!?」
触って、さっきまで着ていた服とは感触が違うことに気付き、自分の着ている服を見てみると、初めてこの世界に来た時の格好をに戻っており、彼女は驚きの声を上げた。
武器もkar98kやワルサーP38に戻っており、着ている服も旧ドイツ国防軍陸軍のM43野戦服と野戦ズボン、装備までもが初めてこの世界に来た時の格好に戻っていた。
「どうなってるの・・・?」
立ち上がって、kar98kを握りながら辺りを見渡す。
「何もかもが来る前に戻ってる・・・」
ルリはあの世界に来る前に戻っていることに驚き、その場に立ち尽くした。
彼女が居る今の場所は地下にあるなんらかの施設で、所々埃が被っており、壁にドイツ第三帝国を表す鷲が鍵十字を足で掴んでいるシンボルマークがあることから、放棄されたナチス関連の施設と分かる。
そんな立ち尽くして動揺しているルリに声を掛ける人物が居た。
「どうしたのですか・・・こんなところで・・・?」
それは女性の声であり、年齢からして少女の声だ。
直ぐに振り返って、手に握る小銃を声のした所に向けた。
「ヘッ・・・?どうしてここに・・・?」
その声の正体はあの言葉であった。
何故、あの世界の住人である彼女が居るのかがルリの脳内を支配していたが、言葉の右手に握られた鉈を見て、小銃の安全装置を外し、引き金に指を掛け、それを引いた。
次はバウアー&パッキーと各参戦作品による主人公勢によるラスボスとの最終決戦と隠しボスである言葉とルリ戦を含めた最終回です。
ただいまエンドイラストを募集中~
バウアーとウサギのパッキーだけ書いて貰えばいいです。はい。