次々と防衛戦を突破していくパイパー連合部隊、そのままパッキー達が居る本陣まで到達し、彼等を襲う複数のセンチュリオン中戦車Mk5と巡航戦車クロムウェルと交戦状態になる。
「気を付けろ!見たこともない型だ!!」
Sd.Kfz.251/6装甲指揮車からセンチュリオンを発見したパイパーは直ぐに全部隊に知らせる。
その数秒後には66.7口径20ポンドライフル砲MkⅡの砲声が響き、IS-2スターリンが大破した。
「何という火力だ!動き回れっ!!」
戦後戦車の火力の高さに驚いたアレクセイは、直ぐに回避行動を取るよう指示を出す。
何台かがセンチュリオンの餌食になっていくが、火力強化されたバウアー達の戦車によって撃破される。
IS-2の車内から状況を見ていたゴロドクは調子付いていた。
「ハッハッハッ!焦っちまったが、こいつの砲に掛かればあの戦車も対したことはないな!」
次々と破壊されていくセンチュリオンやクロムウェルを見て、大笑いするゴロドクであったが、一発の砲撃で慌て始める。
「な、なんだぁ!?一体何処からの砲撃だ!?」
車内で周囲を見渡すゴロドクは、こちらへ向かってくる車両群を見付けた。
「見たこともない型だ・・・」
ハルスが呟いた後、ジェイコブが顔を真っ青にして、一番先頭にいる戦車の名を口にした。
「あ、あれはレオパルト2じゃないか・・・!」
そのレオパルト2はオドレイが乗るA6ML型である。
ゾーレッツ達のティーガーに乗る山本の顔は真っ青であった。
「よりにもよってA6のオランダ陸軍仕様かよ・・・!勝てるわけがないよ・・・!」
山本が言うとおり大戦中の戦車が戦後の戦車、しかも高性能な第三世代戦車に束になっても勝てるはずも無い。
レオパルド2の後続の戦車はチャレンジャー1で、随伴歩兵の装備は先進国の兵隊並みだ。
日米同盟軍がここに来ない限りどう足掻いてもこちらの負けは確定である。
それでもパイパー達は戦うしかなかった。
「やるしかあるまい・・・!
バウアーはこちらに砲を向けるチャレンジャー1に狙いを付けた。
「履帯を狙え!そうすれば少しは勝てるはずだ!」
照準手に指示を出せば、照準手がチャレンジャー1の履帯に向けて撃った。
動かずにⅣ号戦車J型やT-34/85を片付けていたチャレンジャー1の履帯に105㎜徹甲弾が命中した。
身動きが取れなくなったチャレンジャー1はヤークトティーガーの128㎜戦車砲やIS-2の122㎜砲の一斉射撃を受けて大破する。
「見たか!122㎜の力を!」
何の攻撃もしてなかったゴロドクが言うが、彼のIS-2はオドレイのレオパルト2A6の55口径120mm滑腔砲Rh120-L55の砲弾を食らって、激しく横転する。
「うぉぉ・・・何という火力だ・・・!」
激しく燃え上がるIS-2から生き残った乗員達と出たゴロドクは戦後戦車の恐ろしさを知り、驚愕する。
「クソぉ、化け物めっ!!」
次にハーゲンのⅢ号突撃砲G型がレオパルトに挑んだが、側面を撃たれて激しく引っ繰り返った。
「こいつはどんな大砲を積んでるんだ!?教えろ山本!」
引っ繰り返った車内で無線機でゾーレッツ達の逆福ティーガーに乗る山本に問うハーゲン、無線手からの知らせで直ぐに山本は答えた。
「あぁ、はい!ドイツの第三世代戦車レオパルト2A6です!」
「ドイツだって!?あれはこの時代のドイツの主力戦車なのか?!」
同じ車内にいたゾーレッツは驚きを隠せないで居た。
他のドイツ軍人達も驚きである。
「えぇそうです!しかもオランダに輸入されたMLタイプです!束になっても勝てるかどうか・・・」
思い詰める山本に正徳が彼の肩に手を添えた。
「やってみるしかないだろう、山本。それと、レオパルトの他にも戦車が居ただろう。何処の国のだ?」
質問してきた正徳に直ぐに山本は答える。
「イギリスのチャレンジャー1です!」
「イギリス?と、言うことは
ゾーレッツが周りを警戒しながら言った後、山本が頷く。
「そうです。戦後だからと言って、側面の装甲を薄いですし、エンジンをやれば大戦中の戦車でも勝てる見込みが・・・」
山本の答えにドイツ軍人達と他の国の軍人達も勇気づけられた。
その間、味方の戦車は次々とレオパルト2やチャレンジャー1、歩兵の最新式の対戦車兵器の餌食になっていく。
「この化け物が!側面に88㎜をぶち込んでやれっ!」
ブルクハイトが砲身を別のパンターG型に向けているレオパルト2A6に向けて砲撃を命じた。
ティーガーから放たれた88㎜徹甲弾がレオパルト2A6に命中したが、弾かれてしまう。
「化け物だ!正面は|皆《みんな)跳ねちまうよ!!」
「それに発射速度も違うぜ!あの戦車の装填手が化け物みてぇーに装填が早い!!」
アッシュとコワルスキーがブルクハイトに告げた後、彼等の乗るティーガーはチャレンジャー1の砲撃を受けた。
「うわぁ、脱出しろ!爆発するぞ!!」
急いでティーガーから脱出するブルクハイト達、危機一髪で何とか脱出できた。
クルツが乗るガスタービン搭載型のパンターG型が、チャレンジャー1の後ろに回り込み、ゼロ距離射撃を行った。
「ゼロ距離射撃、ファイア!」
エンジンを撃たれたチャレンジャー1は大爆発を起こす。
「次の目標は10時の方向だ!」
次なる標的を味方の装甲車両を破壊しまくってるチャレンジャー1に定めた後、自分の上官であるバウアーに支援を願う。
「大尉、支援を願います!」
『了解した、クルツ。履帯を狙って、動きを止めろ!』
味方の歩兵を襲う敵歩兵を排除していたバウアーはその願いを受け入れ、クルツが狙うチャレンジャー1の履帯に向けて砲撃した。
履帯を破壊されたチャレンジャー1は動けず、砲身をクルツのパンターに向けるが、速度が速い所為なのか照準が間に合わず、エンジンへの接近を許してしまった。
そのままエンジンを撃たれて大破する。
一方のヴィットマンは、彼等の脅威となるであろう敵の増援を食い止めるべく単機でやりやっていた。
「これはヴォレル・ボカージュを思い出すな!」
十両近くの戦車を相手にしながらヴィットマンは自身が単機でイギリス第7機甲師団の先遣隊と単機でやりやっていたことを思い出した。
「はい、あの時は大尉は本当に人間なのかと思いましたよ!」
一番先頭に居たシャーマンファイアフライに狙いを付けた照準手はヴィットマンに答えた。
「あの時の自分が信じられんよ。照準は完了したか?」
「完了しました!それと徹甲弾の装填も完了です!」
「良し、ファイア!」
88㎜KwK43の砲声が響き、正面に食らったシャーマンが一撃で吹き飛んだ。
次の標的に狙いを付けるよう照準手に命じ、装填手が徹甲弾の装填を終わり次第、砲撃を命じた。
僅か数分程で、オドレイの援軍に駆け付けた戦車中隊は五両を失った。
その頃、猛威を振るうオドレイのレオパルト2にクルツのパンターの履帯が破壊された。
「履帯をやられた!」
「まだ戦えるぞ、こちらを砲撃した敵戦車に反撃しろ!」
身動きを取れなくなったパンターであったが、それでもクルツはオドレイのレオパルト2に砲身を向けるよう指示を出す。
気が付けば、今動いてる戦車は敵の援護に単機で立ち向かったヴィットマンと佐武郎の四式中戦車を除き、頼りのヤークトティーガーは撃破されており、IS-2は全滅、残りは身動きの取れなくなったクルツのパンターとバウアーのティーガーⅡ発展型だけだ。
敵のチャレンジャー1は全滅している。
トドメと言われんばかりにクルツのパンターがレオパルトによって撃破される。
『やられました!脱出します!!』
「よし、塹壕に急げ!残った戦車は俺達だけか・・・」
無事脱出したクルツを見守った後、周りを見渡して自分のティーガーⅡしか残ってないことに気付く。
味方の歩兵隊も敵の歩兵相手に精一杯で助けに来てはくれないだろう。
破壊されたティーガーの残骸からこの対決を見ていたゾーレッツ、正徳、山本は息を呑む。
「この対決、勝てるわけがありませんよ・・・!例え
「山本・・・!」
ゾーレッツの一声で山本は直立姿勢になる。
「黙って見るんだ・・・!」
続けて正徳が言えば、山本は元の位置へと戻る。
先に砲撃したのはオドレイのレオパルド2だった。
空かさずバウアーが操縦手に回避行動を取るよう指示を出す。
「動き続けろ!あの砲を食らえばこのティーガーⅡとで持ちはせん!」
回避行動を取ると同時にバウアーは常に動き続けるよう指示を出した。
この行動を見ていたオドレイは無駄な足掻きと捉えていた。
「無駄な足掻きを!接近しなさい!」
「了解!」
オドレイは一気にバウアーのティーガーⅡ発展型を仕留めるべく、接近を命じた。
距離を取ろうとするバウアーであったが、速度が速い第三世代戦車は直ぐに距離を詰めてくる。
「照準完了しました」
「撃ちなさい」
照準手からの報告で、オドレイは砲撃を命じた。
砲弾はティーガーⅡの装甲を擦れ、車内に恐ろしい摩擦音が響き渡る。
「うわぁぁぁ!!」
「落ち着け!ジグザグに動いて狙いを定まらせるな!!」
操縦者はその指示を受けて車体をジグザグに動きながら逃げる。
これによってレオパルト2の照準が定まらず、照準手が車長のオドレイに告げる。
「照準が定まりません!」
「未来予知射撃を行いなさい。操縦手、速度を落としなさい。砲手は相手のパターンを読むのに専念するのです」
オドレイは操縦手に指示を出した後、照準手にジグザグに動くティーガーⅡの動きを読むよう空かさず指示する。
しかし、それが仇となった。
カールグスタフM2を持ったアッシュとコワルスキーがレオパルト2に向けて発射、撃破できずとも側面に命中し、ロケット攻撃を受けたレオパルト2は止まる。
それと同時に煙幕手榴弾がレオパルト2に向けて投げ込まれ、レーザーポイントを封じられた。
「煙幕で何も見えません!」
「目標、捕捉できず!」
「クッ、味なマネを・・・!煙幕を抜けなさい」
視界を塞がれオドレイは煙幕から抜け出すよう指示を出した。
物の数秒で煙幕を抜けた途端、バウアーのティーガーⅡがレオパルト2の左側に現れた。
「しまった!」
オドレイが横から現れたティーガーⅡに驚いている間にバウアーは情けも掛けずに砲撃を命じた。
「今だ!目標は正面、喰らえぃ!」
105㎜砲の砲声が鳴り響き、レオパルト2の側面に命中した。
それでも尚、レオパルト2は動こうとしていた。
「情けは無用だ!あのエンジンを機動しろ!砲身がこちらを向く前に接近する!!」
操縦手はバウアーの命令に従い、あるボタンを押した。
エンジンが凄まじい騒音で起動し、第四世代戦車並の速度でレオパルト2に突っ込んだ。
「これでトドメだっ!ファイア!」
高速で走行しながらバウアーは砲撃を命じ、照準手は躊躇いもなく発射管を押した。
「そんな、神よ!」
それがオドレイの最後の言葉だった。
砲声が鳴り響き、充分撃破可能な距離から側面に攻撃を受けたレオパルト2A6は大破。
バウアーのティーガーⅡはエンジンから火を噴き出しながらゆっくりとその場に停車した。