実験室のフラスコ(2L)   作:にえる

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オーバーロード1

 

 Q. レベル上げに行くとコルベニクという青白い巨大なモンスターが歩いていました。あれはどのようなモンスターなのでしょうか。

 A. オーヴァというプレイヤーがワールドアイテムを使い、運営に要請して生まれたField On Enemy(F.O.E)タイプのワールドエネミーです。最寄りのギルド、公式トピックなどで確認したエリアをお知らせください。(※ワールドアイテム、F.O.Eについては用語集をご覧ください。オーヴァについては害悪プレイヤー・オーヴァの項をご覧ください)

 

 Q. コルベニクと目が合いました。

 A. ただちにログアウトし、公式トピックなどで確認したエリアをお知らせください。F.O.Eタイプのため、エリアを移動しても追跡されます。

 

 Q. コルベニクが付いて来ます。

 A. タゲられると最短で半日、最長で1か月間、PKされ続けます。ただちにログアウトし、公式トピックなどで確認したエリアをお知らせください。また、処理が確定するまでログインしないでください。

 

 Q. コルベニクに『データドレイン』というスキルを使われました。レベルが下がり、状態異常のままですが、元に戻るのでしょうか。

 A. コルベニクが討伐されると状態異常が解除されます。ただし、下がったレベルはそのままです。(※『データドレイン』についてはワールドエネミー・コルベニクの項をご覧ください)

 

 Q. コルベニクがギルド近くまで来ました。

 A. ログアウトし、公式トピックなどでギルドの位置をお知らせください。朝方および深夜などの場合は、救援の人員が足らず、ギルドの崩壊が予想されます。

 

 Q. コルベニクがいなくなっていましたが、ギルドが崩壊しています。時間の経過でギルドは元に戻るのでしょうか。

 A. そういったイベントなので、ギルドは崩壊したままですので再建する必要があります。余裕があれば、最寄りのギルドへ勧告すると喜ばれます。

 

 Q. コルベニクに荒らされた様子が色々な場所でアップされています。違法ではないのですか。

 A. そういう仕様です。生み出したオーヴァというプレイヤーも同様の事を行っているので、それに擬えていると考えられます。また、動画やスクショの撮影を公式が認めているので違法ではありません。(アップロードについては公式サイトの規約・権利関係をご覧ください)

 

 Q. コルベニクを、駆逐したいです……!

 A. 対策している連合ギルドへの加入をお勧めします。ロンギヌスを使う覚悟があれば、倒すことも可能です。(※聖者殺しの槍(ロンギヌス)についてはワールドアイテムの項をご覧ください)

 

 Q. コルベニクの撃破後、種子を拾いました。

 A. コルベニクの撃破報酬です。戦闘後、交戦したPCおよびNPCの中からランダムで3名にドロップします。世界級(ワールド)アイテムの効果を一度だけ吸収できます。また、吸収した効果は任意で発動できます。吸収および発動は任意ですが、発動するとアイテム欄から消失します。(※コルベニクの種子については神器級(ゴッズ)アイテム・コルベニクの種子の項をご覧ください)

 

 Q. 発生原因のオーヴァをロンギヌスしたいです。

 A. オーヴァはナザリック地下大墳墓域を拠点としているギルド『アインズ・ウール・ゴウン』に所属しています。運営によるペナルティで、レベル80またはレベル100の状態になっていますが、ロンギヌスを用いても完全に抹消できません。コルベニクと関連しているイベントまたは運営のペナルティによるものと推測されます。ロンギヌスの無駄撃ちになるで、囲んでリンチを推奨します。(ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』については害悪ギルド・アインズ・ウール・ゴウンの項をご覧ください)

 

 Q. ギルド戦でコルベニクを戦場に誘引したら、相手ギルドを殲滅してくれました。何度でも可能でしょうか。

 A. ワールドエネミーの強さは伊達ではありませんので当然の結果です。また、成功したのは幸運が重なった奇跡でしょう。コルベニクに搭載されているAIは、オーヴァを基礎としているという噂なので、気まぐれにギルドを破壊します。何度も同じ手を使えるわけではないことを覚えておきましょう。ただし、天使系・堕天使系のPCを率先して狙うという報告もあるので、負け前提のギルド戦ならば奇跡に賭けて巻き込むことも間違いではありません。

 

 Q. ワールドエネミーであるコルベニクは何故何度も蘇るのですか。イベントは終わっていないのでしょうか。

 A. 不明です。特殊イベント、増加の一途を辿るギルド数を減らすため、ワールドアイテムの強さを確認させるため、ロンギヌスでPCが破壊されるのを防ぐため、など考えられていますが、運営から回答が送られないため、考察の域を出ません。(※コルベニクが特定鉱山に現れたイベントについてはクリスマス特殊イベント・再誕コルベニクの項をご覧ください)

 

 Q. コルベニクはどのくらいの頻度で出現しますか。

 A. 不明です。決まったスパンは判明していませんが、半年から一年に一度の割合で出現します。また、クリスマスの翌日に多いため、クリスマスイベントに参加できなかったプレイヤーへの準イベントととも考えられています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 --28

 

 ワールドエネミーから雑魚PCであるフォーム1にダウンしたので、大人しく他のメンバーとともに最下層で待つことにした。

 まあ、表層で待機していた俺の攻撃で連合も結構溶けたと思うから……コルベニクのショボい死に様を動画で編集するのは止めてください死んでしまいます。

 コルベニクはでかすぎて、乱戦状態だとロンギヌスは避けられないという弱点が露呈。

 いや、前からバレてたけど。

 ロンギヌスするために暗殺極振りレベル100のPCとか反則っしょ。

 ずるいわぁ。

 

 肉棒ちゃんが、公式に動画を貼り付けてた。

 神は死んだ。

 ここから転載されまくって動画サイトでも死に様が晒されると思うと死体蹴りというやつの悪意は半端ないと思う。

 表層のトラップが無駄になった罰だとか言われたが、そりゃないぜ^q^

 

 

 

 地下8層で地獄絵図となっていた。

 まあ、上層でも酷いことになってたけど。

 俺のトラウマであるヴィクティムも強化されているようだ。

 見た目は可愛いんだけど、能力はマジでえげつない。

 えげつないトラップやモンスター効果でデバフや削りが凄いからね、それらの集大成である8層ならしょうがないね。

 

 

 

 

 

 --29

 

 フォーム1は完全なガンナー型のようだ。

 シズと似通っている。

 というか、劣化版シズというか。

 近接職もくっついている辺り、変態型である。

 遠距離武器片手に、近接戦闘も熟せと言うのだろうか。

 左腕の封印筒は盾になるっぽいので、一応接近戦もできるといえば出来るが……フォーム1で死ぬとリセットらしいので、前線に出るのは憚られる。

 種族スキルである元型(アーキタイプ)lv1。

 

 フォーム2は殴りガンナー型だ。

 迷走を感じられる。

 筒が取れて、左腕が使える様になのだが、何故か短剣しか装備できない。

 右手は銃か短剣。

 短剣装備時には、双剣士の職業スキルが使えるようになる。

 左肩から伸びる鎌(元まっくろくろすけ)は伸び縮みするので、近中遠と全距離対応できる器用なPCだ。

 万能というか器用貧乏型なので、俺のスキルだと上手く使えない。

 最大の欠点はレベル80でストップしていることだ。

 一人で外に出るとボコられて死ぬ。

 種族・三爪痕(トライエッジ)の専用スキルは背景グラフィックごと相手にAという傷跡を刻むかっこいい技だ。

 が、レベル80なので大して活躍しない。

 元型はlv5。

 

 フォーム3は小型コルベニクの様相をしており、近接・タンク型だ。

 フォーム1と2にあったガンナーは消え去るという意味不明な存在である。

 レベル100として見るならほどほどに強いPCだと思うが、大会などのイベントには参加できないというペナルティがこっそり追加されてて微妙。

 公式戦でたっち・みーさんに勝つという密かな夢は、このPCでは叶わないようだ。

 技もフォーム2の焼き増しだし、特別に何がどうという感じも無し。

 無駄に目立つので、すぐに囲まれてPKされるくらいか。

 ワールドエネミーのコルベニクと勘違いするプレイヤー多数。

 誤爆でロンギヌスしちゃう間抜けが出てくることもある。

 元型はlv10。

 

 ワールドエネミーは単純に強い。

 もうめっちゃ強い。

 名前がコルベニクとなり、ワールドエネミーとして処理されるようになるが、そんなのどうでもいいくらい強い。

 フォーム3だと鎌だった左肩と左腕が融合したのか、脈動する砲台と化している。

 スキル『データドレイン』は幾何学的な紋様を展開し、砲台から弾を放ち、着弾地点にいたPCをレベルダウンさせ、状態異常を引き起こすと言う害悪プレイが可能。

 もちろんギルドの防衛機能も壊せる。

 無双できないバランスのユグドラシルで、無双ゲーになるくらい強い。

 完全に別ゲーですまんな。

 巨大だし、攻撃も高いし、凄まじく硬い。

 欠点は、ワールドエネミーと化したら、すぐに何処からともなく現れたPCによってロンギヌスで刺されて死ぬことだろうか。

 最短で5分、最長で半日くらいしか永らえたことが無い。

 まあ、ロンギヌスを無駄撃ちさせるのも良いけど、それだとロマンが無い。

 テキトーに害悪を撒き散らしたら、ロンギヌスに刺されるのが様式美だろう。

 元型はlv15だ。

 

 

 

 

 全体的な利点はイケメンPCだってことだと肉棒ちゃんが言ってた。

 異形ばっかのギルドだし、まともな人間型はNPCだからしょうがないね。

 俺のPCは異形種ではないんじゃないかと、ギルメンに相談したら、やってることは悪辣だから問題ないんじゃねって感じだった。

 そもそも種族も人間や亜人には含まれていない、元型(アーキタイプ)という謎種族。

 エメ板さん曰く『世界樹によって生み出された十次元の観測者を兼ねた姿』だとか。

 設定読むの怠いし、なんか中二盛りすぎてツラいんです……。

 

 

 

 

 

 --30

 

 俺の神器級(ゴッズ)アイテムを作ろう、という話になった。

 神器級は集めるのが大変だし、ワールドエネミーとしての能力もあるから無駄に労力を割くほどでもないっしょとも思っていたのだが、カルマ貯蓄の効率上げのためにも作ってくれると言う。

 みんなの優しさに感動した。

 今度ワールドエネミーになっても、この前掲示板に晒されて2ちゃんでざまぁ連呼された恨みを晴らすために暴れようと思ったが、止めた。

 

 クラスチェンジできるギルメンの条件を調べ、アイテムの貯蔵状態を確認し、何をどうすれば効率よく集まるかを纏め、何種類かの行動指針を立てる。

 で、ギルメンで相談して、好みの行動指針を採択。

 いつも通り、たっち・みーさんとウルベルトさんの意見が割れてた。

 ギルド設立当初からこんな感じだと言うからなんだかんだ言って仲いいわぁ。

 エロ悪魔のダンジョンに心を揺らされたが、肉棒ちゃんと話しているほうが個人的に魅力を感じるのでスルー。

 

 ギルド長が、最終決……え、モモンガさんギルマスになってたの?

 へぇー知らんかった。

 いや、何時もギルド貢献している(ガチャとか)姿を見てたら異論はないです。

 むしろ賛成です。

 色物軍団のギルドからしたら、やっぱりまともな人がやるべきだし(真顔

 俺もまともだけど、カリスマないから……何故目を逸らすんだ。

 

 

 

 多数決で、行動方針を決めることになった。

 どっちでもいいのだが、折角だから効率重視でいくとしよう。

 隣に座っている肉棒ちゃんと無駄な雑談を咲かせながら、コインを入れる。

 ちなみに雑談内容は「全裸の女の子の土下座」と「追い詰められた女の子の命乞い」はどちらが魅力的かという話だった。

 土下座一択だな。

 リアルでは好みではないが、二次媒体だと魅力的だ。

 逆にリアルは単にべたべたしたい感じだ。

 全裸でくっついて体温を交換したい(真顔)

 肉棒ちゃんが俺の上でぷるぷるしてこんな感じかと問うてきた。

 PCなのになんか気恥ずかしいんだけど。

 肉棒ちゃんもちょっとテンパってた。

 ただ、俺の異形フォーム3と肉棒スライムのべたべたって誰得やねん。

 

 

 

 

 

 --31

 

 俺の神器級(ゴッズ)アイテムが完成した。

 最大級のスタンと怯み、衝撃による浮かせ効果を搭載した。

 例え相手が耐性を持っていても、極振りしたので一瞬だけでも効くだろう。

 火力はそれほどでもないが、そもそもガンナー形態では最大でも80レベルなのだから、期待するのが間違っている。

 重要なのは、相手パーティに嫌がらせを撒けるかどうかだ。

 劣化ヴィクティムという事実から目を逸らす必要があるけど。

 

 とりあえず遮蔽物の少ないエリアにプレイヤーを誘導し、遠距離攻撃のギルメンで囲んで試したが、FPSゲームのようで楽しかった。

 相手をスタンさせつつ浮かせ、動けないところを撃ち抜いていくプレイ。

 装備やレベルが足りていないプレイヤーを狩る場合、死ぬまで浮かせて撃ち続ける遊びができる。

 また、装備はガンナーであるシズと互換性があるので、俺が使わない物はシズに装備させておける。

 無駄のない完璧な仕上がりだ。

 

 

 

 ただ、単独で外に出ると、大体死ぬ。

 基本的に肉棒ちゃんが随伴してくれる。

 やっぱり俺はヒモとなる運命だった……?

 

 

 

 ログアウトし、肉棒ちゃんと軽く電話してから寝た。

 

 

 

 

 

 --32

 

 そういえば確かめていなかったなと元型の種族スキルを使ってみる。

 フォーム1で使用できるのは『変異なる召喚』、使ってみるとパズルが作れるようだ。

 えぇー……。

 

 パズルを組むことで、ユグドラシル上に存在するデータを再現する的なスキルだ。

 使える容量はかなり軽量なので、再現できるのはドーナツとかティーカップとコーヒーのような、そんな日用品のみだが。

 右手の上に生み出した三角形の積み木が四角形へ、左手の上に生み出したドーナツがコーヒーカップへと姿を変える。

 三角と四角は同じ。そしてドーナツとコーヒーカップは同じ(ドヤァ

 

 モモンガさんが首を傾げていた。

 答えは穴の数です。

 位相幾何学に沿った変異も可能という結構面白いパズル能力だ。

 戦闘には無意味(小声)

 

 もう一つ『AIDA』というスキルもある。

 まっくろくろすけを扱える趣味技だ。

 微生物のようなペットモンスターを一匹だけ召喚できる。

 大きさはPCよりも一回り小さく、レベル1だ。

 俺が得るはずだった無駄な経験値はこいつに流れるらしく、レベルアップしていくことで姿を変えるようだ。

 レベル15までがAnna、そこからGatekeeper、Oswald、と進化していく。

 欠点は、時間停止耐性は無いこと、死ぬとロストしてレベル1から育成し直す必要がすることだろう。

 レベル100のVictorianだと時間耐性を持っているが、あまり強くないし……。

 まあ、壁が召還できるので悪くないスキルじゃないだろうか。

 ただ、デスナイトなどのようなワンキル攻撃も一度だけHP1で耐える食いしばり性能が無いのが残念だけど。

 カルマは中立0なので、貯金には使えない。

 元型が実はテイマー職の亜種の可能性……。

 

 あとは『オルレイザス』という聖属性の槍を、ビームのように複数撃てるスキルもある。

 第八位階級の魔法と同じ判定なので、上位プレイヤーには簡単に無効化される糞技。

 

 

 

 フォーム2は、『隣人の来訪』というスキルがあり2種類ののまっくろくろすけをそれぞれ2、3体召喚するスキルだ。

 2種類というのが『拒絶の隣人』『光束の隣人』で『拒絶の隣人』が物理・魔法ダメージを10%軽減するバリアを張ってくれ、『光束の隣人』は『オルレイザス』を勝手に撃ってくれる。

 が、レベル80なのであまり強くない。

 まあ、レベル80のNPC扱いで壁にもなり、HPダメージも身代わりしてくれるので、強いといえば強い。

 しかし、時間停止耐性が無いので、タイムストップされると無意味になる。

 

 『三爪痕(トライエッジ)』は見た目がかっこいいスキルだ。

 相手と背景グラフィックに真っ赤なAのような傷を刻む。

 ただし、レベル100の物理型にはお察しのダメージしか与えられないので、完全に雑魚狩り用スキルである。

 雑魚の帝王となりつつある。

 実は複数をターゲットできる範囲攻撃だったり。

 

 そして『変異なる召喚』も強化され、装備を偽装できる。

 偽装といっても見た目だけだが、外観や名称を偽ることができるので、奇襲にもってこいのスキルだ。

 攻撃性能は特にない。

 パズルも強化されるので、ドーナツを穴あきテーブルに変化させたりできる。

 

 

 

 フォーム3はスキルが全部近接攻撃なのだが、糞過ぎて目を逸らしたくなる。

 通常攻撃が2回判定だが、近接職はもっと攻撃回数が多いので、劣化すぎて泣ける。

 というか2回同時攻撃とか試行数が少なすぎないですかねぇ。

 燕返しだって3連続なのに。

 

 スキルだが左肩の鎌から、エネルギー弾を撃てる。

 が、近接ビルドなのに魔法攻撃判定なので威力が糞。

 見た目だけ派手なので、ワロス弾と呼ばれている。

 

 ただし『凶つ神の裁き』はメインスキルといってもいいくらい強い。

 相手を掴みさえすれば確定で発生する必中技だし。

 欠点はあまり速度の無いPCなのに、相手を掴まないといけないことくらいかなー☆

 ……ぶっちゃけ、幻影とかで回避されるので全然相手に当たらんし、テレポートされると必中が解除される。

 

 メインの『変異なる召喚』だが、PCや名前などの細かい部分を偽装できるようになった。

 ただ、PCは偽装しても職業は固定なので幻影系の亜種スキルって感じで、あまり戦略的な広がりは無いのだけど。

 セカンドPCへと、自由に何処でも切り替えられるスキル的な使い方ができる。

 継ぎ接ぎの赤い軽装PCを作ってみたが、オーヴァと気付かれないのでPKされる回数が劇的に減った。

 このスキルで目標地点に潜入し、ワールドエネミーに変異して自爆テロを起こせと運営が言ってる気がする。

 

 

 

 ワールドエネミー形態だと、武器や防具の判定が無くなる。

 が、そもそも完全耐性状態になるし、物理・魔法攻撃も大きく軽減できるので装備なくても問題なし。

 スキルである『データドレイン』は相手から10レベル奪える。

 つまり無限に強くなる……らしい。

 すぐにロンギヌスされるからわからん。

 

 ちなみに特定の10体の天使が破壊されると、十次元の元型とやらが失われるらしく、耐性が死んで弱点に裏返る。

 が、みんなめんどくさがってロンギヌスを投げてくる。

 というか、10体の天使がぶち殺すのに時間が掛かりすぎるため、とりあえずロンギヌスを投げてくるっぽい。

 ロンギヌスされなかったらギルドを破壊して回るから仕方ないね。

 

 この形態だと『変異なる召喚』スキルは消滅するようだ。

 なぜぇ……。

 

 

 

 

 

 --33

 

 パンドラズ・アクター、宝物殿に眠る。

 モモンガさんが設定した領域守護者だが、メンバーを保存するメモリーのようなNPCだ。

 で、俺の再現もいくらか出来たので、あとは封印しておくだけらしい。

 

 話しかけると、ハニワフェイスでオーバーなリアクションで敬礼などをしてくれるのでギルメンに大人気だった、いろんな意味で。

 挨拶のバリエーションも豊富で、ランダムだが割合としては5回に1回はオペラなどのタイトルで使われる外国語で挨拶を返してくれる。

 しかも無駄に優れたAIのため、敬礼のみならず軍服を用いた様々な隠しアクション持ち。

 ギルメン全員の能力を8割再現できるので、メタが張れるので、指示さえ上手くできれば他の守護者よりも良い働きをしてくれる。

 まあ、パンドラズ・アクターが動く度に、恥ずかしさのあまりモモンガさんが転がり回るという欠点もあったけど。

 

 

 

 パンドラズ・アクターがいなくなるとちょっと寂しくなった。

 なので、同じドッペルゲンガーのナーベラル・ガンマで遊ぶことにした。

 ナーベラルはドッペルゲンガーとしてレベル1であり、他の姿が無い。

 そしてドッペルゲンガーのベースはハニワだ。

 このことから導き出される答えとは……。

 

 ナーベラルのスクショを撮り、パンドラズ・アクターの顔を貼り付け、雑コラ完成。

 

 

 

 

 

 肉棒ちゃん、流石に通報してもハラスメントに……え、弐式炎雷さん呼ぶの?

 やめてください死んでしまいます^q^

 忘れようとしていたパンドラズ・アクターの面影を引き継いだナーベラルの雑コラ見て、黒歴史を思い出して蹲りながら悶え苦しむモモンガさんあげるから許して!

 出来心だったんです!

 先っちょだけだし、許してください!

 

 

 

 

 

 ぐわぁぁぁぁ^q^

 

 

 

 

 

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 異常気象が如何とかいう仕事をしていたのだが、やはりそれだけだと社会の歯車としては不十分なのだ。

 突然変異生物をカメラに収める仕事も追加された。

 危険手当とか出るんですが、そんな手当を出すくらいならそんな仕事を回さないでください(切実)

 

 カボチャほどの霰が降った気象条件や状況を撮影したあと、大学の研究チームとスカイフィッシュの撮影させるとか意味不明すぎ。

 そもそもカボチャ霰は余裕で回避できるが、落下した後に四散する氷の礫がヤバい。

 見習いが怪我した。

 ヘルメットが無ければ即死だったな。

 で、スカイフィッシュだが、よくわからん。

 特殊な機材を用いることで観察できるらしく、色々と撮影できた。

 スカイフィッシュは体温を餌にしているという謎の生態のため、捕獲は無理だとか。

 研究チームの学生が低体温症で倒れる理由がわかったぜ。

 教授は興奮していたので、体温を奪われなくて済んだとか。

 俺は普通に避けてたから問題なかった。

 

 明日は国内で初めて確認されたチュパカブラを撮影しに行くのだが、やる気が全然出ない。

 そもそもチュパカブラとかどうでもいいじゃん。

 外来種だから駆除したほうがいいと思うのだが、愛護団体が煩いらしい。

 可愛くないし、野生動物を吸血してヤバいからマジで根絶すべきだと思う。

 南米かどっかで突然変異したチュパカブラに、森の生物を滅ぼされた的な話もあったし。

 

 

 

 

 めっちゃ余ってる『完全なる狂騒』を使用することで、カルマチャージを早めることができるんじゃないかと。

 『完全なる狂騒』は、アンデッドなど耐性を持っている種族にも精神系魔法が効くようになるアイテムだ。

 こいつを使ってPOPするアンデッドを数百と操り、オートでカルマを貯める機械にしようという天才的な発想である。

 

 パーティーで使うクラッカーのようなアイテムを使用。

 中から金色の筋肉ムキムキな像が「いやっほぉぉぉ!」とばかりに顔を出し、効果が発動した。

 ……。

 うーん……。

 精神支配スキルなぞ無いので、アイテムで代替したが、コストの割に効率悪すぎて糞。

 そもそも自分で召喚したモンスターじゃないとカルマ吸収できない。

 

 普通にペットのAIDAを使って狩ったほうが早い。

 名案だと思ったが、全然だったなぁ。

 POPする階層にAIDAを放置しておこう。

 

 

 

 ギルメンと遊んでいて、気づいたらAIDAが死んでた。

 うへぁ。

 育てるのもついでにできるじゃん、と慢心したのがいけなかったな。

 

 

 

 

 

 --35

 

 肉棒ちゃんとネズミーランドに遊びに行った翌日、ログインしたらペロちゃんが辱しめを受けていた。

 簡潔に説明されたので詳しい話はわからないが、ペロちゃんが設定したNPCを完全にモモンガさんメタにしたらしい。

 そこで終われば、ちょっとした日常の小話なのだが、辱しめを受けるには至らない。

 なんとNPCの設定をモモンガさんが読み、全力で引き、他のメンバーも気になって読んで……今に至るという。

 あー……うん。

 ……に、肉棒ちゃんが弟を慰めてる貴重なナザリックのワンシーンですね?

 

 その後はペロちゃんが、逆襲の如く他のNPCの設定を漁り始めた。

 そして封印されし秘奥『パンドラズ・アクター』の記憶が呼び覚まされて、モモンガさんが流れ弾に当たって御通夜。

 死因はアルベドやデミウルゴスという智謀キャラの遥か上を行く智謀という後出しじゃんけんのような設定。

 それ以外のメンバーに被弾なし。

 意外と背中が痒くなる設定はない。

 むしろそれを受け入れ、熱く語る人が出てくるほどだ。

 ……オーヴァとコルベニクの設定がギルメンの『百科事典(エンサイクロペディア)』に公開されてて、無事死亡。

 設定したのは俺じゃないのに、非常に恥ずかしくなったのは何故なんだぜ……。

 

 

 

 折角なので、メンバー間で百科事典の内容を交換。

 あ、なんかカードゲームで持ってないカードを交換する気分だ。

 記述が無かったり、足りない部分を、豊富な人から貰うのだが、個々人で色々と違うのが面白い。

 あまりの恥に円卓で俯いているモモンガさんに、パンドラズ・アクターのデータを強請る。

 ……?

 っ!

 

 へんじがない ただのしかばねのようだ

 

 

 

 肉棒ちゃん、ペロちゃんの姉弟コンビと交換する。

 アウラは「可愛い子、こんな妹が欲しかった。弟いらね(ペッ」、マーレは「姉より偉い弟などいない」と記述されていた。

 シャルティアは「偽乳」と書きこまれており、設定を熱く語ろうとしたペロちゃんを肉棒ちゃんの必殺「弟黙れ」で一喝。

 ゲルニカ・ハウンドは設定考えるのめんどくさ過ぎて、表層の毒沼から生み出したという雑背景。禍々しい見た目なんで意外としっくりくるのが悔しい。サイズは20cmから5mまで伸縮可能。AI組むのが面倒なので、大き目のぬいぐるみとしてシズに持たせたままである。

 

 復帰したモモンガさんにパンドラズ・アクターを強請る。

 ギルマスへの熱い死体蹴り。

 他のメンバーもこぞってたかり始めたあたり、畜生しかいないギルドである。

 

 

 

 その後は暇なのでアウラのおきがえショーとなった。

 ノリノリの肉棒ちゃん、ローテンションの俺。

 服とかよくわかんねぇ……。

 いや、アウラは可愛いんだけど。

 可愛いけど、肉棒ちゃんが同じの着ても反応に困るというか……。

 サイズとかどうなってんですか、それ。

 魔法の服は伸縮可変自在と聞いたが、さすがに限度がある。

 

 何が一番いいかって聞かれたら、そりゃネズミー行ったときに着てた服でしょ。

 

 

 

 

 

 --36

 

 女子会ってなんで俺は入れないんだろうか(真顔)

 今日は肉棒ちゃん、女教師、もっちで女子会をするらしく、俺は省かれた。

 悲しい。

 外からあけみちゃんも来るらしい。

 

 今日も面倒なカルマ貯蓄でもやるかなぁとジャングルに出て気付く。

 俺、マーレを見たことない。

 

 戻ってマーレの自室に入る。

 魔法で内部を冷やし、何故か布団に包まっているマーレの姿が……!

 なんだこのAI。

 誰だよこんなぐうたらに組んだの……。

 

 

 

 

 マーレの謎の行動に頭を傾げながら、円卓に向かう。

 ブルプラさんが美しかった自然を語っていた、そして捕まった。

 あー、うん。

 まあ、俺も汚染された自然ばかりを目にする職だから、その気持ちもわからないでもないというか。

 虫の上映会に切り替わりそうになったところで、ユグドラシルの虫を見に行こうぜ!と話題を変える。

 

 致命的なミスに気付いた。

 虫もリアルだ……!

 

 言い出した手前、テンションが上がったブルプラさんに、前言撤回を告げる空気ではないので諦めて死の行軍へ進む。

 ニグレドによる体感型ジャパニーズホラーとは別方向に怖い。人形に気付かなくてめっちゃ刺された記憶がよみがえった。

 うわぁ、テンション下がってきた。

 五大最悪だけは避けたい、マジで。

 作った奴は俺に土下座して謝るべきでしょ、あれ。

 恐怖公と呼ばれるゴキブリ王の部屋に興味本位で行ったら、ゴキブリが湧いてきて悲鳴を挙げそうになった。そしてなんとか我慢して進んだら、暗がりでエントマがゴキブリ食ってた。なんてAIを組んでくれたんだ……!

 

 ブルプラさんの今日の気分はジャングルらしい。

 夜空を見ようぜ、というロマンチックな流れになった。

 感動的だな。

 だが無意味だ。

 

 餓食狐蟲王の領域近くで眺めることになったからな(迫真)

 

 

 

 

 

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 どっかのワールド全てが悪魔に包まれたらしい。

 なんかワールドアイテムをテキトーに使ったせいだとかどうとか。

 マジかー。

 ちゃんとワールドアイテムは使い方を考えないと他人に迷惑になるって、みんな理解していると思ったんだけど。

 ヘロヘロさんが何故か目を逸らした。スライムに目は無いのに逸らされたとわかるほど露骨だった。

 ギルドで予定していた、アイテム集めを延期して、その現場に向かうことになった。

 フォーム3へと至っているので、継ぎ接ぎの双剣士PCに偽装しておく。

 

 

 

 溢れんばかりの悪魔が空を飛び、地を這い、海を進んでいる。

 まさに地獄絵図。

 異世界に転移したとしてもユグドラシルにだけは絶対行きたくない。

 魔境過ぎんよ。

 

 肉棒ちゃんを盾にしてゴリゴリ悪魔を磨り潰す。

 悪魔の発生源、おそらくものすごい数の悪魔が出現している場所、にワールドアイテムがあるんじゃないかと当たりを付けたメンバーが、回収に向かった。

 そして死んだらしい。

 えぇー……。

 

 どうも死の螺旋という負のモンスターが出やすい土壌になっており、悪魔が死ぬほどに深まり、上位悪魔や最上位悪魔、魔王級などがばんばん出現しているとか。

 これもうこのワールド鯖を封じないとダメなレベルじゃないだろうか。

 悪魔が出すぎて、若干重さを感じるし。

 他にもワールドアイテムに目が眩んだプレイヤーが多数いるらしく、死んだり生き返ったり突撃したりを繰り返している。

 ので、ついでにそいつらの死に様を録画。何時ものように職業や種族、スキル構成とかもキチンと録画しているので、公開したあと彼らはメタ張られたPKを味わうに違いない。ユグドラシルを存分に楽しんでもらいたいものだ(慈愛の眼差し)

 

 

 

 撤退しようかなぁと思っていたら、デスルーラしたギルメンから掲示板で『世界意志(ワールドセイヴァー)』という無限に強くなる武器を持ったPCも参戦しているという情報を得た。

 無限に強くなる武器……ヴィクティムに持たせて無限に強くしたら……あ、死亡で発動だっけか。

 とりあえず欲しいので俺も参戦しよう。

 肉棒ちゃんが離脱したので、溜まったカルマを放出してワールドエネミーと化す。

 あ、処理が更に重くなった。

 

 

 

 大量の悪魔を蹴散らしつつ『データドレイン』でレベルを上げ、悪魔の分布が最も濃い位置へ移動。

 悪魔ごと『世界意志(ワールドセイヴァー)』のPCを薙ぎ払……一撃で腕が捥げた。

 ライトセイバーか何かか、あれ。

 というか強すぎんよ。

 

 悪魔をドレインしながら自己強化と回復を繰り返し、『世界意志(ワールドセイヴァー)』と殴り合う。

 相手も強くなっていくので、どうなっているのかよくわからん。

 段々と強くなりすぎて、攻撃の余波で周囲の悪魔が消し飛ぶようになった。

 完全に別ゲーと化してきた。

 相手のPC自体は通常のレベル100なので、ワンパン当てれば沈められそうだが、相手の攻撃を凌ぐだけで精いっぱいだ。

 最終的にデータドレインする悪魔がいなくなったので、『世界意志(ワールドセイヴァー)』に負けた。

 

 

 

 あー負けたやでぇ、と本拠地へ戻る。

 掲示板に、俺の死後についても書かれていた。

 コルベニクを殺すためにロンギヌスを用意したが、すでに死んでたので『世界意志(ワールドセイヴァー)』のPCをぶっ刺して処理。処理したPCも一緒に消滅。誰もいなくなった戦場で、悪魔が再び無限湧き。マジで上限なしの無限召喚のため、鯖落ちでワールド閉鎖という結末を迎えたようだ。

 なんてクソな終わり方なんだ……。

 

 

 

 

 

 --38

 

 シズを改造して戦車にしよう、みたいな案を出してきたメンバーがいた。

 いや、駄目でしょ。

 だって可愛くないじゃん(正論)

 

 

 

 

 

 

 --39

 

 最近、ギルドも人が少なくなってきた。

 活動の核となる人物が複数人、忙しくてログインできなくなったり、ゲームを引退したり、マイナス方向の話題が続いたのだ。

 一度活気を失うと、どうにもならないのがゲームだ。

 アイテムとか装備、NPCなどを残ったギルメンに託されていくのだが、託されても有効には活用できないし。

 引退する人からアイテム譲渡という、あまり経験したくないネトゲあるあるだったり。

 

 まあ、俺も人のことが言えるほどログインできてるわけでもない。

 仕事を続けるほどに責任が重くなっていき、忙しくなったのもある。

 あとは彼女との時間を割いたりと、リアルとゲームのバランスを取るのはなかなか難しいのだ。

 

 

 

 ギルメンでパーティを組み、アイテム集めへと向かう。

 ユグドラシル全体が衰退の一途を辿っているらしく、俺の被PK率も落ちつつある。

 マジでロンギヌス使って殺そうとするプレイヤーもいなくなり、何となく伝統だからと投げつけてくるようになって寂しい。

 昔のロンギヌス係りはもっと熱意があったのだが、と無駄に懐古してみたり。

 熱意があった最期のロンギヌス係は俺にロンギヌスを突き刺して「今までいいストレス発散になってくれてありがとう」というショートメッセージとともに消滅した。

 寂しい物だ。

 

 モモンガさんが、肉棒ちゃんは今日は来ないのかと話を振ってきた。

 肉棒ちゃんは最近頗る忙しいらしくて、帰ってきたらご飯食べて、風呂入って、俺と会話して先に寝た。

 なので、肉棒ちゃんは俺の布団で寝てるよ、とドヤ顔。

 なんか気まずくなった。

 

 ご、ごめん。

 

 

 

 

 

 --40

 

 人が少ない。

 少ないと言うか、いないレベル。

 まあ、ユグドラシルも稼働して十……十年くらい?経ってるし、しょうがないといえばしょうがないね。

 他のネトゲをやってもいいんだけど、作り込みを見ると勿体ないという貧乏性が発動。

 アイテムも凄いのばかりだし、今更他のを一からやる気分にもなれない。

 

 コルベニクになっても活気が無い。

 昔は湧くように群がって来ていたプレイヤーも、見かけなくなった。

 ギルドを破壊しても「はいはい他のギルドに行けばいいんでしょ」て感じで冷めてるし、古参を潰すのは勿体ない気がして無理。

 マジでテキトーにロンギヌスに刺されて終わりって感じだ。

 悲しい。

 

 もうモモンガさんと外にテキトーに行き、金やアイテムを色々と集め、宝物殿に放り込む作業になりつつある。

 いや、ソロじゃなくて普通に会話しながら作業できるから、チャットの拡大版と考えれば悪くもないような気がしないでもないような。

 時々肉棒ちゃんも来るし。

 死に掛けヘロヘロさんとか家族サービスの無い日にたっちさんも来るからセーフ。

 ペロちゃんはハラスメントでBAN喰らったとかいう噂。

 最近までいた朱雀教授は外国の連携大学へと出張を繰り返しているとかで、引退した。

 

 

 

 やることなさ過ぎて、粘土遊びへと移行。

 引退、半引退ギルメンたちが好きに使ってくれと渡してきた装備を、飾るための像を作る作業だ。

 ぶっちゃけスキルが無いから雑な出来だ。

 その出来が逆に怖さを引き立たせている気がしないでもない。

 

 そういえば、引退や半引退状態のギルメンが、全部残っている人にあげると言っていた。

 あの出来のいいNPCも貰っていいということだろう。

 ……有効利用が思いつかない。

 

 全員でアニソンのダンスでもさせて動画サイトにでも上げようかなぁ。

 

 

 

 

 

 --41

 

 俺、明日プロポーズするんだ。

 決意したのは先週で、ついでに指輪も買った。

 指輪は送ったこともあるし、サイズは大丈夫……のはず。

 指輪を買ったら意識しすぎて恥ずかしくなり、先延ばししまくってしまった。

 何時もは一緒にいるのが自然な感じだったので、その反動がヤバい。

 流石に伸ばし過ぎたので、明日プロポーズすることを決意した。

 もう緊張で先週から色々と手つかずのポンコツ状態。

 ぶっつけ本番だと失敗するので、練習しよう。

 ゲームならバレないで練習できるはず。

 

 

 

 あれほど頑なに使わなかったスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを片手に、アルベドを見ているモモンガさんがいた。

 マジでちょっと手伝ってくだしぃ;;と連れ出す。

 緊張しているから、視界が狭まっていたが、練習相手に骨は無いことに気付く。

 ルプスレギナが一番似ているのだが、本番の気持ちは本人に混じりっ気なしに伝えたい。

 一番似てないシズにしよう。ユリと迷ったのは秘密だ。

 こ、好みは関係ないです(目逸らし)

 

 中だとNPCとかPOPモンスターがいっぱいいて恥ずかしいので、ナザリックの外で練習。

 フライで飛び、ギルドを見下ろしながら練習。

 モモンガさんを連れてきた意味が無いような……い、いやそんなわけないっしょ。

 栄え或るナザリックのギルマスだし、いるだけで効果は抜群だ(意味不明)

 

 ナザリック内のBGMが流れるオルゴール、その中に指輪を入れて準備オッケー。

 リアルも同じ感じである。

 違いは指輪がリング・オブ・アインズ・ウールゴウンなだけだ。

 

 プロポーズの言葉は幸せにするから、一生ついてきてくれ的な感じで。

 おっけー。

 よし、シズに渡して、台詞を言って、シズが返事とともに受け取って、周りが沼地になった。

 

 ん?

 

 周りを見回すと、沼地である。

 ナザリックの場所も沼地だったが、もっと毒々しかった。

 こんな平凡で牧歌的な場所ではない。

 毒沼もナザリックも無し。

 歩けば刺さる草の葉も一切存在しない。

 シズは大事そうに優しくオルゴールを胸に抱いている。NPCに設定された規定動作を超える自然さに疑問が生まれる。

 モモンガさんは首を傾げている。PCならざる生々しい動きに、俺も首を傾げる。

 そもそもゲームをやっている俺は何処にいったのだ。

 

 ……。

 

 

 

 

 

 少し離れた場所にいた、氷の彫像の如く美しい剣を携えている二本足で歩く蜥蜴に声をかけた。

 蜥蜴人(リザードマン)?

 緑の爪(グリーンクロー)?

 なるほどなるほど。

 初めて見たが蜥蜴人とはなかなかかっこいいものだな。

 

 

 

 

 

 ……ここ何処だ。

 

 

 

 

 

 


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