魔法少女は今日も歩く   作:魔法使いK

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ようやくプロローグが終わったぜ……!
まぁ出来の方は、半分寝ながら書いたって言えばわかってもらえるかな?あんま期待しないでね?
それと評価や感想くれてもいいんだよ?だよ?(チラッ

まぁ、これにて幼年期は終わりです。どっちかって言うとタカミチとオリ主の馴れ初めを書きたかっただけですからー。


第3話

 少年は力が欲しかった。

 

 少年の知る世界は余りに悲劇的に過ぎ、救いようが無さすぎた。

 そして少年の救いたいモノは両の手では足りなかった。

 だから世界(ミンナ)を救う力が欲しかった。

 

 

 少女は力が欲しかった。

 

 少女の知るモノは余りに恐ろしかったし、避けようの無いモノだった。

 そして少女がソレから逃げるには、少女は無力に過ぎた。

 だから自分(オレ)を救う力が欲しかった。

 

 

 少年は世界が救いたかった。

 

 

 少女は自分を救いたかった。

 

 

 

 

 

 少年と少女の違いはそれだけだった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 クレア・ティアーヌと言う少女について話すとしよう。

 見た目と不釣り合いな洋名を持つ少女の事を。

 

 話すと言っても誰の視点で、と言うわけでもない。

 客観的に。

 俯瞰的に。

 敢えて言うのならば誰か(・・)の視点だろう。

 

 黒髪黒目の美少女天才魔法少女。肩書きとしてはそんなもの。

 内面、性格を言うのならば傲岸不遜な小物。誰よりもプライドが高いながらも、誰よりも卑屈な少女。

 旧名を織田道(おだみち)(あずさ)と言い。

 ごく普通の家庭に生まれついた、普通じゃない少女。

 生まれながらにして神童と言う言葉すら霞むほどの知恵を見せ、親を親と思わない、その精神の異常さ故に棄てられた少女。

 そこを施設に入る前にケルトの魔女にその素質を買われた、魔女の弟子。

 常人の三倍もの魔力を有し、ルーン魔術への造詣の深い魔法少女。

 いや、年齢的にも魔法幼女と呼ぶべきか。

 

 まぁ、少女の実体を語ると言うのならばこんなところ。こんなもんで全てだろう。

 こんな短い言葉で語り尽くせる程には、彼女の人生はまだ少ない(この言い方で合っているのかは甚だ疑問だが。寧ろ重ねてないと言った方が正しいだろう)。

 別に彼女の少しだけ特徴的な幼馴染みについて話してもいいのだが、今は彼女の話をする時間だ。

 彼女の幼馴染みについてはまたの機会にしよう。

 

 さて、とだ。さてさてさて。

 これだけで言えばただの天才だ。とりとめてあげるところも無いし、しいて言うならば境遇が可哀想などと言うものぐらいだが。

 それも、彼女自信が気にしていない以上、詮無き事なのだろう。

 言いたいのは、話したいのはそんな事じゃない。

 前のだ。その前の情報を少しだけ、ほんの少しだけ語ろうと思う。

 

 彼女自信が語るように。彼女には前世と言えるものがある。

 いや、この言い方では正しく無い。

 前世を知っている。これが正解だろう。

 

 転生者。

 

 ネットのスラングとしてはポピュラーでありきたりなもの。何番煎じか分からないほどだ。

 そんなテンプレートな体験をしたのが()丹崎(にざき)(まこと)という青年である。

 

 平成の日本生まれ。

 ごく普通の青年であり、ごく普通の友人と学校、家族。ごく普通の、ありきたりなストーリー性の無い人生であった。

 ふざけたカバーストーリーも無く、目に留める特徴も無く。

 非日常に憧れながらも、日常の大切さを噛み締めることのできる善良な青年。

 それが、彼であった。

 享年十七歳であった。

 

 それが彼女の秘密。

 一人の青年であったという記憶。それこそが彼女の構築因子である。

 

 そしてだ。

 先にも言ったように彼はごくごく普通の青年であった。それが、なぜ彼女はこうも変わってしまったのか。

 それこそが話のメインだ。

 

 死生観と言うのがある。

 死、と言うのをどう捉えるかと言うものだ。

 死に対する認識と受け取ってもいい。

 彼の場合も、一般的な善良な人間に漏れず、死は恐ろしいものであり。軽々しく扱っていいものではない。そう、考えていた。

 

 事実、彼の体験した死は何処までも恐ろしく、何処までも堪えがたいものであった。

 少なくとも、それがトラウマになるぐらいには。

 しかし、だ。この青年がかくも恐ろしき死を乗り越え、再び生を感じたその時。青年の胸中にあったのは安堵感ではなく。

 

 

 ──闇より深き絶望であった。

 

 脳裏をよぎったのは一つのこと。もう一度、自分は、死ぬのか。

 

 必死。

 

 人は生きてる限り死ぬ。変えようのない世界の法則であり、事実だ。

 そんな逃れようがない絶望が故に、彼女の生き方は『如何に生きるか』ではなく、『如何にして死なずにいるか』へと変質した。

 溢れでる死への恐怖が青年を襲い、少女を縛った。

 

 これが彼女のカバーストーリー。

 

 こうして、誰よりも死を恐れながら誰よりも生を蔑ろにする人間が生まれたのだ。

 そして今一度言おう。これが、

 

 

 

 

 

 

 ──クレア・ティアーヌだ。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「如何にして神に至るか、それを考えて実行に移したのが魔術だよ」

 

 夏の日差しの中だった。

 テラスの下で、氷で冷やされた紅茶を飲みながら。

 そう彼女は言った。

 

「神? 神ってあれかい? 神様の方の……」

 

「いかにも、だよ。その神さ。ゴッド。主。言い方は色々あるけど、崇め奉る方さ。そいつになろうと言うのが僕……じゃくて私らの目標さ」

 

 男達を通報した後。彼女に説明を求める為に喫茶店に誘い、女の子を誘うことに若干の気恥ずかしさを感じながらも、先程の光景について尋ねた時だった。

 先の行為について、彼女が魔術と答え。当然の様にタカミチが魔術とは何か、と問うた時の説明がそれであった。

 それでも直疑問に顔を歪ませるタカミチに対して、

 

「あぁ、勿論わかってるとも。君が聞きたいのはそんなことじゃないんだろ?」

 

 と笑顔で言った。やけに、生き生きとした笑顔であった。

 

「理論的には奇跡の模倣式だね。西洋魔法との違いは、使役対象の違いだ。西洋魔法が精霊を使役する様に、魔術は────悪魔を、天使を、精霊を、自己を、神を。ありとあらゆるモノを使役する」

 

 ありていに言うならば、使役対象の広さの違いなんだよ。

 と、言い。

 

「君がなぜこんなことを聞くのかは知らないけどね。魔術と言うのは、言うなれば手段を選ばない技術ってことで、魔術師って言うのは手段を選ばない者達ってことさ」

 

 何処か自嘲するかの様に、そう彼女は言った。

 だがタカミチの脳に浮かんでいたのはそれに対する疑問ではない。断じて無い。

 そんな余裕は、彼には無かった。

 この幼くとも賢い少年の頭は確かに少女の言葉を理解していたし、その意味を察していた。だからこそ、平静では無かったと言えるのかもしれない。

 

「詠唱は……詠唱はいらないのかい?」

 

 少年にとって最早聞くことは限られていた。与えられた情報を脳で整理し、理解する。

 それだけのことで少年は自分に必要な事を纏めた。あるいは、最初から聞くのを我慢していたと言うべきか。

 一度落ち着いたはずの心臓が、また激しく鼓動する。

 それを無視して少年は問い、それに対する少女の返答は────

 

「まさか。基本的には必要だけど、陰陽道、ルーン、霊装。私が知ってるだけでもこれだけあるんだ、つまりね────詠唱なんてさして重要でもないんだよ」

 

 はたして少年の求めていたものであった。

 

「なら、僕に────」

 

 故に運命は転換する。ここに少年の未来が決定した。

 独りの魔法少女と一人の少年が、魔法世界で出会った。

 今はまだ、それだけ。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 こうして、長い長いプロローグが終わる。

 

 起承転結としては、起であり。彼女らの話としては序章そのものだ。

 一人の魔法少女と一人の少年の出逢い。

 たったそれだけ、それだけがプロローグだ。

 これから魔法少女は二年の間、少年と行動を共にする。それを話してもいいのだが、やめるとしよう。

 なぜならこれから始まるのは少年少女の話ではなく、英雄の話だからだ。

 悪の組織と戦ったりはしないし、甘酸っぱい何かがあるわけでもない。それをするには彼女らは弱すぎるし幼すぎる。

 

 故に幕を一度下ろそう。

 故に時間を進めよう。

 英雄が世界を救い、少年が青年になった、その先へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────舞台は十年後へと進む。


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