由比ヶ浜の覚悟を見た八幡は少しだけ力貸すことにする…と同時に実はスタンドを見極めるため為に観察していた!
観察していたのだが、八幡の観察眼をもってしても由比ヶ浜の能力を見極めるため事が出来ない!
敵意こそないが、このままでは死人が出てもおかしくはない!絶対に見極めなければ!
そして、ブラッディ・スタンドとは?
side比企谷八幡
白眼を剥いて倒れている由比ヶ浜と雪ノ下。
さて、ブラッディ・スタンドは覚醒が必要らしいから、まだ通常スタンド使いと同じだろう。
ブラッディ・スタンドとは?
済まないが、俺も良くわかっていない。
ただ、通常のスタンドと違い、何か不気味な雰囲気を持っていることは確かだ。
あの流血の本体。あれこそがブラッディ・スタンドとなったものの姿なのだとしたならば、覚醒後の能力がどんなものかは不明だが、通常状態の能力を解明しておかなければ、もしその覚醒とやらをした時、敵となった由比ヶ浜と戦うなど無謀ではないのだろうか?
とにかく、俺が隣で見ていても気付けなかった自動発動型のスタンド。
見極めなければ…
八幡「とりあえず…実験っと」
由比ヶ浜のジョイフルじゃあないほうのクッキーをすりこぎですりつぶし、粉末状にしてから数ミリグラムだけ取り出し、水で溶かしてから息を吹き返した由比ヶ浜に飲ませる。
ほんの数ミリグラムの粉末で、しかも水で薄めたなら流石に致死量じゃあない……なにぃ!これでも致死量だと!?
こんなものを世に出させるのは危ないな…
現行で出来ているこのポイズンクッキーは億泰さんに送ってザ・ハンドで処理してもらおう。
間違って億泰さんが食べてしまわないように厳重に溶接した鋼鉄製の容器に密封した上でザ・ハンドでこの世から消し去ろう!
ゴン!
痛い。おふざけなしで検分してるってのに。
徐倫「だから何で由比ヶ浜で実験するんだ!」
八幡「どのくらいの量で致死量になるかを確認していたんですけど。マジで、おふざけなしで」
徐倫「真面目にやっていてその他人で実験する鬼畜の所業!そこに…いえ、何でもないわ…」
何言ってんだ?この姉貴分。
それにしてもこの量で致死量の毒性があるのかぁ…
どんなスタンドかもわからないし、もし本当に敵に回っていたら厄介どころの話じゃあないな。
まぁ、素性の明かになっていない物の飲食は禁じられているからポイズンクッキーは食わないが。
俺は自分の作ったクッキーを咀嚼しながら考え込む。
うん、ヤッパリ普通のクッキーだ。
由比ヶ浜はこのクッキーを隣で見よう見まねで作っていたのだから、少なくとも変な化学反応を起こすことはないはずだ。
量に関してもキッチリ計量させてある。
一体、いつ、どんな形で毒が混ざる?
ビジョンのないスタンドなだけに発動条件がわからん。
結衣「うーん。今度はモヒカンが頬に穴が空いた人とじゃんけんしていた」
杜王町名物じゃんけんお兄さんじゃあないか!暇なのか億泰さん!
雪乃「そのモヒカンの人が警官帽みたいなのを被った人にお説教されていたわ。女王様と犬かしら?」
奥さんの京さんだな。
そりゃ怒られるわ。仕事中なのにサボってじゃんけんしていりゃあ。
それにしても京さんって家政婦なのにあの警官帽って訳がわからんわ。
結衣「うーん。美味しいクッキーだったのに何が悪かったんだろう。やる気が無くなるなぁ」
八幡「……」
ジョジョに目配せする。観察に徹するから任せる、と。
ジョジョは俺の意図を汲み取り、頷いた。
静「取り敢えず、もう一回やってみたら?」
結衣「う、うん…」
さっきまでの二回と違い、今度はえらくやる気がない。
まぁ、こんな短時間の間に4回も杜王町を往復してればそうもなるか。
やる気がないまま、手順だけはさっきと同じように正しいやり方でクッキーを作る。
由比ヶ浜の隣で雪ノ下がうるさい。
引き剥がせ、いろは。
いろは「はいはい、雪ノ下先輩は黙っていて下さい。味見役の出番はまだですよ」
ここで邪魔をするんじゃあない。
由比ヶ浜を観察するが、やはりスタンドが発動しているようには見えない。
仗助は目で「わかったか?」と言ってきているが、ダメだ。「お手上げだ」とハンドシグナルを送る。
食べてみたわけではないが、本人の評価では目的を達成出来た出来映えだったようだが。
結衣「一応、出来たけど…雪ノ下さん、お願いできる?」
雪ノ下は若干引きながらもクッキーを食べる。
二度も臨死体験しながらよくやる。
責任感だけはあるのか、単にプライド故に引き下がれなくなったのか。
クッキーは不格好ながらも良く出来た物だ。
二人は味見を始める。
俺は粉末を作り始める。
その俺を徐倫が拳骨して止める。
最後のいらない。
結衣「比企谷、何あたしのクッキーすりこぎで砕いているし!」
雪ノ下「比企谷くん。由比ヶ浜さんに失礼よ」
な、なに…?死にかけていないどころか、気絶すらしていない…だと?
俺はいろはに目をやり、もう蘇生処置をしたのか尋ねるが、いろはは首を横に振って否定した。
結衣「さっきと同じで美味しかった!あたしもやればできるんだよ!雪ノ下さん!」
雪乃「よくやったわ、由比ヶ浜さん」
雪ノ下。お前は何もしていないだろ。
強いて言うなら人身御供になったくらいだ。
まぁ、一番重用な役目だったかもしれないが。
今回と前回までの違いがあるとするならば…
確証は得られないから、あと一回、確かめてみる必要がある。
ジョジョ。
静「あと一回、作って見せてくれる?由比ヶ浜さん」
結衣「任せてよ!ジョースターさん!」
やる気を出して再びクッキーを作り始める由比ヶ浜。
俺はいろはにスタンバイを頼む。
いろははもう大丈夫じゃない?と、首を捻るが、俺の予想だと、これで出来るのは恐らくポイズンクッキー。
俺の見立てが正しければ…の話だが。
仗助「わかったのか?」
八幡「ああ、俺の予想通りなら、あの二人はまた杜王町に飛んでいく」
徐倫「さっきとどう違うの?」
八幡「確信に至ったわけじゃあないから、まだ秘密。それより仗助。個人情報だからどうしてもというわけじゃあないが、由比ヶ浜のテストやら成績やら…例えば中学の成績から入試の結果とか教えてくれ。おそらくは…」
俺は仗助と徐倫にだけ聞こえるように小声で話した。由比ヶ浜の成績をグラフにすると…
仗助は訳がわからないが、言われた通りにしようと家庭科室から出て行った。
しばらくしてクッキーは焼き上がり、試食。そして昏倒。恐らくは杜王町に飛んで行っただろう。いろはがエメラルド・ヒーリングを飛ばして瀕死状態から回復させる。
いろは「先輩の言うとおり、倒れましたね。一体どうしてですかぁ?」
八幡「説明の前に、仗助が戻って来るのを待とう」
丁度、仗助が戻ってきた。「由比ヶ浜結衣」と書かれたファイルを持って。
八幡「どうだった?」
仗助「お前の言うとおりだぜ、八幡。見事なまでにギザギザを刻んでやがる。特に由比ヶ浜が得意と豪語する科目だったりすればするほどに成績は低い。入試に関してもそうだ。本来のコイツの中学時代の成績では総武に入学するなんて無理だったのに、入試ではトップクラスの点数を取って合格している。おそらくは総武は記念受験程度の気持ちで受けて、本命はもっとランクの低い私立の学校を受験し、不合格になっている。カンニングや裏口が疑われて調査が入ったくらいだ。どういうことなんだ?」
八幡「俺はコイツのスタンドに、『リバース・タウン』と名前を付ける。発動条件は恐らくはコイツの
たぶんそれで間違いじゃあないと思う。
やる気があるときほど結果が伴わず、やる気がなければ良い結果に終わる。
ダメ人間を製造しそうな能力だが、じゃあ無気力に何もせず、だらだらしていれば良いのかと言えばそう言うわけではない。
勉強とかしっかりやった上で、平常心で物事に挑まなければならないという、ある意味悟りでも開く必要のある能力だ。
サバイバーやスーパーフライ以上に役立たずなスタンドだなぁ。
アーシス組も同情的な目で気絶している由比ヶ浜を見下ろす。
スタンドが本人の本質を現すというのなら、コイツのスタンドの本質は「やる気の空回り」か?
もしかしたらこの一年間、コイツは俺に謝ろうと覚悟を決めて来ようとしたのかもしれないが、そのスタンド能力故に来ることが出来なかった…もう、一年も経ってしまい、今さらどの面下げても良いかもわからず…
もしかしたらクッキーもお礼と謝罪の為の可能性もあるかも知れん。
可能性としては無くはない。
まぁ、素直に謝罪した時は受け入れてやるか。
普段なら絶対に許さんが、このスタンド能力のせいだというなら特例を認めてやっても良いだろう。
わかってみればしょうもない能力だ。
雪ノ下といい、由比ヶ浜といい、ブラッディ・スタンドはこんな能力しかないのか?
雪ノ下は使いこなせて無いだけで、大した能力か。
まったく…
仗助「やれやれだな?八幡」
セリフをとるな。
結衣「ハッ!今度は漫画家っぽい人が「八幡くんによろしく」とか言っていたけど比企谷君知り合い!?」
露伴先生、よく俺が絡んでいるのが解ったな。ヘブンズドアーでも使ったのか?
雪乃「PTA会長、警察官っぽい人が「バカ孫が!人様の命で遊ぶんじゃあない!」とか言ってましたが…」
仗助「あちゃあ、じいちゃんに怒られちまったぜ」
今日の導かれし小道は大忙しだなぁ。
アーシス組はそれぞれスタンドを出現させた。
結衣「ひぃっ!お化け!」
徐倫「落ち着きなさい、由比ヶ浜。これはスタンドって呼ばれるものよ。あなたには特別なビジョンはないけれど、あなたもスタンドは持っている」
結衣「スタンド…ですか」
仗助「おめぇ、この数年の間に矢で貫かれたとかの記憶がねぇか?」
結衣「う、うん。何故か何とも無かったけど、紅い矢があたしを貫いて…」
静「それ以来、あなたはここ一番の時には何故か結果が伴わなくなった。逆に諦めモードの時は上手く行くようになった。違う?例えば記念受験のつもりで最初から受かる自信がなかった総武が受かり、もっと下の偏差値の学校が落ちたり」
結衣「う、うん…何で知ってるの?」
いろは「先輩に感謝してください。あなたのスタンド能力を特定したのは先輩なんですから」
徐倫「それでも何度も三途の川を渡らせかけたけどね」
物事、解明させるべきことは解明させないとな。
結衣「あたし、今後どうすれば…」
八幡「普段以上に頑張って、本番では気負わない…諦めモードで挑むか、そのスタンドを上手くコントロールするしかないな」
そう言って俺は由比ヶ浜に背中を向ける。いろはとジョジョも俺に続く。
八幡「クッキーの作り方を習得し、今まで物事が上手くいかなかった原因も特定できた。初以来は成功した…で良いよな?仗助、徐倫」
仗助「上出来だ。今日はこれで解散だ」
雪乃「待ちなさい、まだ完璧なクッキーを作れるようには…」
八幡「何で完璧なクッキーをプレゼントする必要があるんだ?」
俺が止まって一言言う。
静「あなた、ビッチっぽい見た目に反して解ってないわねぇ」
続いてジョジョが言う。
いろは「大抵の男の子なんてものはですねぇ、女の子の手作りってだけで、もう十分心が揺さぶられるものなんですよぉ。ソースは基本世界の私です」
あ~…確か基本世界でのお前は確かそんなような女だったな。
別の平行世界でも基本的には基本世界の君だったね。
八幡「今日初めて作ったにしては、それなりのものは作れるようにはなっただろ?やる気を出さなければ。プロが売り物で出すんじゃあ無いんだ。今のレベルであれば、大抵の男は喜ぶだろう」
結衣「比企谷くんも?」
八幡「俺は悪いが受けとれん。理由はさっきの通り、立場上な。だが………そこに込められた気持ちを無下にするほどには人の心は捨てていないつもりだ。わからんけどな」
俺は二人と一緒に家庭科室を出る。
もっとも、もはや後戻りが出来る位置にはいないけどな。
ただ、じじいのいう黄金の精神が
いろは「せ~~っんぱいっ♪」
いろはが後ろから抱きついてきた。
いろは「その茨の道にいるのが自分だけだと思わないで下さいね?私もマチちゃんも、癪に障りますけど陽乃さんも、自らの意思でこちら側にいるんです。覚悟を決めて、あなたの側に…だから、一人で背負い込まないで下さい」
そして、隣を歩くジョジョも俺の肩を叩く。
静「ハッチの隣にはイーハもマーチも陽乃も、他には、私達ジョースター家がいる。そして、その仲間も…だから私たちを頼って…ハッチが私達の本物であるように、私達がハッチの本物でありたいから」
ありがとうな。いろは。ジョジョ。ここにはいないが小町に陽乃さん、ジョースター家やその仲間達…。
だけどな…
八幡(それだとて、その絆も俺達の罪が作ってしまったものだ。そうだろ?ジョナサン、ディオ…)
ジョナサン『だが、それでも彼女や彼らとの絆は君自身が築き上げた確かな絆だ。それを誇るべきだと僕は思うよ。八幡』
DIO『罪はこのDIOの物だ。今後は君が間違わなければ良い。全てが終わったとき、このDIOは罪だけをもって、君の中で長い眠りに就くと約束しよう』
ジョナサン『君は本当に変わったよ、ディオ…。今の君が僕と共にあることを誇りに思う』
ありがとよ。でも、これだけは言わせてくれ。
五歳の時に言ったこの言葉を…。
やはり、俺の奇妙な転生はまちがっている。
やはり、俺の青春ラブコメはまちがっている…と。
side東方仗助
結衣「あの三人と先生達、それと私と雪ノ下さんの間には入り込めない何かがある気がする…でも、ヒッキーの背中には、何か悲しい感じがするのは何だろう…」
あのバカ、まぁた余計な物を背負い込んでやがるな?
まったく…出会ってから十年以上経つが、あればかりは直らねぇ。
その去っていく八幡達を、由比ヶ浜は哀しそうな表情で見送っていた。
あの事故の件で、無責任な奴と決めてかかっていたが、コイツはコイツなりの優しさや、覚悟はあったのかもしれない。
だから、少しだけ八幡を動かす事が出来たのだろう。
そうでなければスタンド能力を解明するだけでして、後の事は放っていたはずだ。
そして、少しだけコイツを見直す機会ができた。
本当はどうかわからないが、俺達が持っていたコイツに対する認識は誤解かもしれないというきっかけも得ることができた。スタンド能力がスタンド能力だからな。
それはコイツがわずかだけ見せた覚悟が呼び寄せた幸運だ。
たが…
仗助「由比ヶ浜」
結衣「はい?」
仗助「お前は本当の仲間がほしいか?」
結衣「はい…」
仗助「そうか。だが、今のままでいられると願うならば、これ以上踏み込まない方が幸せだ。そこから先にあるのは、あの三人が繋ぐ絆があるのは、多くの涙と血が流れた上で成り立った絆だ。それはこれからも。俺達ジョースターが紡いできた避けられない血と涙の歴史そのものが、あいつらの絆だと言っても過言じゃあない」
結衣「血と涙で築かれた先の…絆。でも、あんな悲しいヒッキーの背中は…放ってはおけないかなぁと思えちゃうんです」
仗助「そうか。だが、生半可な気持ちなら、生半可な覚悟なら。止めておけよ。お前の血の責任までは俺達は背負う気はない。今後はお前次第だが、覚悟と優しさの意味を履き違える事だけはするな。これはあいつらの兄貴分としての願いだ」
俺は由比ヶ浜の頭をポンッと叩いてから、今度は雪ノ下に顔を向けた。
仗助「雪ノ下。正しいことが、必ずしもすべて正解じゃあない。それでも貫きたいと思う自分の正義を貫き通したいならば、相応の力と勇気と覚悟を持て。今のお前では、正義を説く権利は…ない。一見同じように見えるあいつらとお前の決定的な違いは、そこだ。まずは自分を知ることから始めろ。俺から言える事はそれだけだ。じゃあ、徐倫。後片付けの監督は任せた。俺は仕事を終わらせてから帰るぜ」
徐倫「わかったわ。仗助兄さん」
俺は後のことを徐倫に任せ、三人の後を追った。
願わくば、この二人にも黄金の精神が宿ってくれれば良い…陽乃のように。
そう考えずにはいられなかった。
リバース・タウン編エピローグ
数日後…side 比企谷八幡
奉仕部部室
ようやくこの部活の活動内容がわかった。
生徒の相談に乗り、その手伝いをする。だが、その存在が公にされているわけではない。仗助や徐倫が知らなかったわけだし。
いや、学校の関係者が知らないってマジで規則違反な部活じゃあないか!
ここに相談に来るのは何らかのツテが必要。そのツテが平塚先生…って、あの人はこの部活の不正設立が公になって、降格される以前は生活指導を担当していたよな?
要は自分の仕事を丸投げするための下請けにしていただけじゃあないか!
そもそも悩みを相談するということは自分のコンプレックスを晒すと言うことだ。それを勇気と覚悟を持って相談しに来た人間を生徒に丸投げするってどういう神経しているんだ!
まぁ、結果を言えば俺達には好都合な事でもあった。
一つは今まで俺やジョルノが漠然と感じていたブラッディ・スタンドの存在がハッキリとわかったこと。その二人の存在が確認できたこと。そして、由比ヶ浜みたいなケースがあるとわかったこと。
スタンド使いはスタンド使いを引き寄せる。
同族であるブラッディ・スタンドも然り。
この部活に雪ノ下雪乃がいる限り、ブラッディ・スタンドとその元凶は俺達の前に姿を現すはずだ。
ブラッディ・スタンド…それがどういうものかはまだ解らない。ただ、漠然と人類の脅威の一つと成りうる可能性の一つということだけだ。
言える事は、それはあの一族を狂わせ、俺やジョースター家、ディオの運命をも変えた切っ掛けとなった存在が作り出した一種の脅威の形の一つの尖兵。
もしかしたら、今の俺達という奴等の抑止力を形作る為に、ディオの存在をも運命の中に囚えた一種の神の計算だったのかも知れない。
もしそうだとしたら、ディオがジョナサンに言った言葉が、皮肉なことに正解だと言える。
ディオ『もし神がいるとして、運命を操作しているとすれば、俺達ほど計算され尽くした関係はあるまい!』
ジョナサンが死ぬときに発したディオの言葉。
それが、今の俺達やジョースター家、雪ノ下や由比ヶ浜の存在に当てはまるとしたならば…
いや、考えすぎか…
取り敢えず、今日も今日とてこの部室はSPWジャパンの出張所として奉仕部は開店休業。俺達は社畜として働き、雪ノ下はそんな俺達を尻目にはじっこで紅茶を飲みながら、本を読んでいる。今日は仗助が出社する日で不在だ。
俺達も雪ノ下も沈黙が気にならないたちなので(たまにいろはや仗助が我慢できずに発狂するが)、キーと扉を叩くノック音がよく響く。
結衣「やっはろー♪」
気の抜けた頭の悪そうな挨拶と共に引き戸を引いたのは由比ヶ浜結衣だった。
また面倒事でも持ってきたのかと奴から目をそらす。
その姿を見て、雪ノ下が盛大なため息をもらす。
コイツでも苦手意識を持つ相手がいるのか?
俺達という天敵にですら噛みつくコイツが?(天敵だと気付いていない為です)
静「何か?」
結衣「え、なに?あんまり歓迎されていない?ひょっとしてジョースターさんってあたしのこと…嫌い?」
ジョジョが漏らした小声を聞いて由比ヶ浜がピクッと肩を揺らす。すると、ジョジョは間髪いれずに
静「嫌いじゃあないわ。ちょっと…いえ、かなり苦手なだけで」
結衣「それを女子言葉では嫌いと同義語だからね?!」
静「そんなことないわよ?私、嫌いな人と同じ空間にいるのを我慢できるのって、公式な場所以外では許さないから」
八幡「うん。下手したら二度と表を歩けないまでに完膚なきまでに追い落とすまであるな。嬉々とした顔で」
小町「……………小町は今すぐ追い落としたいけどね。事情を聞いてなかったら」
小町ちゃん厳しいですね。でも、サンシャイン・ルビーをコッソリ出して指を向けるのは止めようね?一応敵意がないのだけは確認してるから。
由比ヶ浜は小町を見て、アタフタとしていた。さすがに嫌われるのは嫌なようだ。サンシャイン・ルビーを知っていたら脱兎の如く逃げるであろう。
そこで逃がす小町ではないが。
コイツは見た目はただのビッチだが、反応は普通の女の子っぽいんだよな?
小町「で、何の用ですか?お菓子の人」
結衣「えっと…あなたは?」
小町「は・じ・め・ま・し・て、比企谷八幡の妹、小町です。スタンド使いです。お菓子の人。事情は兄から聞きましたから、小町の事はお気になさらずに。で、何の用ですか?ご覧のように忙しいんですけど」
うわぁ、ハーミット・アメジスト並にトゲがありまくる自己紹介だ。まぁ、一度会ってるからなぁ。由比ヶ浜は気付いていないみたいだが。
結衣「う、うん。よ、よろしくね?小町さん。えっと…あたし、最近料理にはまってるじゃない?」
知らんがな。
結衣「で、この間のお礼ってゆーの?クッキーを作ってきたからどうかなぁって…」
小町「お姉ちゃん。スタンバイ」
いろは「…………了解」
え?どっち用にスタンバイさせた?ヒーリング?ストライク?前者だよね?
でも、俺達全員の顔から血の気が引いた。由比ヶ浜の料理と言えば、杜王町に魂だけが直行する恋するポイズンクッキーングだ。
いろは「私達は他人から渡された物は食べてはいけない事になってますから遠慮しておきます。気持ちだけ受け取っておきますね?由比ヶ浜先輩」
俺達は決まり事を盾に固辞するが、由比ヶ浜は鼻唄交じりでセロハンでラッピングされた包みを取り出す。
一応は普通のクッキーっぽい。
が、機嫌良さそうな表情から察するに、やる気を出して作ったに違いない。
そして、味見をしていないな?していたら今頃億泰さんあたりから連絡が入っていそうだし、今朝のホームルームで担任の徐倫(平塚先生は降格されて副担任になった)から哀しい御知らせがあったはずだ。
結衣「いやー、やってみると楽しいね。今度はお弁当とか作ってみようかな?とか。あ、でさ、ユキノンお昼一緒に食べようよ」
スタンドのコントロールができるまでお弁当はやめろ!
その場合、杜王町から帰って来れなくなるぞ!
雪乃「いえ、私一人で食べるのが好きだから、そういうのはちょっと…。それからユキノンって気持ち悪いからやめて」
結衣「うっそ、寂しくない?ユキノン、どこで食べてるの?」
雪乃「部室だけど…ねぇ、私の話、聞いてたかしら?」
結衣「あ、それでさ、あたしも放課後とか暇だし、部活手伝うね?いやーもーなに?お礼?これもお礼だから、全然気にしなくて良いから」
やめろ!来るな!いや、こいつもブラッディ・スタンドの持ち主。監視の為にはその方が良いのか?
でも、明かに仕事の邪魔にしかならん!SPWとしても奉仕部としても!
由比ヶ浜の怒濤の一斉攻撃に珍しく雪ノ下が戸惑いながら、俺の方をちらりと見る。コイツをどうにかしろと。
だが断る。助ける訳がないじゃあないか。
暴言は吐くし、そもそも世界を変えるとかのたまう奴ならこれくらい自分で何とかしろ。
それに、自分の友達だろ。
真面目なはなし、何度も杜王町に飛んでいくくらいクッキーの味見を手伝い、由比ヶ浜の悩みに真剣に取り組んだからこそ由比ヶ浜はこうしてお礼に来ているのだと思う。なら、それは彼女が受けとる権利であり、義務だ。
俺が邪魔しちゃあ悪い。
安心しろ。いろはが近くにいる場合に限り、
俺は二人から視線を外し、御愁傷様と一声かけて仕事に戻ろうとした。
結衣「あ、ヒッキー達も」
ギロッ!ドォン!(ザ・ジェムストーン登場)
結衣「えっと…比企谷くん達も。一応お礼の気持ち?手伝ってくれたし」
見ればハート型の一応クッキー。ジョイフルだったら無駄無駄を叩き込んでいた。
だが、それを受けとるのは断る!気持ちだけでいい!
八幡&小町「逃げるんだよォォォ!」
静「逃げるのよォォォ!」
いろは「逃げるんですよォォォ!」
俺はいろはを抱え、揃って三階の窓から飛び降りたのだった。
雪乃「私も逃がしなさぁぁぁい!」
結衣「え?何で三階から飛び降りても無事なの!?何で陸上部よりも速く走れるの!?何でヒッキーはいろはちゃんをお姫様だっこしてるの!?」
雪ノ下と由比ヶ浜が叫んでいるが、知ったことじゃあない。これも戦略的撤退だ!あとヒッキー言うんじゃあない!
それにしても、赤い矢か…。
一体、誰が由比ヶ浜にそれを使ったんだ?
更なる調査が必要だな。
由比ヶ浜結衣(リバース・タウン)…その後、放課後は奉仕部に入り浸る。
雪ノ下雪乃(エンジェル・ダスト)…いろはの目の前でクッキーを試食。再び杜王町へ。今度は音石さんに会う。
虹村億泰(ザ・ハンド)…たまに意味不明の厳重に密封された鋼鉄の容器を消すバイトが仗助を通じて依頼される。訳がわからないし、大した仕事では無いのに高額のバイトなので、かなり恐怖を覚えているが、「下手をしたら核よりも世界の脅威。財団でも処理できない危険物だから世界の為にも頼む」と言われ、真面目に処理している。
総武高校都市伝説
東方仗助PTA会長には透明人間が護衛に付いている。
一部の生徒から、「家庭科室の方からドラララララ!」という声と共になにやら破壊音が聞こえたが、教師が駆けつけたときには何も起きていなかった。
昔、総武高校があった地域が海の下にあり、溺れて死んだ幽霊が暴れたと言うオカルト研究部のデマが文化祭で発表された。
太った男子生徒から二人の女子の霊魂が何度も北の方角へ行ったり来たりしていたらしい証言があったが、その男子生徒は中二病患者という事で、オカルト研究部の一部以外、誰も信じることはなく、哀しいトラウマが彼の心に刻まれた。
←To be continued
はい、長かったでしたが、由比ヶ浜編が終わりました。
信じられるか?第三章がはじまって、やっと俺ガイルの原作1巻の1/3なんだぜ?
………途中でやめて良い?
うそです。まだエタりません。読んでくれる方がいるうちは。
そして、第二章で出し忘れていたボーイ・Ⅱ・マンのじゃんけん小僧とスーパーフライ(鉄塔のスタンド)が名前だけ登場しました。
スーパーフライはその特性上、出すのは無理だと判断して敢えて出さなかったのですが、じゃんけん小僧は純粋に忘れてました。
他にも誰かいましたっけ?
由比ヶ浜のスタンド、「リバース・タウン」は日本語にすると反町です。
もちろん、反町○史の「ポイ○ン」から取りました。
そこから更に発展させ、やる気の結果を「リバース」する、何度もクッキーでユキノンとガハマさん本人を杜王「タウン」へルーラさせる、という結果へ導く…というしょうもない発想に変換させ、原作でのやる気の空回り具合も加味してガハマさんの能力とスタンド名を決定したわけですが…面白かったでしょうか?
それでは毎度恒例、原作との相違点です。
ガハマさんの入試結果に様々な憶測(失礼)➡ガハマさんの入試はある意味で本人の(スタンド能力と本来の学力のミックスした)実力。
ガハマさんと小町の再会が早まる。本来はもう少し後の出来事。
後日のお礼のクッキーはまたしてもジョイフル➡普通のクッキー
同上のクッキーを八幡は受け取り、食べて杜王町(原作ではありません)へバシルーラ(死んでないよ!)➡逃げるんだよォォォ!
それでは、原作1巻の後半へと突入します。
次回もまた、ハッピー♪ウレピー♪ヨロピクネー♪