Side 比企谷八幡
保育園での用事を済ませ、最低限の仕事も終わらせた俺は、例の三部作を再び読み直すべくページを開く。
このシリーズを読む時はやはりどうしても緊張してしまうからだ。
すると、コンコンとドアを叩く音が聞こえ、妹の小町が入ってくる。
小町「お兄ちゃーん。お風呂空いたから入っちゃってだってお母さんが言ってたよー………って、またその本を読んでたの?」
ハードカバーの小説を読む俺の手元を小町が覗き込んでくる。
八幡「あまり読むのはお勧めしないけどな。天然痘に似た症状に冒されても責任もてん」
小町「ほえ?何で天然痘?」
八幡「呪いのビデオによって死んでいるキャラクターの死因は、謎の呪いじゃあなくて、呪いによって体内に生成された『リ○グウィルス』という天然痘ウィルスをベースに生成された病気が原因だ。スタンド使い的に説明すれば、スタンド能力は遠隔自動タイプのスタンド。ビデオ
小町「だったらビデオを見なければいいだけじゃあないのさ」
はいアウト。
もし、この本が仮称『サ○゛コ』というスタンド能力に冒されている本ならば、俺も小町もウィルスに冒されているだろう。俺も原典のシリーズを読んでいなければ小町と同じミスをしていた。
八幡「言っただろう?『ビデオ等』………ってな。一般的に知られているリン○という作品において、呪いはVHSテープのみにしか原因がなかったのは知っていると思う………が、原典じゃあそれにとどまらなかったんだ」
小町「そなの?だって、最終的には能力の解除はダビングしたVHSテープをタイムリミット内に他人に見せれば逃れられるんじゃあなかったっけ?」
八幡「本来であればそうだったらしい。けれど、原点でも映画でもそうであるように、最初に呪いを受けた奴等のイタズラによって呪いの解除方法を記した部分は上書きされたというのは覚えているか?」
小町「うん。その呪いの解除方法を探るというのがあのホラー映画の謎解きに関わる部分で面白くなるんじゃん」
そう。ダビングして他人に見せれば助かる。そこが第一作目で判明した呪いを回避する方法だった。
しかしながら、そこで終わるならば続編として「らせ○」や「ルー○」に繋がらず、そこで完結しているはずである。
八幡「2作目の『ら○ん』じゃあ、その解釈は間違っていたことが判明したんだよ。正確には本来ならば『リ○グ』の解釈で正解だったはずのものが、イタズラによって呪いの内容が変質してしまったんだ。更に性質の悪いものにな」
小町「もっとタチの悪いもの?」
『○ング』の主人公である浅川は(映画では松嶋菜々○演じる浅川は女だったが、原作では男)、ビデオを見てしまった妻と子供を助ける為に呪いを解明し、ビデオをダビングして高山に見せたことによって条件を満たして助かった事が高山の死によって判明した。テープをダビングさせ、それを別人に見せることによってたすかる条件を知った浅川は、妻と子供にテープをダビングさせ、それを両親に見せる事で物語は幕を閉じた………かに思われた。
しかし、続編の『○せん』ではそれが間違っていたことが判明する。
二作目では主人公が高山の大学時代の友人の安藤となり、高山の遺体を司法解剖するところから始まる。
ふとした事から高山の遺体から謎のウイルスの存在と『リン○』というキーワードに興味をもった安藤は、高山が死ぬ直前まで謎の事件を追っていたことを突き止め、高山と行動を共にしていた前作の主人公、淺川を訪ねる。
しかし、浅川は廃人となっており、前作では浅川の両親を犠牲にすることで助けたはずの妻と子供は高山と同じくリン○ウイルスの犠牲となって死んでしまっていたことが判明する。
小町「じゃあ、何で1作目の主人公は助かったのさ」
八幡「スタンドが成長するように、イタズラによって内容が成長した呪いの解除条件を『浅川』は満たしていたからだ。『子供を欲していた貞○』が残した変質した呪いの解除方法は2つ。1つは一連の出来事を別の媒体として記録に残すか、排卵期を迎えていた女性が精子としての能力を持っていたウイルスに感染し、『新たに山村○子を産み落とす』のどちらを満たすか…。新聞記者だった浅川は、ビデオを見てから助かるまでの出来事を事細かにレポートを残していたから条件を満たしたんだ」
小町「それって………あのウルフスと同じようなものじゃんか」
そう、まるで駄馬のユニコーンみたいな胸糞悪い結末だよな。
天然痘ウイルスを元に輪のような形をした○ングウイルスは、条件を満たした人物に対しては輪が切れたようになって死の運命から解放されるようになっていた。
排卵期の女性に対しては切れたウイルスが精子となって卵子と結びつき、母体となった女性は妊娠する。
小町「んん?ちょっとまってよ。何でユニコーンみたいな胸糞条件を二作目の主人公は突き止めたのさ?」
八幡「『高山』の恋人だった『高野』が二つ目の条件を満たしてしまったんだよ。因みに、『高野』は映画版の『リン○2』の主人公になった女な。『らせ○』じゃあ非業の最期を遂げたけど」
小町「非業の最期?」
八幡「………あれだ、杜王町で起きた『ザ・ブック』の蓮見の母親のような最期だな………」
小町「蓮見さんの母親の最期って………脱出不可能なビルとビルの間の中で出産して、最期は衰弱死したっていうあれ?」
八幡「ああ。ユニコーンや蓮見の母親よりも悲惨なのは、『高野』は意識をも『貞○』にのっとられ、そんな状況に陥ってしまったって所だな。そして浅川が残したレポートは新しい能力の媒体として、二作目の主人公である『安藤』さんもウイルスに感染していましたとさ。めでたしめでたし」
小町「うわぁ………それ全然めでたくないよ………」
八幡「つまりはだ。もし仮にSADAKOがスタンド能力だったとしたならばだ。この本やエンターテインメントと化している映画なんかはウイルスを撒き散らす媒体だったかも知れない……だからそういうのを引き寄せやすいスタンド使いである俺らとしては安易に読んで良いものじゃあ無かった可能性もあったってわけだ」
小町「もう今更だよね………」
だから読んだ直後とかは血液検査、更にいろはからエメラルド・ヒーリングをかけてもらったりなど入念にしていたわけだ。
ここ最近の謎行動にはこういう意味があったんだよ。ドゥーユーアンダースタン?
だからこそ、三作目の『ルー○』ととある現象に目がいったんだよな。
それでエンポリオには『安藤』の結論に基づいて『進化』する世界で得たヒントを元に色々と調べてもらっているわけなのだが、東京大学の医学科教授である『安藤』ですら匙を投げ出したくなるほどに大苦戦した物だ。
エンポリオもかなり苦戦しているらしい。
何をかだって?それはまだ秘密だ。
小町「………同じ女や人間とは思えない所業だよね………いくら怨念があったからと言ってさ………チープ・トリックみたいじゃんさ………」
八幡「おいおい。それを俺達スタンド使いが言えることか?既に人間とは別の生き物とは言えない俺達にさ。元々、ポルナレフレポートの疑問から、あの世界に行ったんだからな」
ポルナレフレポートにおいて、ポルナレフさんはこう語っている。
八幡「『矢の宇宙ウイルスを克服した者に対してのご褒美としてスタンド能力は贈られた物だ』………俺はシルバー・チャリオッツ・レクイエムの第2段階から考えて、その結論は甘いんじゃあないかと考えてるんだよなぁ………進化しなければ死ぬ。それはまるでゲッター線やリン○ウイルスにそっくりじゃあないかってな」
小町「普通、そんなことは考えないよ………」
八幡「そうか?そういう資質は俺達全員にあると思うぞ?『スタンド使いに覚醒するのは、精神力がある悪人に多い』というのは誰が考えた事か………俺は『進化=常識に囚われない精神から変質を受け入れられる者』と考えているがな。生れつきのスタンド使いも含めて」
海水魚が淡水に耐えられないという常識を本能で乗り越えて淡水魚や鮭のように両方に適応できる生物になったように、魚類が陸上へ進化したように、両生類が………と繰り返してきた結果が最終的に人類となり、そして今………矢のウイルスを常識をかなぐり捨てたスタンド使いとして進化し、いずれは………。
ウルフスはそうして進化を重ね、肉体を捨ててスタンドそのものが生命と化した存在じゃあないかと俺は仮説を立てている。
だからこそ、矢の望む進化とは別の形に成り下がったウルフスは『通常の矢』の力に耐えることができない。
ゲッター線に耐えられなくなり、地下に潜伏するしかなくなったあの帝国のように。
もっとも、あれは太陽系が現在の銀河の季節と別だからこそ起こったものだからだと思うんだがね。
だって太陽系は2億2500万年かけて銀河を一周するわけだから。
もっとも、どう頑張ったとしても地球はいずれ生物が生きられない世界になるわけだから、人類は宇宙に出られる進化をしなければならないのは確かだと思うけどね。
なんでだって?宇宙は常に膨らんで、星と星の間隔は開いているとされているからな。いずれは地球も太陽から離れ、天王星や海王星のように死の大地となるかも知れないと言われてる。
だから火星へのテラフォーミングとか考えられているんじゃあ無いか?
ちなみに地球と太陽の距離は8光分だ。
俺達が普段見ている太陽は、X時から8分前の太陽を見ていると考えられている。
その間も太陽系は銀河を回っているし、膨らんでいるから龍玉の主人公の瞬間移動能力を持っていたとして、現在見ている太陽へと向かったとしても、そこには太陽は無いと考えられているけどな。
八幡「故に、2億2500万年を1銀河年として、地球の年齢を考えたら地球は現在18銀河歳と考えられており、人類は誕生から500万年と言われているから銀河年で考えると誕生から1銀河週間しか存在と考えられ、人間という存在はいかに地球にとってウイルスじゃあないかと………」
小町「お兄ちゃんお兄ちゃん?だんだん話の内容があさっての方向に行方不明になっている上に、発想がウルフスみたいになっているし、ものすごく小難しいかつ『めんどくさい』人になってるよ?本当に核産廃級ゴミいちゃんとなってるよ?」
八幡「ぐはぁ!」
考えの方向が行方不明になっていた事は認めるとして、結構重要な事を言っているんだけどなぁ………。
レクイエムなんてのは、その途上の話だと俺は考えている訳だし。
小町「あのねぇお兄ちゃん。今は目の前の危機を何とかするのが先決であって、小難しいことを考えるのは今じゃあ無いと思うよ?ゴミいちゃんだよ?ゴミいちゃん。もしくは『破門』の『戦士』?」
八幡「意味不明に『破門』にして『戦死』扱いするんじゃあない!というか、ただただ話についてこれないから暴言連発して煙に巻こうとしているのが丸わかりなんだよ、このアホの子め!」
最終的にゴミいちゃんで片付けようとするんじゃあない。
しかし………まぁ、小町が言うように、最終着陸点が何であるかにせよ、まずはウルフスを何とかするしかないんだよなぁ。
←To be Continued
小町が言うように、少し小難しくなりましたが、まぁ本作を始めるに辺り、最終的な考察の核となる話を書きました。
本当は最終話辺りに考えていた話なのですが、本城自身の身に何が起こるのかわからない状況となりまして、先にこの話をすることになりました。
数年前に考えていた事になるので、ジョジョ第8部が終わっている現在ではスタンド考察は大分違っているものだとは思いますが、本城はこう考えておりました。今更なので突っ走っていますが、まぁ、二次創作だということで御容赦下さい………。
サブタイトルの『輪』はリン○、『スパイラル』はらせ○、『抜け穴』はルー○を指します。
それでは次回もよろしくおねがいします。