やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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ケルベロス戦後……その夜(汐華、雪ノ下家の場合)

side雪ノ下雪乃

 

ジョルノ「今日は頑張ったな。雪乃、結衣。送っていくついでに、食事もご馳走しよう」

 

結衣「良いんですか?」

 

ジョルノ「遠慮することはない。君は雪乃のかけがえのない親友だ。フラテイロ()としては、当然の事だろう?」

 

ジョルノ兄さん……ギャングだけれども、身内には凄く優しい人だわ。

 

ジョルノ「それに、口実にもなりましたしね」

 

口実?

………あ。東方先生………。いえ、朋子おばさまと言うべきかしら?

朋子おばさまは徐倫姉さんの事を切っ掛けで、鶴見先生や校長先生から色々と言われてカンカンに怒っているそうよ。

ジョースターさんや比企谷君達を呼び出したそうだから、確実にお説教ね。

もちろん、同じ『ジョジョ』のカテゴリーで承太郎お義父様……こほん………まだ気が早いわね。承太郎伯父様が適切かしら……。承太郎伯父様やジョルノ兄さんにも朋子おばさまはお説教をしかねる勢いだったようね。

でも、ジョルノ兄さんは私と由比ヶ浜さんを送る口実で上手く逃げ出した……と言うことね。

ジョルノ兄さんらしいわ。

 

結衣「たははは………素直に喜べない………アッ!ジョルノさん。この車、素敵ですね?」

 

ジョースターさん達と別れ、私と由比ヶ浜さんはジョルノ兄さんが運転するクワトロボルテに乗り込んだわ。

イタリアの高級スポーツセダンね。

 

ジョルノ「昔はアルファロメオという車を好んで使っていたんだけどね。5年前の事件以来、名前が気に入らなくてクワトロボルテに乗り換えたんだ」

 

雪乃「5年前の事件?」

 

ジョルノ「ストーンオーシャンさ」

 

ストーンオーシャン………確か徐倫姉さんがフロリダの刑務所に収監された事件……よね。

それが車の名前と何か関係があるのかしら?

 

ジョルノ「当時、徐倫と付き合っていた男の名前がロメオさ。そして、自分がやった死亡ひき逃げ事件の罪を徐倫に被せて捨てた………ね」

 

ジョースターの乗り物運の悪さって、そういうところでも出てくるものなのね。

徐倫姉さんの男運の悪さもあると思うけれども……。

おかげで私とエンポリオ君が出会うことが出来たのだから、私にとってはプラスなのだけれども、それを口に出してはいけないわね………。

名前が気に入らないからって、わざわざ高級車を乗り換えるくらいにはジョルノ兄さんもそのロメオさんを嫌っているのだし。

ジョルノ兄さんにとっては三人のお兄様……ウンガロ兄さん、リキエル兄さん、ドナテロ兄さんを失うきっかけだった理由もあるかも知れないわ。

三人の兄さん達の結末は……この世界が一番酷いと言うものね。

少なくとも基本世界ではウンガロ兄さんは廃人になってしまったとしても、生きていたわけなのですもの。

 

ジョルノ「ところで、この車の色についてなのだが…」

 

色?

ジョルノ兄さんのクワトロボルテの色は、ギャングのボスであることを意識してなのか、黒色ね。

黒という色は、高級感が漂う色で良いとは思うのだけれども………。

色がどうかしたのかしら?

 

ジョルノ「八幡と義輝が、僕の車なら金色であるべきだろうと言ってくるんだ。確かに僕のスタンドは『ゴールド・エクスペリエンス』だから金色……というのはわかる。パッショーネのボスになってからは、服にもアクセント程度には金をあしらっているが……君達は彼らが何故、そんな事を言っているのかわかるか?君達ならば何かわかるかも知れないが……」

 

金色のクワトロボルテ……ジョルノ兄さんのスタンドにも絡んでいるし、成金趣味っぽくてクワトロボルテが安っぽく思えてしまうけれども、そこはあまりおかしくはないと思うわ。趣味は人それぞれなのだから。

それに、私に聞かれてもわからないわね。

 

結衣「ヨッシー……趣味悪い………それに……うーん。すいません、解らないです……」

 

ジョルノ「僕も金色の車を乗り回すのはあまり趣味じゃあない。でも、おかしいのは……特に八幡のそれは不自然なんだ」

 

比企谷君の?

 

ジョルノ「アルファロメオに乗っているときには特に何も言わなかったんだ。クワトロボルテに乗り換えた時からなんだが………金がダメなら赤でも良いと……意味がわからないんだ」

 

良く解らないわね……少し調べてみようかしら……。

えっと……クワトロボルテ……クワトロボルテ……

あら?

 

雪乃「クワトロ・バ○ーナ?」

 

機動戦士で有名なアニメのキャラクターに、そういう名前の人物がいたわ。

検索予測に引っ掛かったのだけれども……。

えっと…………

……………………………………これ、言って良いのかしら?

比企谷君が金色にしようとジョルノ兄さんに進言した理由がわかってしまったのだもの。

そして、理由を教えてしまったら最期、確実にワサビね。

 

だってそのままじゃない。

機動戦士の初代ライバル……その2作目で名乗っていた偽名がクワトロなのだけれども、その愛機の色が金色なのよね。

だから比企谷君はジョルノ兄さんとクワトロボルテの組み合わせを聞いたときに金色を推したのだと思うわ。

とても……とても下らない理由なのだけれど。

ジョルノ兄さん。クワトロボルテを言われるがままに金色にしなくて正解よ。

あの男の事だもの……。金色にしたならば最後、この○式の機体のように、車体のどこかに『百』と塗装するに違いないわ………。サイドミラーとか。

 

ジョルノ「なるほど………僕のゴールド・エクスペリエンスとクワトロボルテ……そしてクワトロ・○ジーナと百○をかけていたと言うわけか………」

 

ドドドドドドドドドドド………

 

あら、今は兄さん、運転中よね?

助手席に座っている私の携帯の画面は見えないと思うのだけれども………

 

結衣「ゆきのん………ゴールド・エクスペリエンスがゆきのんの携帯を見ているよ……ゆきのんの様子がおかしいことを察して………」

 

え………?

振り返って後部座席を見てみると、確かにいたわ。ゴールド・エクスペリエンスと私は今………バッチリと目が合ってしまっているわ(ゴーグルのようなゴールド・エクスペリエンスと目が合うという表現が正しいのかどうなのかはわからないのだけれども、直感的にそれがわかってしまくわ)。

 

ジョルノ「怯えなくて良い。僕の怒りは確実に八幡に向いている。その画像が無くたって、八幡が好意で言ってきているのか、それともただの悪意による悪ふざけなのかはすぐわかる」

 

雪乃「ジョ、ジョルノ兄……さん?」

 

お、おかしいわ……私は表情に出した記憶が無いのに。だって普段から言われているもの。

私の表情は感情に乏しいって………。

 

ジョルノ「ハハハハ。雪乃。僕から言わせてみれば、本当の無表情というものに比べたならば、君の言う無表情なんて物は、実に表情豊かだと言わざるを得ない。同世代に比べれば確かに表に出ない方だとは思うけれどね」

 

ぅぅ……初めて言われたわね………。

 

ジョルノ「さて……ネタがわかった以上、八幡には後で覚悟してもらうとして………食事に向かうとしよう。トリッシュが待っている。好きなだけ食べるといい」

 

ジョルノ兄さんのお仕置きと言ったならば……やっぱりアレかしら?

からかう相手をまちがえたようよ?御愁傷様ね………比企谷君。ジョルノ兄さんをからかうなんて、恐ろしい真似をしたあなたを同情するつもりは無いけれど。

そして到着したレストランは……ジョルノ兄さんらしいイタリアンレストランだったわ。

千葉でも評判のお店ね。

 

キング・クリムゾンよ

 

雪乃「ご馳走さまでした……」

 

結衣「でしたー!」

 

こんな贅沢なお食事は久し振りだわ。

エンポリオ君がご一緒で無いのは残念なのだけれども、これ以上の贅沢を言っては罰が当たるわ。

 

結衣「うーん……家族やサブレにもこの美味しい食事を食べて貰いたかったなぁ………」

 

ジョルノ「そう言うと思って、お土産を包んで貰っていたんだ。雪乃。君にもね。陽乃に届けてあげると良い」

 

結衣「ホントですか!?ジョルノさん、やっさしー!」

 

トリッシュ「結衣。嬉しいのはわかったから、声を落とす。他のお客さんに迷惑よ」

 

結衣「あ……はい。ごめんなさい………」

 

ジュンとしてしまう由比ヶ浜さん。だけど、トリッシュ姉さんは由比ヶ浜さんをやさしく見て。

 

トリッシュ「良いのよ。少し元気なくらいが、結衣の年頃には丁度良いのよ。あたしがそのくらいの頃は、既にパッショーネの事情に巻き込まれていたから、すこし眩しいわね」

 

トリッシュ姉さんは、組織の暗殺者やお父上であるディアボロに命を狙われていたというものね。

そんな過酷な過去が、トリッシュ姉さんの内側を強くしたのだわ。

それが不思議な魅力となって、モデルと歌手の両面でイタリアの芸能界の女王として君臨しているのね。

トリッシュ・ウナの芸名は日本でも届いているのだもの。

空条貞夫お祖父様、音石明さん、トリッシュ・ウナ姉さん………。

世界で活躍するアーシスの芸能人達…―。

今回のSPW財団クリスマスイベントは、関東支部と東北支部で取り合いになったという話ですものね。だから合同という形になったのだけれど。

個人的にはミドラーさんのダンスも見たかったのだけれども、彼女は彼女で現地のイベントに引っ張りだこのようだから、仕方ないわ。

 

雪乃「ジョルノ兄さん……今日はほんとうにありがとう」

 

ジョルノ兄さんが助けに来てくれなければ、私は元町君に殺されていた可能性があったわ。

兄さんには……いつも助けられてばかりね。

ずっと一緒にいたかったけれども、ジョルノ兄さんはウルフスとの戦いが終わればイタリアに帰ってしまう……。それが少し、寂しいわ………。

それは姉さんも同じなのかも………。

 

ジョルノ「……………」

 

私の気持ちを察したのか、ジョルノ兄さんはジッとこちらを見ている。でも、何も言わない。

多分、今だけなんだわ……。ジョルノ兄さんが私をただの妹分として接することが出来るのは………。

イタリアに帰ってしまえば………それは出来なくなる。

ジョルノ兄さんは表向きはSPW財団ヨーロッパ支部の支部長という立場があるし、裏ではヨーロッパ有力ギャングのパッショーネのボス………。

今の私では、ジョルノ兄さんの弱点になってしまう。

 

結衣「強くなろうよ……ゆきのん」

 

由比ヶ浜さん?

 

結衣「守ってもらうだけじゃあ無くてさ、トリッシュさんのように自分で自分の身を守れるくらいに強くなってさ………それでイタリアに会いに行けば良いんだよ」

 

あなた……簡単に言うけれど………。

 

結衣「特にゆきのんは波紋の戦士なんだからさ。強さの基準がわかって良いじゃん?」

 

驚いたわ……波紋の戦士の方向から物差しを図るとは考えなかったわ。

あなたくらいに単純で良いのかも知れないわね。

そうね。当面の目標として、エア・サプレーナ島の修行をクリア出来れば、好きなときにジョルノ兄さんに会いに行く勇気が持てるかも知れないわね。

 

雪乃「そうね。その時は、あなたも一緒よ?由比ヶ浜さん」

 

結衣「え?良いの?」

 

何を言っているのかしら?あなたは以前も言っていたじゃあないの。ずっと私と一緒にいるって………。

 

ジョルノ「好きなときにヴェネツィアに来ると良い。君ならば大歓迎だ。結衣」

 

結衣「やったぁ!あたしもジョルノさん大好き!あたしもジョルノさんの事をジョルノ兄さんって呼んで良いですか?」

 

雪乃「あら。ジョルノ兄さんは私の兄さんよ?由比ヶ浜さん」

 

それは譲れないわ。貴女でもね。

 

トリッシュ「モテモテね。ジョルノ」

 

ジョルノ「ジョースケにならないように気を付けるよ。トリッシュ」

 

キング・クリムゾン!

SPW財団日本支部・幹部用社宅

 

陽乃「へぇぇぇぇ。それで妹を心配しながら一人寂しーくボッチ飯をしていたお姉ちゃんをほっぽっといて、ジョルノ兄さん達やガハマちゃんと優雅な食事をしてたんだぁ」

 

帰ったら、仕事から帰って来ていた姉さんがショートグラスを片手にロックで飲んでいたわ……。

せっかく洗われた心が荒んでしまいそうよ………。

貞夫お祖父様のジャズを聴きながら、ソルトピーナッツをつまみにして半分出来上がっているわ………。

とても普段はすれ違えば誰もが振り向く美人の雪ノ下陽乃だとは思えないわね………。

 

陽乃「ジョルノ兄さんもジョルノ兄さんよ……お土産を持たせてくれるくらいなら、一声かけてくれれば飛んで行ったのに………」

 

雪乃「姉さん……寂しいのかしら?」

 

陽乃「そうなの!だから付き合ってくれるのは雪乃ちゃんとジョルノ兄さんだけなの!」

 

抱きついてくる姉さん………。

仲良くなっても相変わらず面倒な実姉だわ………。

 

陽乃「そ・れ・に・し・て・もぉ~♪エア・サプレーナ島の修行クリアが目的……ねぇ♪だったなら、まずはこれから出来なくっちゃ♪」

 

姉さんはウイスキーの入ったグラスに指を突っ込み、波紋で包んで中身を取り出したわ。お箸に刺さった豆腐のようにウイスキーはプルプルとしながらも、形を崩さない…。

それはまだ私には………。

 

陽乃「出来ないのかなぁ?そんなんじゃあ、イタリアはまだまだ遠いぞぉ♪」

 

姉さんはウイスキーをまるでアイスキャンディを舐めるかのようにペロッと舌を這わせるわ……。女の私からしてみても、その姿は魅惑的で………。

…………良いわ。これは挑発ということね?

この位のこと……やってやれないことはないわ……。

私は早速、ミネラルウォーターをグラスに注いで始めるわ………。

姉さんはそれを面白そうに見て、ソファに寝転がってお腹を抱えて脚をバタバタとさせる。絶対に出来ないと思っているのね………。

見てなさい、姉さん。就寝前には、出来るようにして見せるわ。

 

side雪ノ下陽乃

 

あーあ。こういう負けず嫌いな所は変わってないなぁ、雪乃ちゃんも………。

こんな簡単な挑発に乗っているようじゃあ、本当にイタリアはまだまだ遠いぞ♪

パパウパウパウ波紋のカッター♪

私は指に纏わせたウイスキーを流しまで飛ばし、グラスに氷を入れてウイスキーを注ぎ直す。

勿体無いけど、指を突っ込んだ物を口にするわけにはいかないものねー♪

まぁ、頑張るのね。雪乃ちゃん。

これが出来るようになるまで、私も結構苦労したから。

 

陽乃(せっかく汐華の呪縛から逃れたのならば、雪乃ちゃんには好きに生きてもらわないとね。出来る事が広がれば、それだけ人生の幅がひろがるんだから)

 

さぁってっと。

けしかけたからには、最後まで見届けなくちゃねー。

私はジョルノ兄さんからのお土産の包みを開け、トマトとモッツァレラチーズのサラダを口に運ぶ。

 

陽乃(モッツァレラ♪モッツァレラ♪)

 

うーん。ワイン、まだあったかなぁ。イタリアンには、ワインが一番だよね♪

グラスの水に悪戦苦闘をしている雪乃ちゃんを尻目に、私はキッチンへと向かった。

 

←To be continued




ジョルノ=ゴールド・エクスペリエンス
イタリア高級車セダン=クワトロボルテ
………となれば、百式でしょう!
これが………若さか………

シャ○・アズ○ブル「冗談ではない!」

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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