sideジョセフ・ジョースター
おかしい。
ケルベロスの攻撃は一度アクトンの能力を打ち消した後は、攻撃らしい攻撃をしてきておらん。
真犯人の攻撃はケルベロスの攻撃だったのか?
ジョセフ「否……じゃな。ケルベロスの攻撃にあんなものがあったのならば、ワシらは京都で全滅じゃったはずじゃ」
京都に限らず、あんな攻撃があったのならば他のウルフスと協力すればいくらでもワシらを全滅させる機会があったはずじゃ。
孫悟空やハーメルン、横牛、アルミラージ、猪八戒、それにオロチのような身体能力が高いウルフスが今回のスタンドを使えば、ワシらはなす術なくやられておる。
敵のスタンド使いはケルベロスの他にも別にいると考えるべきかも知れん。
静「参ったね……パパ。もしかしたらアクトンを強制解除された段階で、私達は敵のスタンドの能力にはまったかも知れないよ」
ジョセフ「その可能性は高いかも知れんな……」
玉縄「パパ?さっきそこにいたのは……ジョジョ?ジョセフ・ジョースター?」
うん?ジョジョとは静の事じゃあなく、ワシの事を言っておるのか?
ワシがジョジョと呼ばれるのは珍しいのう。
大志か、それとも時々材木座が言ってくるくらいのものじゃ。
彩加すら、静に気を使ってワシの事を「ジョセフ」と言ってくるからのう。
ジョセフ「いかにもワシはジョセフ・ジョースターじゃが……」
玉縄「ああ……やっぱり……。さっきの姿、見覚えがあると思っていたんだ……」
ワシの姿に見覚えがあるじゃと?
ワシは既に引退した身じゃ。今のこのナイスミドルな姿など、最近じゃあどの情報関連にも出ない筈じゃが。
特に引退後は前よりも若返った姿じゃからな……。
まぁ、ヨボヨボじゃった頃の姿も、シュワルツェネッガーの如くナイスミドルじゃったと自負するがね。
ジョセフ「お前さんは一体………」
ジョルノ「ジョセフさん。彼の事は後回しです。今は敵の撃破を考えなければなりません」
そうじゃったな………。
ジョセフ「玉縄君。君の情報を教えてもらえはせんかのう?心当たりのある者はおらんか?」
玉縄「………この合同イベントに、特に精力的だった人は、神木君の他には元町君でした。神木君はともかく、元町君がこんなことをするなんて……」
静「この写真のどいつがそう?」
玉縄「この人が……元町君だ」
玉縄は透明化していないペンを使い、元町という男を丸で囲む。
うーむ……。どこにでもいる、特徴が乏しい男じゃが…
静「うーん……この男の顔、どこかで……」
玉縄「中学の時、親の離婚で名字が変わったと聞いているね。以前の名字は『橋本』と言ったね」
静「橋本……橋本……あっ!あのエロ教師!アイツに似てるんだ!もしかしたら橋本の奴の息子か?ふぅん…親の復讐か何かかぁ……」
エロ教師……のぅ。
むしろその後がどうなったのか、そっちを知るのが怖いわ。
ジョジョの名前を継ぐだけあって、静はホリィとは違って受けた物はキッチリ返すからのう。
受けた恩は1割増し、受けた仇は10倍でじゃ。
玉縄「うーん……彼は復讐とかそういうのを考えるようなタイプじゃあないと思うんだが………」
甘いな。
復讐心とかはそういう単純なものじゃあないわい。
シーザーやポルナレフ、億泰君、エルメェスなんかを見てればな。
普段は陽気で復讐心など無縁のように見えても、いざ復讐対象に遭遇してしまえば途端に冷静じゃあ無くなるんじゃ。
かくいうワシじゃって……な。
その元町じゃってわかったものじゃあない。
静「とにかく、そんなのは後にしてさ。まず私の考えた作戦なんだけど………」
ふむ。まぁ、悪くない作戦じゃな。それでいくことにするかのう。玉縄君から聞いた能力とも上手く噛み合えば良いのじゃが。
玉縄「主義や主張は個人の勝手……許せないのは関係ない人を巻き込む事…復讐したければすれば良い。だけど、その為にわざわざ他の人を巻き込むなんて……」
そ、その言葉は!
静「え?その口癖って………イーハの……」
そうじゃ。ジョジョやジョルノの言うように、『主義や主張は個人の勝手。許せないのは………』という言葉はいろはの口癖じゃ!
いや、正確にはエリナおばあちゃんの……。
エリナおばあちゃんがその言葉を言ったとき、他に誰がいた?
確かワシがニューヨークに移住したその日に……。
ま、まさかこいつは!
ジョルノ「ジョセフさん。行きましょう」
ジョセフ「う、うむ。アーシス、スクランブルじゃ!」
もしそうならば………ワシは………。
side元町元弥
元町「ごめんよ………」
俺は悪くない。
悪いのは親父なんだ………だから、恨むなら親父を恨んでくれ……。
動かなければ死ぬのは俺だ。
行きたくないけれど、行くしかない。
もう、昔好きだった雪ノ下も、今好きな仲町も手にかけてしまった。
堕ちるしか無いんだ………。
俺は暗澹たる気持ちで警備員室を出る。
警備員「うう…………」
警備員達は既に俺のピンク・フロイドの能力でだるま状態で転がっている。
元町「ごめんなさい………」
俺はジョセフ・ジョースター達を倒すべく、部屋を出る。
元町「なっ!?こ、これは……」
コミュニティセンターのあちこちが透明にされていた。
階段、床、ドアが虫食いのように……
元町「何を考えている?静・ジョースターの透明化の能力なのだろうけど、これじゃあまるで………」
狙ってくれといっているようじゃあないか……。
ピンク・フロイドの能力は『直接』相手を見ることが出来れば攻撃することができる。
ガラスで遮られていたとしても関係がない。
静・ジョースターの透明化する能力で透明にされても多分、攻撃は通る。
元町「何故こんなことを……」
静・ジョースターの焦りようを見れば、俺の視界に入ってさえいれば、恐らくは透明になっていたとしても攻撃が入るはずだ……。
元町「諦めたのか?だったら楽なんだけど………」
俺は取り敢えず適当に写っている全員の写真に線を入れてみる。
元町「……………」
反応はない。
線の入れ方からして攻撃が入っているならば、手足のどこかは切断されている筈だ。
そんな状態で悲鳴が上がらない筈がない。
もっとも、透明化されているだけで壁も天井も無くなった訳じゃあないから、単に聞こえていないだけなのかも知れないが………。
だが、コミュニティセンターの中は静かなものだ。
阿鼻叫喚の悲鳴をあげながら総武高校と海浜総合高校の生徒が一斉に逃げ出したり、ガラスが割られたり、折本さんが倒れていたりなど、尋常じゃあない事態が何度も発生しているんだ。
騒ぎが発生したことにより、中の利用者も危険を感じて逃げ出したのかも知れない。
元町「それにしても、中途半端に透明にされているのが邪魔だな……」
中途半端というのがいけない……。
つまり、透明になっていない場所を上手く利用して隠れているということだろう。
元町「会議室に使っていた講習室は二階だったな……」
奴等は階を移動していないのか?
一階は体育室、サンルーム、集会室、和室、静養室…。
俺の能力を考えればだだっ広いだけのこれらの部屋に奴等がいるとは考えにくい。
体育館の用具室とかも考えられるが、やはり2階から上に奴等がいると考えるべきだろう。
元町「エレベーターは………危険だな」
エレベーターは透明化されていなかったが、エレベーターを使うこと自体が危険だと思った方が良い。
エレベーターに乗り込まれていて、密室で攻撃されたならば事だ。
俺はケンカが苦手だし、能力も近距離向きじゃあない。
だとすれば………。
元町「階段か………」
しかし、エレベーターの隣の階段は………完全に全てが消されていた。
元町「無駄な事を………」
例え消されていたところで、階段を踏み外すような真似などするはずがない。
俺は一歩ずつ段差を確めながら、一段ずつ確実に昇る。
クル。
メキャア!グッ!パオン!
元町「つっ!」
階段に何かを置いていたのだろう。
踏んだ事により足を取られ、その驚きで階段を踏み外す。
階段の中腹から下に転げ落ちる俺。
元町「くそっ!幼稚な罠を………」
何を踏んだのかを確めてみると………。
形状から判断するに、トイレ用洗剤の中身入りボトルだった。蓋が取れたのか、やたらとサン◯ール臭い。
階段から落ちた痛みと、手に付着したサン◯ールの酸による刺激が地味に効く。
基本、ブラシなどに付けてトイレの汚れを溶かす為の洗剤。ただの洗剤よりも酸が強いのは当然だった。
誤って目の中に入ってしまっていたら、大変な事になっていただろう。
元町(下手をしたら命に関わっていたぞ……)
階段から転落する危険性のある行為……。
殺人未遂も良いところだ。
ただボトルが置かれているだけなら、こんなことにはならない。見えているならば。
見えない………ただそれだけの事で単純な罠がこんなにも有効だなんて………。こんなもの、トイレの用具入れなどから探せばいくらでも出てくる。
静「何かに引っ掛かったねー♪上の階にあがろうとするならば、エレベーターかそこしか無いもんねー♪」
上から聞こえてくる声。そう。この建物の階段はここしかない。
たかだか透明にする……それがこうも厄介なんて……
静「ケルベロスと手を切れ。元町元弥」
ケルベロス?
親父の事を言っているのか?
元町「ケルベロスとは誰だ?親父と何か関係があるのか?」
静「親父?」
元町「橋本基樹……元総武中学の体育教師だ」
静「橋本……ああ。あいつの息子か。人生メチャクチャになったとは聞いていたけど………じゃあ何?あんたは父親の復讐で私達に攻撃を仕掛けているわけ?」
違う。
あんなやつ、もう父親でも何でもない。俺は……。
元町「違う……最低な父親だったけど、アイツは高熱で苦しむ俺を助けてくれると約束してくれた……。お前達ジョースターや、比企谷八幡さえ倒せば助けてくれると………」
そうだ………。アイツは最低だったけど、息子を助けてくれるって……。
静「ああ……そう言うこと。あんたの熱の正体を教えてあげるよ。あんたはスタンド使いの資質が無いのにスタンド使いになったパターン。父親がスタンド使いになったから、あんたはスタンド使いになったんだよ」
親父がスタンド使いになったから、俺がスタンド使いになった?
そしてこの熱は………親父のせい?
静「スタンド使いがスタンド使いになるためにはとある宇宙から飛来したウイルスを克服しなければならないからね。そして、そのウイルスは遺伝する。おかしな事に、生まれ落ちた後に祖先がウイルスに感染した後でも、子孫はそのウイルスに感染する」
元町「そ、そんなウイルスがあってたまるか!常識外れじゃあないか!」
母親の胎内にいる時にとかならまだ分かる。母子感染って言うのがあるから。
けど、生後に親が……それも離れて生活している親からウイルスが感染するなんて聞いたことがない!
静「へぇ?その常識外れの力を使っておきながら、常識を説くなんて面白い精神構造をしているじゃあないの」
………くっ!
確かにだ。俺のピンク・フロイドは確かに普通の力じゃあない。
俺のピンク・フロイドだけじゃあない。
この静・ジョースターの能力だって普通じゃあない。
仲町さんの能力や雪ノ下さんの能力……どれもが普通とは言い難い能力だ。
じゃあ、静・ジョースターが言っているこの熱も……。
静「あんた、私達を倒せば病気を治してくれるとかケルベロス……橋本から言われているのかも知れないけど、多分助からないよ」
何………?
静「騙されているんだよ。あんたの父親はあんたの父親であって、あんたの父親じゃあない。橋本基樹の魂は既に死んでいる。『ウルフス』のケルベロス……それがあんたの父親の精神を殺し、そしてその体を乗っ取った奴の名前だよ。御愁傷様」
親父が親父じゃあない?
既に親父の精神は死んでいる?
静「ウルフス……スタンドそのものが本体の生命体だよ。その目的は人類みたいな知的生物の根絶。あんただって例外じゃあない」
嘘だ…………。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…………。
最低の父親だと思っていた………でも、そんな親父だったとしても、最低限の親子の情があったと言うのに。
その親父が死んだなんて………。
元町「そんなのは嘘だぁぁぁぁぁぁ!」
そうだ!嘘だ!
こいつらは俺を倒すために、嘘を吐いて動揺を誘っているに違いない!
許さない!許さないぞジョースターども!
元町「お前らは勝つためには卑怯な事をなんでもやる!そんな奴等の言うことなんて信じるものかぁ!」
←To be continued
・アクトン・ベイビー
本体……静・ジョースター
10m範囲内の物質を任意に透明化させる能力を持つ。
特殊能力である透明化は成長し、進化したアクトン・クリスタルとなった後でも赤ん坊の頃から変化なし。
何を透明化したのかは本体である静も記憶していなければ認識できない弱点を持つ。
能力を解除すれば透明化は無効化される。
今回、静が使用した能力はアクトン・クリスタルというよりかはアクトン・ベイビーの能力。
罠を巧妙に隠すこの使い方こそが本来のアクトン・クリスタルの使い方だと言えるでしょう。
また、玉縄の事も大体見当が付いたのでは無いでしょうか?
『主義や主張は個人の勝手!許せないのは私どもの友人を公然と侮辱したこと!他のお客に迷惑をかけず、キッチリとやっつけなさい!』
エリナ・ジョースター……今の一色いろはのこの名言を聞いていた人物はジョセフと………?
それでは次回もまた、よろしくお願いいたします。