やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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すこし遅れました。
今回は敵のスタンド使い、元町元弥のバックボーンです。


元町元弥のピンク・フロイド

sideなし

 

元町(ちっ!神木の役立たずが………)

 

海浜幕張コミュニティセンターの警備員室で元町元弥は怯えていた。

元町元弥には時間が無かった。

このままでは自分の命がない。

 

元町(感情に任せてピンク・フロイドの能力を発動しやがって!)

 

監視カメラにはせっかく倒した者達が元に戻され、次々に透明人間にされていく。

 

元町(透明化の静・ジョースターと治す能力がある一色いろは、東方仗助、ジョルノ・ジョバァーナの内の誰かだよな………)

 

静・ジョースターと東方仗助……因縁があるなんてものじゃあない。

 

元町(助けてくれ………誰か助けてくれ……)

 

引くも地獄。進むも地獄……。

 

元町(何でこんなことに……雪ノ下……あいつと関わったからか………)

 

元町元弥と神木はほぼ同じ対象相手と因縁があった。

神木子門は静・ジョースター、比企谷八幡、ジョースター家、SPW財団、雪ノ下建設、玉縄に………。

元町元弥は静・ジョースター、比企谷八幡、ジョースター家、SPW財団、雪ノ下雪乃、雪ノ下陽乃、葉山隼人に………。

違うのは神木子門は雪ノ下建設に対して、元町元弥は雪ノ下雪乃と葉山隼人個人に対してだった。

元町元弥が小学生の頃、同級生にいたのは雪ノ下雪乃に葉山隼人だった。

後の事は神木子門と似たような物だった。

雪ノ下雪乃は本人が自覚していたように容姿端麗。

更に千葉県に根を張っていた企業の令嬢であり、県議会議員の娘であるため、その境遇は静・ジョースターと同様だった。

男子の注目の的で告白されるのは少なくなく、更には女子からのやっかみ等、雪ノ下雪乃には雪ノ下雪乃なりに色々とあった……。

中でも印象深いのが葉山隼人との間にあった確執だろう。

修学旅行の時、互いに手打ちとなった一件。

葉山が周囲に馴染めない雪乃を無理に馴染ませようとし、余計にこじれてしまった一件。

人気者が一人を気にかけてしまい、それを気に入らない周囲の者によって余計に拗れてしまう、よくある一件だ。

静・ジョースターがそうであったように、雪ノ下雪乃と葉山隼人は付き合っている……そう勘違いしてもおかしくはないだろう。

元町元弥もその内の一人だった。

勝手に勘違いして、勝手に諦める。

それだけならまだしも、小学生の段階からストーカー行為に出る元町。

 

雪ノ下雪乃は物的被害も被っていた。

学校の上履きや縦笛を盗まれていたのである。

多数の生徒や教師、中には犬からも盗まれていた。

その中には……元町の犯行もあった。

 

元町「へへへへ………」

 

好きな娘の縦笛や上履き……。それを何に使うかなど想像に難くないだろう。

ご多分漏れず、元町元弥も人には言えない使用用途をいざ成し遂げんとした矢先……。

 

元町父「元弥!学校から連絡があったぞ!テメェ!女の子の縦笛や上履きを盗んだそうじゃあねぇか!」

 

元町「ひ、ひぃぃぃぃ!」

 

元町父「それを寄越しやがれ!テメェ!今から学校に行くぞ!この変態野郎がぁ!」

 

怒り狂った総武中学の体育教師である父親に顔に痣が出来るほどしこたま殴られ、戦利品たる縦笛と上履きを奪われる。基町は学校まで連れていかれ、教師や当時中学生だった雪ノ下陽乃にネチネチとやられる。伊達に生まれついての魔王ではない。

好きな女の子には蔑まれ、人気者の葉山隼人には正義を説かれる……。屈辱だった。

だが、元町達小学生はまだましであった。教師達は職を失ったり、一家離散をしたりと社会的に始末されているのだから……。

汐華の眷属であった雪ノ下家と言えど、そこは町の名士。手を出されて黙っているような一族ではなかった。

 

それからしばらくが経ち、雪ノ下雪乃と葉山隼人の騒動が続くと、雪ノ下雪乃は海外へと留学。

後に中学へと進学した元町。その頃になると小学校の頃の黒歴史などは鎮火し、雪ノ下雪乃の事も過去の事と自分の中で収まりが付く。

 

元町(あの時までは………)

 

元町元弥がジョースター家や性悪コンビを恨むきっかけとなった事件が勃発した。

総武中学の体育教師だった元町の父親。

その父親が静・ジョースターに痴漢紛いのセクハラをする。

家族に手を出されて黙っていないのはジョースター家の(さが)である。更には性悪コンビの性だ。

性悪コンビは徹底的に元町の父親を糾弾。職を失い、更には大量の慰謝料をふんだくり、心身共に再起不能へと追い込まれる。

更には………。

 

元町「親父………これって………」

 

父親の部屋にあったものは、かつて元町元弥が雪ノ下雪乃の机や下駄箱から失敬した縦笛と上履き。元町が忘れ去りたい黒歴史の象徴がそこにあった。

 

元町「何で親父がこれを持ってるんだ!おいッ!」

 

何とか家族として体を保っていた元町家。

しかし、これが決定打となり、両親は離婚。

当時は橋本と名乗っていた元町は、母親に引き取られ、現在に至る。

もし、雪ノ下雪乃に関わらなければ………もし、父親のロリペド趣味をもっと早くに気付いて対処していれば…。

元町は後悔の日々を送っていた。

 

葉山「雪乃ちゃんが今度、日本に帰ってくるんだ。総武高校に通うつもりらしい」

 

元町(そうか……雪ノ下雪乃は総武に……)

 

元町元弥はもう、金輪際雪ノ下雪乃と関わり合うつもりはなかった。

元町は学力が高く、総武高校……それも、雪乃と同じ国際教養科に入学できる学力を持っていたのだが……

 

元町「俺は……志望校を落とすよ。海浜総合に通う事にする。丁度、学力推薦の話も舞い込んで来ていたしな」

 

葉山「橋本……」

 

元町「悪いな隼人。俺は、もう二度と雪ノ下に関わるつもりは無いんだ。それに、今は元町だよ」

 

葉山「済まない……」

 

元町(これでもう。雪ノ下と葉山に関わる事はない。ましてやジョースター家なんかとも……)

 

過去と訣別し、海浜総合高校に入学する元町。

元々、千葉県公立高校の中でも特に学力が高かった総武高校の国際教養科に入学できる学力もあり、玉縄に続いて学年2位をキープ。奨学金を得ながら順風満帆だった元町元弥の高校生活。

玉縄からの推薦もあり、生徒会書記に就任し、適当に彼女を作って(仲町が気になっていた。美少女過ぎる雪ノ下雪乃クラスを狙った過去のトラウマから、そこそこカワイイ子を好むようになった)適当に大学に進学し、適当に良い企業に就職して………。

普通の男の普通の幸せな人生設計が見えてきた……。

そう思っていた元町元弥に、過去が牙を向けてきた。

 

11月………。

総武高校が生徒会選挙で騒動が起きている中、突然、元町の体に異変が起きた。

原因不明の高熱。どんな解熱手段を持ってしても下がることのない体調不良………。

 

元町「この………幽霊みたいなカメラは……?」

 

スタンド………ピンク・フロイドの目覚めだった。

スタンド使いがスタンド使いに覚醒するにはいくつかのパターンが存在する。

1・一番一般的なのが、宇宙ウィルスを含んだ矢によって貫かれ、スタンド使いとなった後天的なスタンド使い。

2・アヴドゥルやボルナレフ、花京院のように遺伝や因縁によって生まれついてのスタンド使い……先天的なスタンド使い。

 

そして……ジョセフ・ジョースター、空条承太郎、東方仗助、ジョルノ・ジョバァーナ等、DIOが矢に貫かれた事によって、スタンド使いになった事により、子孫達がスタンド使いとなってしまったジョースターの血縁に良く見られるパターンが……

 

3・親や祖父母など、祖先にあたる人間がスタンド使いになることによってスタンド使いになる『後天的な先天性スタンド使い』である。

 

元町元弥がスタンド使いになったのは、後天的な先天性スタンド使いだった。

突発的な高熱は、かつてホリィ・ジョースター、東方仗助がスタンド使いに覚醒した際に起こった事象である。

元町元弥はかつてストーカー予備軍に陥った事はあるものの、どこか常識が一本ネジ曲がった存在というわけではない。

どちらかと言えば広瀬康一やホリィ・ジョースターのように、スタンド使いには適さない人種であった。

むしろ、今回鉄砲玉に使った神木子門の方がスタンド使いの適正があったとまで言えるだろう。

 

元町「このまま死ぬのか……」

 

橋本「ほう?スタンドに目覚めつつあるのか……」

 

元町「お……親父………」

 

両親の離婚以降、一度も会うことの無かった父親、橋本基樹が高熱で苦しむ元町の元に現れる。

1本の矢を持って……。

 

元町(な、何で親父がここに……)

 

家庭裁判所のもと、二度と接触しない事になっている父親が何故、現れたのか……。そして………。

 

元町(何だ……親父であって、こいつは親父じゃあない)

 

スタンド使いはスタンド使いと惹かれ合う。それが肉親同士ならばなおのこと……。

肉親の繋がりによる直感で、目の前にいる父親が以前とは違うことに気付く元町。

 

橋本「久し振りだな?元弥」

 

元町「だ……誰だ………お前は………親父なんかじゃあな、ない………」

 

橋本「俺が誰かなんて事はどうでも良い。生きたいか?元弥」

 

橋本基樹は元町に通常のスタンドの矢を向ける。

 

元町「な、何を……」

 

橋本「もっとも、お前には選択肢など無いがな……」

 

ザクッ!

 

元町「え…………?」

 

矢に貫かれる元町。

不完全だったスタンド能力が、完全となる。

一方で、スタンド使いの適正がなかった元町の寿命は更に縮む事となる。

 

橋本「生きたいならば、俺の言うことを聞け……そうすれば、スタンド使いに適していないお前でも生きられるようにしてやろう……その内容は……」

 

ジョースター達の隙を突き、アーシスのスタンド使いを消せ。

 

橋本「特に比企谷八幡……一色いろは……奴らだけは確実にな……」

 

自分が助かる為には………元町元弥は言うことを聞くしか無かった……。

 

 

side元町元弥

 

元町(神木は昨日………自らの恨みの為に比企谷八幡という男を攻撃した………)

 

ジョースターに恨みを持つ神木子門。

しかし、神木はせっかちで、後先など考えない軽率な男だった。

総武高校で比企谷八幡を攻撃したことにより、ピンク・フロイドの能力を警戒された。

自分の無計画さを皆の前で暴露された事により、雪ノ下雪乃の目の前で玉縄を攻撃するという暴挙に出た。

神木は玉縄を嫌っていたみたいだけど、俺は玉縄の事が嫌いじゃあ無かった。残念だ。

本当ならばもっと計画が進行し、一同に会する場面を使って慎重に攻撃するはずだった。

目的だった比企谷八幡の写真は手に入っていた。

計画は成功するはずだった。父に成り済ましている何かの言う、50日以内にはギリギリで間に合う筈だったのに………。

 

ピリリリリ!

 

携帯が鳴る。

仲町さんのスタンド能力があったなら、気付かれていたかも知れないな。

でも、仲町さんはもう……。僕が攻撃してしまった。

彼女はアーシスだ。僕が助かる為には………もう殺さなくてはならない……。残念だ。

せっかく新しい恋が見つかりそうだったのに……。

 

元町「はい………」

 

橋本『何をしている。早く写真を撮れ』

 

奴からだった。

 

元町「で、でも……静・ジョースターの能力で透明化されていて………」

 

写真という媒体が無ければ、俺の能力は使えない。

透明化されていては、写真に写らない。

 

橋本『ならば、奴等の能力を解除してやろう……』

 

そんな事が…………

 

ウォウォウォウォォォォォォォウ!

 

犬の遠吠えのような音が響く。

 

静『アクトンの能力が!これは……ケルベロス!』

 

遠吠えの効果によってなのか、透明化していた静・ジョースター、ジョセフ・ジョースター、ジョルノ・ジョバァーナ、玉縄、気絶している仲町さん、雪ノ下雪乃、確か総武の生徒会の庶務、由比ヶ浜さんの姿が見える。

 

元町「うう………ごめんよ………」

 

俺は監視モニターに写る彼等の写真を、ピンク・フロイドのカメラで撮る。

攻撃そのものは直接目視して行わなければならないが、媒体となる写真はこれでも良い。

 

静『くっ!ケルベロス!どこだ!』

 

ジョセフ『落ち着くんじゃ静!もう一度アクトンを使うんじゃ!』

 

静『チッ!アクトォォォォン!』

 

静・ジョースターが

あの静・ジョースターの焦りよう……もしかして、透明人間になっていても、俺が視界におさめていさえすれば、攻撃は通るのか?

まだ……助かる。

 

元町「本当に………ごめんよ………」

 

恨みは無いけど………俺が助かる為には………。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。
我ながら、ただ倒すには躊躇われるバックボーンの敵を作ってしまいました。
まぁ、スタンド使いが相手の都合やバックボーンを考えるような人種かどうかは話が別ですが。

ケルベロスが何故、いろはを優先的に狙うか……。
自身の能力である狂犬病を無効果にし、更には完全免疫を作る能力がナイチンゲールにはあります(故にジョルノ、由比ヶ浜にはもう狂犬病が通用しませんが)。
同じ理由でハーメルンもいろはが天敵だったりします。

それでは次回もまた、よろしくお願いいたします。

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