side雪ノ下雪乃
ドクドクドクドク……
手足から止めどなく溢れる血液……。
悲鳴すら挙げる間もなく、私と由比ヶ浜さん、それに仲町さんがやられてしまったわ……。
痛みが後から襲いかかってくる。
雪乃&結衣「ああああああああああああ!」
本当に痛いとき……「キャアアア!」なんて悲鳴は上がらないものなのね。
そんな現実逃避に近い、どうでも良いことを考えてしまった。
玉縄「仲町さん!雪ノ下さん!由比ヶ浜さん!」
玉縄君は写真を持って私達の所へ駆け付けてくる。
雪乃「あなたが……本当の敵だったのね………玉縄君…」
騙されたわ……。
まさか真っ先に被害に遭っていた人が、本当のスタンド使いだったなんて………。
玉縄「本当の敵?何を言っているんだ?」
玉縄君は写真を持って私達に近付いて来るわ。
くっ………。手足が切断されてしまった以上、もう私達に抵抗する力はないわ。
こんなダメージを初めて受けたのか、仲町さんは既に気を失ってしまっている。
由比ヶ浜「ぁぅ………ぁ…………」
元々大怪我を負ってしまっていた由比ヶ浜さんも、意識が混濁しているわ。
完全にもう………
私だって、いつ気を失うかわからないわ………。
雪乃「良いのよ?もう演技をしなくても………由比ヶ浜さんも仲町さんも……意識がないわ………。あったところでもう………私達にはあなたに抵抗する力は無いもの………」
玉縄「違う!僕じゃあない!」
ふふふ………徹底しているわね。
雪乃「完全に………私の負けよ………目的はわからないのだけれど………仲町さんだけは助けてくれるかしら?」
仲町さんはアーシスではあるけれども、私達と違って実行戦闘部隊じゃあないわ。
あくまでも一般人よりの、戦闘力なんて持っていない人だもの………。
玉縄「だから僕は………ッ!」
バリィィィィィィィィィン!
いきなり窓ガラスが三ヶ所、割れたわ。
一体何が………。
ジョルノ「雪乃!」
ジョセフ「結衣!千佳!」
ジョルノ兄さんに………ジョセフお爺様………。
姿は見えないけれども、これは多分ジョースターさんのアクトン・クリスタルの能力ね………。
良かったわ………私なんかよりももっと強い人が……助けに来てくれたわ………。
これで………安心して…………。
私の意識は、ここで完全に途切れたわ………。
side静・ジョースター
ジョルノ「雪乃!ゴールド・エクスペリエンス!」
気を失った3人の切断された場所を集め、ジョルノ兄さんは連結のパーツを作ってなるべく自前の体が残るように嵌めていく。
由比ヶ浜の穴は………。パーツが作られ、嵌め込まれる。
痛かっただろうに………。
こういった治療はお兄ちゃんやイーハの方が得意なんだけど、お兄ちゃんは仕事だし、イーハもマーチもまだここには到着していない。
総武高校にいた二人よりも、海浜幕張の近くにいた私達の方が先に現場に到着した。
間一髪だった………。
処置をしていない四肢の根本からの欠損……。
命に関わるレベルのダメージを受けていた。
静(雪ノ下……由比ヶ浜……仲町………)
外では折本が既にやられていた。
不思議な気分だ………。
かつてはトラブった折本や、敵だった雪ノ下や由比ヶ浜がやられてここまで頭に来るなんて………。
静(取り敢えず……こいつをどうしてくれようか……)
私は透明化したまま、海浜総合高校の生徒会長、玉縄の胸ぐらを掴み、持ち上げる。
玉縄「ぐわっ!く、苦しい……………」
静「直接では初めまして。海浜総合高校生徒会長、玉縄君。早速で悪いんだけど、これはどういう状況?雪ノ下、由比ヶ浜、折本、仲町の四人をやった犯人はお前か?見たところ、あんたも怪我を負っているようだけど、雪ノ下はあんたを警戒していた………」
こいつが犯人だったのなら、私はこいつをこのまま絞め殺す。
今の雪ノ下はジョースター家に迎え入れた存在だ。
つまりは家族………。家族が殺されかけたと言うならば、私達ジョースター家は一切の容赦はしない。
玉縄「ち………違う………誰だ………君は………」
静「質問しているのはこっちの方だっつーの。別に私は良いんだけど?このまま首の骨をキッチリ折ってやっても?」
そのまま死なず、後遺症が残ったまま残りの人生を送って貰っても構わない。
首は全身の神経が脳へと繋がっている場所だ。
さぁ………どう出る?玉縄。
ジョセフ「待たんかジョジョ!こいつは違う!」
玉縄「ジョジョ………?」
へぇ?それはどういう根拠?パパ。
ジョセフ「敵のスタンド能力はわざわざ敵の前に現れる必要性の一切無い能力じゃ!」
あ………そう言えばそうだった。
キレたら見境が無くなるの、お兄ちゃん譲りだね?血は繋がってないけど。
ドサッ!
私は玉縄を解放し、アクトンで透明化させてから波紋を流し、気付けをする。
静「いやぁ、ごめんごめん。雪ノ下達がやられてついカッとなっちゃってさぁ。アハハハハ!」
玉縄「ケホッ!ケホッ!笑って誤魔化すんじゃあない!まったく……相変わらずジョースター家という家は…」
見えないけれども玉縄からのキツイ視線を感じる。
うん。本当にごめん。
玉縄「ところで、何で君達は姿が見えないようにしているんだい?」
ああ………それには意味があってね?
静「敵の攻撃の対策だよ。イーハとマーチ……いや、それじゃあわからないか……私の妹分とも言える幼なじみから連絡があったんだよね」
敵の能力はもしかしたら……って奴が。
・写真はスタンド能力で作られたもの
・攻撃は写真に写っている部位にアクションを行う事で攻撃する事が出来る
・攻撃の瞬間、被写体の攻撃部位を攻撃実施者から見えてなければならない
・見えていれば、ガラス等の透明な障害物があったとしても関係なく攻撃が出来る
・見えてさえいれば、その射程の長さは関係ない
昨日、ハッチが攻撃を受けた際、敵からハッチの手が見えていた。
天井のスプリンクラーを指で掴んでいたから。
だから手だけが切断された。ハッチを殺すつもりなら、手じゃあ無くて、もっと致命的な部位を攻撃するはずだから。
今日、学校に残って現場検証していたイーハとマーチが至った結論だ。
だから、見えなければ攻撃を回避することが可能なんじゃあないか?
というのが私の予想。もっとも、二人の考察が外れている可能性もあるし、透明化していたら絶対に安全という保障はどこにもない。
でも、二の足を踏んでいる場合じゃあなかった。
もう敵の攻撃は始まっていた。
戦闘経験が浅い雪ノ下や由比ヶ浜……それに元々戦闘要員じゃあない折本や仲町……更には生徒会役員達の安全を確保することが優先だった。
自らを危険に晒してでも……。
そして、今、新たにわかった敵の能力……。
・その写真はスタンド使い以外の人間にも見える
・そのスタンド能力は、他の人間が使った場合でも有効である
つまり、犯人じゃあなくても攻撃を代行させる事が可能な能力……。
静(自分は安全な位置にいて、適当な鉄砲玉を用意していつでも攻撃が出来るって能力じゃん?厄介な……)
取り敢えず………。
静「玉縄。私にその写真をよこせ」
玉縄「あ、ああ……」
私は玉縄から写真を受け取ると、その透明化を解く。
そして、仲町を透明化させてから(アクトンは10mいないならば自由に透明化のオンオフをさせる事ができる)……写真の中の仲町の指先に針を刺す。
そして仲町の透明化を解く。
静「チッ!」
透明化をさせてもダメージは通っている。
ゴン!
あいたッ!
ジョルノ「仲間を使って実証するんじゃあない」
いやいやいやいや。これ、重要。
ふざけているわけじゃあない。
自分の身で試せるのならば、自分で試しているけれど、この写真には私が写っていないんだから試しようがない。
私は仕方なく、仲町で実検したわけで……決して実験したわけじゃあないんだよ?ジョルノ兄さん?
しかし参ったなぁ………
私は再び写真を透明化してポケットにそれを突っ込む。
ジョルノ「何かわかったのか?静」
静「内緒」
不利な情報をここで喋るわけにもいかない。どこで聞かれているかわかったものじゃあないし……。
静「ジョルノ兄さん。治療の方は?」
ジョルノ「全て終わった」
さすがジョルノ兄さん。仕事が早い。
玉縄「うがぁぁぁぁぁぁ!」
玉縄の悲鳴!?どうした!
ジョルノ「彼の腕も治したのさ。彼自身も治療したからね。いつもの治し方とは違うから、激痛が彼を襲っているはずだ」
あ、いつの間にか転がっていた玉縄の腕がない。
でもどうやって?ゴールド・エクスペリエンスの治療ではクレイジー・ダイヤモンドみたいに自動的に元の場所に戻る、所謂『自動追尾弾』のような能力はなかったはずなのに……。※1
切断された玉縄の元々の腕を使ったのか……。
あれだね。留美のスティッキー・フィンガーズのジッパーによる治療と同じで、無理矢理繋げたような治療だから、くっついたと言っても腕の機能を取り戻すまでにはイーハかお兄ちゃんの治療がいるかな?
私達は身の隠せる所へと移動する。
透明化では相手の能力を封じることが出来ない以上、広い場所に居続けることは危険だ。
雪ノ下が氷で作った外壁の階段も、雪ノ下が気絶した段階で能力が解除されてしまっている。
私とパパとジョルノ兄さんは脱出する事が出来るけれど、気絶している人間や玉縄が窓から脱出するのは困難だろう。
あそこで全身打撲して凍傷を起こしている奴(神木)は……。
敵だったし、どうでもいっか。
どっかで見たことがあるような気もするけど……うーん、思い出せない。
折本みたいな例外を除けば、小中学生時代の同級生なんて印象に残って無いもんなぁ………。
他人のスタンド能力だったとは言え、スタンド能力で由比ヶ浜や雪ノ下を攻撃してきたって事は、矯正施設行きは確実だろうし。
むしろ雪ノ下を攻撃した段階でジョルノ兄さんが大人しくしていられるかが心配だよ。
最近じゃあ完全に千葉の兄だもんね。
静「ジョルノ兄さん。どぅどぅ……雪ノ下が再起不能した海浜の奴は始末しないようにね?」
ジョルノ「静。僕は冷静だよ。あんな小物よりも、僕が始末したいのは雪乃を殺しかけた奴だ。あんなのは矯正施設にでも送り込めば良い」
ダウト。
兄さんはかなりキレています。
相手がウルフスでも無いのにレクイエム化してでもぶっ殺すと考えているんじゃあないかな。
千葉の兄はこれだから………。
さぁて………どうするか。
ジョセフ「敵だと思われる奴がどこにいるかじゃな……玉縄君、何か思い当たる節はないかな?今さっきそこですれ違ったとか、この合同企画を異様なまでに起案したりした奴はいなかったか?それとかこの集合写真を撮った奴とかでも良い」
とにかく情報だ。
特にパパはそういう情報をもとに敵を探し出そうと考えていると思う。
ジョルノ「それならば……静。写真を貸してくれ」
私は透明化を解いて写真をジョルノ兄さんに渡す。
すると、ジョルノ兄さんはゴールド・エクスペリエンスで写真を猫に変えた。
なるほど……写真は元々スタンド使いが作った能力。ならば、帰巣本能で……
ジョルノ「あ…………」
??
静「どうしたの?ジョルノ兄さん」
ジョルノ「………な、何でもない」
と言って猫を写真に戻した。何で?
??「ニャア……」
ん?玉縄がいた方向から猫の鳴き声が……。
まさか………。
ジョルノ「………意識が無いわけだし、好きな猫になれた訳だから本望だろう?」
やっぱり。…………雪ノ下と由比ヶ浜と仲町と玉縄が猫になっちゃったわけね?
良い手だと思ったけど、能力にはまっている四人がいるからダメか。
猫にして逃がすという手もあるけど、敵を倒した後に元に戻るかどうかはわからないしね。
でもさ、ジョルノ兄さん。
雪ノ下は確かに猫が好きだけど、自分自身が猫になりたかった訳じゃあないと思うよ?
あと、雪ノ下は猫好きだけど、由比ヶ浜は確か猫に関して何か悲しい思い出があったはずだから、猫が苦手だったはず。
静「玉縄。無事?」
玉縄「な、何とか……。何だったんだ?今の……」
うん。玉縄が元に戻っているなら、雪ノ下達も元に戻ったはず。
玉縄「ジョースター……と言ったね。君は………ジョセフ・ジョースターさんの曾孫か何かだろう」
静「ん?や、娘だよ?養子だけど」
曾孫は徐倫お姉ちゃんだけど?
あと、パパ……ジョセフ・ジョースターはそこにいるんだけど。透明化しているから解らないと思うけど。
玉縄「そうか……だったら……僕が力を貸す理由になるな……ここでジョジョという名詞を聞けるとはね」
は?どうして玉縄がジョースターに対して無条件に力を貸す理由になるの?
親がSPW財団の関係者?
あと、ここには
玉縄「もう察しているとは思うけど……僕もスタンド使いなんだ………」
おーい。当人達を置いていきぼりにするなー。
←To be continued
※1
いつもの体のパーツを作り出して嵌め込んだのではなく、元々転がっていた玉縄の腕を一旦別の動物に変え、その動物の帰巣本能によって玉縄の腕に帰って貰い、その上で元に戻った。
透明化していて普段の治療の仕方ができなかったためのジョルノ苦肉の策。
本来のやり方とは違う為、ただでさえ痛みを伴うジョルノの治療が、余計に痛い。
また、普段はパーツを作る際に失った血液も一緒に作成して補充をするのだが、それもこのやり方の場合は不可能。
ジョルノ式の遠隔治療は本来の切断されたパーツを使わなければならず(持ち主の元に帰ろうとする帰巣本能)、荒っぽい上に色々と制限がある。
さて、玉縄が無条件に力を貸す理由とは?
1・親がSPW財団の関係者
2・折本達のようにSPW財団系列のバイトになっている
3・誰かの前世
4・原作のように折本に気があるから
5・かつてジョセフに助けられた事がある
6・実は仗助のようにジョセフの隠し子
7・ジジババ好き
答えは複数!
ヒントは前話の玉縄のセリフから!
それでは次回もよろしくお願いいたします。