やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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由比ヶ浜結衣 その覚悟

side雪ノ下雪乃

 

べちゃ。

写真に線を入れられ、切断された玉縄君の腕。

ドドドドドドドドドドドドドドド

何が起きたのか皆の頭に事実が浸透するまでしばらくかかったわ。

そして……ドクドクと流れる血………。

 

藤沢「き………」

 

藤沢さんが小さく上げた声を皮切りに………

 

「キャアアアア!」

「う、ウワァァァァァァァ!」

 

阿鼻叫喚のパニック状態に陥ったわ。

私達もなれていなければパニックの渦に巻き込まれていたわね………。

 

結衣「ゆきのん!どうしよう!タマッチの腕が!タマッチの腕がぁぁぁぁ!」

 

雪乃「落ち着くのよ!これまでだって何度もこんなことがあったでしょう!今、私達が落ち着かなければいったい誰が一般人を守るというのよ!」

 

結衣「ハッ!そうだったね……今、あたし達がやらなきゃ誰が生徒会を守るの?って話だよね……」

 

やれやれよ。

私達の中では一番ウルフスとの戦闘経験があるし、なによりここ一番では信じられないほどの度胸さえ見せるあなただと言うのに………。

 

雪乃「フリージングビーム!」

 

私は玉縄君の切断された腕にフリージングビームを射つわ。傷口を一時的に凍らせて出血を止めるためよ。

腕の切断……これはかなり危険な事よ。出血量によっては生命の危機に陥るわ。

 

雪乃「由比ヶ浜さん!避難指示よ!みんなを避難させる事を優先して!折本さん、玉縄君の救出を!仲町さん!由比ヶ浜さんを支援しつつアーシスに連絡をして頂戴!」

 

結衣「う、うん!」

 

折本「会長!こっちへ!」

 

私が由比ヶ浜さんや折本さん達に指示を出すわ。

本来ならば私は指示を出せる立場にはいないのだけれども、由比ヶ浜さんも折本さん達も固まっているわ。

その筈よね。

ただの学校同士の合同イベントの打ち合わせ。

平和的とまでは言わないまでも、こんな血生臭い事が起こるだなんて誰もが思わないことだわ。

少しは慣れている由比ヶ浜さんですら、突然の事で混乱してしまっているわ。普段は戦闘とは関係ない折本さん達も、そして本牧くん達も……唖然としてしまっている。誰かが指示を出さなければいけない。

 

結衣「ハッ!カオリン!ナカマッチ!避難誘導だよ!避難誘導!玉縄くんやみんなを連れて逃げるんだよォォォ!」

 

由比ヶ浜さん。それだとジョセフおじいさまよ。

由比ヶ浜さんの言葉に弾かれたようにハッ!となり、慌てて玉縄くんを担いで避難誘導を始めたわ。

支援部隊の仕事の1つね。

由比ヶ浜さんと私は戦闘体勢よ。

でも、その前に……。

 

雪乃「フリージングビーム!」

 

私は玉縄君にフリージングビームを撃つわ。

玉縄君がスタンド使いなのか、そうでないのか……敵なのか、それとも巻き込まれたただの一般人なのかわからない。

でも、神木君のスタンド能力によって腕を切り落とされたという事実は変わらない。

私は玉縄君の腕の欠損箇所の出血を防ぐために、傷口と切り落とされた腕、そして痛みの概念を凍結させるわ。

このまま出血させてしまっていては命に関わる可能性もあるかも知れないし、何より出血し続ける事でじわじわと体力を消耗してしまうもの。

 

雪乃(それに、この場を凌ぎさえすれば、ジョルノ兄さん、仗助兄さんの能力で治して貰う事が出来るもの……)

 

最悪はあの腕を捨てていく事になるわね。

そうなると、一番頼りになるのはジョルノ兄さんになるかしら?

仗助兄さんのクレイジー・ダイヤモンドならばともかく、一色さんのナイチンゲール・エメラルドでは欠損の傷は傷口同士を合わせなければ治すことは出来ないと言っていたものね。

 

折本「サンキュー!雪ノ下さん!会長!逃げるよ!」

 

玉縄「く………済まない。折本さん……」

 

女の子に担がれて逃げるのは恥ずかしいのか、玉縄君は悔しそうな顔を浮かべているわ。

でも、そんな個人的なプライドなんて気にしている場合ではないのよ?玉縄君。

 

結衣「……ゆきのん。あたし達も逃げようよ」

 

何を言っているのかしら?由比ヶ浜さん。

敵のスタンド攻撃なのよ?私達が戦わなければ、一体誰が神木君と戦うと言うの?

 

結衣「直接攻撃をしてくる敵じゃ無いんだよ?あたし達が正面から戦ったって勝てる相手じゃあないよ!だから逃げないと!」

 

逃げる?

そんなものは私のプライドが許さないわ……。

敵を前にして逃げるなんて……。そんなの……。

 

結衣「違うよ!せんりゃくてきてったいって奴だよ!ジョセフししょーの戦いかただよ!」

 

雪乃「………ハッ!」

 

ジョセフお祖父様の言葉を思い出したわ。

 

ジョセフ『ワシは戦略的に逃げることはあっても、戦いそのものからは決して逃げた事は無いんじゃ』

 

確か……逃げながら作戦を練る……。由比ヶ浜さんの言うとおりよ。私は何を目先のプライドに囚われてしまっていたのかしら……。

 

神木「Don't escape!逃がすと思うか?雪ノ下雪乃!」

 

神木君は写真にシャープペンシルを向けるわ。

 

結衣「ゆきのん!リバース!お願い!」

 

R・T「畏まりました!ゆきのん様!失礼致します!」

 

由比ヶ浜さんのリバース・タウン・act3が私を掴み、投げ飛ばすわ。

 

雪乃「由比ヶ浜さん!」

 

ドアの外へと放り投げ出されながらも、私は由比ヶ浜さんに向けて手を伸ばすわ。

 

結衣「逃げて………ゆきのん。ゆきのんの方が……あたしよりも絶対に………」

 

神木「このクソアマァがぁぁぁぁぁぁ!テメェだけはぜってぇに逃がさねぇぇぇぇぇぇ!」

 

ざしゅっ!

写真にペンを刺すと、由比ヶ浜さんの綺麗な脚に大きな穴が開くわ。

 

結衣「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

由比ヶ浜さんの悲痛な悲鳴が響く。

私はたまらず由比ヶ浜さんを助けに戻ろうとするのだけれど………

 

結衣「逃げてぇぇぇぇぇぇ!あたしの事はどうなっても良いから!ゆきのんは逃げてぇぇぇぇぇぇ!」

 

神木「うるせぇ!このピンクビッチがぁぁぁぁぁぁ!」

 

ざしゅっ!

 

結衣「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

くっ!

ごめんなさい………由比ヶ浜さん。私が躊躇ったばかりにあなたを………。

 

雪乃「許さないわ………良くも由比ヶ浜さんを……絶対に………あなたを許さない………」

 

私はエンジェル・ダストを体に重ね、エンジェル・アルバムにしてスケートの要領で駆け出すわ。

由比ヶ浜さんの犠牲を無駄にはしないわ……絶対に。

あのスタンド能力の弱点を暴いて………あなたを倒すわ。

 

雪乃「ぶっ殺す………」

 

下品で、最低で、知性の欠片も無くて、悪意しか感じない、普段の私ならば絶対に口にしない言葉と感情……。

屍生人やウルフス以外の対象に……この感情を抱いたのは初めての事よ。

ましてや口にするなんて………。

 

 

side由比ヶ浜結衣

 

ううう………痛いよぉ………。

あたしは両足の太腿に空いた穴のせいでうつ伏せに倒れ、動けなくなっていた。

今までも何度も痛い目に遭ってきたけど……ここまで痛いのは初めての事かも知れない。

すごく痛くて、泣きそうになる。でも………

 

結衣「泣くもんか……君にやられたくらいじゃ……絶対に泣かないし!」

 

この痛みをヒッキーやスタッチはいつも受けてるんだ。こんな痛みなんか何だ!あたしだってアーシスなんだ!

 

神木「バカな女だ。大人しくしていれば、痛い目を見なくて済んだものをよぉ!」

 

会議の時の頭良さそうな態度なんて全然無くなった神木は、あたしを見下ろしながらゲラゲラと笑っていた。

 

神木「オラ、泣けよ。こんな足になっちまったんだからよぉ、泣いて叫ぶのが女ってもんだろぉ?ビッチらしく男に媚びろよ。そしたら僕がペットとして飼ってやるからよぉ?」

 

絶対に媚びるもんか!誰がビッチよ!

あたしはまだ処女だし、ビッチらしくしたことなんて一度もない!

神木はあたしの胸を見ながらイヤらしく荒れた鼻息をハヒハヒさせている。

気持ち悪い………。

たまにいるよね?こーゆー男子って。

女の子をせーよくの捌け口?ってゆー感じしか見てないんだ。

特にあたしは同級生の中でも胸が大きくて、そんな目で良く男の子に見られるから視線には敏感だった。

 

結衣「これ以上近付かないで!そんな事をしたら、あたしは舌を噛みきって死んでやるんだから!」

 

人の命が簡単に消えるスタンド使いの世界。

アーシスに入ったときから死ぬ覚悟は出来てるんだから!

 

結衣「リバース!」

 

R・T「覚悟は出来ています」

 

太腿に空いた傷……。

この傷じゃあ、東方社長やジョルノ社長、それにいろはちゃんが来なければ多分、助からない。

血が凄く流れ出ていて、体から力がどんどん抜けていっている。

 

神木「そうかよ。ならもっと痛い目に遭うか?」

 

プスッ!

神木はまた、写真に穴を空ける。

すると……

 

結衣「あああああああああああああ!」

 

ザクッ!

今度は右の腕に穴が空く。

痛い………痛い痛い痛い痛い!

また、のたうち回りたくなるほど鋭い痛みがあたしを襲う。

でも、片腕に両足に大穴を開けられたあたしには、もうのたうち回るだけの力も残ってない。

そうする為の場所を全部やられちゃって、力が入らないから。

 

神木「うへへへへへ。良いねぇ………サディストの気持ちが良くわかるぜ。そうやって痛みで悲鳴を上げている女の姿を見ていると、そそるねぇ?」

 

最悪………。

そーいった趣味を持っている人がいるってのは知識としては知っていたけど、そんなのと実際に会ってみて、それがどんなに気持ち悪いのか良く分かったよ……。

こんなのに負けたくない……。

戦いで負けても……どんなに体を痛め付けられても……気持ちだけは絶対に負けない……。

絶対にぃぃぃぃ!負けなぁぁぁぁぁい!

 

パァン!

せめてもの抵抗。

あたしはリバースで神木の頬を叩いた。

 

神木「テメェ………本当に死にてぇのか……」

 

死ぬのは怖い。でも、あたしは覚悟が出来ている!

それに………

 

結衣「あたしは死ぬかも知れないけど、そっちだってただじゃあ済まないんだから!」

 

あたしが死んだって、絶対にアーシスの誰かがこの気持ち悪い男を倒してくれる。

ヨッシーは前世の彩ちゃんをごーもんしたって言うし、スタッチやヒッキー、パッショーネの人達なら死んだ方がましだと思う事をとことんやってくれるはず。

あたしが倒せないのは残念だけど……気持ちで負けたら本当に負けなんだから!

最後まで……負けないんだ!気持ちだけでも……こんな奴に!

 

←To be continued




さて、大ピンチの由比ヶ浜!
起死回生のチャンスはあるのか!

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