side雪ノ下雪乃
千葉市 コミュニティセンター
空条先生から受けた案内図に従ってコミュニティセンターの中へと進んでいく私達生徒会。
コミュニティセンターにあまり来たことが無いのだけれど、何をするところなのかしら。
入ってみると内部はどこかお役所然としていて、冷たい静謐な空気が流れていたわ。大きな声を出すのも憚られるような雰囲気ね。その理由は一階に図書館があるからかも知れないわ。
性悪コンビもさすがに図書館では騒がないと思うわ…。
いえ、逆ね。あの二人は空気を読めないんじゃあないわ。空気を読んだ上で敢えて騒ぐタイプね。一番性質の悪いタイプよ。
空気を読めない人を俗語で「KY」と言うようなのだけれど、あの二人の場合は前にAが付くわね。
『
結衣「ゆきのん。どこでやるって書いてあるのかな」
雪乃「二階でやるそうよ」
案内に従って二階に上がると、また少し様子が変わったわ。ざわざわとした人の声、そして音楽が漏れ聞こえてくる。
更に上にも階段は続いていたのだけれども、音楽はその三階から聞こえて来たわ。
結衣「三階で何かやってるのかな?」
確か入り口の予定表では………。
雪乃「三階には大きなホールがあるそうね。今の時間はダンスサークルが活動しているそうよ」
結衣「あー、だからわずかにドンドンッて振動が伝わってくるんだね?公民館みたいなものなのかなー?」
雪乃「多分、その認識で間違いないと思うわ」
地域の方々が色々な活動や催しをするための集会施設みたいなものね。公民館とどう違うのかしら?
由比ヶ浜さんはあまりこうした施設に馴染みがないのできょろきょろと辺りを見回しているわ。
その由比ヶ浜さんの歩調に合わせて私たちは歩くわ。時間に余裕があるように行動しているもの。
雪乃「ここのようね?」
扉の上には講習室と書かれているわ。案内図と照らし合わせて見てもここで間違いないわね。どうやらこの部屋を借りて会合をやるようよ。
私がもう一度場所を確認してドアをノックする。
「はーい、どうぞー」
中から声が聞こえるわ。
私は気持ちを切り替えて扉に手をかける。
開け放たれたドアからはざわざわとした声の波があふれ出てくるわ。机や椅子もあって学校の教室のような雰囲気ね。
雪乃「お待たせしました。総武高校生徒会です」
代表して生徒会長の私が挨拶をし、先に入るわ。後から本牧君や由比ヶ浜さんも相手側の海浜総合高校の人に挨拶をする。
シーン………
ああ、いつものこれね。何故だかは知らないのだけれど、初対面の人が石像になったかのようにしばらく動かなくなってしまうやつね。
例外は数人いるけれども海浜総合高校の方々は石像のように固くなってしまったわ。
玉縄「初めまして。僕が海浜総合高校の生徒会長の玉縄だ。そしてこちらが………」
神木「副会長の
フリーズしていなかった二人、会長の玉縄さんと副会長の神木君が挨拶をしてきたわ。
二人とも何か値踏みしてくるような視線を送ってきていてすごく不快なのだけれども、今は我慢よ。プライベートで関わることは決して無いのだもの。
雪乃「総武高校生徒会長の雪ノ下雪乃よ」
本牧「副会長の本牧です」
玉縄「よろしく、二人とも。へぇ………君があの雪ノ下の……」
久々にこの視線を向けられたわ。雪ノ下の家と雪ノ下建設が隆盛を誇っていた頃は卑屈と獲物を狙うような視線、そして私の容姿を舐め回すように見た下卑た視線を送って来たものだわ。
そして口説いて来るのだけれど………バレて無いとでも思ったのかしら?そういうのは臭いでわかるのよ。
でも、それは大体周囲のみんな。
玉縄君は鋭い視線を……それこそアヌビス神の刃を首筋に……それも確実に頸動脈辺りにピトピトと当てられているような………そんな鋭い視線を送り、百合ヶ丘くんは張り付けたようなニコニコとした表情を私に向けてくるわ。
神木「君が全国でもトップクラスの成績を誇る雪ノ下雪乃君だね。僕でも敵わないなんてリスペクトで尊敬するよ」
何を言っているのかしら?
雪乃「ごめんなさい。あなた、何度尊敬するのかしら?リスペクトは直訳すれば尊敬なのだけれども……。却って不愉快だわ」
何回尊敬するのかしら?逆にバカにされているように聞こえるのだけれども。
玉縄「普段から注意しているのだけどね。覚えたての言葉を意味もわからず使うのは止した方が良いと。僕も君をライバルとして君を尊敬する」
雪乃「ありがとう。もっとも、私の知り合いでは満点を取れるのにわざと平均点きっかり取る人がいるのだけれど」
私は内心グッとガッツポーズを取るものの、そういうことをやってのける幼なじみーズを思い出したわ。
あの人達は高校の成績が関係ないから遊んでいるのだけれど。
結衣「ゆきのん………ガッツポーズを隠せてないよ?相変わらず負けず嫌いだよね……」
雪乃「………コホン………」
気を付けてはいるのだけれど、勝負事で勝つとどうしても出てしまうのよね。
玉縄「今回の企画に関しては神木君の提案なんだ。主に企画進行、責任者は彼に任せてある」
神木「良かったよ。総武高校と一緒に企画できて。お互いにリスペクトできるパートナーシップを築いてシナジー効果を生んでいけないかと思ってさー」
あの……ある程度は横文字も構わないけれども、
それに、それはまだ確定ではないわ。
仗助兄さんの話では、SPW財団が主催する自社イベントに対し、有志の外部イベントが参入するのは構わないらしいの。だけれどもSPW財団もそこは企業。
いくらチャリティーイベントだったとしても会社の名義で行うイベントである以上はある程度の宣伝効果を生み出さなければならないわ。
それこそ社名と総武高校、海浜総合高校にとっての
それでなくては企画を通せないとも言っていたわ。
雪乃「SPW財団上層部は完全に確定では無いと言っているわ。財団も企業だもの。完璧な物とまではいかないまでも、企画として納得が出来るものを提示してくれないと認可は出来ないと言っているわ」
神木「わかっているよ。それを今から一緒に考えて行こう」
雪乃「ええ。具体的にどんなプランが考えられているのかしら?」
神木「それを今からブレストしていこうと思っているんだ」
はい?
聞き捨てならない単語が聞こえたのだけれども……。
ブレストってブレストファイヤーやブレストバーンの事よね?今度はマジンガー編でも始まるのかしら?
まさかブレインストーミングの事じゃあ無いわよね?
この時期の、それも合同を持ち掛けたこの段階でまだやることが決まってないなんて言う事じゃあ無いわよね?
その段階で総武高校は元より、SPW財団に話を持ち掛けたなんて事は無いわよね?
雪乃「1つ確認したいのだけれど……まだ何をやるのかすらも決定してすらいない……なんて事は無いわよね?」
いくらこちら側も合同でホストになるとはいえ、この時期の段階でそれは……。
時間が無さすぎるし、それでは財団が納得しないわ。
神木「だからそれを今から考えよう」
私は頭を押さえるわ。
これはダメかも知れないわね………。
この段階で無策のノープラン。やる気があるのかしら?
神木「そうだ。君達、ジョースターさんと比企谷は同じ高校なんだよね?比企谷は来ないのかい?」
何故、ここで彼女達の名前が出てくるのかしら?
雪乃「ジョースターさん達の事を知っているのかしら?彼女達は生徒会の一員では無いから、ここには来ていないのだけれども」
どうしてここまでジョースターさんや比企谷君の素性を知っているのかしら?
神木「二人とは同じ小学校だったんだ。もちろん、彼らがSPW財団と繋がりがあるのは知っているよ。てっきり」
同じ小学校?
でもおかしいわ……。小学・中学時代のジョースターさん達は幼なじみーズ以外との交流は一切絶っていたと聞いていたわ。特に性悪コンビは顕著だったらしいわね。
例外は折本さん。それもいい意味ではなかったはずよ。
雪乃「今日は二人とも来ていないわ。この段階で財団が関わる内容ではないもの」
神木「ハハハ。それは残念だ。久々に会ってみたかったのだけど。それよりもどうかな?合同イベント執行部立ち上げの記念として一緒に集合写真でも」
あなたは会いたいかも知れないけれども、ジョースターさん達は決して会いたくはないと思うわ。
それに………
雪乃「必要性がまるで感じられないわね」
時間が勿体ない。
ノープランなのならばなおさらの事よ。方向性がまるで見えてこないわ。
せめてもの方向性を決めなければ、決して企画が通るまでに時間が間に合わない。いつまでもプログラムのコマを開けておいてくれる待ち時間があるわけでは無いのだから。
今日の内に決めておいて、そしてそのプレゼンを財団の方に提示し、最終的な決定が下される。
いつまでもダラダラとやっていられないわ。
神木「ノンノン。そうじゃあない。互いの親睦を深めることも重要なんだ。これはその第一歩。パートナーシップを築いていくことは重要。君の否定から入るその姿勢はダメだよ?」
玉縄「僕も雪ノ下さんと同じ意見だけど……ここで議論をする時間も勿体ない。みんな、集まってさっさと集合写真を撮ろう」
そうね。やるならばさっさとやってしまって、会議を始めた方が建設的だわ。
玉縄君が全員に集合をかけると、あちこちで雑談をしていた人達が集まってきたわ。
そして、写真を撮ったあとに海浜総合高校と総武高校はそれぞれ散っていく。
そんな時だわ。
折本「あれ?雪ノ下さん?」
雪乃「折本さん……」
海浜総合高校側の生徒の中に、見知った人物がいたわ。
先ほど彼女の事を考えていただけに、少しだけビックリしたわ。
折本かおりさん。
ジョースターさんと比企谷君の中学時代の同級生で、アーシス支援部隊のスタンド使い。そして、かつてはジョースターさん達とトラブルがあった女の子ね(杜王町・葉山編を参照)。つい最近、敵の襲撃で比企谷君と再会し、そして思わぬ形でウルフスのフェニックス、そして連戦でユニコーンとの闘いで共闘したわ。
そのまま流れるように杜王町まで一緒に旅行をしたのだけれど、行動は別々だったこともあって、正直に言えば私とはあまり馬が合うとは思えないタイプね。
そういえば、折本さんと仲町さんは海浜総合高校だったわね。ここにいるということは生徒会の関係者なのかしら?
折本「杜王町に行ったとき以来だね?雪ノ下さんって生徒会なの?」
雪乃「ええ。総武高校の生徒会長よ。と言っても、つい最近就任したのだけれども」
答えると、折本さんは納得したように頷いたわ。
折本「そうなんだ!雪ノ下さんにはピッタリだね!あたしは生徒会長から誘われてさー」
あなた、当日は忙しいのではないのかしら?
貴重な支援部隊のスタンド使いなのだし。
折本「雪ノ下さんひとり?」
雪乃「ええ。大体いつもよ」
部活の時は大体由比ヶ浜さんと一緒なのだけれど、クラスでは大体一人ね。
折本「なにそれマジうける」
雪乃「どのあたりがなのかしら?」
ジョースターさんが言うとおり、つかみどころがわからない人ね。
しかし、折本さんのおかげでこの集団のシステムが少しだけわかったわ。総武高校と海浜総合高校、その二校の生徒会の合同イベントではあるのだけれど、有志でのお手伝いも参加できるようね。
折本「なんかそっちの数少なくない?うちが多いだけ?」
雪乃「今日が初顔合わせだもの。こっちが少ないのは仕方がない事ではないかしら?催しが成立するかもまだわからないのだし」
折本「あれ?ほぼ決まったんじゃあないの?うちの生徒会の顧問が言っていたんだけど……」
雪乃「生徒会の顧問の先生が?」
気の早い顧問ね。
それならばイベントの内容をしっかりと固めた上でこちらに誘いを持ってくるように指導してもらいたいものだわ。
それなのに数だけ揃えてノープランだなんて。
数の暴力とはこの事ね。海浜総合高校の人数に対して総武高校側は役員と庶務の由比ヶ浜さんだけだもの。
居心地が悪そうに萎縮して隅の方で固まっているわ。
折本「あー、元町の勇み足かぁ。まぁ、頑張ろうよ。じゃあ、あたしも席にもどるから」
…………何かがおかしいわ。
何もかもがざると言うのもおこがましいほどに杜撰すぎている………。
まるで…………。
キナ臭さを感じつつも、私は総武高校側に合流して席に着く。
議事進行役を兼ねた議長席に座るのは玉縄君ではなく、企画をした神木君。
色々と注意をした方が良さそうね………。
姉さんやジョルノ兄さんは言っていたもの。直感で何か引っ掛かりを感じたのならば、それに従えと……。
命がかかっているのならば、なおさらだと……。
←To be continued
はい、今回はここまでです。
オリキャラ
神木
しぼくと読む。神奈川県川崎市の神木から取りました。
海浜総合高校生徒会の副会長。
原作だと誰にあたるのは不明。意識高い系。
玉縄の役割をほぼ奪う。
元町
横浜市の元町から取りました。海浜総合高校生徒会の書記。
それでは原作との相違点。
一色いろは率いる生徒会と海浜総合高校生徒会は何度か会合を行っている→初顔合わせ
意識高い系の英単語を織り混ぜた会話はほぼ玉縄→オリキャラの神木
八幡は意識高い系の発言に対して心でツッコミを入れても黙っている→雪ノ下はその場で指摘する。
ほぼノープランなのは変わらず
ゲッター編をやったのでちょっとだけマジンガーネタを投入
さて!一体誰が敵なのか!
1、玉縄
2、神木
3、元町
4、折本(大穴)
5、仲町(超大穴)
それでは次回もよろしくお願いします。