side比企谷八幡
相も変わらず身の入らない授業を終えての放課後、帰り支度を済ませて、真っ先に教室を出た。扉を開ける間際、ちらっとジョジョの方を見る。ジョジョの方ももうじきこっちに来るだろう。ダラダラと歩いていればそのうち追い付くだろう。由比ヶ浜?三浦あたりとまだ喋ってるよ?なんで?
え?一緒に部活に行く約束?
なんでそんな事をする必要あるの?これまでだってジョジョとは暗黙の了解でいつもほぼ一緒だけど、由比ヶ浜とは特に一緒に行動してないよ?
廊下に出て、ゆっくりダラダラ歩いたところでジョジョが追い付く。
静「お待たせっと」
八幡「おー。いつも通りだしな」
大抵はこんな感じだ。
俺とジョジョが付き合っている疑惑は大抵こうして常に一緒に行動しているからだな。
まぁ、今更俺達の仲が(恋愛的に。互いに姉弟感覚)どうなるわけでも無いし。
むしろ妹の小町の方が危ないわけで。
俺達はゆっくり歩き出す。今日は誰も出勤ではないからそろそろ来る頃かな?
いろは「せんぱーい!」
今更ではあるかも知れないが、廊下や教室などではいろはは俺の事を「せんぱい」と呼ぶ。人の目もあることだしな。
一緒に生徒会の藤沢も連れてきている。今日は生徒会もある日なのか。
奉仕部の部室と生徒会の教室はパーテーションで区切られてはいるものの、同じ部屋だ。故に行き先も一緒なので、いろはは藤沢も連れてきているのだろう。
藤沢「こ、こんにちは……。ジョースター先輩、比企谷先輩」
藤沢は恐る恐るといった感じで挨拶をしてきた。
書記をやるだけあって藤沢も文化祭や体育祭等では実行委員系で動いていたらしく、当然ながら俺達の事は知っている。
文化祭の大粛清や体育祭における妙な自由参加制度等の事もだ。
故にどうやら(俺達性悪コンビに対して)苦手意識を持っているようである。
取って食うわけでもなし、こちらに害意を持っていなければ別になにもしないっての。
むしろ雪ノ下率いる生徒会の歯車である以上は保護の対象として考えているから安心してほしいと思うまである。
さて、いろはも合流して部室に入る。今日はどこの部活を鍛えることになるんだろうか?もうじき東北支部との合同イベントもあることだし、運動部ばかりに構っているわけにもいかなくなる。
部室のドアを開けると、いつもとおりジョセフがパソコンを弄くっていた。恐らくは株やら物の転売やら何やらだと思う。
一度大騒ぎになったってのに懲りないな……。
ジョセフ「おや?今日は雪乃よりもお前達の方が先だったか」
俺達の到着を丁度休憩時間の目処にしたのか、ジジイは仕事の手を止めてコーヒーサーバーの方へと歩いていく。
これが会社ならば秘書とかが用意するのだろうが、残念ながらここではセルフサービス。雪ノ下が生徒会長になる前だったのならば雪ノ下が紅茶をいれていたのだろうが、今日は珍しくここにはいない。
いつもならば俺達よりも先に来ており、仗助やジジイに対して紅茶の差し入れをしているのだが……。
そう言えば今日は仗助もいないな?
生徒会のブースでは既に来ていた本牧達が仕事を始めている。何やら難しい顔をしているが……。
何かあれば頼ってもらいたいものだ。年が明ければ俺達も少しは暇になるからな。ウルフスの一件が片付けばもっといいのだが……。
結衣「やっはろー♪」
遅れて葉山と戸部を除いたうちのクラスのスタンド使い達も集まりだした。
ウッペリさんだけが少し離れて歩いてきたが。
ぞろぞろと集まりだすアーシスの面々。だが、雪ノ下と仗助がまだ戻って来ない。荷物はあるからいるとは思うんだが………。
本牧「ジョースターさん、比企谷、一色……ちょっと良いかな?」
俺達が自分達の席(椅子なし、洗面器に画鋲を浮かべてその上に小指だけで立つ修行。地味にキツイ)に着くと同時に本牧がおずおずと話しかけてくる。
珍しいこともあるものだ。藤沢もそうだが、生徒会側は基本的にアーシス側に話しかけて来ない。
まぁ、こんな異常な格好をしてるしね?
静「どうしたんですか?本牧副会長が私達に声をかけて来るのは珍しいですね?」
本牧達が馴染んでいない事もあってか、ジョジョがよそ行きの話し方で返答する。
ジョジョのみならず、俺にまで声をかけてくるなんて本当に珍しい。
本牧「雪ノ下さんとPTA会長から伝言を受けてるんだ」
ならジジイに言っても良かったんじゃね?……とも思うが、本牧はジジイに対して苦手意識があるようで(ブードキャンプ絡みか?それにジジイの眼光って他人からしてみたらかなり鋭いみたいだし)、敬遠しているようだ。
話せば俺らなんかよりもはるかに親しみ易いと思うんだよなー。
まぁ、子供の頃とはいえ、あの承太郎だってジジイに対しては苦手意識があったって話だから一般人からしてみたらジジイの眼光は怖いか。
今じゃあ承太郎の方がジジイを威圧しているけど。
本牧「今日はジョースターさんと比企谷はブードキャンプの予定はキャンセルみたいなんだ。何かSPW財団絡みで用事があるみたいで………」
ん?
俺とジョジョが財団絡みで待機命令を受けるってよっぽどの案件だぞ?
国支部と地方支部の案件なんだからな。それに生徒会が混じるとなるといよいよわからん。雪ノ下は財団的にはまだ正式な幹部ってわけでも無いんだしな。
それでいて小町が待機命令を受けていないのも気になるところだ。
小町「とにかく小町達波紋使いは先に行ってるね?」
八幡「麻雀やってたら巻き上げるんだぞー」
小町「ラジャ♪」
藤沢「あの………その件は生徒会でも問題になってるんですけど……ラグビー部はともかくジョースター先輩達の行動が……」
本牧「流石にラグビー部ももう部活で麻雀はやらないと思うんだけど……」
甘い!一度ついた習慣は中々直らない!ソースは俺。
静「今度は遊戯部を派遣しよっか?」
相模「うちの弟を巻き込まないでよ!なに賭博麻雀をやらせようとしてるの!?」
八幡「ブードキャンプと言えば遊戯部にも必要だよな?イカサマの技術で」
静「ああ、クリエーターとしてハメとか裏道潰しとかを多目的に勉強するにはイカサマを勉強するのが一番の近道だって露伴先生やダービーさんが暴論をぶちかましていたっけ?」(遊戯部編参照)
相模「うちの弟は一般人なのに!比企谷が裏の道に引き込まれようとしてるぅぅぅ!誰か性悪コンビを止めてぇぇぇ!」
諦めろ相模。徐倫を筆頭にしたストッパーの葉山やウッペリさんはここにはいない。
お前の弟と秦野は立派なダービーさんの後継者に育ててやるからな?
天の声『ダービーの足下にも及んでいないくせによく言う』
ダービーさんを目標とするならラグビー部の賭博麻雀くらいは軽くいなせるようになってもらいたいんだよなー。
天の声『一般高校生にイカサマを仕込もうとするんじゃあない!』
えー……ダメかぁ。
相模の弟ら遊戯部のトレーニングも兼ねていい案だと思ったんだけどなぁ。
しかしどうするか………。年末調整の仕事は次の支部長に任せることになっているし、合同イベントもほぼほぼ現場の方に一任し、報告を聞いて問題点を対処するくらいだ。
本当にやることがほとんど無くなってるなぁ。
エンポリオの方も難航しているって話だし……。
八幡「うーん…………」
結衣「あのさヒッキー……スプリンクラーの突起を指で摘まんで座るように天井に張り付くの、やめてくれない?おまけに文庫本を読んでるし……」
本牧「なんかそんな事をしている悪役がいる格闘漫画のキャラクターがいたような………」
八幡「甘いな。正確には悪役の行動を取るのにどういう事が出来る奴なのかを例えるのに使った表現だ」
バ◯のネタを拾うとはやるな。
本牧「本当にやる奴がいるとは思わなかった……そのうち水の上を走りそうだよ」
や、それは波紋の戦士としては基本だから。原理は全く違うけどね?
壁に穴を空けながら歩くように壁を昇った吸血鬼だっているが?
八幡「っ!?」
ポトッ………。
ドタン!
落ちた?俺がこの程度のトレーニングで?
本牧「ひ、比企谷………その指………」
指?
そこには俺の人差し指が………転がっていた。
自分の手を確かめるまでもない。仗助がサーフィスやクヌム神の変身に対して完璧に見た目がコピー出来ているという表現に使っていたっけ?
手と言うのは自分の体の中で一番人生の中で一番見るものだ。指も例外じゃあない……。
藤沢「ヒッ!……キッ!キャアアア!」
ぐっ!騒ぐな藤沢!
俺は自分の指を即座に自分の手にくっつけ、いろはに目配せする。
いろは「エメラルド・ヒーリング!」
いろはがエメラルド・ヒーリングを俺に当てる。
欠損は治せないいろはのエメラルド・ヒーリングだが、こういうふうに傷口同士を合わせさえした時だけは欠損を治すことが出来る。
八幡「お、俺の指が………あ、ある!俺の指がある!」
取り敢えず本牧や藤沢、書記の誰か君に騒がれないようにジジイのやったギャグでお茶を濁す。
ついでに観察。
藤沢「ふ、ふざけないで下さい!本気で心配したんですから!」
書記「冗談にしても悪質すぎます!」
本牧「血糊まで用意して何を考えてるんだ!」
3人は凄い汗をかいて詰め寄ってくる。
うん。ナイチンゲールが見えていた感じは無かったし、演技をしているようにも見えない。
ジジイがハーミット・パープルで3人がスタンド使いじゃあ無いことであるのは間違い無いんだしな。
どういうスタンドだ………俺は何がきっかけでスタンド攻撃を受けた?
スタンド攻撃には何か条件が必要だ。
何の条件も無しに突然攻撃を受けることはあり得ない。
何か必ず仕掛けがあるはずだ………。
八幡(ぐぅっ!)
いろは「ハチ君!お説教です!ホントにいつもいつも…」
ズルズル。
いろはが俺を引き摺って廊下に連れ出す。
ガラガラ……ピシャッ!
いろは「エメラルド・ヒーリング!」
八幡「くっ………助かった………いろは」
俺は上着を脱ぐ。その下に着ていたワイシャツの肩から腕にかけて赤い線が走っている。俺の血だ。
いろはは俺が我慢して悲鳴すらあげなかったにも関わらず、違和感から異変を感じ取り、俺を部室から連れ出したのだ。
いろは「ハチ君。どういう攻撃を受けたのか、分析が出来てますか?」
八幡「全くだ………攻撃を受ける理由ならばいくらでもあるとまで言えるが、誰がどういう攻撃をしてきたのかが全くわからん………」
遠距離タイプの攻撃なのはわかったが、どういう条件で攻撃を食らったのかがわからん。
俺だけを狙ったのか、それとも俺しか狙えなかったのかすらもわからん……。
仗助「おいどうした?八幡」
雪乃「その血痕は………スタンド攻撃を受けたのかしら?」
八幡「………ああ」
いろはがいてくれて助かった。
エメラルド・ヒーリングには自己治癒力を促進させ、失った血液を体内で生成する能力を持っている。
仗助のクレイジー・ダイヤモンドにはその力が無いからな。
「ザ・ブック事件」で仗助が受ける筈だったハサミで自らを傷付ける「記憶」の攻撃を食らった朋子さん。
蓮見拓馬が両腕をリストカットして自殺未遂をした「記憶」を追体験した朋子さんの傷を治したクレイジー・ダイヤモンドだが、朋子さんの失血だけはなんとも出来ずに救急車で運ばれる形となった。
俺の指と腕の失血は、明らかに出血多量の領域だった。
仗助「海浜総合高校の話が入ってきた矢先にスタンド攻撃かよ………」
八幡「海浜総合高校?」
折本や仲町が通っているうちの学校からも近い進学校だ。最近までは「そこそこの進学校」と評していたのだが、最近での模試などでの結果ではうちの学校よりも良い成績を叩き出しているらしく、近々偏差値で追い抜かれるとか陰口を叩かれている。結構前に3つの高校が統廃合された結果、創立された比較的新しい高校だ。
3校分合わさっているので規模も大きく、設備も豪華で校舎も綺麗だ。エレベーターがあるし、IDカードで出欠を取っていて、日本の高校では珍しい単位制を導入して先進的な雰囲気を出して人気がある。
総武高校?しつこいようだがうちは公立だ。
いくら
八幡「海浜総合高校がどうした?」
仗助「うちのチャリティーイベントに1枚噛みたいという打診が広報部に来たようでな?」
うちのサンクスリビングデーのイベントはチャリティーだ。儲けを全て寄付に回しているイベントを開催している。仗助が呼ばれていた理由はわかった。問題は何故雪ノ下まで?
雪乃「海浜総合高校の生徒会長はうちの文化祭の有志イベントにも目を付けて来たようなの」
貞夫さん、音石さん、トリッシュさんの有志バンドか。
あの時も、そして今回もSPW財団の関東・東北支部合同イベントの目玉でもある。
仗助「まぁ普通なら断るところだけどよぉ。学校側は受けるつもりみてぇでよぉ。俺達もイロイロとコネやら何やらで無理を通しちまってるだろ?まぁ、少しプログラムを弄る程度で済むから大した事じゃあねぇと思ってよぉ………オメェらにオブサーバーを頼もうかと思ったんだけどよぉ………攻撃を受けてるんじゃあ………」
八幡「いや、受ける。どうやって敵のスタンド攻撃を炙り出すか考えていたんだ………一旦学校から距離を置いて単独で動く事も視野に入れていたんだ。いろはと雪ノ下を巻き込むのは心苦しいが………」
俺だけが攻撃を受けているのか、そして……その目的、ウルフスが関わっているのか………。
それにはいろはの協力が必要不可欠だ。
いつダメージを受けるかわかったものじゃあ無いならな。
←To be continued
今回はここまでです。
原作との相違点。
由比ヶ浜と部活を一緒に行く約束をした(奉仕部崩壊の危機)→奉仕部は崩壊の危機を迎えていないのでいつも通り
いろはがクリスマス合同イベントのヘルプを持ってくる→雪ノ下と仗助が持ってくる。
海浜幕張と総武高校の学校同士のイベント→SPW財団のイベントに海浜幕張が入ってきた
一緒に部活に行くのは由比ヶ浜→静
八幡は由比ヶ浜に歩調を合わせる→静相手にその気遣いは要らない。いろはには無意識でやっている。
奉仕部の日常会話→「バ◯」のジ◯ルみたいな行動をしていたらスタンド攻撃!
クリスマスイベントに海浜幕張総合高校の介入するのは自らの意志→仗助からの命令であると同時に敵のスタンド攻撃の見極めや目的を探る