やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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完結編は生徒会編のラストからです。


第5章ー終章 鎮魂と聖夜の決戦
帰って来た八幡達の日常と忘れていた公約


side比企谷八幡

 

いつもの通学路。

俺達幼なじみーズ、俺、ジョジョ、いろは、小町は久々にゆっくりと歩いて通学をする。

昨日はよその世界に行き、激しいドンパチをしたせいか疲れが溜まっている為、ダッシュは無しだ。

もうじき12月となるが、今日は天気が良く、陽射しが暖かい。ほのぼのとした雰囲気の中を俺達は歩く。

途中、暖かそうなコートを着込んだ背の高く、妙な帽子を被った男が影を背負い、デン!っと立っている。

妙に機嫌が悪そうな気もするが、陽気が良かろうが悪かろうが関係なく虫の居所が悪い人間もいるだろう。

触らぬ神に祟りなし。俺達はその機嫌が悪そうな男の横を何事も無かったかのようにすり抜けようとする。

 

「待て……お前ら挨拶も無しに素通りするつもりか?」

 

男はガシッ!と俺の肩を掴む。

あ、やっぱりダメですか?ダメですよね?

 

八幡「や、やぁ。おはよう承太郎。爽やかな朝だなぁ?ご機嫌はいかが?」

 

はい。男とは承太郎です。わかってた?ですよねー。

ジジイと承太郎、朋子さんが生活しているセーフハウスの一戸建ては俺達の家と通学路の途中にある。だから承太郎はこうして俺達の通学を待ち構えていたのだろう。

 

承太郎「爽やかな朝……か。お前達にとってはそうなんだろうな?俺は昨日が昨日だから爽やかとはほど遠いがな」

 

静「ま、まぁ休日の全てが人にとって安息の日となるわけがないし、そういう日もあるよ♪」

 

そう。休日だからといって全ての人にとって天下太平事も無しと言うのはありえない。

家族サービスに付き合わされてヘトヘトになるお父さんもいれば、せっかくデートに出掛けたのに大して楽しい物ではなかった場合もあるだろう。中には別れてしまったカップルだっているかも知れない。

かくいう俺達だって休日とはほど遠い1日だった。

墜落の危機もあったし、ヘルクライムピラーも顔負けの波紋を酷使するアクションが必要だった。

幸いなのがあの力のお陰かどうかはわからないが、レクイエムを使ったと言うのに疲労が全く無いことだろう。

とにかく休日とはいえ、人によっては全然休めていない人間だっている。

休日とは何か。休む為の日だ。

なのにそうでない人間がいることに色々ともの申したいと言えるまである。

 

承太郎「俺の場合は原因がわかっているがな。とにかく疲れる1日だった」

 

いろは「そ、そうですかー。それは大変でしたね?承太郎?」

 

小町「まぁ、そういう日もあるよ!今日はゆっくりとすれば良いじゃん?」

 

承太郎「…………………」

 

肩に置かれた手の握力が段々と強くなる。

よく見るとスター・プラチナの拳が見えているような…

 

承太郎「ジジイから大まかな話は聞いた。事情を知っている必要最小限の人間だけで平行世界に行ったことまでは百歩譲って納得するとしてだ……」

 

グググググ………

 

承太郎「八幡と静。テメェらに聞きたい。朝起きたら鎖でグルグル巻きにされていた。そこまでやる必要があったのか?」

 

八幡「そ、そんな事をやる奴がいるなんて、世の中酷い奴がいるんだなぁ」(目を逸らしながら)

 

いやぁ、強盗とかだったら大変だったなぁ。

 

承太郎「スター・プラチナで鎖を引きちぎったら、海老名が入って来やがった」

 

静「いやぁ、海老名も一途だねぇ。恋する女の子は時として大胆になるもんなんだよ」

 

承太郎「おはようのキスをせびられそうになり、全力で拒否したら、だったら買い物に付き合えと駆り出された」

 

小町「お、お買い物はデートの定番だからねぇ」

 

承太郎「全部お前らが昨日俺が海老名と出掛けたいと言う身に覚えのない事をでっち上げたと聞いたが?」

 

………………

 

承太郎「それもただの買い物ならばうざったいが我慢できるとしてだ………資料として何か妙な本を買っていたし、途中で『なんかきたー!承太郎!なんかきたんだよー!』と言って、家に帰ったと思ったら妙な気持ち悪いオヤジと俺があり得ない行動をしている漫画を書き始めた。とても疲れる1日だった。それならばウルフスと戦っていた方がましだった………」

 

あー、多分、真空管ハゲ関連の時だろう。

 

承太郎「八幡……静……もう一度聞く。あそこまでする必要があったのか?」

 

こうなったら………。

 

八幡&静「逃げるんだよォォォ!」

 

承太郎「スター・プラチナ!ザ・ワールド!」

 

ブウウウウウン!

バカめ承太郎!お前の時を止める力は5秒!対して俺は8秒だ!余裕で逃げ切れる!

 

八幡「ジェムストーン・ザ・ワールド!俺だけでも逃げ切ってやる!」

 

アーバヨー!トッツァ…………ぐえっ!

何か後ろ襟を掴まれている感覚が!

見るとジョジョのアクトンが俺の襟首を掴んでいやがった。ジョジョだけじゃあない。ナイチンゲールもサンシャインもだ!

こいつら、承太郎からは逃げられないとわかった上で、俺を逃がさないようにしやがった!

こんな事まで一蓮托生する気はない!離せー!

ガシッ!

あ、スター・プラチナに捕まった……。俺、オワター/(^o^)\

 

承太郎「やれやれ。麗しい夫婦愛、兄妹愛、友愛じゃあないか。苦痛まで分かちおうなんてな。とても感動的じゃあないか?八幡」

 

スター・プラチナ・ザ・ワールドはそこで終わる。

が、残り3数秒で4つのスタンドを振りほどいて逃げる訳もない。

いや、いろは達の傷を考えずに引き剥がす事は可能だよ?でも、それをやったら三件半は確実だ。

 

八幡「バッチこーい!覚悟は出来ている!そして時は動き出す!」

 

ゴン×3

 

ジョジョ、いろは、小町に拳骨が落とされる。

涙目で頭を押さえて座り込む女性陣。

そして………

 

承太郎「覚悟は出来ていると言ったな?八幡」

 

八幡「げ、拳骨までは………」

 

承太郎「そうか。残念だったな……オラオラだ……」

 

ギャアアアアアアアアアア!何で俺だけぇ!

 

S・P「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!オラァ!」

 

タコォォォォォォォォォォォォス!

 

比企谷八幡(ザ・ジェムストーン)…再起不能(リタイア)

 

八幡「新章いきなりかよ!」

 

 

キングクリムゾン!

 

承太郎の折檻が朝イチであったものの、登校が終わればいつもの1日だった。

 

海老名「あ、ヒキタニくん。昨日はありがとね?」

 

八幡「うーす。後、妙な趣味はそこそこにな?」

 

海老名「はかどったよー?ほら、こんなのまで作ったんだから!見て見て!」

 

絶世の猛獣とハヤハチ……

お前、見てたんじゃね?と、言いたくなるほどあの真空管ハゲに酷使したキャラが………

 

八幡「見んわ!真空管ハゲに掘られる俺と葉山のBL本を作るんじゃあない!」

 

思い出したくもない!あの真空管ハゲ!

 

海老名「何か急にアイデアが降りて来たんだよ!今までにない何かがまるで天啓のようにブワワワァ!って降りてきて………ブハァ!」

 

一人で興奮して一人で鼻血を噴水させるんじゃあない!

しかも俺の机で!

それも例の本を紅く染めながら!

いや、ネクロノミコンもかくやというカオスな魔導書を消滅させてくれるのは良いけど!

 

三浦「まったく………こいつはいつも擬態しろって言っているのに朝っぱらから………ほら、戻るよ!」

 

甲斐甲斐しく海老名の鼻血の処理をしながら海老名を連れ帰す三浦。おかんだな………。

ついでに汚物と化したネクロノミコンと俺の机の処理までしてくれたのならなおよかった。

 

戸部「べー、ヒキタニくん羨ましいわー。朝から海老名さんの鼻血を浴びられるなんてキテるわー」

 

八幡「キテるのはお前の頭の中身だ。そんなに羨ましいならこのネクロノミコンも進呈するわ」

 

俺は海老名の鼻血で染まったクトゥルフの魔導書を戸部に押し付けようとする。

 

戸部「や、いらね」

 

そこは引き取れよ!一応は想い人の創作物なんだから!

個人的には破棄したい物ではあるが、本人が一生懸命書いたものだし、本人の机に入れておこう。教科書やらペンケースやらが紅く染まったとしても、それは自己責任ということで。

俺?いるか!こんなネクロノミコンかナコト写本、ルルイエ異本に匹敵するクトゥルフ神話級の呪いの書物など!

まったく………

俺はハードカバーの文庫本を取りだし、ページを開く。

ライトノベルじゃあない。丁度あの世界で……俺達が生まれた頃の時代に流行したとあるホラー映画の原作となったシリーズ三部作だ。

俺はその第一作目を読んでいる。

今では中々入手できない原作三部作だが、あの世界では丁度流行の真っ只中だったので、入手できた。

映画では派生した方が人気出てしまい、俺が知りたいことには触れていないからな。一作目でも主人公の性別が変わっていたり、本来は二作目で死んでしまうはずの人物が、分岐した映画の二作目では主人公だったりと違いが多すぎる。

俺が知りたいのは原作の三作目のとある事についてだ。

 

戸塚「おはよう八幡」

 

八幡「ああ、おはよう戸塚」

 

戸塚「朝から読書?珍しいね?八幡がその手の文庫本を読むなんて」

 

八幡「や、別に俺はライトノベルオンリーという訳じゃあないからね?」

 

基本的に俺は乱読家だ。興味が惹かれれば古文学でも何でも基本的には読む。

 

戸塚「そうじゃあなくてさ。そのシリーズはどちらかと言えば映画の方が人気あって、原作のそれはあまり人気ないんじゃあない?」

 

八幡「まぁ、近々また映画も出るみたいだから興味が出てな」

 

俺は適当な事を言ってまた文章に目を落とす。

第一作目はそれほど映画とは関係ない。とは言え、よく見ると映画ではあまり触れられていない部分もある。

しかも、スタンド使い的にはそれが非常に共通点がある部分も………。

じっくりと読み解いていこうじゃあないか。

そして………。

 

葉山「やぁ」

 

八幡「あぁ」

 

葉山「………」

 

八幡「………」

 

目も合わせずに本に集中する俺。

 

葉山「ちょっと良いかな」

 

八幡「今、忙しい」

 

別に前のように意図して葉山に塩対応をしている訳じゃあない。少しでも先を読み進めたいからに過ぎない。

 

葉山「大事な話なんだ」

 

八幡「こっちも大事な用事なんだ」

 

トンっとオーラル・シガレッツで触れてくる葉山。

 

葉山「ふざけないでくれないか?」

 

八幡「信じられないかも知れないが、本気で大事な用事なんだよ」

 

葉山「オーラル・シガレッツでもその態度とは……本当に大事な内容なのか?随分と古い内容の文庫本だな。復刻版か何かか?」

 

八幡「まぁな。新しい調べものの一環だ。そっちの用事はアーシス関連か?」

 

葉山「いや、今日の応援演説に関する内容だ」

 

八幡「だったら任せるわ。それどころじゃあ無くなった訳だしな」

 

葉山「本当にいいのか?」

 

はて………何かあったっけ?

俺とジョジョが遊び半分でやっていたあの一芸入試とか制服や髪型の事とか以外に………あ、奉仕部の部室を生徒会の部室にする話とかか?

そんなのは今となってはどうでも良い内容だな。まるで興味が無くなった。

こっちはアーシスの仕事に関係するからな。

俺はあのときに見た数字の羅列をメモした紙を見る。

この数字の羅列と第一作目のラストを良く見ると…。

俺は第一作目のサブ主人公の行動に注目している。

 

八幡「サブ主人公が死ぬときに……(ぶつぶつ……)」

 

葉山「まぁ………ヒキタニが良いと言うなら……」

 

八幡「ああ、任せるわ」

 

俺はそのまま読書に没頭した。HRが始まってもそのまま本に没頭していて徐倫から拳骨をもらったのは言うまでもない。

 

キングクリムゾン

LHR

応援演説

 

雪乃「この度生徒会長に立候補した雪ノ下雪乃です。(ペラペラペラペラ)」

 

ペラペラ(ページをめくる音……)

 

結衣「何も今、ここで読まなくてもよくない?」

 

や、特に聞く意味もな…………

 

雪乃「公約の1つとしてある部活の事の公表と全面協力を約束いたします」

 

………ん?

そんなのあったっけ?

 

雪乃「みなさん。今年度のテニス部の輝かしい躍進についてご存知でしょうか?その陰にはある部活によって……」

 

あ………完っっっっ全に忘れてた!

雪ノ下の公約には奉仕部の存在を表に出すっていう内容があった!

 

八幡「いや………雪ノ下………待て………」

 

結衣「ヒッキー往生際悪いよ?さっき隼人君に聞いたら任せるって言ったらしいじゃん」

 

隼人?ああ、葉山の下の名前ね?昨日、めちゃくちゃキャラが濃い隼人と関わりがあったからそっちを想像しちゃってたよ。ゴメンね?葉山……じゃあねぇ!

 

八幡「完全に忘れてたんだよ!」

 

ヤバイ!テニス部やサッカー部のスキルアップを目の当たりにしている運動部からしてみたらうちの存在を公表されたら………。

SPW財団の仕事はほとんど無くなるとはいえ、今度は部活に付きっきりになる!俺の最後の休養期がー!

更に葉山の応援演説でその効果がどれ程かをより詳しく説明される。やぁぁぁめぇぇぇぇろぉぉぉぉ!

しかし、一度公表されたも同然となっては後の祭りである。

雪ノ下は信任投票。ほぼ当選は確実。

雪ノ下が生徒会長を降任する一年、ほぼ開店休業であり、SPW財団のオフィス状態だった奉仕部は、ブードキャンプ指導に明け暮れる形となるのが確定となった。

後にこの奉仕部の活動によって総武高校は公立高校でありながら、ほとんどの運動部が全国に名を轟かす事になるのだが、それはまた別の話である。

 

徐倫「やれやれだわ」

 

←To be continued




はい。今回はここまでです。

生徒会編のラストになるかと思います。

それでは次回も宜しくお願いします。

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