やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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ファニー・ヴァレンタインのD4C

side渋谷高座(猪八戒)

 

ファニー・ヴァレンタイン………

この男もDIOと同じく平行世界を自由に渡り歩くという禁忌の能力を持った男だ。

しかも別の世界からの自分を複数呼び寄せる……だと?

許しがたい。

神の領域に踏み込んでいない者が、神の領域と同じような能力を持つなどと……。

 

ヴァレンタイン「いつまで猿の振りをしているのかね?ウルフス。モンキーは人に追い付けない……とは誰の言葉だったか?人を見下す君達ウルフスが、まさか人に見下されるモンキーが好きだとは思わなかった」

 

バシュウン!

俺は傀儡から本体(ウルフスはスタンドが本体)を出す。

見るが良い。この肥太った美しい体を(平安感覚)。

俺は猪八戒。

盟友孫悟空と同じく『西遊記』という物語を元に存在が固定された者だ。

俺の方角を示す伝説の中では猪八戒が一番有名な存在であることが理由だ。

だが、元々は大した能力じゃあなかった。

今はオロチと名乗っているアイツに比べればマシだったが、俺は孫悟空の劣化版の能力と怪力、疫病を流行らせる(不浄の生物と言われる程である。わかるか?豚や豬は本来きれい好きな生物なのに、不浄の伝説が付けられて以降は汚い能力がついて回るこの悔しさが!)くらいしか能がなかった。人間という下等生物は北北西に何か恨みでもあるのか?

そんな俺だが、退化の力を得たことが大きな転換期だった。

知的生命体を退化させる。

いつしかその能力は同族達からも重要な戦力として重宝されるようになった。

 

オロチ「ジョースター達が何かを企んでいるようです。猪八戒。何を企んでいるのか確かめ、そして潰してきて下さい。ああ、利用しようとしているものが使えるものならば、こちらの道具として利用するべく持ち帰って頂きたいのですが」

 

リーダー面をしたオロチは生意気にも俺にそう命令してきた。目覚めさせてくれたのは感謝するが……。

それにしてもこの世界の力は何だ……。

あのぞわぞわする感覚は……あれはまずい。あんな力を浴び続けていたら、俺は………。

あの力はまるで普通のあれと同じものだ。

あの力に適合できなくなった俺達は、これ以上この世界に満ちる力に耐えることが出来ない。

逆にあの力はここで潰すべきだ。

だから………

 

猪八戒「お前らは邪魔なんだよぉぉぉ!」

 

俺は何人にも増えたファニー・ヴァレンタインのスタンドを相手に接近戦を挑む。

俺だって神の力を手に入れた者だ。パワーもスピードもただのスタンドに負けるはずがない。

 

ヴァレンタインA「ぐふっ!」

 

ヴァレンタインB「がはっ!」

 

次々とファニー・ヴァレンタインを倒していく。

なるほど。最初のファニー・ヴァレンタイン以外は世界を越える力は無いようだな。

ただの近距離パワー型の能無しスタンドなど敵じゃあない。それに……

 

ヴァレンタインC「なにっ!?私のD4Cが!」

 

能力を使いさえすれば、その能無しのスタンドですら使うことが出来なくなる。

 

ヴァレンタイン「ふむ……ジョセフ老。あなた方の考察は正しかったようだ。スタンド使いとは……」

 

 

side比企谷八幡

 

やっぱりな。

スタンド使いとは何かと考えれば、矢のウイルスを克服した事によって進化した人間。

矢に適合できる人間に何故犯罪者のような普通とはかけ離れた人間がなりやすいのか……。

それは……常識が通用しないからだ。進化するということは、それはすなわち常識から外れること。

原初の脊椎動物たる海の魚は、淡水に適合するために海の生物の常識を捨てた。

淡水の魚は陸に上がるために両生類となって魚の常識を捨てた。

やがて爬虫類となり、哺乳類になり……。

環境に適合するために、これまでの常識を捨てて進化を遂げてきた生物。

その進化の過程の中に、スタンドの矢のような宇宙からのウイルスが関係したものがいくつかあったのかも知れない。

何よりだ……

 

八幡(スタンド使いは普通の人間に対して、余りにもドライな感じがありすぎる。命を軽く見てしまう……)

 

自覚してみないと中々気付かないものだ。

近親種として次世代を産む事は可能でも、根本的に違う生物となってしまっていると思えば納得いく。

そして………

 

いろは「じゃあ、わたしがナイチンゲールを使えなくなったのは………」

 

八幡「退化させられて普通の人間になったからじゃあないの?本来なら原人か猿人になるはずの別の閣下が、スタンド能力を失っただけで体は変化無いってことは」

 

後は何が退化のキーになるかがわかればなんだが…。

普通ならば見過ごす何かの行動が退化の発動のはずなんだ。

 

猪八戒「く………倒しても倒してもきりがない!」

 

閣下の分身?が倒される度に別の分身が傷付いた分身を運び、オリジナル?の閣下がドジャアァァァン!をして新しい分身と交換するからきりがない。

あの能力、確かに敵に回られたら厄介だよな。

それに、俺達は何度か敵に回った別の世界の閣下と戦った事があるからわかるが、ジジイもウルフスも勘違いしている。

閣下のD4Cの恐ろしいところは……分身のように増殖する事なんかじゃあない。

 

八幡「あの人は……実はレクイエムキャリアとかウルフスと同じようにD4Cの方が本体なんじゃね?とかたまに思うことがあるんだよなー」

 

つまり、閣下の心配はあまりしていない。

本気を出した閣下に勝つのはそれこそレクイエムでも出さない限りは本当に困難だからだ。

 

ヴァレンタイン「忍くん。君に頼みがあるのだが…」

 

忍「なんですか?閣下」

 

ヴァレンタイン「君の変身能力はスタンド能力とは別の力だと聞く。それは間違いは無いかね?」

 

忍「ええ、間違いないわ。あちしはスタンド使いに変身しないとスタンドは見えないのよ。あちしに何でこんな能力があるのかは分からないけど……」

 

徐倫「スタンド?」

 

ん?徐倫はスタンドが使えない?

ああそうか。徐倫がスタンドに目覚めたのは5年前の話だったもんな。この徐倫は………。

 

ヴァレンタイン「なるほど……だが君には能力がある。君はスタンドとは別の進化を辿った人間……という事になるのかな?」

 

忍「?」

 

 

sideなし

 

藤崎忍は混乱していた。

スタンド使いが進化した人間の1つである考察は聞いていた。しかし、自分がそれとは別の進化を辿った人間であるとは考えた事もなかった。

藤崎忍は知らない。藤崎忍自身も八幡たちと同様に転生者であることを。

最近のお馴染みである異世界転生。その逆バージョンで、別の世界から異世界転生をした人間であることを。

その変身能力と性格は前世から受け継いだ能力であることを知らない。

その謎は藤崎忍という男に魂を宿らせた者と、その基本世界を覗いた者にしかわからないだろう。

ファニー・ヴァレンタインも漠然としか感じておらず、その前世を知っているわけではない。

しかし、藤崎忍こそがこの状況を打破出来るものと考えていた。

 

 

side藤崎忍

 

ヴァレンタイン「藤崎忍君。君ならば退化の力を受けたとしても、耐えられるかも知れない」

 

ファニーちゃんはあちしの体に触ったわ。

 

ヴァレンタイン「そうすれば君は私に変身することが出来るだろう」

 

ファニーちゃん……何を考えているのよ。

あちしにすべてを託すなんて……。

 

ヴァレンタイン「私は良い友人に恵まれた。覚えておいてくれたまえ。君と友人になったファニー・ヴァレンタインは、この私だったと言うことを」

 

忍「閣下!」

 

ヴァレンタイン「八幡君。君は知っているはずだ。私という人間は………」

 

八幡「閣下!まさか………」

 

ヴァレンタイン「ふ………さらばだ。アーシス!行くぞ!忍くん!」

 

覚悟を決めた……そんな顔をしてファニーちゃんがあちしを促して走るわ。

 

猪八戒「ペッ!」

 

猪八戒が吐いた唾に濡れたスパナがあちし達に飛んで来るわ。

 

ヴァレンタイン「やはりか!退化の発動キーは唾だ。猪八戒。君の唾が退化の発動キー!」

 

そうなのね。あの猪八戒は吐いた唾をさりげなく付けることによってみんなを退化させていたのね?

あちしからスター・プラチナが消えるわ。でも、即座に左手で頬を触り、元のあちしに戻ってから右手で再び承太郎さんに変身する。そしてスター・プラチナが出る。

消えていない………あちしの能力が消えていないわ!

 

猪八戒「ど畜生がぁ!せめてお前だけでもぉぉぉ!」

 

猪八戒がファニーちゃんに唾をかける。

 

猪八戒「死ねぇぇぇぇ!ファニー・ヴァレンタイン!」

 

猪八戒の攻撃がファニーちゃんのお腹を貫通する。

 

忍「ファニーちゃん!」

 

ヴァレンタイン「これで………良い。私ごと……猪八戒をD4Cで……スタンドとは関係ない世界に送りたまえ……それで……猪八戒は………二度と復活できない……」

 

ファニー……ちゃん。

自分の命を捨てるつもりだったのね……。

迷っている暇はないわ!

 

忍「ドジャアァァァン!」

 

あちしはファニーちゃんに変身して星条旗を出し、ファニーちゃんごと猪八戒を星条旗に包む。

 

アーシス一同「閣下ぁぁぁぁぁ!」

 

全員が絶叫するわ………。

当然よ………こんな終わり方があって良いものですか!

元の世界に帰ることは出来るかも知れないわ。

通信機を使って別の平行世界から別のファニーちゃんを呼べば良いのだもの……。

でもあちし達の世界のファニーちゃんは……。

そう考えると涙が出てくるわ………。

 

???「ふむ。ファニー・ヴァレンタインが死んでも涙を流してくれるとは有り難いな。我が友、藤崎忍君」

 

忍「当然よ!付き合った時間の長さなんて関係ないのよ!あちしは今、ファニー・ヴァレンタインという友人を失ったのよ!それで泣かないなんて……あら?」

 

あちしはそこで気が付くわ。確かに包み込んだ星条旗には、一人分の膨らみが………。

 

ヴァレンタイン「ドジャアァァァン!」

 

星条旗を派手に投げ飛ばし、そこからファニーちゃんが!それも、傷が全くないファニーちゃんが立っていたのよ!

 

忍「ファニーちゃん!無事だったのね!?」

 

ヴァレンタイン「正確には違う。私は新しくこの世界に呼ばれたアーシスのヴァレンタインと意識を共有したファニー・ヴァレンタインだ」

 

つまりは………

 

ヴァレンタイン「中身は君達のファニー・ヴァレンタインと何一つとして変わらない。だが、君達のファニー・ヴァレンタインは、ウルフスを滅ぼして……死んだ」

 

な、何で………すって………。

 

ヴァレンタイン「秘策があったのだよ。あの私だけが出来た秘策がね」

 

新しいファニーちゃんは、その後自分がどうなったのかを語ったわ………。

 

 

sideファニー・ヴァレンタイン(旧)

(BGM…HEATS)

 

これで………良い。

藤崎忍君が飛ばしてくれた世界は………。

真のゲッターの世界。

 

猪八戒「う………うぐぅ!こ、この力は……」

 

ヴァレンタイン「やはり……な……。貴様たちウルフスは……爬虫人類と同じなのだよ………貴様らは、真の宇宙意思から弾かれた存在………」

 

前々から疑問だった。

スタンド能力にはレクイエムという更なる先がある。

ならば、何故ウルフスは自らに矢を刺してレクイエム化をしないのか。

それは…………。

 

ヴァレンタイン「お前たちは………いつしかお前達の進化は……宇宙意思からかけ離れた進化を進んでいた…ゲッター線や矢は……進化を促す力はお前達を滅ぼす物と成り代わっていたのだろう……太陽が苦手な柱の一族のように…………」

 

柱の一族ももしかしたら進化を拒まれた存在だったのかも知れない。

神と自称するようになったからなのか、それとも…いずれにせよ宇宙意思にとっては何か都合の悪い存在になったからこそ、進化を拒まれたと考えるべきか…。

ああ………この考察がこの私では二度と出来ないのが悔やまれる。

 

猪八戒「………」

 

ヴァレンタイン「沈黙は肯定だ………もっとも、結果は溶け始めている君の体が物語っているがね………」

 

猪八戒「戻せ………俺を元の世界に戻せ………」

 

ヴァレンタイン「その能力を私から奪ったのは君だ。私にはもう……世界を移動する力はない………」

 

猪八戒「嘘を吐くなぁ!貴様は俺の本体が見えている!ゲッター線とやらでスタンド能力が戻っているはずだぁ!」

 

ゲッター線に汚染された世界の力は凄まじい。

進化の力が私に降り注ぎ、失ったはずのD4Cが私に戻っている。

もっとも………。

 

ヴァレンタイン「私のD4Cには……もうその能力はない………」

 

猪八戒「な、なんだと!?このド畜生がぁ!」

 

ヴァレンタイン「本来のD4Cは新たな私が……受け継いでくれる………私は………君達で言うところの……コピーになった……元オリジナルだ………」

 

あの世界の東方仗助代表に治して貰えば、まだ助かる見込みはあるだろう。だが、帰りたくても帰る術はない。

このD4Cは無能(・・)のD4C。能力を持っている本来のD4Cは、私の記憶と意思と共に新たな私に引き継がれている。

これがD4Cこそ本体とアーシスの一部に揶揄されている『いとも容易く行われるえげつない能力』だ。

私はその世界にいる全てのファニー・ヴァレンタインが死なない限り……滅びることはない。

一人でも平行世界に逃げる事が出来たのならば、新しく交代した私が私として引き継ぎ、オリジナルのファニー・ヴァレンタインとなる。

藤崎忍君がいなければ、それを果たすことが出来なかっただろう。

 

猪八戒「ド………ド………ド畜生ぉぉぉぉぉぉ!だが、俺の能力は俺が死んでも残る!DIO達は能力を失ったままだ!あーはっはっはっはっはっ!」

 

爬虫人類のように、スタンドが溶けて消える猪八戒。

進化から弾かれた生命体よ……消えるが良い。仮に生きていたとしても………世界を越える力はないだろう。

 

ヴァレンタイン(………覚えておいてくれたまえ……友たちよ……新たな私がいたとしても………君達と友人となった私は………この私なのだ………)

 

私の魂は体を離れ、そしてゲッターの意思と1つに溶けていく。

 

さらばだ………友よ………

 

旧ファニー・ヴァレンタイン(D4C)…死亡

 

 

side比企谷八幡

 

八幡「………閣下………」

 

俺達は死んだ閣下に対して黙祷をする。

確かに閣下はここにいる。

意識も共有し、俺達の閣下と何一つ変わらない。

でも………5年間、俺達を助け、友と言ってくれた閣下は……。

 

仗助「おい!みんな無事か!?」

 

仗助やゲッターチームのみんなが入ってくる。

すると………

緑色の光が………俺達を包み込む。この光は……ゲッター線か?

 

 

side早乙女博士

 

早乙女「コスモゲッターが………」

 

キュイイイイン!

コスモゲッターから光が溢れ、そして………ゲッター線を放出する………。

 

早乙女「これがゲッターの意思なのか……」

 

??『仗助………忍………れんげ………』

 

早乙女「!!」

 

聞いたことのない声が木霊する。

 

??『もうすぐ会える……過去の世界で……私達は出会う運命にあるわ………』

 

??『それまでは……守るから………過去で出会う未来を守るために………』

 

関羽……?張飛………?

仗助や忍達の未来に何が待っておると言うのじゃ!

 

旧ヴァレンタイン『これがゲッターの力か……ゲッターの世界とアーシスの世界………二つの世界に……』

 

←To be continued……




大統領の退場ではありません。

また、この世界は「越後屋大輔」さんの作品の忍達とゲッターチームが過去に飛ぶまえの世界です。
なのでまだコスモゲッターはおろか完成型のゲッターもまだ完全な起動をしていないという状況です。

今回の説明としては……

忍の前世……ONE PIECE(ボンクレー)
ヴァレンタインの最期を迎えた世界………真ゲッターロボ

という形になります。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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