やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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比企谷兄妹のケンカは矢の考察へとすりかわる

side比企谷八幡

 

杜王町程ではないが、11月も末になると、夜は大分冷え込んでくる。

いくらダッシュをしたところで上級波紋使いとしてはあまり体が暖まらないのは難点だ。

 

静「じゃあね?ハッチ」

 

基本世界に一番近しい世界から共に帰って来た相棒と別れの挨拶を交わしながら家に入る。

そのまま、風呂場へ直行し、制服を脱ぎ捨てると、頭からシャワーを浴びた。

熱めに設定したお湯が冷えた身体にひりひり痛い。

どれだけ洗い流しても、気分がスッキリすることは無く、諦めてお湯を止める。

前世では自ら捨てたもの。それが現世では………。

仮説の証明が進めば進むほど、俺は………では無いことを生まれから宿命付けられたことになる。

鏡には濡れ鼠の自分が映っているだけだ。いつも以上にどんよりしてやがる。

 

八幡「こぉぉぉぉぉ………無駄ぁ!」

 

弾く波紋で身体についている水分を弾き飛ばし、風呂場から出て軽く身体を拭く。これも波紋の悪用になるのか?まぁどうでも良いやと思い、部屋着に着替える。

2階のリビングに上がると、そこにいたのは隼のペットショップと猫のカマクラだけだ。ペットショップはすぐさま俺の肩に飛んで来て寛ぎ始める。カマクラはソファーのクッションで、香箱座りで寝こけていた。

疲れた時にはアニマルセラピーに限る。基本世界で透明になりながら、結構な距離を隠密行動していたから疲労感がたまっている。

俺はソファーに腰かけるとペットショップを肩から膝に移して撫でたり羽根をマッサージしたり、脚をさすってみたりした。やっべ、結構楽しい。

 

ペットショップ「くえ?くえ?」

 

いきなりもみくちゃにされたペットショップが超混乱した鳴き声をあげる。その様子を見ていたカマクラが同情的な目をペットショップに、鬱陶しそうな目を俺に向ける。「なんやこいつ……お前も大変やな」みたいな不信感バリバリの目だ。冷たい目だ。お願いだから明日の肉屋に並んでくれねぇかな?こいつ……的な感じの。なまじ猫としてはかわいいだけに余計に怒りがこみあげてくる。

 

八幡「はははは……はぁ」

 

笑い声も気づけばため息になる。

 

八幡「悪かったな」

 

ペットショップを一なでして謝る。ペットショップは元の肩に戻り、カマクラはふいっと顔を背け、ソファーから飛び降りた。そのままドアの前まで行くと、ドアノブにジャンプしてうまいことドアを開ける。そしてリビングから出ていってしまった。ついでにストレイ・キャットでドアを閉めていく辺りは行儀が良い。流石はスーパーキャット……と、言いたいところだが、カマクラ的に言わせれば「付いてくんな」的な感じだろう。やっぱり可愛くない。俺にはペットショップ一羽で充分だ。

いつもならまったりとした大切な時間。いろはがいればなお良しだが、今はいない。

静かな分、頭の中でずっと同じ事をばかり考えていた。

よぎるのは矢の事だ。仮説を立ててからもう何度この問答をしたかわからない。

俺達が○○なのか、それとも○○した○○なのか。起こるべき問題は何か。

もし○○じゃあない場合は、最終的に○○の敵となるのか。

スタンド使い。それが既に○でなかった場合、起こりうる問題はなんだ。俺達は○で無いということだ。遅かれ早かれそうなるだろう。何もなくともいずれは……

いや、そもそも……

 

八幡(何が問題なんだ?)

 

元々、徐々にそうなってきている。

シルバーチャリオッツはそれを無理矢理一気に進めようとしただけで………。

俺やジジイ達は理屈で気がついただけだ。

その検証をするために今日、基本世界に行って確かめて来たんだ。スタンド使いに選ばれる人間はどういう人間なのかを………。

俺達の世代で無理矢理結論を出さなくても良い。

少なくとも、俺達の世代はウルフスを倒せば良いだけの問題のはずなんだ。

なのに、何かをしなければという焦燥感はある。

 

八幡(これまでは出てくる敵を倒していれば良かった。だが、レクイエムの……真実の先に向かうということは、それこそ………)

 

レクイエムの思惑にはまる。

 

八幡(俺は……DIOやジョースターの力はただの礎に過ぎない)

 

人間を止めたり、天国を目指してみたりしたものの、果たしてそれは人間を超えたものであるのか?

柱の一族は……特にカーズは確かに俺達人間からしてみたら神に近いものだったかもしれない。

しかし、デュオロン・オブシディアンからしてみたら、レクイエムからしてみたら究極生命体にしたって赤子の手を捻るかのようにあっさりと地獄の果てに連れ去ってしまった。

いや、そもそもこの世界や基本世界でもジジイとエイジャの赤石によって宇宙に放逐されてしまったカーズ。宇宙に放逐されただけで何もできなくなった生命体が、果たして究極生命体と言えるのだろうか?

レクイエムが真なる神だと仮定するのであれば、究極生命体となったカーズは正に○○の頂点となった存在であるべきはずだったのに………

 

八幡(真なる神の思惑からは外れた存在だった……だからカーズは……いや、そもそも柱の一族だとて……)

 

柱の一族は………最初から失敗作だった?

ダメだ………。思考がそこから先に進まない。進むわけがない。だからこそ、やはりあの世界に行く必要があるんだが……。

 

小町「たっだいまー」

 

いろは「ただいまです♪」

 

ああ、愛しき嫁と妹(かぞく)が帰ってきたか。

思考の袋小路にはまり、胃がキリキリし始めたとしても家族の存在には癒される。

家族相手ならば優しさや信頼、俺達スタンド使いが何であれ、無条件で癒される。

親父がちょっとしたなかなかうざい超子煩悩でも、母親が結構賑やかで時折だいぶ小うるさくても、俺がどれだけ性悪でも、妹が可愛いくせに残念超絶ブラコンでも、婚約者が実は肝っ玉母ちゃんだったとしても。

前世の孫が詐欺師ギリギリのしょうもないジジイだったとしても、叔父貴分が家族想いなくせに不器用だったとしても、上の兄貴分がせこくてキレると手が付けられなかったとしても、下の兄貴分がギャングで人の味覚を破壊するのが趣味だったとしても、姉貴分が実はいじられキャラだったとしても(あれ?違った?)、相棒が性悪コンビだったとしても。

その関係は理由を必要としていない。

むしろ家族だからをすべての理由にすらできる。

無論、許せないこと(ディオから見たダリオ)、憎むこと(すれ違い時代の徐倫)の理由もまた、同様ではあるのだが。

やはり俺が今も昔も頼るのは、家族だ。

ただまぁ、これはスタンド使いじゃあない親父やかーちゃんに話してなんとかなるもんでもない。え?規格外オブ規格外?なんとかなるかも知れないが、あの人に頼るのはまちがっている。

あの人と関わるきっかけとなった弥七達の世界のように、今飢えているのはこの俺達の世界だ。奉仕部の理念は魚を取って貰うのではなく、魚の取り方を教えて貰うことだ。あの人に頼るのは違う。

あの人ならともかく、うちの両親はこの手の事は役にたたない。ほんとあれだよ。時にケンカし、時にバカな事をやった俺をたまに叱り、愛してくれるだけの存在だな。

俺の事を気にする前に、自分の老後とか健康とか小町の嫁ぎ先とか気にしろっての。ジジイくらいに長生きしろよなまったく。基本世界のジョースターの血統のように早死にとかするんじゃあないぞ。

 

小町「およ?お兄ちゃん、部屋に戻らないでなにしてんの?」

 

いろは「ジョジョ先輩とどこかへ行っていたみたいですけど、どこへ行っていたんですか?」

 

八幡「ちょっとこれの事で基本世界にな」

 

いろは「それは………矢!」

 

小町「その矢を使って何してきたの!?まさかレクイエムの実験を………」

 

俺が普段レクイエムに使っているのではない、柄付きの矢(形兆、音石の矢)を見せる。ここまできて隠し事はなしだ。下手に誤魔化せばまたいらない誤解を生んでしまう。

 

いろは「杜王町から帰ってきて間もないのに、もう…」

 

八幡「違う違う。基本世界の俺達の中で、本当にスタンド使いの資質がいる奴がいるかどうかを確かめに行ってきたんだ」

 

小町「基本世界の小町達をスタンド使いにしたの?」

 

八幡「しないしない。死体の山を築くだけだ。何人かは資質がある奴がいたみたいだけどな?」

 

いろは「何でわかったんですか?」

 

八幡「矢は資質がある奴を選ぶ。資質がある奴がいれば自然と矢は向く特性を忘れたの?最近では戸部に対して飛んで行ったように」

 

モリオンを使おうと持っていたジョジョの矢尻は、戸部を資質がある存在として勝手に飛んでいき、戸部を刺した。

吉良吉影の親父もその方法で噴上さんや大柳さん、チープトリック、えーと……エ…エ…エッグマン?のようなスタンド使いを生み出した(スーパーフライや未起隆さんは元々の能力)。

 

小町「何でそんなことをしてきたの?」

 

八幡「ジジイと俺とジョジョが立てた仮説を確かめに……かな?」

 

いろは「何を確かめにですか?」

 

八幡「スタンド使いに選ばれる存在って言うのは…世間一般で言うところのサイコパスに近いかどうかの検証だな」

 

いろは「じゃあ何ですか?わたしたちスタンド使いはサイコパスとでも言いたいんですか?」

 

八幡「違う……と言いたいところだが、これまでの自分達を思い返して見ると………結局は俺達って仲間内が関わればそこに行き着かね?サイコパスは言い過ぎかも知れないけど、世間一般の常識なんてものは結構置き去りにしてる自覚はあるよね?」

 

いろは&小町「………………」

 

うん。自分で言っていてなんだが、難癖や屁理屈をこねくり回して色々と裏を固めてきたが、結局は俺達って常識を無視している。

 

八幡「俺達だけじゃあない。スタンド使い全般がその傾向にあるよな?そしてスタンド使い全般が俺達を含めて犯罪者に多い理由もそこにある。人間としてはちょっとあれすぎるかも知れない思考こそ、スタンド使いの資質だと言うのは虹村形兆さんの段階で考察されていたことだが、ただの犯罪者ってだけじゃあなく、普通に考えればぶっ飛んだやり方を好む……もしくはぶっ飛んだやり方が当たり前な人間が基本的にスタンド使いになっているとは思わん?」

 

何故そうなのか、普通のスタンド使いは何故そういう人間が選ばれるのか……。

 

八幡「レクイエムが目指すのは……」

 

そこで俺は二人に俺達の考えを伝える。

ただ意志が強いとか、根性が座っているとか、そういう人間は矢に刺されれば死ぬ。

そこに行き着くには………真実に行き着くのは……真実とはそもそも何か………それは……。

 

小町「辻褄が合う……ような合わないような?」

 

いろは「だとしたら、スタンド使いとスタンド使いが惹かれ合うという理由は………」

 

小町「だとしたらポルナレフさんが読んだという研究者の考察は……」

 

八幡「正しくもあり、間違っているとも考えた。そんな甘いものじゃあないってな……」

 

そう、ポルナレフレポートの考察となった研究者のレポートにあるスタンド能力は……。

 

いろは「ポルナレフさんのレポートでは、宇宙ウイルスを克服した者がスタンド能力を得ると考えたのは、ウイルスを克服したご褒美……と考えていましたが……」

 

そう考えた時、俺はとある世界のあるものが非常に似ているのでは無いのかと考えた。

ある世界のとある存在が、柱の一族や吸血鬼達のそれと非常に……。

 

←To be continued


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