やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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スペシャルステージ・スーパーフライ(杜王町編終了)

side比企谷八幡

 

弥七「これが………真のファイナルステージ。スーパーフライ」

 

弥七がスーパーフライの送電鉄塔を見上げて圧倒されている。

スーパーフライ。

本体である鋼田一さんでもコントロールできず、誰か一人を置いて行かない限りは出られない鉄塔。

そこでの生活はYASHICHIそのものである。鋼田一さんはもうここで20年も生活している。

スーパーフライで鍛えられた鋼田一さんにしてみればYASHICHIなんて何でもない。

YASHICHIで脱落しているようではスーパーフライで生活することなどとても出来ない。

ファイナルステージの高さをサードステージの慎重さで登らねばならない。それがスーパーフライなのである。

ここで一晩過ごすことだけでも命懸け。

真のファイナルステージに相応しいステージだった。

このアトラクションだけは一般人には出来ない。

ここをクリア出来れば、ヘルクライムピラーに挑める資格を持てる。

 

鋼田一「一応、それぞれが生活エリアなので、壊さないで下さいね?それに、鉄塔に傷を付けたら、その傷が自分に跳ね返って来るのでご注意を。私は小屋で待機してますので」

 

さすがに鋼田一さんだけならともかく、奥さんがいるときは冬季間や雨天の時は辛かったのか、地上の畑にしてあったフロアは潰して生活空間に変えたらしい。

基本的には奥さんは鉄塔の外(パークの管理人棟)で生活しているのだが、まぁ、夫婦の時間とかはこっちの小屋で過ごしているようだ。

鋼田一さんは鉄塔から出られないので仕方がない。

まぁ、YASHICHIに出る以外は基本的に外出をしたがらない人なのだが。

晴れの日はこれまでと同じように野外で生活しているので、今回使わせてもらうスペシャルステージは鋼田一さんの生活空間という事になる。

こんな所を波紋なしで目を瞑っても生活できると言うのだから大したものだと感心する。

スペシャルステージは鋼田一さんの小屋の入り口から始まる。

各フロアに到着したらぐるりと一周回って移動するのだが、足場は細い鉄骨、または魔の壁よろしく指を酷使する鉄骨かワイヤーに捕まって移動しなければならず、それすらもない場所は射出されるボルトに乗らなければならない。

このボルトが速い上に平均台のようにバランスを取らなければならないため、難所なのだ。

一度でもバランスを崩せば落下。安全対策にスペシャルステージをやる場合のみ張られているネットに落ちてしまう。

タイムが無ければクリアするだけなら簡単なファイナルステージとは違い、サードステージをやりながら上へ上へと登っていくスーパーフライは正にスペシャルステージと言っても過言ではないだろう。

鋼田一さんをYASHICHIに誘ったプロデューサーの目は正しいと言わざるを得ない。

 

葉山「こ、これは………すごいステージだな」

 

戸部「べー、こんなところで生活なんてできないわー。数分で落ちる自信があるわー」

 

鋼田一「そうですか?3年も住んでいればむしろ快適ですよ?ここでの生活」

 

三浦「慣れる前に死ぬっしょ?」

 

鋼田一「私なんて何ヵ月も地上に足を付けなくても大丈夫なんですけどねー」

 

「………」

 

みんなが押し黙る。気持ちはわかる。

波紋の戦士だって進んでこんなところで生活してみたいだなんて思わない。

さて、まずは小町から。

 

小町「ヒャッホー♪」

 

うん、さすがは小町。スーパーフライにも慣れているだけあってちょっとやそっとで簡単には落ちない。

小町に続いて俺も行く。

今日はサードステージで……しかもこのステージではデフォルトの魔の壁で落下しただけに慎重に行こう。

一日で二度も脱落なんて上級波紋の戦士としてはあってはならない。

 

葉山「俺はあの魔の壁でやられたからな。それが最低条件ならば俺では無理だ」

 

静「今度は落ちるなよー?ハッチィ」

 

ジョジョめ………応援ではなく、遠回しに落ちろといってるだろ?それ。

 

ズルッ!

 

あぶね!ワイヤーから一瞬だけ手が滑った!

こんなところで危うくまたランキングを落とすところだった………

 

小町「ゴール!」

 

未起隆「お疲れ様です。小町さん」

 

小町「未起隆さんも飽きないよねー。そんなに面白い?この街を眺めるのが」

 

未起隆「ええ。この街は変わらない。こんなテーマパークは出来ましたが、いつまでも変わらないこの街はとても面白いですよ………」

 

未起隆さん、まだ頂上にいたんだ……。

よし、もう少しでゴール。

このボルトに足をかけて……今だ!

ヒュウウ……こんな時に突風っ!?

危うく落ちそうになったが、何とか踏みとどまり、ワイヤーを登って……ゴール!

つ、辛い戦いだった。

 

八幡「ハァ……ハァ……危うく突風で落とされるところだった………」

 

未起隆「八幡さんもお疲れ様です。見事、ゴールですね?」

 

八幡「毎日ここを登っている未起隆さんもYASHICHIに参加してみてはどうですか?」

 

未起隆「私にはああいったイベントは合いません。ここには町を眺める為に登っているのです」

 

 

他はどうかな?

 

ジョセフ「ぬぐっ!波紋なしでは中々キツいわい!」

 

普段は波紋で登っているであろうジジイ。今回はそれ無しで登っているため、結構苦戦しているようだ。

 

弥七「く………負けませんよぉぉぉ!ジョセフさん!」

 

弥七はジジイをライバル視しているようだ。

ジジイと弥七は案外競っているような感じだしな。

 

それよりも気になるのが………

 

カマクラ「にゃん♪にゃん♪」

 

器用にしっぽを使って移動しているカマクラだよな…。

鉄骨みたいな場所はカマクラは普段から歩いているから何の苦もないだろうし………。

ボルトは……さすがに乗らないか。人間相手なら普通はコースだから通れよと言いたいところだが、猫じゃそれは酷だろ。

落ちてネットの間をすり抜けたら流石のカマクラも命が危ないしな。

そしてジジイ、弥七、カマクラもゴール。

 

カマクラ「ニャッ!」

 

ペットショップ「クエッ!」

 

バサバサバサバサ!

ペットショップがカマクラの呼び掛けに応えて回収しにやって来た。

よく訓練されている隼である。

カマクラさん。ペットショップは俺の隼だからね?

家族だから良いけど。

さて、ゴールした組みはネットを目掛けてジャンプ!

こんなところ、普通に降りても1つのアトラクションである。

真面目に下りていたら流石に持たない。

かといってゴールに居座り続けても後続の邪魔になるしな。

ふぅ………楽しかっ………

 

大志「あっ!」

 

え?

 

ドスン!

 

八幡「ぐぇぇぇぇぇ!」

 

大志め………失敗したか………しかも俺の上に落下してくるなんて………狙ってやったわけじゃあないよな?

 

大志「お、お兄さん!す、すみません!」

 

誰がお兄さんだ!

 

八幡「良いから退いてくれ!」

 

おまっ!相手が俺じゃあなかったら事故だぞ!

いい気分が台無しだスカタン!

 

静「ゴォォォォォル!ヒャッホー!ゴールしたあとのフリーフライが楽し………あっ………」

 

あっ………じゃあない!下を見てから落ちろよ!

 

八幡「ぐほぉぉぉぉぉぉ!」

大志「ぎゃああああああ!」

静「いったぁぁぁぁぁい!」

 

今のはジョジョが悪い!どけ!相棒!お前と絡まっても嬉しくない!

 

陽乃「おーい、遊んでないで早く退いてよー!降りられないじゃん!」

 

沙希「全くだよ。せっかく雪ノ下さんに勝ったのに」

 

それはお前の弟とジョジョに言ってくれぇぇぇ!

 

大志「近い!柔らかい!いい匂い!暖かい!」

 

仗助「あ?」

 

おまっ!なにジョジョを堪能してやがる!仗助の目付きが変わってるぞ!

 

仗助「ドララララララァ!」

 

ブチブチブチッ!

仗助が安全ネットをぶちきって俺達を落とす。

あー、助かった。

 

仗助「クレイジー・ダイヤモンド!」

 

俺達を救出したあとに仗助がネットを直して元に戻す。

良かった。物を直せる仗助ならネットを直せるもんな。

 

沙希「それっ!」

 

陽乃「よっと♪」

 

二人も飛び降りてネットを揺らす。これで全員がゴールかな?

いやぁ、楽しかった。

 

仗助「さて、大志………ジョジョの体は楽しかったか?」

 

大志「じ、事故ッス!謝りますから勘弁して下さい!」

 

大志は仗助によってズルズルと引きずられていく。

あー、ありゃあ再チャレンジは無理だな……。

ナムナム………チーン♪

 

弥七「あー!楽しかったです♪」

 

八幡「そっか。それは良かった。ところで何でこの世界に来たの?」

 

弥七「そんなの、せんぱいを守る為の訓練に決まってるじゃないですか!」

 

八幡「俺を?」

 

弥七「あなたの事じゃありません!わたしの世界のせんぱいの事です!」

 

あー、あっちの八幡君の事ね?

あっちの事件が終わってもそういうのが必要なのか?

あの規格外が黙っているとも思えないけどな?同じ作者だし(メメタァ!)

 

八幡「お前ならヘルクライムピラーもクリア出来るんじゃね?」

 

弥七「う………それはまたの機会に………」

 

まぁ、油が滴るツルツルの大理石を数日かけて上ることになるからなぁ。

壁を駆け上がるなんてC・MOONでも無ければ上級波紋使いじゃあないと無理だしな。

 

八幡「まぁ、興味があったら来てくれ。わざわざイタリアのエア・サブレーナ島に行かなくても日本支部の地下にもマイナーダウン版があるから、そっちでも良いから」

 

弥七「はぁい♪では、またまたー♪」

 

弥七は何かの機械を操作すると、シュゥゥゥン!とぶれて消えていった。ちゃんと帰れるのかな……あの機械。

 

ジョセフ「さて、帰るとするか!もう夕方じゃしな!」

 

杜王町観光もこれで終わりか………。

また、みんなで来れるよな?

 

スペシャルステージ後の総合発表

 

1比企谷小町(総合優勝)

2ジョセフ・ジョースター

3弥七

4静・ジョースター

5川崎沙希

6雪ノ下陽乃

7比企谷八幡

8比企谷カマクラ

 

脱落者

川崎大志

 

くっ!

5位に復帰は出来なかったか!

サードステージの脱落が響いたぁ!

 

 

キングクリムゾン!

 

帰りの新幹線

 

思い思いの杜王町の一泊二日の旅も、これで終わりだ。

みんなでまとめてどこかに観光することは無かったが、それぞれが何かを得る旅になったようだ。

特にみんなの興味を引いたのが俺達の過去の話だという。

平々凡々とは言わないまでも、そんな興味があるものかね?

散々皆に責められたのが出会い頭のブチュー事件。良いじゃあ無いかよ。一目惚れだったんだから。

女性陣には普通は嫌われてると言われた。

うん、俺もそう思う。本当にいろはには頭が上がらない。

逆にホリィさんはみんなの大人気だった。

うんうん。ホリィさんは天使だよ。この人以上に天使と呼べる人はいない。

 

若いときのホリィさんに是非会ってみたかった」

 

いろは「アレッシーでも宇宙から回収しますか?」

 

八幡「ごめんなさい。赤オーラを発しないで下さい」

 

知ってる?心霊写真とかでは赤く写っている幽霊って恨みを持ってるのが強いんだって。

 

例えばサンシャイン・ルビーとかマジシャンズ・レッドみたいな赤いスタンドは危ないかも?」

 

シュボッ!

 

あぢぃぃぃぃぃぃぃ!

 

三浦「あんた、何ヒトのスタンドをディスってるし!」

 

小町「何で赤オーラの例でサンシャイン・ルビーを出すかなぁ。そこはエボニー・デビルでしょ」

 

八幡「悪かったから警告抜きで燃やすのは勘弁願いませんかね!内輪揉めでジョースターのジンクスを発動させるんじゃあない!電車が事故ったらどうするんだよ!ただでさえここに乗り物運がわるいジョースター家が何人いると思ってるの!?最後の最後でドンパチは勘弁だからね!?」

 

『あ………』

 

1ジョセフ

2ホリィ

3承太郎

4仗助

5ジョルノ

6徐倫

7静

8エンポリオ

 

同列扱い

9八幡

10いろは

11小町

12陽乃

13雪乃

14沙希

15大志

16京華

17朋子

18トリッシュ

 

数え役満!

を飛ばして既に数えダブル役満は行ってるわ!しかも親の数えダブル役満!

トランプならロイヤルストレートフラッシュ!

ブラックジャック!

花札なら五光に猪鹿蝶、赤タン、青タン、花見酒に月見酒!

 

…………なんか、前方から悲鳴のようなものが聞こえる気がするんだけど…………。

 

いろは「ま、まさかですよねー?最後の最後でドンパチなんてありえませんよねー!?」

 

小町「そうだよそうだよ!ねぇ?」

 

静「楽しい旅行の最後でなんてねー?」

 

…………………

 

八幡「誰だ!フラグ立てた奴は!」

 

仗助「お前だお前!」

 

ジョセフ「OhNo!また新幹線かぁ!」

 

ジョルノ「八幡!後でワサビです!」

 

承太郎「ヤレヤレだ……」

 

徐倫「世界のフィンガー、くたばりやがれー!」

 

翌朝の新聞の社会面には東北新幹線の緊急停止が小さく載っており、国際テロリスト(犯人・鶴間)が大宮駅の柱に括り付けられて発見されたという事件があったのだが、これは別の話である。

 

 

 

 

 

 

sideなし

 

杜王町

 

その日、杜王町の吉良の慰霊碑からは光が出ていた。

シンデレラ・ハーヴェストの幸運の光だ。

それがかの事件に関わってしまった者達に降り注がれる。

 

ある老夫婦は17年前に行方不明となり、暫定死亡となった息子がいた。頭は良くなかったが、親思いで明るい彼の成長は、老夫婦にとって唯一の楽しみだった。

彼が帰ってこなくなったその日から、その老夫婦の家庭からは火が消えたように笑顔がなくなった。

 

だが………

 

シゲチー母「あなた……シゲチーちゃんが、笑っていたのよ………高校生くらいの女の子と一緒に立っていて、『おらは今、幸せだど。だからパパとママも安心して元気でいてほしいんだど……』って……」

 

シゲチー父「ああ……俺もみた…シゲチーが笑っている夢を………シゲチーは今、幸せなんだなって……そう感じる事ができた………」

 

老夫婦が失ったものはもう戻らない。悲しみは消えないかもしれない。だが、この日、老夫婦の顔には十数年ぶりに、笑顔が戻っていた。

 

 

しのぶ「ねぇ早人。あんた、社員証を無くしたんだって?」

 

早人「う、うん。一昨日色々あって………」

 

しのぶ「小料理屋の娘さんが届けてくれたわよ」

 

早人の母が彼に届けられた社員証を渡す。

ホッと胸を撫で下ろす早人。そんな早人を見てしのぶは微笑む。

 

しのぶ「早人、あんたはホントに立派になったわね。自慢の息子よ………」

 

早人「ママ………」

 

しのぶがこうして早人に母として語りかけて来るのは珍しい。しのぶは早人に依存していた。相手は殺人鬼だったとはいえ、女として芽生えていたしのぶに夫の失踪は精神的にも堪えていた。そのしのぶの心の拠り所は早人に向けられていた。

しかし、この日は憑き物が落ちたように穏やかだ。

 

しのぶ「早人。その子が言ってたわ。あの娘の弟は昔、既存の医療じゃ見つからない難病を抱えていたんですって。でも、あなたが開発した医療機器のお陰で助かったそうよ?まだ見ぬあなたに憧れて、工学の道を目指したんですって。来年、SPW財団の開発部に内定が決まっているそうなの」

 

早人「へぇ………僕がこんなんだと知って幻滅したんじゃあ無いのかい?」

 

しのぶ「そんな事ないわ。あんたはカッコいいもの。昔は根暗な子だと心配したけど、いつからかあんたは凄くカッコ良くなったわ………その子も満更じゃあ無かったみたいよ?そろそろ、孫の顔も見れるかな?」

 

早人「気が早いよ………それに、ママを一人にするわけには……」

 

しのぶ「早人。あんたはずっと、私に尽くしてくれたわ。もう充分過ぎるくらい………だからあんたは自分の幸せをそろそろ見つけなさい」

 

しのぶは早人に柔らかく微笑む。

 

しのぶ「その子、今度改めてお礼がしたいそうよ。あんたが好きそうな素朴な感じだけど、かわいい子だったわ」

 

川尻早人にとって、遅咲きの春が訪れようとしていた。

長年患っていた川尻しのぶの息子に対する依存性は、この日を境に解消された。

 

こんな小さな幸せが……爪痕を残していた杜王町の住民たちを一歩、前に進めるきっかけとなる。

 

 

新名所

吉良の慰霊碑

 

ボヨヨン岬から程近い別荘地に建てられた1999年まで多発していた死者、行方不明者の鎮魂の為に建てられている慰霊碑。

この慰霊碑には度々祈りを捧げる少女が現れる。

その少女が祈りを捧げた数日後には、謎の発光を起こし、街にささやかな幸せが訪れるという。

もし、君がその聖女の祈りを見たならば、その祈りを邪魔してはいけない。

 

←To be continued

 

杜王町編終了




はい、今回で杜王町編は終わりです。

結構長くなりましたね。
それでは次回からは生徒会編へと戻ります。

それでは次回もよろしくお願いします。

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