やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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やはり鋼田一豊大は鉄塔の中で生活するのはまちがっている。

side比企谷八幡

ートラサルディ前ー

 

それぞれ男子会と女子会が終わり、男子達は一旦杜王グランドホテルに戻り、大人組と合流する。

今日はこれから夜の新幹線までは最後の杜王町の名所で過ごすことになっている。

 

男が住む送電鉄塔

 

1999年の段階ではそう呼ばれていた送電鉄塔。

再開発が進められいた1999年の杜王町は、これまで主流だった送電電線から地下ケーブルの送電へと切り替えられていった。

そこで不要となったのが送電鉄塔。

撤去するにも金がかかるからと打ち捨てられた送電鉄塔であるが、その鉄塔を個人で買い取った人。それが鋼田一豊広さんだ。

 

葉山「いやぁ、楽しみだな。鉄塔」

 

戸部「べー、俺、一度やってみたかったんだわー」

 

体操服に着替えた葉山達がバスを待つ間、楽しそうにストレッチをしている。

葉山達だけじゃあない。親父とか母ちゃんとかも含めてメンバーは全員、体操服に着替えてストレッチ。

アーシスメンバー以外の人達は程々にね?

 

八幡「腹ごなしでいく場所じゃあ無いんだよなー。とはいえ、あそこでリタイアするようじゃあヘルクライムピラーの攻略なんて夢のまた夢だから、仗助や葉山の場合は自分の力量を測るには良い機会かもな」

 

あそこは今、以外な形で発展している。

他の名所よりもある意味では杜王町の名物になっているくらいだ。

 

承太郎「バスが到着したようだ」

 

半日だけチャーターしたバスがホテルの前に到着する。鉄塔がある場所は杜王町南西にあるトラサルディー。そのトラサルディーよりも更に南西にある。

鉄塔は杜王町の中でも外れの外れにある建物がない高台に建てられている。

杜王町観光において名所を1日で全てを回ろうとする者達のネックとなっている場所が鉄塔だ。

昨日までは思い思いの場所を徒歩でタクシーでバスでと移動していたが、午後からは鉄塔に行くために全員で行動することになっている。

バスに乗り込んだ俺達。バスはしばらく進むと一旦歩道で停まり、東方家に泊まっていた人間がここで合流。

 

億泰「アーシスの学生組よぉ。今度はゆっくり来てくれよ。その時にはもっとこの町を案内してやっからよぉ。元気でなぁ!」

 

億泰さんは大きく手を振って俺達を見送ってくれる。

そして次は杜王駅。ここで広瀬一家と露伴先生と材木座が乗り込んでくる。ハンゲツも一緒だ。

 

康一姉「ハンゲツ……千葉でも元気でね……」

 

ハンゲツ「クゥン……」

 

康一さんのお姉さんはハンゲツをめぐり先輩に譲ってくれるそうだ。少し寂しそうではあるが、ハンゲツの為を思えば……と、快く譲ってくれたらしい。

 

康一母「いってらっしゃい。康ちゃん、康穂ちゃん。元気に頑張りなさいよ」

 

康一「わかってるよ。お母さんもお姉ちゃんも体に気を付けて。お父さんや義兄さんによろしく」

 

康一さんと由花子さんはそれぞれの両親と挨拶をしてバスに乗り込んで来る。もちろん体操服を着込んで。

バスはそこから更に進み、杜王霊園前へ。

そこで女性陣が乗り込んで来る。女性陣は現地で着替えるようだ。そこからしばらくバスは走り、杜王町の外れまで進んでいく。すると……

 

仗助「変わっちまったよなぁ。ここもよぉ。田園と荒れ地が続いていたんだけどよぉ」

 

つい数年前まではただの高台だったこの周辺は、今は鉄塔を中心にスポーツ公園のような状況になっている。

 

八幡「YASHICHIの影響だろうな……」

 

戸部「あれのファンの間ではミスターYASHICHIと呼ばれている人っしょ?こうもなるっしょ!」

 

そしてバスは駐車場に到着し、俺達は件の鉄塔に到着した。そして中心の鉄塔に向かう。

 

スーパーフライの鉄塔……。

かつて鉄塔に住まう男として町の名所になっていたこの鉄塔は……今はYASHICHIの鉄塔と呼ばれていた。

 

男「おや?珍しい。仗助さん達じゃあないですか」

 

仗助「よう。久しぶりだな、鋼田一豊広」

 

覆面を被った男性が鉄塔の中腹からスルスルと降りてきて仗助に挨拶をする。

鋼田一豊広さん。

鉄塔そのものがスタンドであるスーパーフライの本体であるスタンド使いだ。

スーパーフライはチープ・トリックのように本体にとってもマイナスなスタンドだ。鋼田一さん本人も使いこなす事ができていない。

この鉄塔に入るとする。出ようとしたとき、誰かが残っているならば普通に出入りすることが出来るのだが、最後の1人だった場合、鉄塔の外に出ると、出た部分が鉄となってしまい、出ることが出来なくなる。

完全に鉄になる前に鉄塔の中に戻れば元の生身に戻る事ができるが。

鋼田一さんはスタンド使いになる以前からこの鉄塔にすんでいた。対人恐怖症の上に何をやっても上手くいかない人生に嫌気が差し、自給自足の世捨て人をしていた人だ。

そんな生活を始めたある日、スーパーフライの能力が発動し、鉄塔から出られなくなってしまう。どうやって外の世界に出るか考えながら鉄塔の生活を始めてから3年後の1999年の初夏、吉良吉影の父、幽霊の吉良吉廣に「鉄塔の外の生活を保証してやる」と唆された鋼田一さんは仗助達を鉄塔に上手く誘き寄せ、そして自分が外に出るべく嵌めようとして仗助、億泰さん、未起隆さんとドンパチになったそうだ。

結果として未起隆さんと仗助の機転により敗北した鋼田一さんは、知り尽くしている鉄塔の中ですら敗けるのであれば、外の生活なんてとても無理!という事で鉄塔の中で一生を過ごす事にしたらしい。

それから17年。

鋼田一さんは自給自足の生活をしつつも鉄塔の中の生活をより快適に過ごすべく、色々と改造をしている。

まず地上部分には雨風を凌ぐために木造の小屋が建てられていた。かつては冬場はテントを使って寒さを凌いでいたようだが、台風やら吹雪やらで飛ばされたりで命が危なかった事は一度や二度では無いらしい。そりゃただでさえ寒い東北の冬を吹きさらしで生活なんか出来る訳がない。

そこで見かねた鋼田一さんの友人、支倉未起隆さんが中心となって当時の杜王町のスタンド使い達や鋼田一さんファンの有志達が小屋を建ててくれたらしい。

そして、電線とガスを引いて電化製品等を使えるようになった。打ち捨てられた配電鉄塔に電線を引くって本末転倒のような気もするが……。

そして一番変わったのが鉄塔のあちこちに設置されたアスレチックを彷彿させる数々やら、鉄塔の外に作られた様々なアスレチックコース。

これが彼を有名にしている1つの象徴だった。

 

鋼田一「今日は運動しに来たのですか?」

 

仗助「半分はな。後はおめぇに会いに来たんだよ。アーシスの仲間を会わせにな」

 

鋼田一「ああ、未起隆さんから聞いていました。初めまして。鋼田一豊広です」

 

戸部「べー!生の鋼田一さんだわー!俺、戸部翔ッス!YASHICHIでの活躍はいつも見てるッスよ!」

 

鋼田一「あ、ありがとう……」

 

戸部を皮切りに鋼田一さんに挨拶をする今年仲間に入ったアーシスの面々(葉山、相模、戸部は正確には違うが)。

鋼田一さんは年に数回行われるアスレチックの祭典、「YASHICHI」の雛型選手だ。

10年前ほど前に杜王町の観光に訪れたYASHICHI(SAS○KEのような番組)のプロデューサーが鋼田一さんの鉄塔での生活を見てスカウトをしてきたのだとか。

プロデューサーの気持ちもわからなくはない。この鉄塔での生活は常にYASHICHIをやっているようなものだ。

最初こそ断っていた鋼田一さんだったが、来る度に沢山の差し入れを持ってきては熱心にスカウトをしてくるプロデューサーの熱意に負け、その時だけは友人である未起隆さんに鉄塔の留守番をお願いして出場した。

結果など言うまでも無いだろう。

こんなところで自給自足の生活をしている鋼田一さんはあの番組で必要な身体能力の全てを持っている。ただ生活しているだけで鍛えられるわけだから。

ちなみに鋼田一さんは波紋の戦士というわけでもなければ、スタンド能力を使って競技をしているわけじゃあ無いのでアーシスの規定には違反していない。スーパーフライはこの鉄塔の中の能力だからだ。

故に完全に彼の実力。

鋼田一さんはその活躍と、何故かその気弱な性格がウケて一躍アイドルプレイヤーに。

それにあやかった町がテレビ局と提携して周囲の土地を買い取り、この一帯に「YASHICHI」のコースを作ってアスレチック公園として運用しはじめた。

ちなみに、仗助や東北支部も一枚噛んでいるのは言うまでもない。セコい金稼ぎに敏なのは仗助クオリティと言ったところである。

これには鋼田一さんもビックリしたようだが、杜王町の狙いはバッチリ嵌まり、結構な町興しになっているようである。新しいコースとかのアイデアに早人さんが駆り出されてブツクサ文句を言っているようだが。昨日の陽乃さんの件と言い、相変わらず早人さんは苦労人である。

一方で自由人なのがこの人だろう。

 

八幡「未起隆さーーーん!」

 

俺は鉄塔の頂上から町を見下ろしている支倉未起隆さんに声をかける。

 

未起隆「おや?」

 

未起隆さんは腕をワイヤーに変化させてスルスルと降りてくる。未起隆さんは旅に出ていない時は毎日この鉄塔を訪れ、町を見ている。

町を一望できるこの鉄塔の頂上が未起隆さんのお気に入りなのだとか。俺にとってのベストプレイスのようなものかもな。

 

未起隆「これはこれは仗助さん達。杜王町に来られていたのですね?連絡を頂ければこちらからご挨拶に伺いましたのに」

 

仗助「今回は突然だったんだよ」

 

未起隆「そうだったのですか。今回はいつまで?」

 

仗助「今日の夜には千葉に帰る予定だ」

 

未起隆「それは残念です。アーシスの皆さんもお久しぶりです」

 

未起隆さんは俺たちにも丁寧に挨拶をする。

 

女性「豊広くーん!誰か来てるのー!?」

 

鉄塔の近くに建てられている管理棟から一人の女性が出てくる。鋼田一さんの奥さん、琥珀さんだ。

琥珀さんはYASHICHIで活躍する鋼田一さんに憧れ、この管理棟の職員になったのだとか。そしてそのまま鋼田一さんと結婚。人の縁とは本当にわからないものだ。

 

仗助「よう琥珀。施設を使いに来たぜ。フリーパスで良いよな?」

 

琥珀「はーい。ではどうぞー♪」

 

材木座「ふん!たぎって来たわ!ファイナルステージまで必ず行ってみせるぞ!」

 

八幡「最初はスタンド使うなよ?」

 

材木座「な、なんと!」

 

徐倫「当たり前だろ?一般人用に作られてるんだ。スタンドを使ってクリアしても面白くないだろ」

 

純粋にゲームを楽しむならルールを守ってってやつだな。

 

仗助「あ、忘れる前に渡しておくぜ?千葉のお土産、「ピーナッツ最中」と「落花生パイ」だ」

 

千葉のお土産トップツーである。

さて………俺もアスレチックをやるか。

 

 

side??

 

ふっふっふっふっ。

その名前を出されたのならば黙ってはいられません。

楽しんでいられるのも今のうちですよー?

 

←To be continued




はい、スーパーフライの周りをSAS○KEにしてみました。
波紋の戦士でもなければスタンドもあんなんな鋼田一ならば、規定に引っ掛からずにSAS○KEで活躍できそうだなぁ……と思い、気が付いたらネタにしていました。
奥さんはスティール・ボール・ランやジョジョリオンから持ってこようかとも思いましたが、チョイ役なのでやめておきました。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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