sideなし
杜王町が誇る奇妙な伝説。
例を挙げればきりがない。
恋人たちの伝説となりつつあるアンジェロ岩
自殺を図った少女を救ったボヨヨン岬
あの世とこの世の境目の導かれし小道
化け物と妖怪草が住む妖怪洋館
図書館の呪いの本
強運のじゃんけんお兄さん
通ると必ずカツアゲをされるカツアゲロード
杜王ふるぅつ屋
鉄塔に住まう男
そして………
食べると健康になるイタリアンレストラン、トラサルディ
奇妙な伝説が乱立する杜王町において、数少ないプラスの名物を持つ場所。それがトラサルディである。
ただ、この店も普通ではない。
それもトラサルディが杜王町名物である理由の1つだ。
1つ。
まず、これだけ人気のある店であるのにも関わらず、店主とその奥さんだけで経営をしている。
2つ。
店にメニューはなく、出される料理と料金はお客様次第というきてれつぶり。
店主が手の状態を見てメニューを決めるのだとか。
3つ。
食べた直後に毒を盛られたかと思うくらいに奇妙な現象が発生するものの、直後には体の悪いところがすっかり治っている。
これだけでも有名になるのは当然とも言える。
だが、それを抜きにしてもトラサルディは人気の店になっていただろう。
トラサルディの料理は誰が食べても、何を食べても美味しいのだ。
それは何故か……。
トニオは客に同じ料理でも、合わせた味を1品1品丁寧に作っているからだ。
人の手を見るだけで相手の健康状態を見破るトニオ・トラサルディ。彼の観察眼をもってすればお客様の好みは例え初見であっても合わせることができる。
数ある料理ドラマや漫画でも語られるが、大きな料亭などでは店の味に客が付いてくるものだが、小さな店では客の舌に店が味を合わせるものだという。
トニオの場合は後者であった。
杜王町に根を張ってから15年以上。変わらぬ人気を誇るトニオの料理だが、トニオは初心を忘れず客に味を合わせている。
スタンド能力故に注文から調理、説明までしなければならないのは以前にも伝えたが、それがなくてもトニオは客と向き合う今の姿勢を続けていたかもしれない。
少ないテーブルの数は、その時、今いるお客様に全力を注ぐ為……。そんなトニオのこだわりが見てとれる。
トニオは自分の料理を食べ、健康になって心身ともにリフレッシュをしていく姿がとても好きなのだろう。
そこに今日の貸しきりの団体、アーシス女子組が来店していた。
side静・ジョースター
トニオ(英語)『では、手を見せて下さい』
静「手を見せて下さいだって」
トラサルディに来店した私達は、トニオさんに手を見せる。手というのは健康状態を確かめるのに適した場所である。
少なくとも東洋医学では有名だ。
相模「え?手?」
三浦「何でだし……」
私、イーハ、マーチ、ヤッチ、陽乃さん、折本、仲町、けーちゃん以外はみんな引いている。
メンバーの約半分ってところだ。
静「あんたらは普通だね?知ってたの?」
折本と仲町に振り返り、尋ねる。
仲町「杜王町にはアーシス支援部隊の演習をやるために何度か来てるからね。当然、虹村さんとかに紹介してもらってるよ。っつーか、手を見られるくらいでドン引きしてたらトラサルディでご飯食べられないから。ウケる」
折本「それある!つぅかジョースターさん、説明してなかったのってわざとでしょ。相変わらず性格悪い。ウケる」
だから折本……それある!はやめろ。あんたのスタンド能力はそれが発動キーなんだから。
そして折本が言うとおり、私はわざとトラサルディの事は人気イタリア料理店で私達コンビの料理の師匠であること以外は伝えていない。
理由?面白いからに決まってるじゃん?
え?トニオさんがハッチの料理の師匠だとは知っていたけど私の事は聞いていない?
あのさ、私はハッチの相棒だよ?下手な姉弟以上に姉弟のように育ってきたんだよ?
スタンド能力と戦いの事以外はハッチができることは私にも大抵の事が出来る。むしろ基礎が完全に出来ているだけ私の方が得意。ハッチの料理はイタリアン以外は小6レベルだから。
私は普段からお兄ちゃんと徐倫お姉ちゃんの分を作っているし、比企谷家で食べるときはイーハやマーチと一緒に作ってるからね?
京華「はーい!けーか、スージーの時に来たことあるー!朋子ちゃんと和解した時に初めて来たー!」
それは知ってる。
昨日、お姉ちゃんから語られたスージーのママと朋子ママのお話。その後にここに来たらしい。生後1年も経っていない私もいたらしいのだが、ハッチ達みたいな転生者じゃない私が当時の事を覚えているわけがないけど。
沙希「けーちゃん。何で手を見せるか教えてくれるかな?静・ジョースターが敢えて黙ってるっていうのが怪しいんだけど………」
京華「えーと………何だったっけ?忘れちゃった」
全員がそこで脱力する。
けーちゃん………そういうところはスージーのママらしって言うか……。
あと川……川………川中島さん。
あんた、さすがは徐倫お姉ちゃんの次に私達性悪コンビのストッパーと言うだけはあるね。
私の悪巧みなんてお見通しってワケか……。
まぁ、いつもみたいなしょうもない悪巧みじゃあ無いけどね。
静「まぁまぁ川中島さん。落ち着いて……」
ゴン!
沙希「誰だ川中島って」
静「え?ごめん間違えた。上杉さん」
ゴン!
沙希「あたしは越後の龍か!」
静「冗談だって。山本さん」
ゴン!
沙希「比企谷並にひねくれてるなアンタ!次は武田が来るかと思ったらまさかの勘助で来るとは思わなかったよ!どっちにしても下らないけど!」
静「ヘイ、ベイビー。人の頭をゴンゴンやるもんじゃあない」
沙希「だったら怒らせるな!あんたのその性格の被害者は空条先生以外に何人いるの?」
静「アンタは今まで食べたパンの枚数をいちいち覚えているのか?」
ゴン!
沙希「アンタはディオか!」
静「その転生とアンタの前世の弟子の転生の相棒ですけど何か?もう忘れちゃったの?コレだからウッカリツェペリ……略してウッペリさんは……」
ゴン!
沙希「誰がウッペリだ。バカじゃあないの?空条先生だったらオラオラが飛んでるからね?次に何かいったらサマーハプノ・サファイアでパウパウするからね?」
静「上等!ここはトラサルディ!低血糖だろうが糖尿病だろうがドンと来い!」
全力でウッペリさんをからかっている!
普段だったらやらないウッペリいじりも今なら出来る!
(静の勘違い。そこまで万能ではない。あくまでも食材の薬効を増幅させているだけなので、薬効以上の能力はパール・ジャムにはない)
トニオ『………打撲用のオマール海老のワイン蒸しは必要そうですね』
いろは『放っておいても構いません。いつも通りですし、自業自得なので………はい、トニオさん』
拳骨によってタンコブだらけなのにイーハ酷い!私はあのオマール海老のワイン蒸しが好物なのに!だから川崎をいじったのに!
トニオさんも私達のこのやりとりに馴れているのか、そうイーハに言われると、イーハの手を確かめ、そしてニッコリとイーハに微笑む。
トニオ『流石はいろはさんです。どこにも悪いところは見られませんね』
イーハのナイチンゲール・エメラルドは回復系のスタンドの中では唯一、病気を治す能力がある。
いろは『でも、わたしのナイチンゲールでは虫歯とかの一種の欠損は治せませんし、寝不足とかは治せませんけれど。何より、食べる楽しみはナイチンゲールにはありませんから。今日はお願いしますね?トニオさん』
トニオ『かしこまりました。今日は彼は?』
いろは『男子会で別行動です。最近は忙しくて腕が落ちてますねー』
トニオ『そうですか。しかし、それは仕方がありませんよ。本職なら問題ですが。それでは次の方に……』
トニオさんは次に手を見せたのはマーチ。
自信満々でトニオさんに手を見せる。
トニオ『小町さんも問題ないようですね。実に健康そのものです』
小町『波紋の戦士が病気を患ったら笑い話にもなりませんから♪』
トニオ『そうなんですか?しかし、ジョースターさんは………』
小町『ジョセフは波紋の修行を辞めてましたから』
マーチは恥ずかしそうに言う。
波紋の戦士が持病を持つのは恥だと言われている。
パパは………一度は歯が総入れ歯になったし、胆石を患ったし、白内障まで患った上に認知症まで発症していたらしいからね……。
私を拾ったことによって認知症は治ったみたいだけど。
パパの言い分を信じるならば、スージーのママと共に歳を取りたいから敢えて波紋の修行を辞めていたと言うけれど……。
普通に聞いたら美談だよ?でもさ、お兄ちゃんの件で台無しになってるんだよね?お兄ちゃんが生まれたお陰で生きていられるんだから私としては文句言えないけどさ。
あれ?そういえばパパって杜王町に来る前と後ではだいぶ元気になったって言うけど………まさかね?
次は私だ。
トニオ『流石ですね。あなた方の前では私は仕事が無くなってしまいますよ』
静『オマール海老のワイン蒸しはお願いします』
トニオ『残念ながら、もう打撲はありませんよ』
しまった。無意識に波紋で治してしまっていた。
トニオ『ですが、リクエストとして承りました。楽しみにしていて下さい』
ありがとー!だからトニオさん大好き!
次にならんだのが陽乃さんだ。
トニオ『………いつも健康そのもののあなたにしては珍しいですね?口内炎と舌の炎症……それに顔の皮膚が一部おかしいですね。胃も少し荒れているようです。それと、無理な飲み方をしたのですか?寝不足もあるようですよ?』
陽乃『あはははは………昨日ちょっと………』
昨日のエルメェスさんとの飲み比べと、ジョルノ兄さんのお仕置きが原因だね?間違いなく。
トニオ『あまり羽目を外して健康を害さないようにご自愛して下さいね?』
陽乃『了解です!トニオさん!』
陽乃さんはトニオさんに投げキッスをして席に着く。
ここで冗談でもトニオさんに抱きついてはいけない。そんな行動をすればトニオさんが怒り狂う。どのくらい怒り狂うかと言えば髪の毛をバカにされたお兄ちゃんくらいに怒り狂う。
トニオさんは衛生管理には非常にうるさい。入浴前の人間が調理人に下手に触れるのはタブーだと考えているのだ。
だから調理前のトニオさんに抱きつけば即この日は閉店になってしまう。
奥さんのヴェルジーナさんだってやらない。
まぁ、そのくせ動物を店に入れたりとか矛盾した行動をすることもあるけど。
次に雪ノ下。
トニオ『おや?あなたも波紋の戦士ですか?どこも悪いところはありませんね』
雪乃『波紋もそうですけれども、規則的な生活を心がけていますから』
トニオ『とても素晴らしい事です』
雪乃『とても素晴らしい特技ですね?』
トニオ『ありがとうございます。東洋の医学を学んだ成果ですよ』
トニオさんに誉められた雪ノ下。陽乃さんとのすれ違いざまにふふん♪と笑っていたのを私は見逃していない。
陽乃「くっ!」
まぁ、陽乃さんは自業自得という事で……。
トニオ『あなたは肩凝りが酷いようですね。後は……』
結衣「???」
トニオさんは私達全員が英語を喋ることが出来ると思っているのだろう。英会話が不完全な由比ヶ浜はトニオさんが何を言っているのかわからないようだ。
仕方なく私が通訳をする。
再来年の受験は大丈夫かなぁ……。
結衣「肩凝り?うーん……あたしの場合、慢性的だからなぁ……」
胸か!胸自慢か!(基本世界の静・ジョースターよりはスタイルが良い静だが、由比ヶ浜や陽乃には負ける。とはいえ、このメンツの中では川崎の次くらいには大きい方)
陽乃「ふふん♪」
雪乃&静&他「くっ!」
京華&留美「???」
小町「リサリサの時にはスタイル良かったんだけどなぁ……」
…………血筋だね。将来に期待!
と、トニオさんの料理屋とは思えない簡易的な健康診断が終わり、全員が昨日用意したオープン席に座る。
うん、少し寒いけど、今日は良い天気だ!
水を口に含む。
静「ぅんまぁぁぁぁぁぁい!」
相変わらず最初の自らしてうまい!
留美「なんて……なんて美味しい水!…冬のアルプス山脈を思い起こすような清らかで、透き通った味!それでいながら森の朝露のように優しく、ふんわりとしていて……こんな水、飲んだことがない……」
普段は口数が少ない留美にしては饒舌。気持ちはわかる。ただの水でここまで感動を与えてくれる!それがトラサルディ!
海老名「ウンウン♪涙が思わず出ちゃう……ね?…ってこの感覚……どこかで……」
ああ、海老名は経験済みだったっけ。
そう、水を飲んで涙が出てくる……これは……。
三浦「あんた……そういえば夕べはずっと起きてなかったっけ?ねぇジョジョ……まさかこれ………」
三浦も気が付いたようだ。
他にも何人かボタボタと涙を流し始める。
出てきた出てきた♪トニオさんの能力が♪
静「そ、これがパール・ジャムのオリジナル♪寝不足の人は涙が止まらなくなるよぉ♪」
( ゜∀ ゜)ニタァ
海老名「だって!夕べは筆が止まらなかったんだもん!ジョジョハチの良いのが浮かんだんだもん!」
ドバドバドバドバ!
寝不足組の中でも特に酷いのが海老名だった。
何人も泊まっている中でBL書いてたって…アンタ…。
静「由比ヶ浜ぁ♪モッツェネラチーズとトマトのサラダが出たら上着を脱いでおいた方が良いよ?体に悪いところがある人はこんな風に次々といろんな現象が出てくるから♪」
結衣「ええええええーーーー!何コレ!どういう事だし!」
雪乃「健康って……重要なのね」
しばらくトラサルディの臨時オープンテラスでは乙女達による阿鼻叫喚の叫び声がこだましていた。私はそれをBGMに美味しくオマール海老のワイン蒸しを楽しんでいたのであった。
( ゜∀ ゜)ニタァ
まる♪
←To be continued
女子会でした♪
敢えてパール・ジャムの事を語らない静の性悪!そこに痺れる!憧れる!
それでは次回もよろしくお願いいたします。