sideジョセフ・ジョースター
忍や忍の友人の協力を得てワシらは動く。
まず舌を巻いたのは………。
好雄「これが今のところ、伊集院家とSPW財団の同盟を快く思ってない人間のリストだぜ?」
早乙女好雄という忍の従姉夫婦の親友じゃった。
忍曰く、好雄の情報収集能力は財団の人間をもってしても裸足で逃げ出すレベルらしい。
なんでも高校時代から女性に関することならば彼にわからない事はない!……と言われる程じゃったそうで、驚くことにスリーサイズすらも即座に網羅しておったのじゃとか。それも短期間でじゃ!
そこまでの事なんぞワシじゃってハーミット・パープルを使っても無理じゃわい!
スタンド能力を超えるとは恐ろしい男じゃな!
もっとも、その好雄の目ですらかいくぐる事ができる者が一人だけおったようなのじゃが……。ある意味ではその女もただ者じゃあないのう。
忍はその好雄の情報網に目を付けたらしい。
忍「あちしの思った通りね。あの女の子の事に関する情収集能力を他の事に目を向けたら……とは前々から思っていたのよ。好雄、あんたは国家機関も顔負けの情報収集能力よ?」
そこで忍は思わずといった感じでボソッと漏らす。
忍「匠も好雄のような奴だったら……まだ生きてここにいたかも知れなかったのに」
似たような者が周囲におったようじゃな。
好雄「趣味じゃ無いことを調べるのは中々苦痛だったけどな。今回ばかりは色々とヤバそうだったから本気を出したぜ?優美の為でもあるしよ」
優美とは好雄の妹らしい。聞いている限りじゃと、なんでも好雄は八幡に匹敵するレベルのシスコンなのじゃとか。
メイ「私のハッキング能力の協力があってこそだと言うのも忘れるんじゃないのだ!早乙女!」
レイ「メイ。口調が素になっているぞ」
メイ「このメンバーで集まった時くらいは気持ちが若くなるのだ!お姉様!」
忘れてはいかんのが伊集院家の次女、伊集院メイじゃ。
康一「こういう性格だったんだね……メイさん。普段は一人前のレディなのに」
レイ「うむ。今回は家の名で動いていないからなのだ」
まるでシュトロハイムのようじゃな。
そのメイなのじゃが、電脳の申し子というように、メイは方々の情報をハッキングし、好雄にその情報を渡す。好雄はそれを元に気になった部分を洗い流し、さらにメイを使って色々と探ったようじゃ。
なるほど………他の者を使い、そして独自の感性で気になった部分をピックアップし、情報をものにする。
セオリーを駆使するメイと、独自のやり方を作り、既存の物とは別の切り口ができる好雄……。
好雄のやり方は万人向けではないが、だからこそ発揮強みがある。
好雄「公人、詩織ちゃん、伊集院。こいつらがSPW財団と伊集院の同盟を崩して自分の息のかかった企業を潜り込ませようとしている政治家だぜ」
公人「企業そのものは悪い企業じゃないが……時期が悪すぎる」
詩織「政治家としては狙いどころなのだと思うわ。全部が全部じゃないけど」
ジョセフ「で、じゃ。そやつらの中で、ワシらの力が必要なところは?つまり……配慮が必要のないところとも言うべきじゃが」
公人「全てを潰す……とは言わないんですね?ジョースターさん」
なめるんじゃあないわ。機を見て動かぬようでは政治家としては三流じゃ。むしろ感心するまであるわい。
政治家になればどんなにクリーンにやろうと心掛けておったとしてもそうはいかん。派閥や上下関係、そういうしがらみがついて回り、つけたくなくとも叩けば出てくる埃が必ず付いてしまう。
ワシら企業人じゃってそうじゃからな。
ジョセフ「ワシらが潰すのは民衆を食い物にしておる存在じゃ。それら以外は押さえ込むくらいでええ。好雄の事じゃから、その判別はできておろう?」
好雄「俺は政治家や企業人じゃないから、詳しいことはわからないけど、伊集院やSPW財団を良く思っていなさそうなところはピックアップしておいたぜ?後は裏で非合法な連中を雇っているヤクザとかな。まじで危ない橋を渡った気分だぜ」
そこまで調べ尽くしてあるなら上出来じゃ。こんな存在が野に紛れておるとはのう。
公人「政治家の方は皐月さんを通じて政界の方へ働きかけて見ようと思う」
レイ「企業の方は伊集院の方で圧力をかけてみよう。ヤクザの方は上の方はどうにでもなるが……」
茜「そこは僕達の出番だね。ほら、あなたも」
純一郎「そうだな。忍……手を貸してほしい」
忍「もちろんよ。承太郎さん。あんたの力を借りるわよ?康一や賢、唯から聞いているわ。最強のスタンド使いの空条承太郎の話はね」
忍はそう言って承太郎に触れ、そして右手で顔に触れると……驚くことに承太郎に変身しおった!いや、他人に化けるスタンドは何度か面識があるから驚かんが、驚いたところはそこじゃあない!
承太郎「これは驚いた……スター・プラチナまで出せるなんてな……」
忍「これが最強のスタンド……スター・プラチナね。スター・プラチナ・ザ・ワールド!」
そう言うと、忍が変身した承太郎はほんの少しだけ場所が変わる。
忍「中々難しいわね。ほんの少ししか時間を止めることが出来なかったわ。時間にして1秒といったところかしら?」
承太郎「初めての時間停止で1秒だけでも止めることが出来れば上出来だがな。大したものだ……だが、時を止めることが出来るだけで最強というわけじゃあない」
承太郎が最強とうたわれたり、DIOや八幡が強いスタンド使いとして認識されておるのは時を止める能力が強力ということだけじゃあない。
承太郎達の機転や観察眼が物を言うのじゃ。
スタンド使いにおいての最強というのは能力の強弱や基本スペックの強弱なんかじゃない。すべては機転と相性なんじゃ。
事実、八幡は時を止める力は承太郎よりも上じゃが、未だに承太郎に勝てている訳じゃあないし、ワシに負ける事も多いからな。
忍「だーいじょうぶよ。あちしだって伊達に何度も修羅場を潜っている訳じゃないから」
なんじゃと?
純一郎「むしろ忍はスタンド無しでスタンド使いを倒したこともあります。ジョースターさんの言う機転は充分にあると思いますよ」
その変身能力も一種のスタンド能力のようなものじゃがな。しかし、奥の深い男じゃわい。
財団にスカウトしたい男じゃな。もっとも、このカフェが失われるのは惜しいから迷うところでもあるが…。
忍「純。賢や唯と連絡を取って頂戴。それとじじい。紐緒さんから連絡が来たわよ。矢の解析と、それを使った応用の装備品を開発したようだから、見に来て欲しいって言っていたわ」
この短期間でか!
財団の開発部が目を付けただけはあるわい!早速見に行かねばならんな!
そうと決まれば
ジョセフ「ではそれぞれ頼んじゃぞ!良からぬ事を考えておる奴等を止めるのじゃ!」
忍「うるさいわよクソジジイ!なんであんたが仕切ってるのよ!」
うーむ……忍くんの風当たりが強いのう。こうまで人脈がある人物じゃから敵に回したくないんじゃが……どうにかならんかのぅ。
キングクリムゾン!
一流科学開発室
地方の会社であるというのに、SPW財団研究施設と引けを取らぬこの会社に紐緒結奈は所属している。
なんでも伊集院やSPW財団のような完成された思想を持たず、自分のやりたい分野で好きなだけ研究、開発が出来る研究施設を希望してワシらのスカウトを蹴ったとの事じゃ。
かつては世界征服を企んでいたということじゃから、その名残かも知れんな。生物学、ロボット工学、電脳学、医学薬学などとすべてにおいて精通しておるというのじゃから驚きじゃ。その隠しておる右目はサイボーグじゃあ無いよな?
紐緒「待っていたわ。ジョセフ・ジョースター。これがこの矢の解析結果よ。ポルナレフレポートも大いに役に立ったわ。高坂君も協力、感謝するわ」
賢「ああ……と言っても、採血やスタンド……ストーム・ブリンガーを出したりしたくらいだけどな」
紐緒にはポルナレフのレポートも渡しており、その上での矢の解析を改めて研究したようじゃ。
ストーム・ブリンガーとは……体力を吸い取りそうな名前じゃわい。確か格ゲーの軍人(KOFのハイデルン)がやる必殺技にそういうのがあるからのう。
紐緒「矢の一部を採取し、それを解析した結果がこれよ」
紐緒がそのレポートを大画面のモニターに映し出す。
紐緒「こっちは普通の隕石から採取された解析結果よ。いくつかの隕石を解析した物だけど……それと、高坂君の遺伝子情報ね」
矢と隕石の成分表を見たワシらは驚く。数値的な物や付着している物質を顕微鏡等で拡大した物には……。
ジョセフ「まだあると言うのか……スタンドを生み出す矢と同じ成分の隕石が……」
矢の解析結果といくつかの隕石のデータ、そして高坂の遺伝子情報。
そのいくつかのデータには共通するパターンが存在した。これこそが……ポルナレフレポートに示されていた矢の宇宙ウイルス。
紐緒「そう言うことね。広大な宇宙から飛来する隕石。ディアボロという男が見つけた矢の隕石だけがスタンドを生み出すウイルスを付着させていた……だなんて、そんな事はあり得ないとまず私は考えたわ。中には彗星のように外宇宙を何千年も飛び回って降り注いだ隕石もあるのよね。他にも存在すると考えるべきじゃ無いかしら?」
確かにそうじゃ。ブラッディ・スタンドやウルフス…そんなものが存在しておる以上、紐緒と同じように考えなければいけなかったのじゃな……。
紐緒「こっちとしては有りがたかったのだけれど」
ジョセフ「どう言うことじゃ?まさかお前さん、スタンド使いを量産する計画でも立てたのかのう?」
この娘、忍から聞いた限りじゃとDIOのような発想を持ってもおかしくない。もしそうなのならば……
紐緒「いいえ。スタンド能力と言うものは超能力なのでしょう?しかも一人一人の能力が違う博打のようなもの。それも能力者になるか、死ぬかの二者択一の博打。私達科学者がもっとも嫌う分野よ。能力者になる原因は科学的に解明させる事は出来たけれども、その後は正に博打……私が世界征服を企んでいても、こんなものに頼ることは無いわ。ただの殺人ウィルスだったのならば考えるけれど」
なるほど。確かにスタンド能力は非科学そのものじゃからな。そういうのを嫌う人間で助かったわい。
ジョセフ「じゃとしたら、その矢や同じ材質の隕石を集めてどうするつもりじゃ?」
紐緒「これを作ったのよ」
紐緒が取り出したのは……ゴーグルとグローブ、それにブーツやパット?
紐緒「矢のウイルスを取りだし、増幅させ、更にウイルスを改造。その上でその改造ウイルスを鉄鉱石に付着させ、ゴーグルやその他に取り付けた物……それがこの新装備品よ。藤崎くん。あなたは本来はスタンド使いでは無いわよね?」
忍「ええ。変身しなければ使えないわ」
紐緒「ならば高坂君。ストーム・ブリンガーを展開しなさい」
賢「あ、ああ。ストーム・ブリンガー」
賢がスタンドを展開する。それを見た紐緒がゴーグルを装着して見る。
紐緒「出したわね?藤崎くん。あなたは早坂君のスタンドが見えているかしら?」
忍「いいえ?変身してないもの。見える訳が無いじゃない」
当然じゃな。
紐緒「では藤崎くん。変身しないでこのゴーグルを装着して貰えるかしら?」
忍「変なことにはならないでしょうね?」
紐緒「安心して。このゴーグルの改造ウイルスは血に反応したら効果を失うように作ったから、万が一これで傷付いてもスタンド使いになることは無いわ」
忍「そう。ならば……付けたわよ」
忍くんはゴーグルを装着して紐緒に向き直る。そして、賢の方を見ると……。
忍「なっ!あちし、今はスタンド使いに変身していないのに賢のストーム・ブリンガーが見えるわ!どうなってるのよ!」
慌てて忍がゴーグルを外す……
忍「あら?見えなくなったわ……そう。これ、スタンド使いじゃなくてもスタンドを見ることが出来るゴーグルなのね」
なんと!
スタンド使いじゃあ無くてもスタンドを見ることが出来るとな!なんて画期的な物を作るのじゃ!
紐緒「今度はこっちのグローブよ。ジョースターさん。これをはめて、グローブでストーム・ブリンガーを触ってみて頂戴」
いや……まさか………しかし、ゴーグルの能力があれだったのじゃ……グローブの方は………。
ワシは言われた通りにグローブをはめ、敢えてハーミット・パープルを展開せずにストーム・ブリンガーに触れる。すると………
ジョセフ「やはりか……スタンドに触れる事が出来る。単純なようでいてこの機能は画期的じゃ……スタンド使いでしかスタンドを見ることが出来なければ、触れる事も出来ないルールを根底から覆す発明品じゃ……」
天才と聞いておったが、ここまでとは……。
紐緒「このプロトタイプはSPW財団に提供するわ。もっとも、研究の資料やデータに関してはわが社の開発品として秘匿させて貰うけど。SPW財団にとっては喉から手が出る逸品でしょう?」
ぐぬぬ………確かにそうじゃ。スタンド使いと事を構える事が多いSPW財団には、紐緒が言うとおり喉から手が出る程に欲しい一品じゃ。
つまり、この嬢ちゃんはSPW財団と嬢ちゃんの会社と専属契約を結べと言っておる訳か………
ジョセフ「契約については承太郎や仗助と話してくれんか?ワシは引退をした身なのでのう」
是非とも欲しいものであるが、今のワシには契約の権限はない。あるのは承太郎や仗助くらいのものじゃ。
もっとも、これの価値は開発した紐緒が考えておる以上に非常に価値あるものじゃ。
これがかのエジプトの時にあったならば、どれだけの犠牲を押さえることが出来たか……。
紐緒結奈……恐ろしい天才じゃな。
←To be continued
はい、今回はここまでです。
今回のメインはユニコーン戦でも活躍したゴーグルとグローブです。
当時のプロトタイプでは装着した場所以外では触れる事が出来ない仕様でしたが、現行のモデルでは改良に改良を重ねており、グローブ1つで全身を賄えるようになっております。
また、何故第2章で忍が承太郎に変身できたのかの捕捉にもなっております。忍は他にも康一に変身することが可能です。
それでは次回もよろしくお願いいたします。