やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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空条ホリィ・ジョースターは東方朋子と出会う

side空条ホリィ・ジョースター

カフェ・ドゥ・マゴ

 

仗助「お袋に会いたい?」

 

ホリィ「だめ?仗助……」

 

仗助「………………」

 

仗助はすごく辛そうな顔をする。

 

仗助「俺のお袋は……ジジイの事を……ジョセフ・ジョースターの事をまだ愛してるんすよ……普段は気が強いお袋ッスけど、時々思い出しては泣くんッスよ……俺はそれを見てられなくて……。承太郎さんにも言ったことッスけど……。じいちゃんが死んだばかりッスし、そっとしておいてくんねーッスか?ホリ……姉貴」

 

どうして?どうして仗助がそんなに辛そうな顔をしなければならないの?

悪いのはパパなのに……なんで仗助が私達に気を使っているの?

私達は姉弟でしょ?家族の私達に遠慮なんてすることないのに。

 

仗助「俺とお袋は……これまでずっと……じいちゃんも含めて三人でやって来たんッス。それを今更蒸し返されても……正直迷惑なんッスよ」

 

これは承太郎からも聞いたわ。でも、朋子さんがまだパパを愛してるっていうなら、パパに会えば良いじゃない!ママだって、承太郎から聞いた仗助の人柄を聞いて、朋子さんの事をきっと認めているわ!

 

仗助「姉貴と会えたことは正直嬉しいッスけど…もう俺達とは関わらねぇでくれねぇッスか?俺は今のままでも充分幸せなんッスよ……泣くお袋の姿なんて……見たくねぇッス。いつかはお袋も、ジジイの事を忘れると思うッスから」

 

そんな辛そうな顔でなんて悲しいことを言うの?仗助……。

そんなわけない!だって………

 

ホリィ「承太郎から聞いたわ。朋子さんは……パパの事を今でも凄く愛していて、とても会いたがっていたって。朋子さんがパパの事を忘れるなんて……あり得ないのよ……」

 

仗助「ハァ!?承太郎さんがお袋と会ったぁ!?聞いてないッスよ!?そんな事!」

 

あら?朋子さん、話さなかったのかしら?

 

ホリィ「ええ。確かに聞いたわ。承太郎は朋子さんに自分の素性を話したって言ってたし……」

 

仗助「知らなかったッス!お袋が承太郎さんに会っていたなんて………」

 

多分、気を使って話さなかったのね?

朋子さんは………。

 

ホリィ「ねぇ仗助。どうなるかわからないけど、朋子さんのことはこのままで良いとは思えない。一度パパに会ってもらうべきよ」

 

仗助「……………」

 

仗助は凄く悩む。

家族のことは一生懸命……。この子、体格とかだけじゃなくて、家族の事を一番に考えるこの気質は確かにジョースター家の血統ね。

朋子さんの事を凄く大切にしているんだわ。

 

康一「ねぇ、仗助君。他人の僕が口出しする問題じゃあないってわかってるんだけど、敢えて言わせて?ジョースターさんと仗助君のお母さんは、一度会った方が良いと思うんだ」

 

億泰「やっぱそう思うよなぁ?ジョースターさんのあの様子だとよぉ、いつ大変な事になるかわからねぇしよぉ。そうなっちまった後に仗助が後悔するのは見ているのもつれぇしよぉ」

 

仗助「…………まさか億泰から説教されるなんてなぁ」

 

ホリィ「ねぇ仗助?最終的に決めるのは本人なの。一回だけで良いの。パパにも、ママにも、朋子さんも…一回話し合う機会を与えてくれない?想い合う家族がこのままバラバラのままなのは……承太郎だけで充分よ」

 

仗助「承太郎さんが?」

 

億泰「どーゆーことッスか?仗助の姉ちゃん」

 

康一「承太郎さんに何かあったんですか?」

 

あ、口を滑らせちゃったわ。

でも、良い機会かも知れないわね。

 

貞夫「実は承太郎はな………」

 

…………………

 

仗助「そんなの……あるかよ……俺達を助ける為に病気の娘の側にいられなかったなんてよぉ……知らなかったぜ。承太郎さんはそんな事、言わなかったしよぉ!」

 

億泰「済まねぇ……承太郎さん……俺達の為に……家庭を捨てることになるなんてよぉ!」

 

康一「承太郎さんらしいよねぇ……僕達は……一生承太郎さんに頭が上がらないよ……」

 

承太郎の家庭の事を聞き、仗助達はギリギリと歯を食いしばる。

億泰君は涙まで流していたわ。情の強い人よね。

 

ホリィ「想い合いながら……別れなければならないなんて辛すぎるわ……だから、朋子さんとママ…パパにはすれ違ったままでいて欲しくないの。パパも、きっと朋子さんのことは忘れられないと思うから……」

 

仗助「…………俺はお袋の為を想ってジジイとお袋を会わせないようにしていたんッスけどね。余計なことだったんッスか?」

 

ホリィ「余計な事とは言わないわ。仗助は仗助なりに朋子さんを想ってやってたんだから。ただ、本人の気持ちも考えて欲しいの。パパがこの町に来ていた…その事実を知らないままなんて……お互いに想い合っているって知らないまま終わるなんて……残酷でしょ?」

 

仗助「………姉貴の言うとおりかも知れねーッスね。でも、お袋がどういうかは……」

 

ホリィ「大丈夫!その為にお姉ちゃんが来たんだから!」

 

私は立ち上がってドンっと胸を叩く。

息子相手には言えない事でも、私が相手なら話せるかも知れないわ!

 

仗助「なんかペースを良いように握られたッスね。承太郎さんがタフなのも、わかる気がするッスよ。姉貴には敵わねぇッス」

 

康一「では僕達はこれで……上手くいくといいですね?ホリィさん」

 

億泰「なんだかよぉ……理想の母っていうの?そういうのが詰め込まれたって人だよなぁ……仗助の姉ちゃんって。応援してるぜ?仗助。上手く行くことをよぉ」

 

億泰君と康一君は私達に挨拶をして、帰って行ったわ。さぁ、私達も行きましょう。東方家へ!

 

 

side東方朋子(現在)

 

朋子「ホント、ホリィ姉さんの行動力には度肝を抜かれたわ。まぁ、あたしは仗助が事件の事を隠していたことにも腹が立ったけどね。気を遣いすぎなのよ、あんたは」

 

雪乃「その後どうなったか……なんてのは、今の現状を見れば明らかなのですよね?」

 

朋子「そうね。もっとも、仗助と一緒であたしも度肝を抜かされたけどね」

 

ホント、あれは卑怯だわ。

ホリィ姉さんにもジョースターの血が流れていると痛感してしまう。

だって………

 

 

side東方朋子(回想)

 

プルルルルル!プルルルルル!

 

朋子「はいはーい!」

 

仕事から帰って来て、部屋着に着替えていた私だったけれど、その時に電話が鳴ったの。

相手は………携帯電話?

誰かしら……。私の知り合いには携帯を持っている人なんていないし……。

まぁ、出てみない事にはわからないわね。

 

朋子「はい、東方です」

 

仗助『あ、お袋か?俺だけどよぉ』

 

なんだ。仗助だったのね?また誰かから携帯電話を借りたのかしら。まったく……公衆電話代をケチってまたこんなことを……相変わらずセコい奴よね?わが息子ながら。

 

朋子「それで?どうしたのよ。また夕飯はいらないとかそういう電話?別に構わないけど、あんまり康一君の家とかに迷惑かけちゃダメよ?」

 

大体仗助がうちに電話をかけてくるときなんてこういう電話よね?どうしようかしら。もうかめゆうで夕飯のおかずを買ってきちゃったんだけど………予定が狂うじゃないのよ!仗助のアホ!アイツのジュース、また飲んでやろうかしら!

 

仗助『あ、いや………そのぉ……お客さんが来るから、お茶とお菓子を用意しておいて欲しいんだけど』

 

朋子「へぇ?珍しいじゃない。あんたが億泰君や康一君を家に呼んでくるなんて」

 

大抵はどっちかの家に行くのに、珍しい事もあるものねぇ。いつもご馳走になってるみたいだし、たまにはその分を返さないといけないわね。

 

仗助『いや、あいつらじゃあ無くてよぉ……その……』

 

朋子「あんた………まさかまたキレてケンカでもしたの!?また頭の事を言われてキレたんでしょ!警察沙汰だけは止めてっていつも言ってたのに……相手の家族がおみえになるのね?あんたってホント……」

 

この歯切れの悪さは間違いないわ。最近は大人しいから油断してたわ。アイツがキレやすいってこと。いつぞやに大怪我して帰って来て以来はまったくそう言うことが無かったのに………。

 

仗助『そうじゃあねぇって!キレてねぇよ!キレかけたけどよぉ!とにかくお客さんが来るから準備しておいてくれよ!………ちょっとお袋には迷惑な話かも知れねぇけどよぉ……』

 

ハァ!?どういうことなのよ!仗助!?

ケンカじゃないけど迷惑がかかるぅ!?何をやらかしたのよ!仗助!

 

朋子「ああもぅ!わかったから早く帰って来なさい!ひどい内容だったらあたしもキレるからね!?」

 

ガチャン!

なんなのよ仗助の奴ぅ!わけのわからない電話を寄越してきてぇ!

あたしはプリプリ怒りながら、うちにあるお客さん用のカップを用意して、とっておきのコーヒーを準備して仗助の帰りを待つ。

 

仗助「た、ただいまぁ………」

 

帰って来たわね……そのお客さんって奴の顔を拝ませてもらおうじゃあないのよ………って……ええっ!

 

朋子「ちょっ………その人………空条貞夫!?あのジャズミュージシャンのぉ!?あ、あんたこんな大物芸能人に何したのよ!」

 

まさか空条貞夫に迷惑をかけていたなんて!あたし、大ファンなのになんて事を!冗談でしょ!?

 

朋子「こ、この度はすみません!このバカは何をしでかしたんですか!?い、いえ………す、すみません!と、とにかく上がって下さい!」

 

玄関先では失礼だわ!とにかく上がって頂かないと!

 

貞夫「ハハハハ!君は相当ロックな人みたいだね。開口一番で謝罪がとんでくるとは思わなかった。安心してください。仗助君は私に何もしていませんよ。今日は家内と共に彼に用があって来たんです。さぁ、ホリィ」

 

ホリィ「わぁ!あなたが仗助のお母さんね!初めまして、空条貞夫の妻、ホリィです!では早速上がらせてもらうわね?あ、仗助君のおじいさんの仏壇はどこですか?先にお参りしておかないと」

 

パワフルな人ね……空条貞夫さんの奥さんは……。

あれ?空条?最近どこかで聞いたことがあるような…気のせい?

お父さんと空条貞夫さんは知り合いだったのかしら…。聞いたことが無いけど……。

そうしている内にお父さんの部屋に到着したわ。空条貞夫さん夫婦は仏壇に手を合わせる。

 

ホリィ「東方良平さん。初めてお会いします。空条ホリィ・ジョースターです」

 

え……この人、今……ジョースターって……。

 

ホリィ「弟の仗助をいつも見守って下さってありがとうございます。出来れば生きている時にお会いしたかったです」

 

弟の………仗助?

じゃあ……この人は……ジョセフの………。

お、思い出したわ!お父さんが亡くなったばかりの時にジョセフの孫を名乗る帽子の人を!、確か……空条承太郎って………。

あの人が空条貞夫の息子ぉ!

そしてこの人が……仗助のお姉さんで……ジョセフの娘さん………。

どうして今になってジョセフの娘が……

 

朋子「ジョ、ジョセフの………」

 

バサァ。

ホリィさんは立ち上がり、私に抱き付いてくる。

 

ホリィ「朋子さん。そんなに緊張しなくても良いわ。私はただカワイイ弟に会いに来たの。そして仗助を育ててくれたあなたに、カワイイ弟が大きくなるまで育ててくれてありがとうって………」

 

朋子「……………ウウ………」

 

気付くべきだったわ。あのジョセフの孫が来たときに。

ジョセフの孫が仗助に会いに来たって事は、あたし達のことがジョースター家にバレたってこと。

だとしたらジョースター家では騒動があったはず…。あたしは……このホリィさんに恨み節を言われても仕方がない……それを……こんな風に言ってくれるなんて…。

 

ホリィ「辛かったね?朋子ちゃん。でも、朋子ちゃんは悪くないの……。だって真剣にパパを愛してくれたんだよね?仗助を見ていればわかるわ。この子は優しい子だもの。きっと朋子ちゃんが愛を持って育ててくれたんだよね?」

 

朋子「うううう………あああああ!」

 

敵わないな………この人には。どれだけこの人は愛に溢れてるの?会ってわずかだけどわかる。この人の器の大きさには敵わない……。

 

ホリィ「思いっきり泣いて良いのよ?朋子ちゃん。私は朋子ちゃんの味方だから………。吐き出そうよ。朋子ちゃん」

 

朋子「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 

仗助「お袋………」

 

ホリィ「あなた。仗助。ちょっと外してくれる?今は朋子ちゃんを……女として泣かせてあげて……」

 

仗助「ああ……わかったッス……姉貴」

 

貞夫「行こう……仗助君」

 

あたしは……久しぶりに……女として泣いた。

 

←To be continued




ホリィパワーはすごいです。
こんな母に、凄く憧れます。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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