side東方仗助
仗助「俺と姉貴の出会い………ねぇ」
俺にとっては本当に突然の出会いだった。
承太郎さんやジジイの時も突然だったけどよぉ、姉貴との出会いも本当に突然だったよな。
いや、そもそも考えもしなかったよな。
承太郎さんはジジイの……ジョセフ・ジョースターの孫だ。つまりは俺の年上の甥っ子にあたる。
そう、甥っ子だ。つまりは、ジジイと承太郎さんの間には、もう一人………俺の姉にあたる人がいるっつう事をよぉ、考えなかったんだよな?そんな当たり前の事を。
仗助「マジで考えてなかったぜ。いや、会うことなんてぜってぇねぇって思ってたんだよ」
ホリィ「そんな………!仗助、酷いわ!」
仗助「仕方ねぇじゃあねぇかよ。まさかその後もジョースター家と関わることがあるなんて考えもしなかったんだからよ」
あの頃の俺の中では、じじいと俺の関係はあの港の別れで終わった関係だと思っていた。実際には承太郎さんとは何度も会うようになってたけどよ。それが突然、崩されたんだ。
この親子ほども年の離れた姉が現れた事でな。
side空条・ホリィ・ジョースター(1999年)
アメリカ…ニューヨーク
ジョースター邸
貞夫「お、お義母さん!落ち着いて下さい!」
スージー「貞夫!これが落ち着いていられますか!信じられないわ!63にもなって不倫をするなんて!」
ママがカンカンになってパパに怒鳴り付けてるわ。
パパももう79歳。ガッシリした体で歳のわりには若々しかったパパの体もあちこちに悪いところが見付かってきて、いつどうにかなっても不思議じゃない。
そんな事からパパやママは遺産の整理を始めようということになって、色々と調べ始めたんだけども、その時になって初めてわかったの。
16年前にしたパパの浮気。
一時的に頻繁にパパが日本に来るようになっていたから承太郎に会いに来てくれていたと思っていたのだけれど、これが理由だったんだ。
承太郎「東方仗助…杜王町の東方朋子との間に産まれたジジイの子供か……やれやれだ。良かったなジジイ。元気な男の子だそうだぜ?」
承太郎が隠し撮りだと思われる写真をパパに見せる。
ジョセフ「間違いじゃあ……無いんじゃな?」
承太郎「これを見ろよ。バッチリ俺達と同じ血を引いているぜ?こいつはな」
もう一枚の写真を承太郎が出す。
そこに写っているのはリーゼントの髪の男の子。その男の子の首筋の写真。パパ、私、承太郎、徐倫にあるジョースターの血を引く人間に受け継がれる星形の痣がくっきりと写っていたの。
ホリィ(この子が私の弟………)
パパの浮気は良くない。ママを裏切ったんだから。
でも、私は孫の徐倫が生まれてきた時と同じように嬉しかった。
昔から兄弟がほしかった。でも、私は一人っ子だった。
その憧れていた兄弟がいた……。パパの浮気相手の子供だったけど……母親は違うけど、間違いなく私の弟が。
承太郎「………ったく。生涯妻しか愛さないとか聖人のような事を抜かしていたクセしやがって……」
スージー「結婚60年目にして怒りの頂点よ!ジョセフ!こうなったら離婚よ!離婚!」
ママと承太郎が凄く怒ってる。だけど私は……
ホリィ「カワイイ………」
承太郎「やれやれだ。こんな今時流行らない、俺が学生だった頃で絶滅したリーゼント頭をしたクソガキのどこがカワイイっていうのか。お袋の感性はわからないな」
スージー「相変わらずマイペースな子ね?もうじき50にもなると言うのに………」
ホリィ「だってカワイイじゃない。私、憧れてたのよ?姉弟ってものに……ママったら、いくら私が弟や妹が欲しいって言っても、パパが忙しいからって作ってくれなかったし……」
私はもう一度、東方仗助君の写真を見る。
ホリィ「ホントにカワイイ……まるで高校生の時の承太郎のような子だわ……会いたいなぁ……」
そして思いっきり抱き締めてあげたい。
スージー「はぁ………ホリィ。あなたには敵わないわね?すっかり毒気を抜かれてしまったわ。他にいないでしょうね?ジョセフ?」
ジョセフ「い、いない。信じてくれんか?スージー、承太郎……」
承太郎「やれやれだ。今回だけだぞ?許すのは……お袋に感謝するんだな。まったく……不倫はするわボケは出てくるわ……おまけに若いときは女装したって聞いたし……面倒見切れないな。このジジイは……」
でも、ママと承太郎の激しい怒りは収まったみたい。だったら、姉として一度会いたいわよね?
ホリィ「ねぇパパ、ママ、承太郎。私、一度この仗助君に会いに行きたいんだけど……ダメかなぁ………」
承太郎「………どうやら簡単にはいかないみたいだ。ジジイのスタンドが念写したこの写真。どうにもキナ臭いみたいだ」
パパが写した仗助君の写真。だけど、それには変な男のような顔が写り込んでいる物があった。
承太郎「………まずは俺が仗助のところへ行く。何か事件が起こる……そんな気がしてならない。おふくろが巻き込まれたら、命が危ないからな……」
ホリィ「でも承太郎……徐倫が最近、熱を出して大変だって……」
承太郎「そうしたいところだが、もしかしたらスタンド使いが関わっているかも知れない。ポルナレフとも最近は連絡が取れないし、何よりもこっちも家族の事だ。放っておくわけにも行かない」
そう言って承太郎は電話を片手に部屋を出る。
早速例の写真の事で調査を始めるつもりなんだわ。
ホリィ「承太郎……」
承太郎はこのままあの子と別れるつもりなのね。自分の仕事に巻き込まない為に……。
承太郎が決めたことだから私が口をはさむことじゃないけれど……。もしかしたら2度と徐倫と会えなくなるかもと思うと少し残念………。寂しいなぁ……。
貞夫「ホリィ………泣きたいなら、泣いても良いんだぞ?」
本当は泣きたいけど………我慢我慢!
ホリィ「ううん。仗助って言う新しい家族も増えるんだから♪徐倫にだってもう会えない訳じゃないんだし♪ポジシブに考えないと♪」
本当は凄く悲しい。
だけど……それを表に出したら承太郎は辛そうな顔をする。ぶっきらぼうな子だけど、承太郎は本当は優しい子だから……。
スージー「ホリィ………あなたは本当に……強い子ねぇ……でも、私達の前では強がらなくても良いのよ?どんなに大きくなっても……あなたは私の娘なんだから。いつでも甘えて良いの……」
ママ……。
ホリィ「ママ………ママァ!」
私はママに抱きついて泣く。
でも、これは私の個人的な涙だけじゃない。不器用な息子、承太郎の代わりに流している涙よ。
承太郎……スージーのママがいつまでも私のママであるように、私はいつまでも承太郎のママなのよ…。
泣けないあなたの代わりに……ママが泣いてあげる。そして……笑顔であなたを迎えてあげるから……。
キングクリムゾン!
ホリィ「えぇー!パパまで杜王町にぃー!」
あれからしばらく経って、最近買った私の携帯に国際電話がかかってきたの。ママからだったわ。
その内容がパパも承太郎を追って、仗助のいる杜王町に向かってしまったという内容だったの。
スージー「そうなのよ……財団の経費まで使っちゃってあの人は……もぅ!」
もうパパったら酷いわ!私には東京からでないように命令してきたクセに、自分は杜王町に行くなんて!それも船で!
スージー「でも、ただ仗助さんに会いに行ったわけでは無いそうよ?」
ホリィ「どういう事?ママ」
スージー「杜王町は今……大変みたいなの。仗助さんのおじいさまが………お亡くなりになったそうよ。それも、ジョセフ達と同じスタンド使いに殺されて……」
ホリィ「そ、そんな……仗助………」
まだ見ぬ弟、仗助が………。
今すぐに仗助のところに駆けつけてあげたい!おじいちゃんを失った仗助を慰めてあげたい!
ホリィ「ママ!私も杜王町へ行くわ!」
スージー「ダメよホリィ!行ってはダメ!ジョセフが言うには今の杜王町はとても危険よ!仗助さんには承太郎が付いてるわ!ジョセフはそれを手助けに行ったのよ!大丈夫。ジョセフと承太郎を信じるのよ。いつだってあの二人は難局を乗り越えて来たわ。今回もきっと……あの二人はやってくれる。そうでしょ?ホリィ。信じなさい。自分の父親と息子を。あの二人は……必ず仗助さんを助けてくれるわ……あなたの弟を、心も体も助けてくれる」
………そうよね。パパも承太郎も、私のヒーローだもの。きっと仗助を……。私の弟を助けてくれる……信じてるわ。二人とも。
だから仗助………負けないで……。元気な姿で……会いましょう?
数ヶ月………千葉
ホリィ「もう!結局会わせてくれなかったんだから!」
貞夫「まぁまぁホリィ。色々と大変だったみたいだし。飛行機で行けばニューヨークには先に着くから、お義父さんと承太郎を迎えに行こうじゃあないか」
私は結局仗助に会えないまま、パパ達が杜王町を去ったという連絡を受けて、ニューヨークへ先回りする予定で成田へと向かったわ。
早く羽田が国際線にならないかしら………。あら?
私は急に何かを感じて振り向く。そこには妊婦の夫婦が歩いていた。
八幡父「もうじきだな。この子が産まれるのも」
八幡母「ええ。元気な子が産まれてくると良いわね」
………何かしら。何の変哲もないご夫婦なのに……何でこんなに惹かれるのかしら……。まるで承太郎やパパに感じるものをあのご夫婦から感じる……。
八幡母「あの………何か?」
ホリィ「い、いえ。ごめんなさい。もうすぐ予定日ですか?」
八幡母「はい。8月予定なんですよ」
ホリィ「子供は宝です。もう可愛くて可愛くて仕方なくなりますよ?元気な赤ちゃんが産まれれば良いですね?」
八幡父「ありがとうございます。そうですよね?子供は宝物ですよね?もう目一杯可愛がりますよ!」
良いお父さんになりそうな方です。よっぽど生まれてくる子供が楽しみなんだわ。
ホリィ「ええ。私にも息子がいるんです。ちょっと不器用で変わり者の息子ですけど……。それでも可愛くて仕方がないんですよ。どんなことがあっても、子供に代わる宝物はありません」
八幡父「そうなんですか!そうですよね?子供に代わる宝物なんて無いですよね?私は絶対にこの子を守り抜きますよ。何があっても……」
八幡母「もうずっとこんな感じなんですよ?恥ずかしくて仕方がないです」
ホリィ「良いじゃないですか。優しそうな旦那様で」
八幡父「ん?ま、まさかあなたは……空条貞夫さん?」
八幡母「く、空条貞夫さんって……たしか会長の…」
あら?パパの会社の人だったのね?世の中狭いわね。
八幡父「こ、これは会長のお嬢様とは露知らず!」
あらあら。お嬢様と呼ばれるにはもうかなりのおばさんよ?
貞夫「いえいえ。無理をなさらず。ご存じの通り私は財団とは無関係なしがないミュージシャンですから」
あなた。それは無理がないかしら?日本で空条貞夫を知らない人は少ないと思うわよ?
八幡父「……お嬢様。あなたの子供に対する想い、感銘を受けました。私は何があってもこの子を守ります。ありがとうございました」
私は何もしてないわ。当たり前の事を言っただけですもの。旦那さんは深く頭を下げて去っていったわ。財団の職員は私がホリィ・ジョースターだとするとすぐに売り込みをしてくるけど、あの人は違ったわね。
売り込みよりも子供の事を語るなんて……。あの人とは気が合いそうだわ。また会えるかしら?あのご夫婦に。
まさかこの時お腹の中にいた子供が……私達と生涯をかけて付き合う事になるなんて……思いもしなかったわ。
比企谷さんはあの時の言葉通り、普通ではない二人の子供を他の親戚と縁を切ってまで守り抜くなんて……。
貞夫「ホリィ行くぞ」
ホリィ「ええ。あんな素敵なご両親に守られて育つ子供は……幸せね?」
貞夫「お前も良い母親だよ。今でもな……」
あら。お世辞を言っちゃって♪もうあと二十年若ければ、承太郎の兄弟が出来てたかも?
キングクリムゾン
数ヶ月ぶりの実家。もうじき帰ってくるわ。
ホリィ「!!帰ってくるわ!ママ!パパと承太郎よ!あの二人が帰ってくるんだわ!」
弟の仗助を守って帰ってくる。辛い戦いがあったって聞いたわ。それを乗り越えて仗助を守り抜いた二人は素敵よ!やっぱり二人は私のヒーローなんだわ!
承太郎「いま帰った。おばあちゃん、親父、お袋」
承太郎がいつもの白いコートと帽子を被って玄関から入ってくる。あら?パパは?
ホリィ「承太郎……パパはどうしたの?一緒にいるわよね?」
パパがそこにいるのはわかる。でも、何故か入ってこない。
承太郎「………杜王町で厄介なものを拾ってしまってな。おばあちゃん。ジジイを怒らないでやって欲しいんだが………。オラじじい!覚悟を決めて入ってこい!」
あら?このやり取り……懐かしいわ。
まるで承太郎が高校生の時のような態度……。
そしてパパが入ってくる。あら?曲がっていた腰がすっかり戻っちゃってる。目も……昔大好きだった力強い目に……。あら?
スージー「ジョセフ?その赤ん坊は?まだ隠し子がいたの?」
そう、パパは杖の代わりに赤ん坊を抱いていたの。
ジョセフ「ま、待てスージー!話を聞いてくれ!」
スージー「あなたって人は………早速お説教よ!来なさい!ジョセフ!」
承太郎「ほら。赤ん坊をよこせ。ジジイ。じっくりとおばあちゃんと話して来い」
承太郎はパパからスタンドで(一応、私もスタンドは見ることが出来るのよ?)赤ん坊を奪い取り、パパをママに引き渡す。そして、私に赤ん坊を渡す。
ジョセフ「おい承太郎!お前もスージーに説明してやってくれ!この裏切り者ぉぉぉ!」
ズルズルと引きずられるパパを無視する承太郎。
ホントに懐かしいわ………。
承太郎「あのジジイ、少なくともボケは治ったようだ。安心したか?お袋」
ホリィ「え、ええ………それで承太郎?この子は?」
透明の赤ちゃん(静)「キャッキャッ♪」
承太郎「ほう?さすがはお袋だ。この子は知らない人間に触られるのが嫌いでな。俺や仗助でも最初は嫌がってスタンドを暴走させていたんだが……お袋には人見知りしないらしい。逆に喜んでいる」
ホリィ「そうなの?おー、ヨチヨチ。カワイイでちゅねー」
透明の赤ちゃん(静)「キャハハハ♪」
私があやすと、赤ちゃんは嬉しそうに笑う。でも気になるわ?何でサングラスをしてお化粧までしているのかしら?
承太郎「その子は杜王町の荒野でジジイと仗助に拾われた。俺達も手を尽くして親を探したんだが、結局見つからなくてな……ジジイは養子としてこの子を引き取るつもりらしい。スタンド使いの赤ん坊だから、ジジイが育てるのが良いだろうってことで連れ帰ってきた。名前はまだ決めていない」
そうなの……どういう状況なのかさっぱりわからないけど……でも……。
ホリィ「パパの養子になるなら……この子も私の妹になるのかしら?仗助ちゃん。最高のプレゼントだわ」
妹と言うには孫のような感覚だけど……この子ももう、立派な家族だわ。
ホリィ「静かな子ね?日本人でしょうし……そうね。静……静・ジョースターなんてどう?承太郎」
承太郎「まぁ、最終的に決めるのはおばあちゃんとジジイだろうな。お袋が言えばそれできまるんじゃあねぇのか?」
そうかな?そうだと良いわね。
静「プゥゥ……」
静(仮)は私に手を伸ばしてくる。
ホリィ「初めまして、静ちゃん。私はあなたのお姉ちゃんよ……よろしくね」
静「バアウ!キャッ♪キャッ♪」
指を伸ばしてきた手に置くと、静(仮)はそれを掴んで嬉しそうに笑う。将来は美人さんになりそうね。
ホリィ「うふふふ。日本在住の私はあまり会えないけど、承太郎はアメリカ在住だから、私よりは会う機会がありそうね?」
承太郎「どういう事だ?」
ホリィ「……まるで娘と父親よ?承太郎。寂しくなったら、この子に会いに来るのも良いんじゃない?」
承太郎「ふん。抜かせ。いつまでも子離れしねぇお袋と一緒にするんじゃあない」
ふふふ。きっとそうなるわ。あなたがどれだけ徐倫を愛しているか、ママはわかってるんですから。
そんなあなたが、きっとこの子の事を気にかけ無いわけがないわ。
あなたには期待しているわよ?静ちゃん♪
←To be continued
はい、今回はここまでです。
今回はホリィ視点の外側から見た第4部と言ったところでしょうか?
仗助とホリィの出会いです。
それでは次回もよろしくお願い致します。