やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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そしてファーストステージへ……

side比企谷八幡(回想)

 

あれから一年の時が過ぎた。

色々あった……。

小町が急成長した理由に呼吸の力を教えた……という表向きの理由をお父さん達に話したら、「何て事をしてくれたんだ!娘がすくすく成長する楽しみがぁ!八幡が変な事をするから小町が真似するんだぁ!」と言われ、お父さんにしては珍しく僕に怒ってきた。

うん。僕のせいじゃあないけどごめんね?真実は小町と僕の中にしまって墓場に持っていこうと思った。

数年後に出会ったジジイにはすぐにバレ、真相はいろはに拡散されてしまったが。

小町の呼吸の力はすごい。お風呂で鉄棒のような真似をするし、他の人にも呼吸の力で治療をしたり(僕はこれが何故か苦手)、力も僕なんかよりもはるかに強い。

 

小町「じゃあお兄ちゃんの呼吸の力も小町が鍛えてあげるね?」

 

と、言われ、最近では遊びと称して変な事をやらされている。

 

小町「この呼吸を極めれば、例のザワザワも収まるかもしれないよ?」

 

とは小町の言。

前にも増して灰色の世界が発生するのが多くなったし、ザワザワの事に関しては手を打たないととんでも無いことになりそうだよね………。

 

 

side空条承太郎(回想)

 

承太郎(スター・プラチナ・ザ・ワールド)

 

ブウゥゥゥゥン!

 

承太郎(1、2、3………3秒の壁は厚いな……ここから成長することがあるのか?目標の5秒は遠いな…)

 

ふぅ………休憩はここまでだ。交渉を再開だな。

今はパッショーネと財団の同盟についての最終的な調整に入っている。

パッショーネの戦いで死んだ幽霊のポルナレフはよくやってくれている。見事に我々とパッショーネの橋渡しを果たし、同盟は上手く行きそうだ……。

 

ジョルノ「お待たせしました。空条承太郎さん。交渉を続けましょう」

 

承太郎「ああ………」

 

交渉の話は続く。

………そうだ。ほぼ決まりかけていたことだが…。

 

承太郎「ジョルノ・ジョバァーナ君。君さえ良ければなのだが………君の父親、DIOは首から下からは私の先祖のジョナサン・ジョースターだった」

 

ジョルノ「そうみたいですね?それが?」

 

承太郎「つまり……奇妙な事ではあるが、私の祖父、ジョセフ・ジョースターはジョナサン・ジョースターの孫にあたる。君から見たら腹違いの甥ということになると思うのだが……」

 

ジョルノ「ええ。そうなりますね。とても奇妙なことではありますが」

 

ジョルノは少し警戒心を抱いたような表情になる。

ジョルノは表情から感情を読み取り辛い性格だ。俺も少し前ならジョルノという男を図れなかっただろう。だが、ジジイに鍛えられた長い経験から、多少なりとも人の表情の機敏というのがわかるようになってきた。

 

承太郎「ならば、君も我がジョースター家の一員になってはどうだろうか?そうすれば君にもジョースター家の継承権が発生する。そしてパッショーネも表向きの組織はSPW財団のイタリア支部となり、色々とやりやすくなると思うのだが……」

 

打算もある。もし俺が志半ばで倒れてしまった場合、仗助が俺の後を継ぐことになるが、今の段階では仗助は未完成だ……。そこでジョルノに目を付けた。

ジョルノならば仗助を上手くサポートし、そして徐倫を守ってくれるかも知れない。

結果的にジョルノが仗助の上に行っても構わない。重要なのはどちらがより奇妙な出来事から世界を……そして巡りめぐって徐倫や静たちを守ってくれるかだからだ。

 

ジョルノ「パッショーネを吸収しようとしているのですか?僕達があなた達の傘下になれと?色々な面から見ても正気とは思えません。何よりギャングを受け入れるなんて……財団の中で混乱が起こりますよ?下手をすれば戦いが起きる。それに僕はそのまま財団を乗っ取るかも知れませんよ?」

 

承太郎「君がそれほどの器ならば、そうすれば良い。重要なのは………」

 

俺はジョルノに自分の考えを伝える。

表向きには伝えられない理由も含めて……。それに東京の一件があったからなのか、俺は千葉で感じている不穏な空気の事も伝える。

 

ジョルノ「汐華………とっくに捨てた母の事がここで出てくるとは思いませんでした。なるほど……より優秀な者がジョースターを継げば良い……ですか」

 

ジョルノはそこで考える。

 

ジョルノ「あなたが言っている事には汐華が関係することですか?」

 

承太郎「今は仮説に過ぎないが、君の母親……汐華冬乃が何故DIOの食料にならなかったのかが疑問に思ってな……」

 

DIOが子供を産ませた存在が一人だけとは思えない。そしてDIOならば必ず食料とするだろう。

だとすれば汐華冬乃は何故食料にならなかったのかが疑問になる。

DIOが気紛れで食料にしなかったのであれば問題は無かったのだが……どうにも汐華の家もキナ臭い…。

 

ジョルノ「……良いでしょう。すこしばかり、心当たりがあります。もしかしたらあなた方と僕は目的を共にするかも知れません……あなたの話は受諾します。本格的にSPW財団と合併する事も含めて」

 

ミスタ「ジョルノ!」

 

ジョルノ「ですが我々は我々であくまでもパッショーネであることを貫きます。パッショーネにはパッショーネのやり方があり、目的があります」

 

そう来るだろうな。だが、そのくらいの気概があればこその方がジョースター家だ。康一君やポルナレフが言うように、彼はどこまでもジョースターの気質があるようだ。立派に我々の家族に相応しいと言えるだろう。

 

承太郎「了解した。その辺りも含めて色々と煮詰めよう。ジョルノ君。君は私の……いや、俺の弟分だ。いずれは正式に家族を紹介する。会長のジョセフ・ジョースターとか、君とそう歳の変わらない弟のような奇妙だが、俺の年下の叔父や、娘よりも年下の義理の叔母とかをな」

 

ジョルノ「本当に奇妙ですね?名前をお聞きしても?」

 

承太郎「東方仗助と静・ジョースターだ。残念ながら離婚が間もなく成立する俺の妻や娘とは会わせるのは難しいかも知れないがな………もしかしたら娘の事も君に頼るかも知れない。名前は徐倫……空条徐倫だ」

 

ジョルノ「天涯孤独の僕に、今さら家族が出来るとは思いませんでした。良い家族になれることを期待しますよ。我が兄貴分………承太郎さん」

 

承太郎「ああ。よろしく頼む。我が弟分……ジョルノ・ジョバァーナ」

 

今は互いに打算がある上での関係だが、それが本物の絆になれば良い。君には期待している。ジョルノ……。

 

 

side比企谷八幡

2003年7月

 

八幡「幽霊に名前を付けよう!」

 

僕が前置きもなく唐突に言うと、いろはちゃんと小町はキョトンとした表情を向ける。

 

いろは「お化けさんに名前……ですか?」

 

小町「本当に突然だね?何で?」

 

八幡「だって、いつまでも僕の幽霊とか、小町の幽霊とかっていうのも何か呼び辛くない?名前があった方が何かと便利だしさ」

 

愛着も出ると思うんだ。

 

いろは「うーん………お化けさんの名前ですか」

 

いろはちゃんはうーん……と考え込む。

 

典子「そう言えばわたしの従兄のお化けさんにも名前があったみたいよ?確か………法王の緑(ハイエロファント・グリーン)だったかしら?」

 

一色のおばさんがキッチンから顔を出してそう言ってくる。僕達は大抵一色のおうちで平日は過ごしている。

産休が終わったお母さんが仕事に復帰して、普段は一色のおばさんが僕達の面倒を見てくれているからだ。

それにしてもハイエロファント・グリーン……ねぇ。何か聞き覚えがあるような気がするんだけど、気のせいかなぁ……。

 

あっ!

 

八幡「あのさ。伝説の看護婦さんにナイチンゲールって人がいなかったっけ?」

 

僕は図書館の伝記の本から偉人の事が書かれている本を取り出す。

フローレンス・ナイチンゲール。

世界の看護婦達の母とも言われている人だ。いろはちゃんの幽霊には人や動物の傷や病気を治す力がある。

なんとなくそれがいろはちゃんのイメージに似合う気がしてきた。

 

八幡「ナイチンゲール・グリーンって言うのはどうかな?いろはちゃんの幽霊って緑色に輝いているし、ぴったりだと思うんだよね?」

 

いろは「うーん……ナイチンゲールは良いと思うんですけど、グリーンって言うのが………」

 

どうやらいろはちゃんはあまり気に入らないようだ。親戚のおじさんと似ている名前だから良いような気もしたんだけどなぁ………。

 

小町「だったらさ、エメラルド……というのはどうかな?お姉ちゃんのお化けさんってさ、グリーンというよりもオズの魔法使いに出てくるエメラルドっていう感じがするんだよね?」

 

おおっ!さすがはマイエンジェル小町!ナイチンゲール・エメラルド!良いじゃあないか!

 

八幡「確かエメラルドって緑色のキラキラする宝石だったよね?あの弾丸も丁度宝石みたいにキラキラしているしさ!良いじゃん良いじゃん!それにナイチンゲールって鴬の事だしとても似合ってるよ!」

 

いろは「ナイチンゲール・エメラルド……ですか。確かに悪くないですね?そうなるとあの弾にも名前がいりますか?」

 

八幡「エメラルド・バレット?エメラルド・ショットガン?」

 

小町「エメラルド何とかは賛成だけど、何かセンスがいまいちじゃない?」

 

うーん。確かにニュアンスとしては合っているんだけど、いろはちゃんのイメージには合わないかも……。

 

八幡「エメラルド・ホイミ、エメラルド・ケアル」

 

いろは「まんま回復魔法の名前じゃあないですか」

 

まんますぎたぁ。あっ!

 

八幡「エメラルド・ストライクとエメラルド・ヒーリング!」

 

何となくだけどコレがピンと来る気がする!

 

いろは「エメラルド・ストライクにエメラルド・ヒーリングですか……。確かに悪くは無い気がしますね」

 

何となくエメラルド・スプラッシュっていうのが頭をよぎったんだけど、嫌な事を思い出すような気がしたんだ。ザワザワがあったし。

 

小町「はいはーい!小町のお化けさんも名前を考えてみました!聞いて聞いて!」

 

八幡「うん。良いよ?どんな名前?」

 

小町「サンシャイン・ルビー!」

 

サンシャイン・ルビー?太陽光の赤石?

確かに綺麗な名前だね。あの光は凶悪だけど、小町の幽霊に付いているあのキラキラした宝石はルビーみたいに綺麗だし。でも……

 

八幡「サンシャインはどこから?」

 

小町「小町達の使う呼吸の力ってさ、何となく太陽の力って感じがしない?」

 

太陽の力……かぁ。言われてみればそんな気もしなくは無いけど……。

思えば既に前世を思い出していた小町は波紋=太陽のエネルギーというイメージがあったんだろう。だからサンシャイン・ルビーというおあつらえ向きのスタンド名を考えたんだ。

ナイチンゲール・エメラルドとサンシャイン・ルビー。

奇しくもジョースター家の家系が名付ける鉱石系のスタンド名を俺達は考え付いたんだ。

難航したのが俺のスタンド名だった。当時は前世を思い出してもいなければ、ザ・ワールドを認識してすらいなかった。

ハーミット・パープルなんてアルカナタロットカードと結びつける発想なんてあるはずもなく、また当時のハーミット・パープル・ネオは本当にただの紫色のいばらだった。

 

小町「うーん……サンシャイン・パープル?」

 

八幡「なんで?」

 

小町「いや、あれって呼吸の力を通すじゃん?」

 

八幡「??」

 

小町「あの時は必死で意識的にやったんじゃあ無いんだ……それに紫じゃあ太陽光って感じがしないよね。紫外線っぽくも無いけど………」

 

八幡「さっきから何を言ってるの?小町」

 

小町「ううん。何でもないよ?」

 

いろは「ピーク・パープル」

 

八幡「その心は?」

 

いろは「覗きの紫(ピーク・パープル)?」

 

それは嫌だ!絶対に嫌だ!

 

八幡「確かにいろはちゃんのお風呂とかを念写したりするけど、それはあんまりだぁ!HEYYYYY!あぁぁんまぁぁぁぁぁぁりだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

小町「あ、何かデジャヴ」

 

何と!?

覗きを良くするから覗きの紫ってぇぇぇぇ!

 

八幡「それに二人は宝石の名前なのに何で僕だけただの色なんだ!僕だって宝石の名前が良い!」

 

小町「パープルトゥーンズ・アメジスト……無理があるよねぇ……」

 

紫のいばらの紫水晶……紫が被ってる……それにアメジストって言うほど輝いているわけじゃあないし。

パープルトゥーズ・ストーン……しっくりこない…。

ハーミット……トゥーンズ?

ハーミットはどこから出てきた?何で隠者?うーむ。

 

八幡「保留!しばらくはウネウネで良い!」

 

いろは「パープル・ウネウネ?」

 

八幡「それも絶対に嫌だ!」

 

後々にザ・ワールドとハーミット・パープルがゆうごうし、ザ・ジェムストーン(原石)と名付けられるまで、俺のスタンドは名無しと言うことになった。

原石と隠者の紫水晶。この名前は俺も気に入っている。

 

 

side一色いろは

 

ナイチンゲール・エメラルドという名前が決まって数日が経ちました。

今日は典明おじさんのお墓参りです。

それにしてもハチ君のお化けさんの名前ですか…。

あの黄色いお化けさんの事はハチ君もわからない見たいですけど……あまりそれに触れない方が良いような気がするのは何ででしょうか?

マチちゃんも賛成みたいです。わたしもマチちゃんもあの黄色いお化けさん……いえ、正確には黄色いお化けさんが出ている時のハチ君は何となく嫌な感じがするんです。

とても悲しい……そして恐ろしい何かが起こるような。そんな気がして………おや?

 

承太郎「また………かち合ったか……」

 

ジョルノ「父が殺したという承太郎さんの仲間の家ですか………」

 

あの帽子を被っている承太郎……と呼ばれた男の人、どこかで会ったような……。

 

典子「空条博士……それに……ジョースター家……」

 

ジョースター………?ジョースター………。

キーーーーン………。

何でしょうか……何かを思い出しそうな……。

 

ジョセフ「……これは堪えるのぅ。なぁスージー?」

 

スージー「そうね………ジョセフ………」

 

スージー?

ジョセフ?

ジョセフ………ジョセフ・ジョースター……。

よぅよ…じょうじょ……ジョジョ!

ジョナサン、ジョージ、ジョセフ………。

 

キーン!

 

思い出しました………わたしは……わたしはエリナ・ジョースター……。

気まずさからジョースターの一行は去っていきました。

承太郎と呼ばれたどこかで会ったことがある人、金髪の髪の人、昔のツッパリ?みたいな髪の人、わたしくらいの小さな女の子、ボブカットの女の人、そしてスージーとジョセフが……。

待って………待ってください!ジョセフ!スージー!

想いは空しく、ジョースターの人達は帰って行ってしまいました。

 

ジョースター………。

わたしは昔からよぅよを……ジョジョを探していた。

正確にはジョースター家を!

 

いろは(だからハチ君やマチちゃんの首筋にあるうっすらと浮かんできている痣に懐かしさを感じていたんですね……それに……わたしの痣は……)

 

エリナ・ジョースターの精神はもう、ジョースターと共にある。だからわたしにもジョースターの痣が…。

 

いろは(だとしたら………ハチ君もマチちゃんも……ジョースターの誰かの生まれ変わり?)

 

そして、黄色いお化けさんが出ている時のハチ君の雰囲気はまるで………。

 

いろは(ディオ……ディオ・ブランドー……ハチ君はジョジョの誰か?それとも……ディオ?)

 

わかりません。でも、1つだけハッキリしたことは…。

 

いろは(運命の歯車が……動き出したんですね?)

 

わたしが前世を思い出したその日……そしてその一年後に……本格的にわたしたちはジョースター家と関わるようになり、そして再び奇妙な人生を歩む事になったのです。

 

←そして第1章へ……

 

 

side一色いろは(現在)

 

徐倫「そしてあのファーストコンタクトに繋がるのね。あたしはその時にはいなかったけど」

 

八幡「あの頃はお前も大変だったからな」

 

小町「本当に……奇妙な巡り合わせだよね?」

 

ええ。本当に心からそう思います。

全てが上手く噛み合いましたが、そのどれもが狂っていたら、今頃はわたしとハチ君は………。

考えるとゾッとしますね。

 

徐倫「ま、良い話が聞けたわ。暇潰しには……ね?」

 

徐倫はわたしたちの頭をポンッと軽く叩きます。

良い骨休みにはなりましたね?

そう言えば皆さんはどうしてるでしょうか?

 

ピンローン!

 

ふぇ?ラインですか。

あっ、観光を終えて家に着くみたいですね?

しばらく会いに来なかったからお説教……ですか。

相変わらずみたいですね?

 

←To be continued




はい。今回はここまでです。
ジョルノの母親は原作では本当にDIOの気紛れで生かされていたようですが、本作では柱の一族に連なるブラッディ・スタンドという形にしました。

一方で過去編は第1章へと進んでいく流れとなります。

それでは次回もよろしくお願い致します。

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