やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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比企谷八幡は一色いろはとの出会いを思い出す

side比企谷八幡

杜王グランドホテル

 

いろは「すー………すー………んん……」

 

俺の膝を枕にしていろははソファーでうたた寝している。ああ………癒される………。一色いろはという女はどこまでもこの比企谷八幡にとっての癒しだ……。

異論、反論、苦情は認めない!

少なくともこの比企谷八幡にとってはそうなのだ!

ああ……すぐにでもこのいろはをガバッとしてやりたい……してやりたいのに………。

 

徐倫「…………ジト~~」

 

何でこの姉貴分は机の椅子にドッカリ座って見ているんですか?ホットパンツに健康的なおみ足を組んで見せても何も感じませんよ?一度姉貴分と認識してしまうとどんなに美人でも、スタイルが魅力的でも、何も感じない。

 

八幡「なぁ徐倫……」

 

徐倫「何よ」

 

八幡「何でここで俺を監視してるの?お前も杜王町の観光に行ってきたら?」

 

徐倫「アホか。何べんも来てるだろ。今さら観光する所なんて何も無いわよ」

 

八幡「カツアゲロードとか……」

 

徐倫「あそこは小林玉美さんの管轄。それともあたしがカツアゲされろって?冗談きっついわ」

 

や、お前がカツアゲされるイメージって全くないんだけど?

 

八幡「エルメェスさんの観光案内とか……」

 

徐倫「それこそ彼氏の間田さんの役目だろ。せっかく久々に会えてるんだから邪魔をする気はないわよ」

 

あー、間田さんがいたかぁ……。

 

八幡「えっと………えっと………後は……」

 

徐倫「今現在、一番風紀を乱す生徒の監視中。イーハはユニコーンの影響でwelcome状態だし、あんたが一番野獣になりそうだからね」

 

八幡「や、仗助とジョジョ、承太郎と海老名もヤバくね?」

 

徐倫「ジョジョは朋子さんと一緒にいるから監視は対策済み。さすがに兄さんも母親の前でガバーは無いだろうからね。父さんの方もまったく問題なし。そんな事であたしの生徒に手を出すような父さんだったら、とっくの昔に再婚してる。むしろ手を出せ。逃げ道が消えるから」

 

八幡「だったらこっちも放っておいてくれませんかねー!何でそっちには手を出せとか言っておきながら、こっちは監視するんだよ!」

 

わけわからんわ!大体今はオフタイムだろ!

 

徐倫「あんたとジョジョは確実に猿になる。イーハのお腹を確実に大きくする。3万ドル賭けても良いと断言する」

 

♪~(・ε・ )

 

ゴン!

 

徐倫「下手な口笛で誤魔化すな!あと、あんたは楽器だけじゃあなくて口笛もセンスないな!グランパが諦めるくらいに!」

 

やめろ。楽器のセンスが無いってのは地味に堪えてるんだ!貞夫さんに「やれやれ……」と首を振られたときの気持ちはお前には分かるまい!適当にギターを弾いても形になるなんてどんだけなんだ!

ジョースターの美的センスよ!何故そこだけ俺に戻ってこない!

 

徐倫「…………そう言えばさ、ハッチ」

 

八幡「あん?金ならないぞ?」

 

徐倫「いらねーよ!生徒や弟分から金を取る教師がどこにいるんだよ!大体、お前が金がねぇなんて嘘だろ!」

 

うん。そりゃ、キャリア歴10数年だからね。それなりに潤っている。

 

徐倫「ったく……。あんたとイーハの馴れ初めって聞いたことが無かったなって思ってさ」

 

八幡「や、何度も言ってるだろ。俺といろはは元々幼なじみで、ジジイ達が千葉に来たときに………」

 

徐倫「それは何度も聞いた。聞きたいのはそれ以前の話よ」

 

八幡「それこそ、2歳の時の話だぞ?普通は覚えているわけがない」

 

何を言っているんだ?この姉貴分は。

 

徐倫「普通の人間ならばそうだろうね。だけど、あんたらは普通じゃあない。記憶は戻っていなくとも、あんたたちは既に大人としての思考回路を持っていたって聞いているわ。だったら、あんたらは出会いを覚えているんじゃあないの?」

 

…………参ったな…………。確かに覚えている。

どうするか………。

 

徐倫「話なさいよ。あたしがまだ子供だった時の、あんたらの出会いを。暇だし、丁度良いでしょ?」

 

暇だったら観光に行けよ………。

と言ってもさっきの問答が繰り返されるんだよなぁ。

仕方がない………。

 

いろは「話しますか?ハチくん♪」

 

起きていたのかよ………。

 

 

いろは「そりゃ、拳骨を落とされればその衝撃が伝わりますから」

 

それもそうか。最近の徐倫って手加減ゼロの拳骨を落としてくるからなぁ………。

 

チュッ♪

 

いろは「膝枕、ご馳走様でした♪これはお礼です♪」

 

おおう……ドキドキしてくるじゃあないか……。

 

いろは「それじゃあお話をしますね?あれは確か承太郎とニアミスした時ですから……」

 

八幡「待て。承太郎とニアミスってなに?初耳なんだけど?」

 

いろは「今にして思えばですけど。あれ?確かハチくんもその場にいたと思ったんですが………わたしたちが最初に出会った時ですよ?」

 

八幡「うーん?………ダメだ。思い出せんわ。もしかしたら見落としていたかもしれんな。ディオの時に承太郎を見ていたんだし、見付けていたらその時にザ・ワールドを暴走させていた自信があるわ」

 

いろは「そうですか……じゃあそこからですね?」

 

 

side一色いろは

幼少期の記憶……

京葉線東京駅

 

いろは「よぅよ……よぅよぉ………」

 

頭によぎる「よぅよ」という単語。それがわたしにとっては何か重要な意味を持つと、勘でわかりました。

この帽子を被ったこのおじちゃんは、「よぅよ」と深く関係がある……。面影が………あるんです。

「まぁ!…………ったらいけない人!」

「こんな幸せな時間を……いつまでも感じていたい…」

「残酷過ぎます!わたしにとっての望みは……あなたと共に死ぬことなのに!」

今ならわかる。エリナ・ジョースター……エリナ・ペンドルトンとしての記憶が断片的に蘇りつつあったんだってことに……。

そして、わたしが珍しく男の人になついたこの人は…空条承太郎。承太郎を通じてわたしはジョナサンの面影を追っていたんだと分かります。

承太郎の方も、わたしに興味があったのでしょう。

なんだか妙に気になるんですよね?この人には…。

数年後にはすっかり忘れちゃっていたんですけどね。

あれが肉親同士におこる魂の惹かれ合いだったのだと今なら分かります。

 

いろは(そうだ……首筋……よぅよの首筋になら…。お化けさん!お願い!)

 

当時、『ナイチンゲール・エメラルド』という名前が無かったわたしのスタンドを、単純に『お化けさん』と呼んでいました。

まだよちよち歩きのわたしでは、背の高い承太郎の首筋を見ることはできません。

でも、お化けさん越しで見ることはできます。

 

承太郎「これは……花京院のハイエロファントに似ている……」

 

いろは(お化けさんが見えている!?今までそんな人はいなかったのに!)

 

花京院家でもそんな人はいなかった。

わたしによく似ていると言われている花京院典明さんなら見えていたかも知れませんが。

それに花京院……と今………この人は花京院典明さんを知っている?『よぅよ』に関係があって……

 

いろは(あった……星の模様……)

 

ズキッ!

いたっ!わたしの首筋に何か痛みが走ります。

この頃からだったでしょうか?

薄く……そして左下からわたしの首筋にジョースターの痣が浮かび始めたのは……。

そして承太郎が子供を助ける騒動……。わたしがいつまでもお化けさんで承太郎を掴んで離さなかった為でしょうか?

承太郎はわたしをお母さんの腕から奪い、抱えて女の子を助けに行きました。

 

承太郎「スター・プラチナ・ザ・ワールド!」

 

…………え?

いつの間にか瞬間移動をしていたわたしを抱えた承太郎。

何が起きたのかまったくわかりません!

混乱しているわたし。

 

海老名「………ひな………」

 

承太郎が助けた女の子が自己紹介をしたみたいですが、よく聞こえませんでした。ひなという名前………。

……え?ひな……?ひな……姫菜!?

 

side比企谷八幡

 

いろは「あーーーーーー!」

 

いきなり話を止め、叫び出したいろは。急にどうしたんだ?

 

いろは「あの時、承太郎は海老名先輩を助けたんですよ!だから海老名先輩は!」

 

八幡「え………いろはが引っ越して来た日に俺達は承太郎と海老名とニアミスしてたの?マジで?」

 

いろは「おまけにあの時、承太郎は時間を止めたんです!」

 

まぁ、話の流れからしてそうだろうな?それが……?んんっ!?時間を止めた………?

 

徐倫「何でそんな事を今さら驚いてるのよ。父さんならばそうするでしょ?」

 

いろは「そう言えば徐倫は知りませんでしたね。承太郎が時を止める練習をした時、ハチくんにも影響があったんですよ」

 

…………そう。俺はザ・ワールドを認識する以前から、時の止まった世界を認識し、そのうち動けるようになった……。

そして、無意識にザ・ワールドがその時にだけ出ていたといういろはや小町の証言がある(第1話参照)。

 

徐倫「認識していなかったザ・ワールドの出現か。ハッチって父さん達と出会ったときに初めてザ・ワールドを認識したんだったっけ?」

 

八幡「ああ。『僕』はずっとハーミット・パープルが自分のスタンドだと思っていたからな」

 

徐倫「あんたが僕って……違和感があるわね」

 

八幡「当時の一人称は『僕』だったんだよ。当時の人格もな……」

 

だろうな。だけど俺は敢えてこの時、過去の自分を『僕』と言った。確実に言えるのはあの時の『僕』はもういない。那由多さんがそうであるように、『僕』の人格はジョナサンとディオが混ざり合い、完全に『俺』という新たな統合人格が生まれたんだと思う。

今となっては『僕』はジョナサンだったのか、本来の比企谷八幡という人間だったのかはわからない。しかし、ディオと融合を果たした『僕』は確実に消えてしまっていた。俺の心の中にもディオやジョナサンはいても『僕』はもういない。

 

八幡「ああ……もしその時承太郎が助けた奴が海老名だったのならば……何で海老名と三浦が俺の事を知っていたんだと。そう言うことか……」

 

今になってやっとこの疑問が解消したわ。本人たちに聞いても『DIOに教えるわけないじゃん』と言ってはぐらかされていたしな。

海老名が承太郎の事を好きだというカミングアウトに繋がりかねなかったかもしれないな。夕食の時にでも聞いてみるか。

出掛けた三浦はわからないが、海老名は出掛けて無いって話だからな。答え合わせなら教えてくれるだろ。

あ、このまま有耶無耶にしてくれないかなぁ……。

今更なんだが、多分その後に俺といろはは出会うんだけどさ……。俺としてはともかく……『僕』としてはちょっと恥ずかしいっていうか……。

いろはが俺の心情を察してか、意地悪く笑う。

 

いろは「ふっふっふっふ……だってあの時ですもんね?ハチくんの未来が確定しちゃったのは」

 

徐倫「どういうこと?イーハ」

 

いろは「わたしを奪って危ないことをした承太郎にカンカンだったお母さんは、承太郎からわたしを奪ってたまたま東京駅にいた比企谷家の方に行ったんですよー。そこでですねー………」

 

 

side比企谷八幡(過去の回想)

 

典子「あら?確かお隣になる比企谷さん……でしたか?」

 

心がざわついたのも束の間、僕はすぐに平常心が戻り、お母さんにあやされていた。

お父さんも一生懸命俺の気を引こうとしている。

でも僕は……お父さんというものが何故か怖かった。

『俺』として振り返ればわかる。

ジョージ父さんもダリオのくそ親父も当時の『僕』にとっては怖いというイメージしかなかった。

親父はその頃から既に子煩悩だったけど……。今にして思えば……だからな。親父としてはなかなかなつかない『僕』の事で悩んだに違いない。ごめんね!親父!

そして当時の『僕』は………初めて会ったこの子に目を奪われていた………。

まだ名前もわからない………いろはに………。

 

いろは「よぅよ………」

 

八幡(カワイイ子だなぁ………)

 

僕は目の前の子に完全に心を奪われていた。

一目惚れ……と言うのだろうか?こんなこと、以前にもあったかも知れない……。

この子ははカワイイにはカワイイ。でも、今まで見た誰よりも……というわけではない。なのに僕は……この子が僕の一生の中でもこの子以上に好きになれるとは思えなかった。絶対的な運命の出会い……それがこの子なんだと根拠なく思った。衝撃的な一目惚れとは……正にこの事だったんだと……。

 

いろは「んゆ?」

 

僕の視線に気が付いたのか、女の子はパッチリした目を僕に向ける。

 

いろは「よぅよ?」

 

八幡「???」

 

よぅよ?

ん~………わからない。でも、それが更に僕の中で衝撃的な何かを感じさせる。

 

典子「あら珍しい。この子があの人以外に興味を持つなんて……案外、八幡くんとは相性が良いかもねぇ?ほら、今日からお友達になる八幡君でしゅよ~。八幡君?この子はいろは。仲良くしてくだちゃいね~」

 

お母さんと知らないおばちゃんは僕と彼女……いろはちゃんを近付ける。

顔が……近い………もう……我慢出来ないぃぃぃぃ!目の前に美味しそうな食べ物があるのに、それを我慢することなんて出来ないぃぃぃぃ!

僕は手からシュルシュル……っと蔦の幽霊を出していろはちゃんの体を巻き付ける。

 

いろは「……ふぇ?お化けさん?」

 

いろはちゃんは僕の幽霊を見て驚く。

初めてだ!僕以外に幽霊を見ることが出来る人なんて!お父さんもお母さんも見えないのに!

やっぱり僕達は運命なんだ!だったら……

 

いろは「ふぇ?………!ンンッ!」

 

八幡「…………」

 

ズキューーーz_____ン

ブチュッとな♪

 

いろは「ンー!ンー!」

 

八幡「…………♪」

 

ドンドンと俺の胸を両手で叩くいろはちゃん。

 

八幡父「やった!やりやがった!さすがは八幡!大人が出来ないことを子供ならではの無邪気さを装って平然とやってのける!そこに痺れるぅぅぅ!憧れるぅぅぅ!」

 

典子「あらあら♪ウフフフ……仲良くなりすぎちゃったみたいね?」

 

八幡母「こら!ハっくん!すみません!一色さん!」

 

典子「良いんですよぉ。この頃の子供のキスなんて事故みたいなものですからぁ。物心ついたときには覚えていませんよ♪まぁ、二人が仲良くなってこのまま結婚でもしたら、面白い話題になりそうですけど?」

 

八幡父「娘のファーストキスを奪われて、それを笑って許しますか……一色さん。あなたは大物ですね……」

 

僕達の事なんてなんのその。笑って許してくれる一色さん。

お言葉に甘えて……

 

いろは「んんーーーー!」

 

八幡(ああ……幸せだなぁ………)

 

NE「いい加減にしろーーーー!このごーかんまー!」

 

ドンッ!

………と何かに引き剥がされる僕といろはちゃん。

見ると緑色に輝く幽霊が……。

いろはちゃんも……僕と同じだったんだ……。他の人には見えない幽霊を持っているんだ……。

 

いろは「うううううう~~~!」

 

ゴシゴシゴシゴシッ!

いろはちゃんは涙目のルカで唇を袖で何度も拭っている。

ハッ!僕はなんて事を!紳士として恥ずべき事だ!子供っぽさを装って女の子の唇を無理矢理奪うなんて!

ん?涙目のルカ?紳士ってなに?

でも、普通ならいきなり無理矢理唇を奪われたら怒るに決まっている。いろはちゃんも凄く怒っている。

誰だってそーなる。僕もそーなる。

 

N・E「なんなんですか?口説くとかをすっ飛ばしていきなり女の子の唇を奪うなんて本当に強姦魔なんですか?女の子の敵なんですか?確かにあなたはちょっとかわいくてよぅよの面影があってどこか惹かれているのは確かですけど無理矢理唇を奪うしお化けさんで逃げられないようにするしとにかく色々と無理です!ごめんなさい!」

 

え……もしかしていろはちゃんは……完全に僕と同じ?

もう大人と同じように知性を持って……普通に大人の会話が出来て………だとすると。

いろはちゃんの幽霊が僕の胸ぐらを掴み、彼女の口が僕の耳元にくる位置まで引っ張る。

 

典子「いろは!これは…お化けさんを使っちゃダメ!」

 

八幡母「え………いろはちゃんも八幡と同じような力が?」

 

八幡父「偶然ですな………」

 

ちょっと!僕ピンチ!絶対に怒られる!

 

いろは「あなた……わたしと同じなんですね?だったら好都合です……わたしはこの事を絶対に忘れません。責任、取って下さいね?」

 

僕は悟った……一生この子の尻の下に敷かれるんだと。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

いきなりやらかしました!八幡!
まるで前世の焼き増しのように唇を奪いました!

令和元年が終わりました!
年越しそばは食べましたか?
ガキツカは見ましたか?
それでは皆様、次はお正月にお会いしましょう!
よいお年を!
令和元年11月9日執筆……。

それでは次回もよろしくお願いします!

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