やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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城廻めぐりの心の傷と再会

side材木座義輝

杜王町

ートラサルディー前ー

 

結衣「あれ?ヨッシー!おーーい!」

 

城廻先輩を迎えに行くと言うことで、杜王町の外れにある場所まで来た自分と露伴先生。そこに何故か結衣と静・ジョースター殿、雪ノ下雪乃殿、三浦優美子殿、ジョジョ、東方会長、ジョルノ・ジョバァーナ殿、トリッシュ・ジョバァーナ殿、空条エンポリオ殿がおった。

 

材木座「結衣。どうしてここに?」

 

結衣「え?もちろん杜王町観光だよ?ついでに明日はここで女子会をすることになったから、その下見と準備!このお店って凄く狭いでしょ?だからオープン席を作って欲しいってトニオさんが!」

 

なるほど。確かにそんな事をすると先程八幡から連絡が入っておったな。男子は男子でラーメン屋で男子会をする話になっておるし。

 

結衣「それにさ、ここって杉本鈴美さんのお墓もあるところじゃん?……あれ?もしかしてめぐり先輩は…」

 

露伴「多分、鈴美お姉ちゃんのお墓だろう」

 

三浦「自分で自分のお墓をお参りするのって……なんか複雑なんだけどね……」

 

三浦優美子殿が渋面を作る。

確かにモハメド・アヴドゥル殿のお墓は千葉に作られており、花京院典明殿のお墓の近くに立てられている。

そう言えばシュトロハイムの墓は立てられておるのだろうか?

……ドイツの第二次世界大戦戦没者の共同墓地とかにまとめて弔われておりそうだな。

そこに行く………ううむ。確かに複雑だ。

 

露伴「めぐりくんにとってはどうだろうな。君達と違い、この杜王町は杉本鈴美が生まれ、死んだ町だ。色々と思うところがあるのだろう」

 

うむ………城廻先輩は東方会長がジョジョであったときの事件の(人間の中では)唯一の転生……。我々とは違うのだな。

 

結衣「めぐり先輩………大丈夫かなぁ……」

 

仗助「……いつものノリで城廻を連れて来ちまったが、配慮が足りなかったかもな……」

 

露伴「東方仗助。配慮が足りないのはいつもの事だろう?」

 

仗助「テメェ露伴!顔を合わせればいつもケンカばかり売って来やがって!」

 

結衣「そうだ!露伴先生、さっきのは酷いし!居留守とか!」

 

露伴先生は結衣の事などさらっと無視し、東方会長に向き合う。

 

露伴「事実だ。だが、いつかはめぐりくんも向き合わなければいけなかった事だ。いずれはここに帰って来るのだからな」

 

露伴先生……それって………。

すると東方会長はイヤらしいにやつきを始める。

 

仗助「さすがは2代目ジョースケだぜ?露伴」

 

露伴「…………君のそういうところ、何年経っても直らないものだね。行くぞ、義輝君」

 

材木座「了解であります!結衣、また夜に。露伴先生からお許しがでたら杜王グランドホテルに行く」

 

結衣「え?めぐり先輩を迎えに行くんならあたし達も一緒に行けば………あ、でも、今は………」

 

結衣は察したようだ。自分も遠巻きに見守るつもりだしな。今は露伴先生に任せておくべきであろう。

 

 

side城廻めぐり

杉本鈴美の墓前

 

めぐり「……………」

 

どのくらいここにいたんだろう。

私、城廻めぐりは前世の杉本鈴美の……正確にはその家族のお墓の前でずっと佇んでいたの。

もう前世の事は吹っ切ったはずなのに……杜王町に来てから私はずっと心ここにあらずの状態でずっとここにいるの。

 

めぐり「お父さん………お母さん………アーノルド。私、帰ってきたよ。城廻めぐりとしてだけど……帰ってきたよ。この杜王町に………」

 

私は堪えられずに涙を流しながらお墓に抱き付く。

 

めぐり「うわぁぁぁぁぁん!あああああああああ!」

 

何度目なんだろう。

何度も泣いたのに、それでも涙が溢れて出てきちゃうんだよ。

寂しい………。

今のお父さんやお母さんは私をとても大事に可愛がってくれているけど、やっぱり杉本鈴美としてのお父さん達の事は忘れられないよ……。

 

めぐり「仇は……とってくれたよ……あの露伴ちゃんやジョースターのみんなが……杉本家のみんなの仇をとってくれた………。町の誇りを守ってくれた……。だから私は……杉本鈴美は満足して成仏したのに……でも、この町に来たら………やっぱり………うわぁぁぁん!」

 

うう…………悲しい………。やっぱり、来なければ良かったのかな………。杜王町に………。

 

露伴「やっぱりここにいたか……めぐりくん」

 

めぐり「露伴ちゃん………ごめんね……すぐに泣き止むから……」

 

すると露伴ちゃんはすっ……と私を胸の中に抱き寄せる。

 

露伴「好きなだけ泣けば良い。……鈴美お姉ちゃんとして泣けるのは………この杜王町だけだろう?それに、君が泣かなければ、誰が杉本のおじさんやおばさんを悼んで泣くんだ?君しかいないじゃあないか」

 

露伴………ちゃん………。

 

露伴「君は誇って良い。この杜王町は君が守り抜いた町なんだ。君は好きなだけこの杜王町で泣いて良い。誰も君を泣くのを止める資格はない。そして僕は泣く君をずっと見守っている。こうしてね。だから好きなだけ、僕の前で君は泣いて良いんだ。めぐりくん……」

 

めぐり「露伴ちゃん……うん……うん!うわぁぁぁぁぁん!露伴ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁぁん!」

 

私は露伴ちゃんの胸に顔を埋め、遠慮なく泣いた。

一生分の涙が出たんじゃないかってくらいに……声を出して……子供のように泣いた。

 

キングクリムゾン

 

めぐり「ごめんね………露伴ちゃん……」

 

露伴「構わない。他の女が相手なら、こうはしないけど、君ならば話は別だ」

 

ありがとう露伴ちゃん……。私一人だけだったら……立ち直れたかわからない。

遠慮なく杉本鈴美に戻ることが出来なかったかも知れない。

側に露伴ちゃんがいてくれたから………杉本鈴美として泣いて良いんだって言ってくれたから………わたしはけじめをつけて泣くことが出来た。

 

露伴「僕もお参りして良いかい?めぐりくん」

 

めぐり「うん。もちろんだよ……」

 

そう言って露伴ちゃんはお花を飾り、お線香に火を付けて手を合わせる。

 

露伴「杉本のおじさん、おばさん……そして鈴美お姉ちゃん。小さいときにはお世話になり、命まで救ってくれたのになかなかここに来れなくて申し訳ない。薄情な義理の息子として罵ってくれても構わない。だが今後は頻繁に来ると約束しよう」

 

あれ?露伴ちゃんの言葉ってよく意味を噛みしめると…。ええ?ええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!

 

露伴「めぐりくんは……鈴美お姉ちゃんの事は生涯この岸辺露伴が守っていくと約束する。それがこの杜王町を守った鈴美お姉ちゃんへのお礼であり、僕の小さな頃の夢だ」

 

露伴ちゃんは杉本の墓前に淡々と言う。

ねぇ露伴ちゃん………気付いてる?これって私へのプロポーズだよ?

 

めぐり「あの……露伴ちゃん?それって完全に私へのプロポーズになっているって………分かってる?」

 

私が困惑ぎみに言うと、露伴ちゃんはため息をついて私に振り返った。

 

露伴「なんだ。いつもは『私が露伴ちゃんのお嫁さんなんだから!』とか言ってまとわりついて来るくせに、やはりそれはからかいだったのか?そうだとしたら鈴美お姉ちゃんも随分と意地悪になったじゃあないか」

 

めぐり「う、ううん!そんな事ない!嬉しいよ!とっても嬉しい!そっかぁ………露伴ちゃんも私の事を…」

 

胸がポカポカと暖かくなる……やっぱり露伴ちゃんしか私にはいないんだね……。

 

露伴「それと、何時間もここで泣いていたんだ。お腹が空いているだろう?」

 

そう言って露伴ちゃんは袋の中から………

そ、それは………

サンジェルメンの………

 

めぐり「い、いやぁぁぁぁぁぁ!サンドイッチはいやぁぁぁぁぁぁ!」

 

特にサンジェルメンのサンドイッチは……。

 

露伴「済まない……やはりそうだったか……少し考えれば分かるものだったのだがな……」

 

めぐり「ごめんなさい……露伴ちゃん……」

 

昔から私はサンドイッチが嫌いだった。何でかはわからないけど……。

パンやハムとか、別々にしてあれば食べられるんだよ?でも、それをサンドイッチにすると……。

ハンバーガーも嫌い。あれも1つのサンドイッチだし。

 

露伴「ハーヴェストの本体、矢安宮重清君を最後に目撃した東方仗助は、彼がサンジェルメンのサンドイッチを入手できていたことに喜び、そしてそれが無くなっていたことに酷く固執していたらしい。もしかしたらそのサンドイッチが吉良吉影と関わってしまった原因ではないかと僕は思った。思い出したのは買った後にだったがね。代わりに義輝君から貰った(正確にはふんだくった)これを口にすると良い。後で改めてしっかりとした食事を取ろう」

 

そっか……重チー君の……。

ほんのわずかだけど、私のスタンドは元々重チーくんと彩さんのスタンドを借りているものだものね。

だから記憶には無くても、無意識にそれが出ていたんだ。昔から………。

 

めぐり「重チー君のパパやママも……杜王町にいるのかな?会いに行かないとね……」

 

露伴「もう会っているんじゃあないかな?君自身ではなく、シンデレラ・ハーヴェストが」

 

めぐり「シンデレラ・ハーヴェストが?あ、あれ?そう言えばなんで私……スタンドパワーが出っぱなしに…」

 

言われて気が付いたよ!いつの間に私はシンデレラ・ハーヴェストをそこらじゅうに出してる!戻さないと!

そしてそこら中に散っていたシンデレラ・ハーヴェストが戻ってくる。

 

露伴「ここに来る前に、僕と義輝君は町のあちこちを回った。そして各地でシンデレラ・ハーヴェストが佇んでいた。それらの全ては吉良吉影、杉本鈴美、辻彩、そして矢安宮重清君に縁があるところだった。だからこそ、君がここにいる確信が出来たんだけどね」

 

露伴ちゃんは私を探してくれていたんだ。

それも、お昼を抜いて………。

 

露伴「そろそろかな?」

 

ん?今度は露伴ちゃんは外を気にし始めた。

あと義輝君やアーシスのみんな?隠れて見ているのはどうなのかなぁ。

それも、お墓に隠れて……。眠っている皆さんに凄く怒られるよ?

あれ?車が一台、駐車場に停まった。そして広瀬一家が降りてくる。

 

康一「ハンゲツを連れて来たよ?露伴先生。相変わらず強引だよねぇ……いきなり僕の家の犬を連れて鈴美さんのお墓まで来い……なんてさぁ。まぁ、鈴美さんのお墓参りは元々するつもりだったから良いんだけどさ…」

 

由花子「あら、めぐりちゃんじゃない。杉本のご両親のお墓参りかしら?感心ねぇ。露伴先生もご両親に挨拶でもしていたのかしら?」

 

康穂「ちょっ……ハンゲツ!どうしたの!?急に暴れて……いつもは大人しいのに……」

 

ハンゲツ「ワウ!ワウ!ウー………ワウッ!」

 

一匹の大型の犬が私と露伴ちゃんに向けて走りたがっている。

その目には………どこか見覚えが………。

もしかして!ううん!きっとそうだ!

 

めぐり「アーノルド………?」

 

ハンゲツ「!!!ワウッ!ワォォォォン!」

 

康穂「キャッ!」

 

とうとうハンゲツちゃんのパワーに負けて康穂ちゃんがリードを離してしまう。そして、ハンゲツちゃんは私めがけて走り、そして飛び付いて来た。

私は勢いに負けてハンゲツちゃんに押し倒される。

 

ペロペロペロペロ……

 

めぐり「アーノルド……アーノルドォ!」

 

ハンゲツ「クゥン………ワウッ!ヘッヘッヘッヘ……ペロペロ」

 

めぐり「あははは!くすぐったいよ!アーノルド!」

 

嬉しいよ……まさかアーノルドも転生して……そして私の事を覚えていてくれたなんて……。

 

康穂「信じられない……ハンゲツは家族以外にはなつかないのに……」

 

康一「まさかハンゲツがアーノルドだなんて……なんで僕に一番なついているんだろうって思ったけど……そっか。アーノルドとは僕も会ってたからね……お姉ちゃんになついて来たから気に入って買った犬だったけど…」

 

露伴「………やはりか。虹村形兆に聞いた。今朝、君がオーソンに供えた花に過剰に反応した犬がいるってね。まさかとは思ったが、君達の例があるからね。試しに会わせてみようと思ったのだが……正解だったようだ」

 

これも露伴ちゃんが!?

素敵だよ露伴ちゃん!まさかアーノルドとも再会させてくれるなんて………。

 

ハンゲツ「ワゥ!」

 

露伴「ん?まさか君、僕の事も覚えてくれているのかい?」

 

そうだよ。だってアーノルドは露伴ちゃんを小さい頃から見ていたんだもの。それに、あの導かれし小道でも何度か会っているしね。露伴ちゃんの臭いを覚えていたって不思議じゃあないよ?

 

めぐり「ねぇ、露伴ちゃん……私を見て?私の目を…まっすぐに見て」

 

露伴「ん?何だ?」

 

うん。露伴ちゃん。これが私の気持ちだよ?

 

めぐり「アーノルド………見ていてね?」

 

ハンゲツ「ワウッ!」

 

私は露伴ちゃんの首筋に抱き付き、そして……

 

チュッ………と唇にキスをした。

 

露伴「なっ!」

 

めぐり「婚約のキス……だよ?露伴ちゃん。露伴ちゃんはウルフスの戦いが終わったら、この杜王町に帰って来るんだよね?だったら……私もここに住むから。岸辺めぐりとして……あなたと一緒にいる。この杜王町で…」

 

さっきまでの私は杜王町を忌避していた。でも、思い返してみればこの杜王町は嫌な思い出ばかりだけじゃあ無かった。

何より、露伴ちゃんが生まれ、そして杉本鈴美と露伴ちゃんが二度も出会った町……それが杜王町だよね?

露伴ちゃんと一緒なら……私は杜王町が好きになる。また誇り高い町になる……。

 

露伴「………君が大学を出るまでは僕も千葉にいる。そして一緒に帰って来れば良い。岸辺露伴と岸辺めぐりとして……『ジョースケ』の名ぐらいは甘んじて受け止めよう。悔しいことに、『ジョースケ』の名前を受ける屈辱と君、二つを天秤にかけた時、天秤は君の方が重かったらしい」

 

あの露伴ちゃんが大嫌いな東方会長と同じ扱いを受ける屈辱を甘んじて受けるくらいに私の事を大事に想ってくれているんだ……。

 

露伴『ああっ!寂しいよ!僕だって正直いなくなって欲しくなんかないさ!』

 

鈴美が成仏するときに言ってくれた露伴ちゃんの言葉が思い出される。

鈴美としての最後の素敵な思い出……。

もう……寂しい思いはさせないよ?そして……もう寂しくなんかないよ?露伴ちゃん……。

 

めぐり「ずっと一緒だよ!露伴ちゃん!」

 

←To be continued




はい。今回はここまでです。

第3章の時に康一が新しい犬を飼い始めた……。という描写を覚えて頂けたでしょうか?
その時からその犬=アーノルドとは決めていました。
ちなみにハンゲツはスタンド使いではありません。

ハンゲツの名前の由来は………。
城廻は神奈川県鎌倉市の地区の1つ。
しかし鎌倉の銘菓である鳩サブレーは原作の段階で由比ヶ浜の犬であるサブレが使っている。
なので別の銘菓として鎌倉の銘菓、半月を名前にしました。
めぐりがサンドイッチが嫌いなのは重チーの最期に由来しています。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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