やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

629 / 731
そして虹村億泰と虹村京は再会し、現代へと至る

side虹村億泰(現代)

 

結衣「ぐす……ぐす……悲しいよぉ……こんな過去があったなんて……」

 

雪乃「………億泰さん………立派だったわ……」

 

本当にこいつらはいい奴だな。俺なんかの話を聞いて感情移入してくれるなんてよぉ……。

 

結衣「それで……どうなったの!?京さんはどうなったの!?」

 

どうなったって………まぁ、今の通りなんだけどよぅ。

まぁ、最後まで話してやるか。それからどうなったかってのをよ。

多分、それを知りたいんだろうし。

 

side虹村億泰(2001年春)

 

京と那由多が矯正施設に送られた。そして俺達は再び日常へと戻る。

平和で退屈な日常へと………。俺にとっては余計に退屈だった日常だった。心にポッカリと穴が空いたような日常……。たった1週間だったが、京と那由多は完全に俺の心の一部となっていた。

あれから仗助は未起隆から連絡を貰って噴上を治療した。何度も重症を負っては、短期間で謎の復活を果たす噴上にぶどうヶ丘総合病院は頭を悩ませ、しまいには噴上の回復力の秘密を探ろうと医師会は躍起になったという話だ。京を助けてくれた恩義を返しておきたいところだけどよぉ、俺なんかじゃ何の助けにもならねぇからなぁ。

また、露伴のバイクについては直してバイクを返しに行った時に露伴が旅行から帰って来てまたケンカになったんだってよ。仗助は仗助で肝心な時にいなかったって事で罵り合っているし、また殴り合いのケンカになっちまった。あの二人の仲はどこまでもこじれるようになってるのかねぇ?

康一は相変わらず由花子とイチャイチャしている。けっ!寂しくなんかねぇんだからなぁ!

俺は俺で卒業後の就職活動をしながら暇を見付けては京に何度も会いに行ったんだけどよぉ……。京は全てが終わるまで楽しみにしておけってあっちゃあくれなかった。

差し入れを持っていく度に手紙をくれるし、早く外で俺に会いたいって書いてくれているからよぉ……元気であることは間違いないって事だよなぁ?治療の方も承太郎さんの紹介で良いカウンセラーが付いたって話だしよぉ。何でも12年前のエジプトまでの旅で少しだけ同行したアンって人らしい。つまりはスタンド使いの事については少しは知っている心強い味方って訳なんだよなぁ。

俺の家を襲った奴については未だにわかってねぇ。あれから不気味なくれぇに何も起こらねぇんだよ。

あれから半年……進級が危ぶまれていた俺だったけどよぉ、学校の教師である仗助のお袋さんや康一や由花子の協力で無事に俺は進級を果たした。仗助の野郎に至ってはそれに便乗して成績を上げてやがる。承太郎さんとジョースターさんはその仗助の意外な頭の良さに何かを企んでいる様子だ。もしかしたらSPW財団は仗助と康一を……。

わかってるんだ。この二人はジョースター家から認められている。本人が望む望まないに関わらず、二人は杜王町なんて小さな町で収まる程の小さな器じゃあねぇってよ。

だから俺も力を付ける。安心して二人が杜王町を離れられるように……俺が一人でこの街を守っていけるように。そして、いつか二人がとんでもねぇ事に巻き込まれたら、すぐに助けに行けるように……。それが俺と京と那由多の三人で誓った約束だ。俺達の友情は不滅なんだぜ?仗助、康一。

 

そして、この春、新たな事件が俺達を襲っていた。

といっても、スタンド使いに襲われたとかそーゆー血生臭い話じゃあねぇ。

当事者の康一からしてみたら大事件だろうけどよぉ。

いつものカフェ・ドゥ・マゴに俺達は大切な相談があると康一に呼び出されていた。

 

億泰「由花子が妊娠したぁ!?」

 

康一「しぃっ!億泰君………声が大きいってば!」

 

康一に注意されて慌てて俺は口を手で覆う。

 

仗助「だからよぉ……いつもそっちの方は気を付けろって言ってただろうがよぉ……あちゃぁ……どうするんだよ。今の成績のままだったらよぉ、東京の大学だって夢じゃあ無かったってのによぉ……」

 

SPW財団は既に康一獲得に動いていた。康一も将来を見据えて財団に入る決意をしている。その為の第一歩としてキャリア幹部候補生になる事を目標としていた。

東京の大学に入ることもその足掛かりだ。そして力を付けてSPW財団東北支部勤務で帰ってくると康一は言っている。

だけどよぉ……こんなことになっちまったらよぉ…。

 

康一「どうしよう……責任取らなきゃ……でも、そうしたら承太郎さんやSPW財団の期待を裏切る事になるし……でも、僕は由花子さんも大切だし……」

 

仗助「マジかよ……承太郎さん、怒るかなぁ……」

 

承太郎「既に状況は知っている」

 

うおっ!いきなり承太郎さんから声をかけられてびっくりする俺達。話に夢中になりすぎて気が付かなかったぜ。

 

仗助「承太郎さん!?いつ日本に?」

 

承太郎「緊急の事があってな……それでお前達に頼みがあってやって来たんだ」

 

承太郎さんが俺達に頼み?珍しい事もあるもんだなぁ。

それも、電話とかじゃあなく、わざわざ杜王町まで足を運んでなんてよぉ。

 

承太郎「康一君………俺は君に用があって来た。家に行ったら、君のお母さんとお姉さんから山岸由花子との話を聞いてな……。今後、君はどうするんだ?」

 

承太郎さんに睨まれ、康一は俯く。

 

康一「すみません、承太郎さん…。僕は由花子さんを放って自分の目標だけに進むつもりはありません。僕も働きながら、家庭を支えて行こうと考えています」

 

承太郎「SPW財団や俺の期待を裏切ってまで……か?」

 

承太郎さんよぉ……らしくねぇじゃあねぇかよ。まるでそれじゃあ、康一に由花子を捨てて仕事に邁進しろって言っているように聞こえるぜぇ?

 

康一「………はい。承太郎さんには申し訳ないですけど」

 

承太郎「ヤレヤレだ………康一君……」

 

承太郎さんはふぅ……と、ため息をつく。怒りだすのかなぁ、承太郎さん。下手したらスター・プラチナが…。

 

承太郎「それを聞いて安心した。やはり君は俺やじじいが思った通りの男だった。家族や家族になろうとしている者を捨てて、自分の事を考えるような男じゃあないと思っていた。安心して君をSPW財団に迎え入れる事が出来る。家族ひとつ守れない……守ろうとしない男に俺達の背中は預けられないからな。俺が言えた義理じゃあないが……」

 

承太郎さんはポケットから手を出して康一の肩に手を置く。

 

承太郎「もし、君が山岸由花子を見捨てるような事を言っていたら、それこそ俺は君を見捨てていた。だが、君は俺の期待に応えてくれた。金の事なら心配いらない。君という人材が得られるというならば、ジョースター家が君に投資する形として支援をしよう。安心して学業に励み、彼女の事を守っていくと良い」

 

男だぜ……承太郎さん。それでこそ、俺の憧れの人だ。

 

康一「承太郎さん……でも、ただで……というわけには……」

 

承太郎「そうか……ならば1つ、仕事として頼まれてほしい。元々俺は君にある依頼をしに来たんだ。イタリアに行き、ある男の調査を隠密でして欲しい」

 

承太郎さんはポケットから写真を取り出す。

そこには黒髪の……俺らとそう年の変わらない男の隠し撮り写真が写っていた。

 

承太郎「この男の名前は汐華初流乃。理由は伏せるが、これは俺や仗助のようなジョースターの血統ではダメなんだ。そこで君だ。君のスタンドなら、そういうことに向いている」

 

康一「その汐華初流乃君は……スタンド使いなのですか?どうしてジョースターの血統では駄目なんですか?この子は一体………」

 

そう康一がそう言うと、承太郎さんは押し黙った。

もしかしたら半年前の事で……だから承太郎さんは康一を頼ったんじゃあ……。

 

承太郎「理由は聞かないで欲しい。相手はスタンド使いかも知れないし、そうでないかも知れない。ただ、一筋縄ではいかない相手だ……だから特別手当てとして君にこの仕事を依頼する。ただで援助を受けるのが心苦しいと言うならば、互いに納得する落としどころとして受けてくれれば良い。受けてくれるか?康一君」

 

承太郎さんは康一だけを君づけで呼ぶんだ。それは承太郎さんが康一に対してひとかどの男として認め、敬意を持って接しているって仗助から聞いたことがある。

康一もそんな承太郎さんの信頼を理解しているらしい。だったら康一は………。

 

康一「わかりました。あなたの依頼を受けます」

 

康一は力強く、承太郎さんに答える。広瀬康一が杜王町から巣立つ最初の瞬間ってぇのを俺は見た気がした。

 

仗助「だったらよぉ、康一ぃ。イタリア語を話せるように露伴の奴にお願いしようぜ」

 

康一「そうだね。行こう、億泰君。では承太郎さん…僕の家で……」

 

承太郎「待て、億泰。俺はお前にも用事がある。悪いが二人だけで話がしたい。仗助と康一君は別行動をしてくれ。終われば康一君の家で待っている」

 

俺に用事?何だろう……俺にも何か仕事があるのかなぁ。俺が承太郎さんの力になれるなんて思えねぇんだけどよぉ。

 

仗助「そうっすか。じゃあ承太郎さん、また近い内に遊びに連れてって下さいよ?億泰ぅ、また学校でなぁ」

 

仗助と康一はカフェを後にする。

 

承太郎「億泰。お前に聞いておきたい。仗助と康一君の今後の事だ」

 

仗助と康一の今後?

 

承太郎「仗助は死んだおじいさんの後を継いでこの街を守って行こうとしている。だが……あいつの才能はこの街で収まるような器じゃあない」

 

やっぱり承太郎さんもそう思っていたのかよ。俺もそう思っていたんだ。仗助はジョースターの血統だ。ジョースターの血統は、こんな街で収まる器なんかじゃあねぇ。

 

承太郎「だが、この町は不穏だ。吉良吉影がいなくなったところで、安心できる町じゃあない」

 

億泰「………俺が守りますよ。承太郎さん。仗助や康一が安心してこの町から出ていけるように……俺がこの杜王町を守っていきますよ……。俺は仗助や康一のような器はねぇ。その役目は俺で充分なんです」

 

俺がそう言うと、承太郎さんはため息をまたつく。

 

承太郎「ヤレヤレ……勘違いしているようだから言っておくぞ?億泰。俺はお前の事も買っている。認めているんだ。お前がいるから……お前のような黄金の魂を持つものがいるから、俺は仗助達を世界に連れていくんだ。お前がいるなら、この町は大丈夫だと……」

 

承太郎さんが……俺を認めてくれている……だって?嬉しさが込み上げてくる。涙が……出てくるじゃあねぇかよぉ。

 

承太郎「頼んだぞ、億泰。この杜王町を…俺や仗助の代わりに守ってくれ。ここは千葉に近い。千葉も今後は不穏な動きがあるかも知れない。その時は……お前達がこの杜王町を守れ」

 

千葉が?千葉に何があるって言うんだ?さっきの汐華初流乃と何か関連があるのか?

だけど、何があろうと俺はこの杜王町を守る。仗助や康一の分まで……。もう俺の気持ちはずっと前から決まっていた。

 

億泰「任せて下さいよ、承太郎さん!俺は京や那由多に誓ったんです!この町を守るって……この杜王町を兄貴や吉良みてぇな奴から守っていくって……。それがあいつらへの俺の罰であり、誓いなんッス」

 

この気持ちは……ぜってぇに忘れねぇ。もう俺の目の前で関係ない誰かが死んでいくなんて事は……させねぇ。

 

承太郎「そうか……だったら、お前に会わせたい奴がいる。お前の決心に力になってくれる奴だ」

 

承太郎さんは腕をスッと上げる。

誰だ?承太郎さんは誰に会わせようとしているんだ?

そしてそいつが出てくる……。

あ、あいつは……まさか………あいつは!

 

京「帰ってきたわ。億泰。久し振りね」

 

億泰「きょ、京!」

 

会いたかった……。ずっと会いたかった……。やっと会えた…。帰って来てくれたんだ……。

 

承太郎「後は二人で話せ。これはお前の決心に対する俺からの礼だ。そして京、もうお前は自由だ。好きに生活していけば良い。幸せにな……億泰、京」

 

そう言って承太郎さんはカフェから出ていった。

 

億泰「オメェは……京なのか?那由多なのか?」

 

那由多「那由多よ。億泰」

 

じゃあ……消えちまったのは京なのか……。人格が1つになったと言うならば……京は消えちまったんだよなぁ。京と那由多……俺は二人に……

 

那由多「なに?その残念そうな顔は。京?大丈夫なのかな?この男は」

 

京「そうね。やっぱりこの町は億泰だけには任せられないわ。私達が支えていかないと」

 

億泰「きょ、京?オメェも……オメェもいるのか!?良かった……二人がどっちもいてくれて良かった……」

 

こんなに嬉しい事はないぜ!でもどうして……。

 

那由多「本当は治療が上手くいって、覚悟したとおり私は京と1つになるはずだったの。他の人格もどんどん京と1つになっていって……虹村那由多もその1つになるはずだった……。だけどね?京がそれを拒んだの。億泰にも京にも私が必要だって……アンさんが言っていたけど、そういうケースもあるみたい。統合人格となりうる副人格だけは……安定した後でも主人格を守るために残ることがあるって。私は京の中にある統合人格になっているんだって」

 

そうなのか?俺には難しくてよくわからねぇ……。わからねぇけどよぉ……京と那由多が消える事なく帰って来てくれただけでも俺は嬉しい……。また柄にもなく涙が出てくるぜ……。

 

那由多「また泣く。やっぱり億泰は私がいないとダメね?」

 

億泰「うるせぇ!これは嬉し涙だ!オメェらにまた会えたんだからよぉ!こんなに嬉しい事はねぇよ!」

 

那由多「そう。そう言ってくれただけでも嬉しいわ。ところで億泰」

 

億泰「あん?」

 

那由多「私、まだ住むところも仕事も決まってないの」

 

そうなのか?だったら探す必要なんてねぇ。オメェが住むところなんて決まってるじゃあねぇか!

 

億泰「だったらよぉ。俺の家に住めよ。オメェの俺への復讐だってよぉ。俺の傍にいりゃあよぉ。手間がなくて良いだろ?」

 

那由多は俺の言葉を聞いて、笑う。

 

那由多「一生かかる復讐になるわよ?それこそ、あなたの人生の全てを使って……私に償うの。その覚悟はある?億泰」

 

億泰「ああ……俺は一生かけて……オメェに償っていくぜ……」

 

那由多「………決まりね。じゃあ帰りましょう?私達の家へ……あの妖怪洋館へ……」

 

そうして俺と那由多は帰路につく。

ポッカリと穴があいた心は……無くなっていた。

 

那由多「自分でも何を口走っているのかわかってないわね?億泰は……」

 

京「これから少しずつ、わからせてあげましょう。半年前に……億泰は私にプロポーズしたって自覚を……」

 

なんか小声で言ってたけどよぉ。俺は……浮かれていて聞こえなかったんだよ。

 

キングクリムゾン!

 

あれから数年……高校を卒業して俺は就職した。仗助はアメリカに留学し、康一は由花子と学生結婚をして東京の大学へと行った。

俺はあいつらの分までこの町を守り続けている。

稼ぎの少ない仕事だったけど、京と那由多が上手くやりくりしてくれ、貯金も貯まりつつ家の修繕も進んでいる。妖怪洋館なんて名前も消えつつある。

京は俺や親父、猫草の前でしか表にでない。そんな形でも上手くやっていけた。

俺は幸せだった。

そして………

 

億泰「やっちまった………」

 

とうとう、俺は京と那由多の魅力に逆らえずに手を出しちまった。後悔はしていねぇ。俺は京と那由多を愛している。一生かけて守ると誓っている。けど、二人は俺なんかよりもずっと似合いの男がいると思って今まで手を出さなかったのによぉ。

 

那由多「良かったわよ?億泰。京と二人分、お疲れ様」

 

億泰「ああ………済まねぇ……」

 

京「なぁに?後悔しているの?私とあの子、体は1つだけど、二人とやっておいて今更?」

 

ベッドの中で、俺達は手を繋いでいる。

 

億泰「後悔なんてこれっぽっちもしちゃいねぇ…俺は全く後悔なんてねぇ……オメェらが良ければ……責任なんていくらでも取るぜ……」

 

那由多「責任って?」

 

億泰「け、結婚とかよ?俺なんかがオメェみたいな良い女に釣り合いが取れてるなんて思っちゃいねぇ……。だけど、オメェさえ良ければ……俺は何だってするぜ。俺は京も那由多の事が大好きだからよ……」

 

すると那由多か京かわからねぇけど、どっちかがため息をついた。

 

京「億泰……あなたって何年も経つのに、相変わらずバカなのね?」

 

クンクン…俺の臭いを嗅ぐって事は…こいつは京か。

まぁ、俺の頭の悪さは相変わらずだからよ?バカって言われても頭にこねぇや。

 

京「私とあの子は、もうとっくにあなたと結婚しているつもりでいたのよ」

 

な、なんだって?いつの間に?

クンクン……

 

京「私の精神が安定しているのは、あなたの臭いが近くにあるからよ。あなたの臭いが……私の精神安定剤なの。そんな事もわからないで、何年も一緒にいたの?いつもいつも、あなたを誘っていたのに…」

 

嘘だろ……てっきりいつものからかいだと思っていたぜ。それに後ろめたいからよ?我慢するのは大変だったけどよ?

 

那由多「私達の男性不審は、一生治らない。でも、あなただけは特別なの。億泰……この杜王町、この家、万作さん、もう元気が無くなっているけど猫草、そして億泰……その全てが私達の特別……。その場所を守ってくれている億泰は特別……。好きよ、億泰……バカで不細工でおまけに鈍感でデリカシーがなくて臭いもあるけど……そんなあなたが大好きよ……」

 

那由多……京……。

 

億泰「ああ……俺もだ……なぁ京、那由多……結婚してくれ。本当の意味で……虹村京になってくれ」

 

京「今更よ。バカ………これで復讐の第一段階は終わり。これからも、億泰には私の復讐に付き合ってもらうわ。次の復讐は……私の事を一生、幸せにすることよ?覚悟は出来てる?億泰」

 

いくらでもしてやるぜ!俺はお前なしじゃあ生きられない。大事な大事なお前を……この町を……俺が生きている限りはいつまでも守ってやるぜ!

この虹村億泰がなぁ!

 

 

side虹村億泰

 

那由多「これで私達の話はおしまい。どうだった?」

 

結衣「うう………ぐすっ!良かったよぉ……億泰さんも、京さんも、那由多さんも………ぐすっ!みんな幸せになれて良かったよぉ…」

 

おいおい由比ヶ浜よぉ……。だから言ってるじゃあねぇかよ。俺と京は結婚しているし、兆だって生まれてるんだからよぉ。

 

雪乃「でも、良いお話だったわ……。京さんも那由多さんも………今、ここでお話ししているのは那由多さんなのね?」

 

那由多「そうよ?京は億泰や兆、義父さん、カマクラの前でしか出てこないの。仗助や康一のまえですら滅多に出てこないんだから」

 

億泰「基本的に人前で出てくる京は那由多だ。その上で京が出てきた時は辛辣な言葉を浴びせる時だけなんだよ。それでもよぉ、俺の前では京も可愛いんだぜ?ずっと俺に引っ付いてクンクンと臭いを嗅いで来るんだ。それが堪らなく可愛くてな?その後は……ついつい……こうガバァッと………」

 

スパァン!

那由多がスリッパで俺の頭を叩く。

いや、この目は京だ……。

 

京「人前で何を言っているの?億泰……。ホントにあなたはいつまで経ってもバカで鈍感でデリカシーがなくて、おまけに体が臭いわ。それとも、今のは私を出すためにわざとやったのかしら?だとしたら意外と策士ね?億泰」

 

億泰「きょ、京!わ、悪かった!悪かったから!説教は勘弁してくれ!」

 

京「はじめまして。アーシスの三浦優美子、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣、鶴見留美……ご紹介に預かった虹村京よ。まぁ、滅多に出てこないけど……よろしくね。ちょっと旦那とあっちで話があるから、失礼するわ。さぁ、億泰……あっちでゆっくりとお話をしましょう?」

 

俺は京に引きずられて奥の部屋へと連れていかれる。こりゃぁ……長くなりそうだぜ。

 

俺の贖罪はまだ続いている。その証が五年前の屍生人との戦いで襲われる一般人を庇って噛みつかれた行動にも繋がっている。

いや、もしかしたら誓いは一度、破っちまったかもしれねぇ。助かったとは言えよぉ、俺は千葉村で由比ヶ浜が柱の一族に覚醒する時や、その由比ヶ浜を助ける為にレクイエムを使い、その反動で砕ける八幡の魂を助ける事が出来なかったからよぉ。あの時ほど、俺は絶望したことがなかったぜ……。

これからも俺はあんな風に絶望をすることがあるかも知れねぇ。

でも、止まることは許されねぇ……。

それが、京と那由多に誓った約束なんだからよぉ。

今、俺を正座させてガミガミと説教をする京。京の心の中では那由多が腹を抱えて爆笑しているに違いない。

俺の嫁で、スタンド使いで、二重人格で、臭いフェチで、そして俺に復讐心を持つという奇妙な女。

でも、こんな嫁との生活は……俺は気に入っているし、幸せだ。

こんな細やかな幸せを守る為ならよぉ、俺はいくらでもこの身を差し出すぜ?

なぁ、仗助……康一……安心して世界に羽ばたいてくれよ。この町は……オメェらの故郷は……俺がずっと守っていくからよぉ。京と那由多と一緒にな……

 

←To be continued




はい、これにて億泰編は終了です。

いかがでしたでしょうか?

実はこの話の続きには、億泰も仗助も承太郎もしらないエピソードがあります。
次回から海老名・承太郎編へと追っていくことになります。
億泰編ほど長くはならないかと思います。

それでは次回もよろしくお願い致します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。