side虹村億泰(現代)
結衣「なんか……億泰さん達の話とか未起隆さんの事が凄いとかもそうだけどさ……気になる事がいっぱい出て来てなんか混乱してるんだけど……」
だろうな。
特にここに侵入して来た野郎とか……色々とあるからよぉ。話が思っていた以上に大きくなって来ているから混乱してるんだろうぜ……。
三浦の奴は何か考え込んでいるようだしよ。
結衣「ね?優美子?あれ?優美子……どうしたの?」
三浦「え?あ、うん………海老名のヤツ、確かにあの当時からそうだったなーって………」
雪乃「………三浦さん?ちょっと待ってくれるかしら?今の言い方だと、昔から海老名さんの事を知っているように聞こえるのだけれど……」
雪乃がそう言うと、三浦の奴は苦虫を噛み潰したようや顔になった。何かあるな?
三浦「降参降参。億泰さんの話にもしかしたらかんけーすっから。ヒキオや承太郎もね」
お?俺の話に?全然見えてこねーんだけどよぉ。
ジョルノ「話を続けて下さい。僕にも……そして雪乃にも関係するかも知れませんから」
ホントになんなんだ?だってこれは杜王町の話だよなぁ?まぁ、良いや………。話をつづけっか。
結衣「で、決戦の場所はどこなんですか?」
雪乃「気が付かない?由比ヶ浜さん。今日、既に行ってきた所なのだけれど。京さんが隠れ住んでいた場所から推測できるわ」
ああ………名所巡りをしているって言ってたもんなぁ。
確かに杜王グランドホテルからならあそこは近いかも知れねぇなぁ。
結衣「ボヨヨン岬?」
エンポリオ「違うよ。めぐりのシンデレラ・ハーヴェストが立っていた場所………取り壊される前の、あの神社が元々建っていた場所………」
京「そう。吉良吉影の実家だった家よ……」
side虹村億泰(2000年11月)
ボーン・ディス・ウェイに運ばれながら、俺と那由多は吉良の家に向かう。
何でも京は吉良東と再会する時までは半年ほどあの家に隠れ住んでいたって事だ。
人の縁って言うのはよぉ、わからねぇものだよなぁ…。
あそこは今となっては完全に廃墟だ。
吉良吉影が住んでいたあの家は、持ち主だった吉良吉影が死んだ今となっては誰が持ち主なのか、誰が管理しているのかわからねぇ。けど、俺の家のようにはなってねぇし、誰か持ち主はいるんじゃあないかって思っていたんだけどよぉ……。
億泰「オメェが管理してたのかよ………」
那由多「案外堂々としていれば不法占拠もバレないものよ。それと、吉良吉影のバックボーンが逆に私を守っていたこともあるわね」
吉良吉影の家は杜王町の別荘地にある。
といっても別荘地に吉良の家が建った訳じゃあねぇらしい。元々侍の時代からあった吉良の先祖代々の家の周りに別荘地が建ったってぇ話だ。
確かに見晴らしが良いもんなぁ。ボヨヨン岬とか。
吉良はあの写真の親父とかがだいぶ年がいってから生まれた子供らしいってことは去年、吉良の家に一緒に来た承太郎さんが言ってたっけ。
弓と矢や、写真の親父のインパクトが強すぎてすっかり忘れちまってだけどよぉ。
那由多「まぁ、吉良の親戚ってことにして堂々と普通に生活していれば意外と何とかなっていたのよね。家の片付けは………ほら、京は手の臭いを気にしていたから生活環境を清潔にしたかったのよ。電気も水もガスも通っていない場所だったけど、工夫次第じゃあどうにでもなった。雨風を凌げて寝れれば良かったから。そういう意味では最高のねぐらだったかな」
億泰「風呂や飯とかはどうしてたんだよ」
京「どうとでもなったわ。ここって適度に都会、適度に田舎でしょ?農家や個人の食堂とか、探せば何とでもなるものよ。最近じゃあどこもうるさくなったけど、贅沢を言わなきゃ………ね。国○町とかの裏の風俗で働くってのが一番手っ取り早くて稼げたんだろうけど、父親のあれが原因でこんなことになっているからトラウマになっちゃってね。軽い男性恐怖症になってるのかも」
億泰「……のわりには色仕掛けとかしてこなかったか?」
那由多「あんたくらいの野獣に襲われたなら……この先どんな男に体を触られても大丈夫だと思ったのよ。最低の体験を経験しておけば、ああ……あのときよりはましだと思うでしょ?」
億泰「テメェ!何てことを言いやがる!確かに俺は仗助とか噴上に比べたら顔の出来は良くねぇけどよ!そりゃ言い過ぎだろうがよ!」
くそっ!そういう意味で色仕掛けとかしてきたのかよ!いくらなんでもヒデェ!本気で泣けてきたぜ……
那由多「プッ!クスクス………アハハハハハ!何?本気で泣いてるの?冗談よ、冗談!」
冗談に聞こえねぇよ!俺はテメェのように整った顔をしちゃいねぇんだからよ!モテねぇ男の純情を弄ぶんじゃあねぇ!
那由多「でもね億泰………。あなたなら……本気で抱かれて良いって……思えたのよ。短かったけど……普通の人間の生活が出来た……虹村の家は……暖かかった。楽しかったわ……本当に……」
何だよそりゃあよ……まるでそれじゃあよ……。
億泰「最後の……別れみてぇじゃあねぇかよ……まるでこれから死んじまうようなよ……オメェはこれからもあの家に居付くんだろぅがよ……生きてあの家によ……なぁ、そうだろ?」
那由多「生きて帰るつもりだし……もちろんあの家には居付くつもりよ。あなたへの復讐は……吉良京にとってはそれこそ長期戦になりそうだもの。でもね……億泰。吉良那由多は……もしかしたら……あの男への復讐が終わった時……消えてしまうかも知れない」
なんだよそりゃあよ!わからねぇよ!
那由多「あの男は……吉良京にとっての最大のトラウマよ。そのトラウマが無くなれば……私は京と1つになるかも知れない。別れていた人格が、元通り1つになるかも知れない……。これが……吉良那由多として億泰と出来る最後の会話かも知れないわ……」
億泰「何でだよ………消える必要なんてねぇじゃねぇかよ……京がいて、那由多がいて……それで楽しくやれば良いじゃねぇかよ!寂しいことを言うなよ!せっかく生まれて来たのによぉ!」
那由多「ううん………多重人格症は……治さなければならないの……。このまま京が壊れていたままなら……私は京でも那由多でもない別の『吉良京』が次々と現れるかも知れない。中には虹村形兆や音石明……それに吉良吉影……そしてDIOのような存在になりうる『吉良京』が生まれるかも知れない……。そうなった私を…あなたは殺す運命にあるわ。それが私とあなたの誓いでしょ?」
億泰「………ぐぅぅぅぅ」
涙しか出てこなかった。それじゃあよ……那由多は生まれて来なかった方が良かったって聞こえるじゃあねぇかよ……。どうなっても那由多はいなくなる運命だなんてよぉ……スタンド使いってのは…結局はそういうのがついて回るのかよ……。
那由多「泣かないでよ億泰。例え私が消えても……それは京と私が1つになるだけ……。元々私は京の一部なんだから……でも……そうね。抱かれる時間はないけれど………」
チュ………
不意に那由多は俺の唇にキスをしてくる。
那由多「もしかしたらこれが最初で最後かも知れない、吉良那由多としての男性経験。覚えておいてね?億泰。このキスを……」
……忘れるかよ。忘れてたまるかよ…。戦いに向かうスタンドのバイクの上で……色気も何もねぇこんな場所での初めての女の子との悲しいキス……。
思えばよぉ……俺は那由多に恋をしていたかも知れねぇなぁ。那由多は俺の事をどう思っていたのかわからねぇけどよぉ………。
億泰「那由多……俺は………オメェの事がよぉ……」
那由多「………消える女にそこから先は言わないで。とても残酷だわ。私の事を想うなら……京を守ってあげて……億泰……」
億泰「那由多ぁ………」
俺は見てられなくて、泣きながら空を見た。夜の杜王町の空からは、今年初めての雪がちらほらと舞っていた。
温暖化とか言われていて年々初雪が遅くなっているのは東北の杜王町でも変わらねぇ……。11月に雪が降るなんてのは……何年ぶりになるのかな。
積もるような雪じゃあねぇ。本当にちょっとだけ舞うような淡い雪。少し触れれば消えちまう雪は綺麗で…儚くてよぉ…まるでこの雪が那由多の人生のように思えたんだよ……。
柄にもねぇって思われっかもしんねーけどよぉ…。本当にそう思っちまったんだ…。
残酷だよなぁ……本当によぉ……。これが俺の罪に対する罰だってんならよぉ……。こんなに計算された罰はねぇよなぁ。
京と那由多よぉ……ある意味でオメェらは俺に対して復讐完了だぜ?こんなに絶望を感じたことなんて……好きな女がいなくなっちまうなんて……絶望しかねぇよ。
この時間が……永遠に終わらなければ良いのによぉ。
ドラマとかでこんな言葉を聞いたときはよぉ……嘘臭くて鼻で笑ってたけどよぉ……。これも報いなんかなぁ。
俺は………そんな事を考えながら……空に舞う雪をじっと見つめていた……。
キング・クリムゾン
どんなに永遠を願っても、このまま時間が止まって欲しいって思っても……時は待ってくれねぇし、逃げることは許されねぇ。
承太郎さんのスター・プラチナだってほんの1秒か2秒しか時は止められねぇ。
ならばよぉ……もう進むしかねぇよなぁ。
せめて那由多が笑って京と融合できるようによぉ…。それがせめてもの……俺が京と那由多に出来る精一杯の事だ。
京と那由多の復讐を果たし、この街を守る。
もう覚悟は決まったぜ……。同じメソメソと泣くっつぅんならよぉ……前に進まずに泣くなんかよりも、やることをやってから自分のバカさ加減に後悔して嘆いた方がよぉ…実に俺らしいじゃあねぇかよ……。
億泰「行くぜ………京、那由多……」
那由多「ええ………」
億泰「ザ・ハンド!」
ガオオオオン!
俺はザ・ハンドで因縁深い吉良吉影の家……そして京の隠れ家だった玄関を削る。
先手必勝だ……チマチマやって吉良東が迎撃体勢を整えちまう前に、こっちから奇襲をかけてやる。
いるかどうかもわからねぇけどなぁ!
玄関を消し去り、家の中に突入する。
くれぇから良く見えねぇけどよぉ、一度は入ったことがある家だ。構造は忘れちゃいねぇ。
けど………
億泰「いねぇ……だと?」
ちくしょう。ここは外れだったのか?
那由多「!!億泰!危ない!」
あ?
ドスッ!
億泰「ぐあっ!」
背中にナイフが………いつの間に攻撃されていたぁ!
ピルルルルル……ピルルルル……。
まるであの時みてぇに………吉良の親父がかけてきていた電話の横に置かれていた携帯電話が鳴る。
俺はそれを取り、電話に出る。
東『やっぱり戻って来やがったんだなぁ!?京よぉ!まんまとかかりやがってよぉ!マーカーを付けるのにはよぉ、別に近付かなくちゃいけねぇルールはねぇんだよぉ!俺のスマイリー・ボムはよぉ!目に映せる範囲ならよぉ、離れていてもマーカーを付けることが出来るんだよぉぉぉ!』
クソがぁ!
むしろわざわざ自分から敵の能力に飛び込んじまったってのかよ!
奇襲を仕掛けたのに、逆にこっちが奇襲を受けちまった!
東『やっぱテメェはどうしようもねぇなぁ!?いつの間に男をたらしこみやがった?その男好きのする体を使ったのか?どうせならもっとマトモな男をたらしこむべきだったなぁ!』
この野郎……下品な言葉を次から次へと……。
俺だって上品とは言えねぇけどよぉ……ここまで酷かぁねぇぜ!
億泰「テンメェ……卑怯だぞ……いきなりナイフを飛ばして来るなんてよぉ……」
スタンド使いの戦いによぉ……卑怯もクソもねぇけどよぉ……いきなりダメージを食らった怒りに叫ばずにはいられなかったんだよ……。
東『ブヒヒヒィィィィ!タコかテメェはよぉぉぉ!なぁにが卑怯だぁぁぁ?テメェだって俺に奇襲を仕掛けようとしてスタンドを使ってたじゃあねぇかよ!それとも何か?テメェは良くて俺はダメだってか?随分と自分勝手じゃあねぇかよぉ!ブヒヒヒィィィィ!』
くっそぉ……言い返せねぇ……。
精神異常を起こしている野郎に論破されちまうなんてよぉ……。どこまで頭が弱いんだよ……俺ってよぉ!
キラッ!
飛んできたナイフが街灯に照らされて反射したのが見えた。ヤベェ!
ガオオオオン!
俺は慌ててザ・ハンドでナイフを消す。危ねぇ……たまたま見えたから良かったけどよぉ……あと一瞬遅ければまたダメージを食らうところだったぜ……。
那由多「億泰……今、あなたの腹と背中にマーカーを付けられている……」
億泰「だからなんだってんだよ………」
確かに脇腹に赤いマーカーを付けられているのが見えるけどよぉ……。
那由多「そこに『手』を構えるのよ!」
???
良くわからねぇ俺は、言われた通りにザ・ハンドを構える。すると、次に飛んできたナイフが吸い込まれるように消えていく。
那由多「アイツの能力は飛ばした『弾』はどんなに離れていてもそこに向かって飛んでいく。逆を言えば、
すげぇ……俺の能力を理解してそれを役立てやがった。
行けるぜ………今ならまだ、行けるぜ!
必ずオメェの復讐を遂げてやるからな……京、那由多。
←To be continued
ついに始まりました!
億泰&京と吉良東!
いったいどうやって勝利をおさめるのか!?
那由多の運命は!
それでは次回もよろしくお願いいたします!