やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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本作では第8部は関係ありません。
よって、吉良吉影と虹村京は血縁では無いという事でお願いいたします。


虹村億泰は不思議な女と出会う

side虹村億泰

 

2000年11月。杜王町

虹村家

 

億泰「よっと。これだけあればしばらくは持つだろ」

 

俺は買ってきた灯油のポリ缶を置いて門の扉を開ける。

仗助との戦いで削れちまった門も、直す金をケチってそのままにしてある。

高校を卒業して就職したら直さねぇとな。

俺みたいなのが就ける仕事の給料なんかじゃあその額が貯まるまでどれだけ時間がかかるかわからねぇけどよぉ。

門よりも先に直さなきゃあならねぇ場所もいっぱいあるからなぁ。

 

??「ねぇ」

 

そんな時だった。背後から声をかけられたのは……。

振り返って見てみると……。妙な警官帽みてぇのを被った変な女だった。

美人には美人なんだけどよぉ……目が虚ろって感じの女でよぉ……妙に寒々しかったんだよなぁ。

 

??「その家……元々ちゃんとした綺麗な家だったのよね?何でこんなに荒れっぱなしなの?特にお庭とか。とても家が可哀想で見ていられないわ」

 

……確かに兄貴がいなくなってからはそういう点では全く気を使わなくなったよなぁ……。兄貴は几帳面な性格だったからよぉ、そーゆーのは小まめにやっていたからよぉ……。でも、最近は全くやってなかったからよぉ、雑草は伸びっぱなしだし、花とかは枯れちまったよなぁ。

 

形兆『いくらボロボロになっちまった家だって、庭の手入れくらいはやる。誰だってそうする。俺もそうする』

 

済まねぇなぁ兄貴……。家をこんなにしちまってよぉ。

 

億泰「そうだよな。たまにはきちんと草むしりとかしねぇとな」

 

??「そうね。タバコのポイ捨てとかされてしまったら、そのまま火事になってしまっても不思議ではないわ。防犯の意味でも必要な事よ?」

 

億泰「忠告ありがとうよ。で、うちになんのようなんだ?一応ここは俺の家なんだけどよぉ」

 

??「ごめんなさいね。わたし、帰る家が無いの。ここまであれ放題の家じゃあ、無人の家屋かと思って……」

 

ここが廃墟かと思って勝手に住み着こうとしていたのかよ……。今の時代、物騒だしなぁ……。ホームレスの女が俺っくれぇの年代の奴らにヒデェ目に遭わされるなんて事はよくある話だ。

だから適当な空き家に隠れ住むって考えもわからなくはねぇなぁ。

 

??「ねぇ……この家ってさ、ボロボロだけども広さだけはあるよね?この家って空き部屋とかある?」

 

億泰「あるにはあるけどよぉ………」

 

俺だって一人の寂しさはキツいし、なによりこんな家でも雨風を凌げるだけでかなりありがてぇ。ましてや親父や猫草を世間の目から隠すには丁度良いからよぉ。

何とかしてやりてぇのは山々だけどよぉ、その親父と猫草の為を考えるとよぉ………。

今の親父は猫草との暮らしで平穏を得ている。ここでこの女が変に騒がれたらを考えると……。

猫草なんかが空気の弾を撃ってきてヤベエことにならないとも限らねぇしよぉ。

 

億泰「悪いんだけどよぉ……うちには病気の親父とちょっと変わった草があってよぉ……事情を知っている人間以外は立ち入り禁止なんだよ」

 

??「そう………仕方ないわね………家事とかこの庭の事とか……色々とお礼にしてあげようとか思っていたんだけど………他へ行くわ………」

 

そう言ってフラフラと仗助の家の方へと向かって言ったんだけどよぉ……。かなり消耗していたのか、足元が覚束ない……っつーの?

何だか良心が痛むっつーか………。

女はそのうちバタッと倒れちまってよぉ……。

ええい!うだうだ考えるのはやめだ!ここでこの女を見捨てちまったらよぉ、それこそ兄貴や音石の野郎みてぇに堕ちちまうじゃあねぇかよ!

親父や猫草の事で何かあったとしてもそんときはそんときだ!仗助や康一に相談すれば案外何とかなるかも知れねぇしよぉ!

俺は走ってその女の所まで走り、その細い腕を掴んで抱き上げる。

なんて軽いんだよ………。俺は女の子を抱き上げるなんて事はこれまで無かったけどよぉ、それでもこの女は軽すぎるぜ!下手したら康一よりも軽いぞ!

 

??「お姫様抱っこなんて……案外大胆ね……」

 

億泰「そんなの気にしている状態かよ!どのくれぇ食ってねぇんだよ!」

 

??「私、自分の名前以外は何も覚えてないの……。気が付いたらこの街にいて………警察なんか信用できないし…」

 

………まぁ、わからなくはねぇ。

俺だって警察は信用してねぇからな。

 

億泰「騒がねぇっつうんならよぉ……体が治るまではよぉ………うちに置いてやるからよぉ」

 

俺だってまともな人生を歩んでいるわけじゃあねぇし、こうなった親父を助けてくれる奴なんてのは仗助に会うまで無かった。基本的には他人を信用できねぇ……。

ましてや警察は特に信用できねぇ。鈴美さんを殺した吉良吉影を何年もの間、捕まえる事ができなかったわけだしよぉ……。

 

??「良いの?こんな身元がわからない女を……」

 

億泰「おりゃあよぉ……こんななりだし、実際に不良だし、見た目通り頭が悪いけどよぉ、本当に困っているって奴はよぉ……放っておけなくてよぉ……まぁ、女とかには縁がねぇから、不愉快な思いをさせちまうかもしれねぇのは勘弁してくれよ」

 

??「……変な人……。いつか女で苦労するわよ?私みたいに悪い女に利用されるわ」

 

億泰「かもな………とりあえず中に運ぶぜ?」

 

??「ありがとう………あなた、名前は?」

 

そういやぁ名前を名乗って無かったよな?

 

億泰「億泰……虹村億泰ってんだ……。おめぇは?」

 

??「京……。吉良(きょう)

 

吉良?吉良ってあの………吉良吉影………の訳がねぇか。吉良吉影は両親が歳をとってから生まれて来て、両親が死んだ後は天涯孤独だったって承太郎さんがあの事件の時に調べたみてぇだからよぉ。

俺達にしてみれば因縁深い名字だけど、吉良なんて名前は全国でも珍しくねぇ名前だもんなぁ。

確か白虎隊だか新撰組ってヤツでもそんなのがいたよな?

 

天の声『忠臣蔵の赤穂浪士だ!しかも吉良は敵側だ!』

 

俺は彼女を抱えたまま家に入る。

すると………。

 

万作「あう~?」

 

猫草「な~………ふすっ!」

 

親父が猫草を持って出迎えてくれた。

京は少し驚いている。

 

京「……本当に変わった人と草ね?」

 

億泰「驚かねぇんだな?」

 

京「あらかじめ聞いていたからかも……?それに、私だって身元不明の変な女だし、そんな私を助けてくれる人の家族だもの……そんなものもあるんじゃない?」

 

そんなものかぁ?まぁ、スタンド使いだって知ったらもっと驚くだろうぜ?普通の奴にはスタンドを見ることが出来ねぇから説明なんてできねぇけどよぉ。

 

億泰「この事は誰にも言わねぇでくれ。ベッドに運ぶけど良いか?」

 

京「………良いわ。助けてくれるんならば私の体を好きにして…。そういう覚悟が無かったわけでは無いから」

 

億泰「襲わねぇよ!おりゃあ不良だけどよぉ、そういうのはやらねぇんだよ!ましてや人の弱みにつけこんでなんて最低な事を誰がやるってんだよ!」

 

仗助程じゃあねぇけどよぉ、俺だってこう見えて純情な方なんだよ!

俺は京を兄貴の部屋に運ぶ。ほとんど処分しちまったけどよぉ、兄貴の部屋は家具とかはそのままにしてあったんだよな。なんか捨てられなくてよ…。

 

京「何人もいたわ。つけこんで来たのなんて……自分で言うのもなんだけど、私はそれなりの見た目だと思うわよ?」

 

そんなのと俺を一緒にするんじゃあねぇ。

俺は京を兄貴のベッドに寝かせて布団をかける。

ちょっと埃っぽいけどそこは我慢してくれよ。

 

億泰「ちょっと待ってろよ?」

 

俺は部屋を出て、玄関の外に出ると庭に放置してあったままのポリ缶を回収し、灯油をストーブに給油して火を付ける。

昔ながらの灯油ストーブだ。電気ストーブなんて贅沢な物は置いてねぇ。電気代もバカにならねぇからな。

 

京「…………」

 

億泰「何か作ってくるぜ。オカユで良いか?」

 

京「ええ………」

 

俺は適当にオカユを作って自分用のどんぶりに移し、ついでに親父と猫草の飯を用意すると、京の元に運ぶ。

 

億泰「……ほらよ。熱いから気を付けろよ?」

 

俺がお盆に乗せたオカユを渡すと京はそれをレンゲで掬い、ふーふーと冷まして口に運ぶ。

 

京「驚いたわ……普通に美味しい……」

 

億泰「だろぉ?基本的には家事とか全然出来ねぇけどよぉ、親父があんなになっちまってからは死んだ兄貴とで親父の面倒を見ながら生活してたからよ。料理は俺がやってたからよぉ、少しは出来るんだぜ?」

 

基本的に自炊で生活してるからよぉ。こう見えてもそれなりには料理できるんだぜ?

 

京「ごちそうさま。美味しかったわ」

 

億泰「おう。後はゆっくり寝てろよ?」

 

京「夜這いプレイが好みなの?」

 

億泰「よば………て、テメェ!俺はゼッテー手を出さねぇって言ってるじゃあねぇか!」

 

京「あら?ある意味では同意してるんだから、強姦では無いのに。我慢は体に毒よ?」

 

このアマはぁぁぁぁ!

いや、何があって記憶を無くしたのかはわからねぇけど、そっからこいつを助けた奴は善意=性欲だったんだろうなぁ。だから男の普通の善意ってのを信用出来ねぇんだろう。一種の男性不振だ。

 

億泰「俺はゼッテーオメェには手を出さねぇ。ゼッテーにだ。これまでどういう男に会ってきたかはしらねぇが、この男・虹村億泰は日本男児として紳士的に振る舞うと誓うぜ!」

 

京「ぷっ!」

 

すると京は突然吹き出し、ゲラゲラ笑い始めた。

 

京「アハハハハ!本気にしてんの!嘘に決まってるでしょ?アハハハハ!あれ本気で言ってたの?おっかしー!紳士的にだって。恥ずかしくないの?今どき」

 

つまり俺は……からかわれていたのか?

 

億泰「て、テメェ!本気で襲ってたらどうするつもりだったんだよ!」

 

京「そしたらそしたらで受け入れていたわ。それをネタにしてこの家を乗っ取るつもりだったけどね」

 

………女ってこえー。自分の男道を貫いて助かったぜ。やっぱり信念ってのは曲げちゃあならねぇよな。

 

京「……それにしても驚いたわ。あなた、本当に一人でこの家を切り盛りしてるのね。とてもそうは見えないのに……」

 

京は急に真顔になってそう言ってくる。

去年兄貴が死んでからは確かに俺一人でやっていたからな。要領悪くて色々と不便になってるけどよぉ。

 

億泰「まぁな。色々とあったんだよ」

 

京「ふふふ………。大変ね?あなたも」

 

億泰「記憶を無くしてるオメェも大変だと思うけどな。とにかく、早いところ体力を回復させてくれよな。じゃあ、俺は家の事をやって来るからよぉ」

 

俺はそう言って兄貴の部屋を出る。

………女って、良い臭いがするんだな………。

 

キング・クリムゾン!

 

翌朝……みそ汁の良い臭いが鼻孔をくすぐり、俺は目を覚ました。

……………良い臭い?

どういう事だ!?

俺は慌ててキッチンに急ぐ。

 

京「あら、おはよう」

 

億泰「………どういうこった?これは………」

 

京「うふふ………一宿一飯の恩義よ」

 

テーブルの上には京が用意したであろう朝食が並んでいる。俺が作る物なんかよりもはるかに良い食事が並んでいた。

 

億泰「体はもう良いのか?」

 

京「ええ。お陰でもうバッチリよ。あ、お風呂も頂いたわ」

 

億泰「風呂は問題ねぇよ。それよりもオメェ……嘘ついてるな?たった一晩で体力が元に戻るわけねぇだろ」

 

京「………でも、これ以上は迷惑をかけられないわ」

 

億泰「………一晩泊めちまったんだから後は二晩でも三晩でも一緒だぜ。だったらよぉ、少しでも体力を回復させてから出て行けよ。仕事でも探しながらよぉ、アパート探してよぉ」

 

京「………本当に変わってるわね?普通なら関わらないわよ?こんな女。それも何の見返りも求めないなんて」

 

普通だったならそうなんだろうが…。

 

億泰「俺はよぉ、親友や恩師とも言える人によぉ、かなり世話になってるんだ」

 

それは仗助や康一、承太郎さん、ジョースターさんたちの事だ。仗助たちはなんの見返りを求めないで俺や親父を助けてくれた。特に仗助なんては死んだおじいさんの魂を継いだとかなんとかでよぉ、自分の信念の為だけに俺達を助けてくれるんだぜ?

あいつを見てったらよぉ、親友の俺だって倣わなくちゃカッコがつかねぇよなぁ。

 

億泰「だからというわけじゃあねぇが、俺は俺の出来る範囲内で目の前で助けられる命は助けるようにしてるんだよ」

 

それに……

 

億泰「目の前で何の罪のない奴が……死んでいくのはもううんざりなんだよ……」

 

重ちーや辻彩さんみたいなのはもううんざりだ…。兄貴みたいな因果応報の奴はそうなっても仕方がねぇだろうけどよぉ……。

 

億泰「だからこれは俺の勝手な意地ってヤツだぜ?じゃあ、飯にすっか?後はオメェも早く寝て体力を回復させろよ?昼間は俺も学校だからよぉ」

 

京「本当に変わってるわ?あなた……かっこつけすぎよ……」

 

そうかぁ?俺にとっては当たり前なんだけどなぁ…。

そこから俺は親父や猫草を起こしてキッチンに集める。

珍しい事に知らない人間相手なのに猫草は京を警戒するどころかむしろなついていやがった…。

俺の時なんてあんまなついてくれなかったのによぉ。

しかも飯うめぇ!

くそ……結構自信あったのによぉ……。

 

キング・クリムゾン!

 

そして夕方………。

 

億泰「なぁっ!」

 

驚いたことに、あれだけ生い茂っていた雑草が綺麗に苅られていた。それだけじゃあねぇ!散らかっていた家が片付いていやがる!

 

京「あら、お帰りなさい」

 

億泰「これ……オメェが?」

 

京「言ったでしょ?一宿一飯の恩義だって。さぁ、ご飯の支度も出来ているわよ?」

 

……………こいつ、このまま居着くつもりじゃあねぇよなぁ?

 

side虹村億泰(現在)

 

結衣「へぇぇぇぇ………カッコいいですね?億泰さん」

 

由比ヶ浜の奴は目をキラキラさせて身を乗り出して来やがった。

 

京「本当よ。あまりにもカッコ良すぎて、それに居心地良かったわぁ……」

 

結衣「そのまま住み着いていつの間にってパターンですかぁ?」

 

そう簡単にはいかなかったんだよ。

 

億泰「………そうすんなりいくわけねぇだろ?」

 

俺はザ・ハンドを出現させる。

 

京「どうしたの?ザ・ハンドなんか出して……」

 

結衣「そうですよ!敵ですか!?………って……え?京さんは………もしかして………」

 

億泰「そう。スタンド使いだったんだよ……だからわかるだろ?すんなりいかなかったってよぉ。直前に噴上の奴が襲われていたんだからよぉ」

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

億泰と京の馴れ初め。いったいこの先には何があったんでしょうか!?

作者もどうなるかハラハラしています!(おい……)

それでは次回もよろしくお願いいたします!

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