やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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雪ノ下雪乃は杜王町を観光する(妖怪洋館編…そして億泰編へ…)

side雪ノ下雪乃

 

私達はボヨヨン岬と吉良吉影の被害者の御霊を鎮魂する慰霊碑を見たあと、別荘地を辞して杜王グランドホテルを素通りし、仗助兄さんのご実家へと向かうのだけれど、途中で一台の車が私達の横に停車したわ。

 

陽乃「雪乃ちゃーん」

 

誰なのかしら?

ここは杜王町。奇妙な住人達が跋扈する街だから、警戒はしておかないといけないわ……。

何でもない日常から戦いは既に始まっている……とジョセフおじいさまはおっしゃっていたもの。

 

陽乃「ひゃっはろー♪雪乃ちゃーん!奇っ遇~♪そんなに警戒しなくても大丈夫よ。お姉ちゃんだから♪」

 

姉さんだったのね。

私は警戒を解くわ。でも、見たところレンタカーと言うわけでも無いようだし、このお車はどなたのものなのかしら?

あら?この人は………。

 

雪乃「初めまして。川尻早人さん。私は雪ノ下雪乃。雪ノ下陽乃の妹です」

 

早人「僕の事を知っているなんて驚いた。初めまして、雪ノ下雪乃さん」

 

由比ヶ浜さんは誰?と言った表情で私とエンポリオ君を見るわ。

そうね。基本的にこの人の事を知っている人は少ないと思うわ。川尻早人さんは支部長とかでもなければ財団の方でも基本的に表に出ない人よ。

普段も自宅と研究室を往復するだけの毎日だと聞いているわ。

 

雪乃「SPW財団東北支部開発実験研究室の川尻早人さんよ。日本支部の医療工学部門の影の功労者とも言われているわ。エンポリオ君、材木座君と一緒にジョセフおじいさまの義手の開発にも力を貸して頂いているいるわ」

 

結衣「エイジャの赤石付きの義手を開発したのってこの人だったんだ!」

 

エンポリオ「ちなみにメインはこのハヤトが設計したんだ。義輝がナチスの技術提供、僕は生物学の観点から修正を出しただけ」

 

早人「あんなもの、普段扱っている精密機器の数々に比べたら何でもないさ」

 

エンポリオ「あんなものって……あれだけでどれだけ世界の義手や義足の技術を前に進めたか君はわかってないんだ!あれは1世代は前に進んだ技術だよ!」

 

早人「その画期的な技術を下らないことの為にルビーレーザーを使ってアーシスに没収され、倉庫送りにされてしまったのは誰のせいなんだ?良いじゃあないか。あんなものの代わりにもっと高性能で利便性の高い異世界の義手が手に入ったんだろ?良かったじゃあないか」

 

あら?川尻さん、何か不機嫌になってしまったようなのだけれど……。

 

早人「材木座君も材木座君だ。あのナチスの技術…現代のロボット工学でも追い付かないその知識を持っているにも拘らず、それを活かそうとしない進路選択。でも、技術開発の方向性でスカウトしなくて正解だったよ」

 

ちょっ!由比ヶ浜さんの前でそんなことを言ったら…。

 

結衣「ちょっと!偉い学者さんか何だかわからないけど、ヨッシーをそんな風に言わないで下さい!」

 

三浦「あーしも仲間内の事を言われると、気分悪いし」

 

姉さんと一緒に乗車していた三浦さんも反応する。

 

陽乃「どうしたんですか?川尻さん、そんな事をいやみったらしくいう人じゃあないですよね?普段なら、嫌なことは内に溜め込むタイプじゃあないですか?」

 

川尻さんは姉さんや三浦さんを無視して由比ヶ浜さんを見る。どことなく露伴先生に似てなくもないわね。

矢を刺せばスタンド能力に目覚める資質があるわ。

 

早人「??君は?」

 

川尻さんが由比ヶ浜さんに目を向けたわ。

 

結衣「あたしは由比ヶ浜結衣!ヨッシーの彼女だし!」

 

早人「君が義輝君の……最近彼女が出来たと喜んでいたね。で、義輝君についてだっけ?僕が怒っているのは誰もあの義手の本当の価値に気付いて無いことが我慢ならないからだよ。」

 

あの小町さんに没収された義手の本当の価値ですって?

あのルビーレーザーではないのですか?

 

早人「そう。確かに利便性だけを見るならばあのオーバーテクノロジーが詰め込まれている義手の方が優秀な物だったよ。ジョセフさんのスタンドを上回る射程。スタンアームは電力を調整してマグネットのように使えるというジョセフさんの機転も相まって相当なものだ。だけどね…………」

 

確かにジョセフおじいさまはそういう使い方をされる方だわ。

 

早人「あの義手の本当の価値はやっぱりエイジャの赤石だったんだよ。ルビーレーザーを撃てるのは付加価値に過ぎない。エイジャの赤石は波紋増幅器。小町さんのスタンドの馬鹿げたパワーは何か………小町さんの身体能力はどこから来ているのか……それはスタンドに付いているエイジャの赤石によって相乗させているから。僕はその小町さんのサンシャイン・ルビーを参考にジョセフさんの力をより引き出せるように工夫したんだ。そこに失われたナチスのロボット工学技術とエンポリオ君の生物物理学をミックスさせ、僕が持てる技術の粋をあの義手に詰め込んだと言うのに……それを……たった1回の模擬戦で封印され、後は誰も見向きしないなんて…」

 

川尻さんはワナワナと震えているわ。

確かに………ただでさえ盗んできたあのシステムを使った上で、小町さんのようなパワーを持ち、川崎さんが一目置いているおじいさまの波紋技術と合わされば…。

とんでもない化け物が生まれてしまうわ。

 

早人「上手く使いさえすれば異世界の技術を使わなくてもジョセフさんは自力で若返れたはずなんだ」

 

雪乃「あの………また作ると言うわけには……」

 

早人「どうせ没収されるよ。それに、作りたくてももう作れない。エイジャの赤石は希少なんだ。あの一本だって、エア・サブレーナ島にかなり無理を言って譲って貰ったんだ。エイジャの赤石はただのルビーじゃあ無いからね。あれだけの純度の高い……大きさが大きさならスーパーエイジャに匹敵するエイジャの赤石は、もう手に入らない」

 

知らなかったわ。あんな小粒のエイジャの赤石が、それほどまでに入手困難な代物だとは考えが及ばなかったわ。

 

エンポリオ「じゃああの義手の技術を……」

 

早人「冗談だろ?あれだってデータを閣下が秘匿し、闇に葬ったじゃあないか。ブラックテクノロジーだって」

 

あ………。私が行ったあの異世界の技術もジョセフおじいさまの義手を例外としてこの世界に流通することを禁じたのだったわ。

あの義手そのものもジョセフおじいさまが亡くなり次第、閣下が破壊するとか言ってらしたわね。

 

エンポリオ「う……ごめん、早人」

 

早人「まぁ、良いさ。ただし、技術提携は今後も約束して貰うからね。君の生物物理学とナチスの技術を吸収した僕のロボット工学。それが合わさればきっと世界の医療は発展する」

 

それは素晴らしいものだわ。

けれども………

 

三浦「……そう、全てが上手く行けば良いけどね」

 

三浦さんがタロットカードをめくりながらそう呟いていたわ。

 

sideなし

 

この川尻早人とエンポリオの技術、そして戸塚彩加と川崎沙希が目指す波紋の医療が上手くミックスされ、未来の医療は目覚ましく発展することになる。だが同時に、三浦優美子の不吉な予言も的中してしまうことになってしまう。

SPW財団の名の元にこれらの技術発展は財団を更に躍進させる事になるのだが、アーシスの世代から遥か未来では肥大化した財団が増長することになり、もはや1つの企業としての領域を越えた集団となる。

その頃には財団もジョースターの手を離れ、後を継いだ者が暴走を始めてしまい、新たな火種となる。そして財団から独立した旧日本支部の雪ノ下・汐華、そして同じく独立したパッショーネが8代目ジョジョこと空条仗世文と9代目ジョジョの旗の元に集い、戦いが起こるわけであるのだが………それは今から100年以上後の話となる。

 

 

side由比ヶ浜結衣

 

ケンケンGOGO!としていた川尻さんとリオ君の話も終わって、今度はどうするかって話になったんだ。

 

天の声『喧々轟々だ!』

 

はるのんさんや優美子、ポルナレフさんは用事を終わらせて杜王グランドホテルへ送ってもらう途中であたしたちを見つけたみたい。

どうやら話の中で優美子がスタッチのご両親を調べようって話になったみたいなんだけど、優美子が『途中で止めたんよ。17年、財団が色々と手を尽くしても、静・ジョースターが静・ジョースターなのは…って考えればね。本当の事を知ることが全て良いことって事じゃあないし』と言ってた。

あたしが知ろうとすると、ポルナレフさんは……『陽乃や優美子だから……アヌビス神とアヴドゥルだからこそたどり着けた領域があるんだ。大人の汚い部分とかな。知りたければ自力でたどり着くんだ』と、止められちゃった。

むー………。

 

陽乃「それで雪乃ちゃん。これからどうするの?」

 

雪乃「杜王町を回るわ。次は『妖怪洋館』という所に行こうかと思うのだけれど……」

 

よ、妖怪洋館!?なにそれ!?

今度ばかりはジョースター家が絡んだ話じゃあないのかなぁ。

 

エンポリオ「結衣。ジョースター家絡みだよ。それも、クリスタル・クルセイダーズ絡み」

 

CC絡み?それが妖怪洋館となんの関わりがあるの?

 

陽乃「はっはーん……そういう事かぁ………雪乃ちゃん、大好きだもんねー?」

 

はるのんさんが何か納得したようにニヤニヤ始める。

 

陽乃「いいんじゃない?ついでに近所の仗助兄さんの家にお邪魔してお昼でもご馳走になれば。早人さーん。遠回りになるけど雪乃ちゃん達を送ってもらっていいですか?」

 

雪乃「くっ!」

 

ゆきのんが何か悔しそうな顔になってるんだけど……。

それに…

 

結衣「川尻さんの自動車って普通の五人乗り乗用車だよね?定員オーバーじゃあ……」

 

ポルナレフ『私がいることを忘れてないか?』

 

あっ!カメのココッチ!そのスタンドがあったんだ!

 

三浦「あーし、もう少しポルナレフと話をしてるから亀の中に入ってる。結衣も入りなよ」

 

そう言って優美子はあたしの耳に口を近付けて…。

 

三浦「雪ノ下とエンポリ夫に時間を作ってやりなよ」

 

あー、そーゆーことね?了解だよ優美子!

 

結衣「あたしもポルナレフさんとお話しする!着いたら呼んでねー!」

 

と、ココッチの中に入った。

やっぱ凄い高級だよね?ミスター・ブレシデントの中って!

 

 

キングクリムゾン!

 

結衣「たはははー………妖怪洋館ってそーゆー事かぁ」

 

あたしはその洋館の前に来て妙に納得しちゃった。

その家の表札にはこう書かれていた。

 

『虹村』

 

……………

 

結衣「億泰さんの家じゃん!どこが妖怪洋館だし!」

 

凄い失礼だよ!確かにところどころ古いけどさ、凄く綺麗なおうちじゃん!

 

億泰「ああん?誰だ人の家の前でダボな事を抜かしてんのはよぉ!」

 

ひぃぃぃぃ!億泰さんに聞かれちゃってたよぉ!

 

陽乃「じゃあ、ごゆっくりー♪雪乃ちゃん♪」

 

あれ?はるのんさん、行っちゃうの?てっきりそのまま合流するかと思ったんだけど?

…………あ、察しちゃった。

ゆきのんがここに来る理由も、はるのんさんが帰っちゃう……正確には逃げちゃう理由も。

 

億泰「おお?何だ。結衣と雪乃とエンポリオじゃあねぇか。優美子も一緒か?」

 

雪乃「こんにちは、億泰さん。杜王町の名所、『妖怪洋館』の見学に来たのだけれど」

 

億泰「オメェよぉ………人の家に対してそりゃねぇだろうがよ……」

 

億泰さんが疲れたように言う。怒り出さないかヒヤヒヤしたけど、億泰さんは見た目に反して滅多な事じゃあ怒らないのを知っているゆきのんはクスクス笑いながら言う。

 

雪乃「あら。ここがそう呼ばれていたのは確かですよね?」

 

億泰「そう言われていたのはよぉ、京と結婚する前の、親父と二人でここに住んでいたときの話だぜ?」

 

言われてたんだ……。

確かに億泰さんのお父さん、虹村万作さんは事情を知らなければ妖怪と間違われてもおかしく無いもんね…(万作とは何度か面識がある)。

 

億泰「おりゃあよぉ、てっきりオメェらから預かってるサブレの様子を見に来たと思ったんだよ。ついでに杜王町観光ついでに散歩でもしに来たのかってよぉ」

 

杜王グランドホテルはペット禁止だから、かーくん、ペッちゃん、サブレを億泰さんに預かってもらっていたんだよね?

もうゆきのん!最初から億泰さんのお家って言ってよ!

 

億泰「今でこそ京のやりくりで家も修繕されてよぉ、家政婦の腕っつーの?そういうのでキレイに管理されてっけどよぉ………。昔は本当に幽霊屋敷かっつーくれぇにボロボロでよぉ。杜王町の心霊スポットとして有名だったんだぜ?親父の件もあるだろ?」

 

億泰さんは当時の写真を見せてくれた。

うわっ!確かに妖怪洋館と言われてもおかしくないし!

 

結衣「あ……」

 

億泰「構わねぇって。実際、そういう物件だったからこそ兄貴はここを買ったんだよ。安いし、親父みてぇなのがいても不思議じゃあねぇ。それによ………」

 

億泰さんは目を伏せる。

 

億泰「当時の杜王町はよぉ、不自然な事が多かったからよぉ。知ってるだろ?死者、行方不明者がとんでもなく多く、怪奇現象が多かった街ってよぉ……」

 

雪乃「ええ………それは聞いてるわ。吉良吉影という人のせいだと………」

 

億泰「そうか………仗助の奴は全ての罪を吉良に被せるようにしてくれてるんだな………。丁度良い機会だ。結衣はともかく、オメェはカマクラを愛でに来たんだろ?ついでに話してやるよ」

 

そう言って億泰さんはあたし達を家に招き入れた。

その悲しそうな顔は………どういう意味があるんだろ。

 

←To be continued




はい、前回は康一の回、次回からは億泰編です。
億泰編は少し長くなりますが、そこから起点に過去の話へと突入し、間を挟んで第5部への布石と承太郎、海老名、三浦、八幡、いろは、小町の過去編へと続いて第1章へと続きます。

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