やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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三浦と陽乃の話です


三浦優美子は静・ジョースターの出生を調べる

side三浦優美子

 

杜王町東部

ー杜王グランドホテル・海の見えるカフェー

 

あーしは今、17年前の「杜王事件」の時に承太郎が長期宿泊をしていた杜王グランドホテルに宿泊している。

あーしらが泊まっている部屋は普通の家族部屋だけど、承太郎が宿泊している524号室はロイヤルスイートルームで、数ヶ月も滞在していたなんて本当に何百万使ったんだろうと突っ込まざるを得ない。

エジプトでも潜水艦とかラクダとかセスナを買っていたし。

そして今、雪ノ下陽乃さんとポルナレフと一緒に海が見えるカフェテラスでマッタリしていた。

何でも承太郎が杜王町で滞在中はここで新聞を読みながら財団の職員と連絡をしていたらしい。

モリオウヒトデの研究、論文もここでやっていたのだとか。

そして何であーしらがここで何をしているのかと言えば……

 

三浦「海老名が承太郎にアプローチ……ねぇ」

 

カミングアウトしてからの海老名は遠慮という言葉を忘れたかのように承太郎に会えばアプローチを始めるようになった。

やっと恋らしいものに興味を持った海老名を応援したい気持ちもあるにはあるけれど、それはそれとして友達がこういう時にいなくて手持ち無沙汰になるのはつまらないし、寂しい。

せっかく杜王町に来たというのにそれぞれが出掛けたようで、あーしは完全にやることが無くなっていた。

気を使った隼人達が一緒に来ないかとも言ってきたが、内容はヒキオと折本の過去に関する話だ。

特に興味がなかったあーしはそれを断った。

戸部の事?

戸部は………まぁ、失恋したばかりだし……。

そんな時だ。ポルナレフ(ココ・ジャンボ)を持った雪ノ下陽乃さんがやって来た。

ポルナレフがゆっくり話したい……と。

再会してからこっち、あーしとポルナレフがゆっくり話し合う事は確かになかった。

ただでさえ騒がしい毎日な上に、ポルナレフはポルナレフでパッショーネのナンバー2として多忙な日々を送っている。

イタリアの仕事を日本でやっているのだから、それはちょっと考えただけでも効率も悪いだろうことはすぐにわかる。だから落ち着いて話す機会は思った以上になかった。

ブラッディ・スタンドと柱の一族の件が片付いた後、仕事は基本的に日本支部のオフィスでやっているらしいので余計に会うのが稀になった。

 

三浦「何の用なわけ?ポルナレフ」

 

ポルナレフ「なに……せっかく杜王町に来たのに寂しそうにしているマドモアゼルを放っておくのはパリシャンとしてご法度なんでな」

 

三浦「そういうのは変わってねーし。幽霊になってもナンパ師なん?あーし、アヴドゥルだし」

 

陽乃「こういう人だったんだねー?ポルナレフ」

 

ポルナレフ「冗談だ。確かに陽乃も優美子も魅力的なマドモアゼルだ。生前の私だったのならば放っておかなかっただろう。だが、残念ながら私にそういう本能は既に残されていない。横牛の戦いでも言ったように」

 

そういえばポルナレフはスラピーの攻撃が効かなかったって言っていたっけ。

 

三浦「だったら何であーしらを連れて来たん?」

 

確かに暇だったから良いんだけどさ。

 

ポルナレフ「再び死に別れる前にこうして一度、ゆっくりと話をしたいと思っていたんだ」

 

三浦「はぁ!?死に別れる!?どういうことだし!」

 

陽乃「冗談にしては笑えないわよ?ポルナレフ」

 

あーしと陽乃さんはポルナレフに詰め寄る。

 

ポルナレフ「今度は冗談では無いさ。ココ・ジャンボの寿命はもう長くない。私が召されるのも時間の問題だろう。そうなる前に私はお前達とゆっくり話をしたかった。出来れば花京院やイギーともそうしたかったのだが、承太郎もあれで中々多忙な身だ。ウルフスの事が片付けば、アメリカに帰る事になるだろう。ならば邪魔をするのは……な」

 

確かに静養を兼ねている今回の杜王町旅行くらいしか承太郎がゆっくり出来る機会は無いかも知れない。

そもそも承太郎はあの時の旅の時から想像出来ないほど、社会人になってからはワーカーホリック気味になったらしい。それは空条先生やその母親をスタンド使いの戦いに巻き込まないようにするための配慮だったみたいだけど、千葉に滞在している時でも、そして杜王町に滞在していたときでも観光は二の次で事件解決に奔走している事からやっぱりワーカーホリックなのは確かなのかも知れない。ヒトデの論文を書いていたって言うし。

だからこそ、ポルナレフは海老名にチャンスをあげたのだろう。今回は強制的に静養するように言われている承太郎の側に海老名を置いておく為に。あるいはホリィさんから陥落させる作戦かな?

ホリィさんとは花京院として面識があったわけだし。

それにしても相変わらず女の子には甘い奴だよね。ポルナレフも。

 

陽乃「で?ゆっくりと話をするって言ったって何を話すつもり?ポルナレフ?」

 

ポルナレフ「そうだな……いざ話す機会になると驚くほど何もない。あれを話そう、これを話そう……とは思っていたのだが……こうして機会を得るとどうでも良くなって来てしまう」

 

わかる気がする。あーしもポルナレフがDIOを倒した後の人生について色々と聞いてみようと思っていたけど、大体の話についてはジョースターさんから聞いていたし、結局は過去の事だからたらればを言ったところで意味がない。

 

三浦「ねぇ、ポルナレフ……」

 

ポルナレフ「ん?」

 

三浦「あんたの人生だけどさ、結局………幸せだったわけ?」

 

ポルナレフ「………そうだな。一般的からみたら私の人生は過酷な人生だったと言えるだろうな」

 

ポルナレフは海を見ながら遠い目で言う。

妹をJガイルに殺されてからは復讐に生き、復讐を果たした後は矢にまつわる事でディアボロとの戦いに身を投じたポルナレフ。

世間の幸せとは程遠かった人生だった。

 

ポルナレフ「だが、そんな人生でも承太郎やジョルノ、それに………アヴドゥルや花京院達と出会って本当の仲間を手に入れることが出来た……そう言う面では楽しい人生だったと言えるな」

 

そういえばそうだったね。ジョースターさんやポルナレフ、イギーが起こす騒動やバカ騒ぎには承太郎や花京院を交えて苦笑いをしつつも、戦いの合間のそれが楽しかったと思うのは確かだ。

 

ポルナレフ「逆に聞きたい。陽乃、優美子……俺を恨んではいないか?」

 

はぁ!?何であーしがポルナレフを恨むん?ワケがわからなくてあーしは陽乃さんと顔を見合わせる。

 

陽乃「あのね、ポルナレフ。あの戦いはわたし達とジョースターさん達との純粋な戦争。負ければ死ぬ。それが当たり前の戦いだったでしょ?」

 

 

 

三浦「あんさー。あーしは確かにあんたを庇って死んだわけだけどさ………庇った結果がどうなるかなんてのは自己責任だったわけだし…」

 

少なくとも、あーしはアヴドゥルが死んでしまった事の責任についてポルナレフを責める気はない。

アヴドゥルは自分の意思と責任でポルナレフを庇った。その事でポルナレフを責めるのはまちがっている。

もう20年以上前に終わった事だし、こうして再会している。

 

陽乃「そんなしけた話なんかよりもさ。どこかにいかない?ポルナレフだって両手に花で旅行が出来るなら本望でしょ?」

 

ポルナレフ「ふ………違いない。カワイイマドモアゼル二人とデート出来て悪い気がしないな。惜しむべくは私が幽霊であり、肉体的な接触が出来ないことではあるのだがな」

 

陽乃「それが出来ていたら一緒に出掛けないって。男として人畜無害なのがわかっているからに決まってるじゃん?ポルナレフ」

 

そういう所は変わってねーし。

もっとも、本当にあーしらを和ませる為のポーズなんだろうけど。

でも、遊びに行くって言ったってどこに行こうか…。

 

三浦「あ…………」

 

陽乃「どうしたの?優美子ちゃん」

 

三浦「ここってジョジョの出身地なんっしょ?ジョジョの親って見付かってないって言ってるけど、結局のところどうなの?」

 

ポルナレフ「……………SPW財団が総力を挙げて調べた。結果も出ているが………この事は静本人も知らされていないのだが……。知る覚悟があるのなら、東北支部へ行こう。そこに答えがある」

 

東北支部に?

何だか嫌な予感がする。

 

S市…花京院地区…東北支部地方本部

 

三浦「花京院地区って……すごい偶然だし……」

 

陽乃「本当にすごい偶然だよねー。海老名ちゃんを連れてきたら面白かったかも?」

 

複雑な顔をすると思うんですけどー?

つうか、花京院家発祥の地って案外ここら辺りかも?

 

早人「ようこそ。雪ノ下陽乃さん」

 

陽乃「あ、川尻さん。すいません。お忙しいところを急にお電話してしまって……」

 

早人「良いんですよ。関東支部との合同企画ももう僕が関係するところは終わってますから」

 

川尻早人さん。

スタンド使いじゃあ無いにも関わらず、少年時代に吉良吉影というDIOにも匹敵するどす黒い悪と戦ったという東方社長の友人であり、SPW財団東北支部開発部のロボット工学部門のホープらしい。

同時に医療開発部とも共同して新しい医療危機を開発しているのだとか。

東方社長との縁もあって最近では日本支部の本部との調整等もやっているようで、何かと多忙な日々を送っているらしいんよ。

いっそのこと日本支部本部に引き抜けば良いんじゃないとか話があったみたいだけど、家庭の事情で杜王町から離れる事が出来ないのだとか。

また、その立場で仕事をすることは滅多に無いみたいだけど、アーシス支援部隊東北方面隊には所属しているらしい。

 

早人「それで………ジョジョちゃんの事について……ですよね?」

 

ポルナレフ「ああ。1999年における杜王町の資料を頼む」

 

早人「あの頃の事ですか……」

 

川尻さんは少し暗い顔をする。

失礼な話だけど、元から明るいとは言えない人が更に暗い顔をすると場の空気が悪くなる。

川尻さんの事情を知らなければその辺をズケズケ言ってしまったかも知れない。

川尻さんは東方社長がジョジョだったとき、その最大の敵だった吉良吉影によって父親である川尻耕作さんを殺され、成り済まされたのだとか。

そして独自に吉良と戦い、東方社長や承太郎を勝利に導いた立役者。

吉良を倒すことは出来たものの、結局は父親を殺されたことには変わらない。

何よりも救われないのは、本物の父親だったときの家庭環境は完全に崩壊していたにも関わらず、吉良によって破綻していた家庭が建て直されたという皮肉。

吉良のお陰で母親の川尻しのぶさんとの親子関係が良好になったというのだから……。

なお、川尻さんが杜王町を離れられない理由も川尻しのぶさんに関係があるらしい。

公式には川尻耕作は1999年に行方不明になり、2006年に暫定死亡という事で認可が下りた。

その後の川尻家の家計は酷くなり、川尻しのぶさんが勤めに出て何とか生活を支えて来たのだとか。

川尻さんはそんな母親を支えるべく、勉強を頑張りSPW財団の大学を特待で合格し、博士号を取って帰国。

様々な特許を取って稼ぎ、少年時代に住んでいた家を買い取って親子二人で助け合って生きているのだとか。

 

早人『この家でパパを待とう……もしパパが帰って来たとき、この家が無かったらパパが困るでしょ?』

 

しのぶ『早人……あんた、本当に良い男になったわよね………』

 

と、川尻しのぶさんは感動していたようだが、川尻さんは罪悪感が半端じゃあ無かったのだと陽乃さんを通じて聞いた。

母が恋をしたのは父に化けた吉良吉影。早人さんはその吉良吉影を殺す手助けをした。事件の真相はまだ母には伝えていない。伝えられるわけがない。

吉良吉影の爪痕は………20年近く経とうとしている今でも深く杜王町に刺さっている。

 

早人「三浦優美子さん……だったっけ?君にすべてを話すことは出来ない。僕が出来るのは……これを用意する事だけ。君はこれを見て、自分で推測するんだ」

 

川尻早人さんは一冊の資料を纏めたファイルをあーしに渡してきた。

それには一体………。

 

←To be continued




三浦が静の為にと思って始めた静の親探し。
しかし、それはある意味ではパンドラの箱を開けるような行為でもあった。
そのファイルとは?

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