やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

606 / 731
カフェ・ドゥ・マゴと折本事件

side葉山隼人

 

ー杜王駅前ー

 

プランの無いまま東方会長の故郷、杜王町へと旅行へ連れてこられた俺と戸部と南。

一緒に折本さんと仲町さんも着いてきている。

今朝、折り入って話があると伝えると、折本さんは大体察したようで頷いた。

 

八幡『物好きな奴だな。そんな大したことじゃあないぞ?つまらなくても良いなら勝手に聞けよ。ただし、苦情その他もろもろは一切受け付けないからよろしく』

 

とヒキタニからは許可が出ていた。中学時代に何があったのか……それをアーシス側ではなく彼女達の口から聞きたかったからだ。

 

戸部「ここじゃね?ヒキタニ君達が言ってた杜王町のお勧めのカフェって」

 

葉山「どうやらそうみたいだな」

 

相模「ちょっと古い感じがするけど、良い感じのカフェじゃん?」

 

カフェ・ドゥ・マゴ。

一昔前なら新しめのカフェだったであろうオープンカフェは杜王町の屈指の憩いの場所らしい。

今の時代としては古めかもしれないけど、東方会長が住んでいた頃は時代の最先端を行っていた感じの店だったのだろう。そして、大事にされてきた店だと思う。

店からは一種の風格ともいえる感覚があるし、清掃も行き届いている。

良いものは時が経っても変わらない。

 

折本「比企谷がこんなオシャレな店を知ってるなんてイメージが狂うなぁ。サイゼリアとかで方つけそうなイメージ。なんかウケる」

 

戸部「だべぇ?何かヒキタニ君のイメージとは違うわぁ」

 

そうだな。確かにヒキタニは千葉のオアシスとか言ってサイゼリアをよく利用するような事を言っていた。

付き合ってみてわかったことだけど、それはサイゼリアの発祥が千葉で、単なる千葉愛だっただけだけど。

また、トラサルディーという店の店主に半ば弟子入りをしたのもサイゼリアがイタリアンのファミレスだからという理由もあるらしい。結構拘り屋のようだ。

 

折本「だよね?」

 

仲町「実際にはこんな店を知っていたわけだけど」

 

相模「うちには未だにイメージ付かないんだけど。比企谷がこの店で優雅にお茶をしている姿なんて」

 

さすがにそれは失礼……とは思うが、確かにヒキタニとこの店はイメージが合わない。

本人に言ったらどう反応するだろうか…。

まぁ、反応しないか。無反応に近い形で「だろうな」程度の返答しか返ってこない気がする。

その程度の事くらいはわかるようになってしまった。

 

葉山「さて、座ろうか」

 

俺が良い感じの中央のオープン席に座る。続けて戸部、南、折本さん、仲町さんも座る。

 

折本「スタバとか通いなれてるとさ、こういう普通のカフェって逆に新鮮だよね」

 

仲町「あはははは、確かに。でも良いのかな?私たちまでこのツアーに参加しちゃって」

 

海浜幕張総合高校の二人はそう言いながらも実際はもう順応しているような感じがある。

 

葉山「東方会長が良いって言うならば、俺なんかがどうこう言う権利なんてないさ」

 

フェニックスとユニコーンのウルフスを二柱も倒したんだから、その特別ボーナス代わりかも知れない。何かユニコーンの始末について杜王町で何かあるついでだとはジョースターさんが言っていたけど。

杜王グランドホテルなんて高級ホテルでの宿泊なんてそうそう出来ない。そう思っただけでも頑張った甲斐があったってものだな。

ホテル・ロイヤル・オークラのスイートも良かったけれど、杜王グランドホテルもまた赴きが違って良い。

残念ながらスイートルームに宿泊するのは空条一家だけらしいが、スイートルームを望むのはさすがに図々しいだろう。

俺達はそれぞれ飲み物を注文する。女子達はその上で更にケーキ等も注文していたが。

注文した物が届き、そろそろ話題が尽きた頃を見計らって俺は話題の口火を切る。

 

葉山「折本さん。そろそろ、聞かせてもらって構わないかな?中学時代にジョースターさん達と何があったのかを」

 

俺がそういうと、折本さんは少し考えた後に俺を真っ直ぐに見据える。

 

折本「それは良いんだけどさ………でも何で?葉山くんは知りたいのかな?私としてもあまり良い思い出じゃあ無いんだよ?」

 

……確かにそうかも知れない。これは折本さんとジョースターさん達のプライベート的な問題であり、俺なんかが踏み込んで良い話じゃあない。

 

葉山「付き合っててわかるけど、ジョースター家は元々親しい者以外はドライな1面があるのはわかる。だけどもジョースターさん達はその中でも特に他人にはドライ過ぎる。身内と認めると素の部分を見せるけど」

 

折本「あー、やっぱりわかっちゃう?そうだよ。ジョースターさんや比企谷、一色ちゃんに妹ちゃんが身内以外にたいして冷たくなりすぎちゃったのは……多分、私のせい」

 

葉山「………とは思っていたよ。ヒキタニがあそこまで昨日のお出掛けに拒否感を出していたからね。本人からは君は悪くない……とは聞いているけど」

 

折本「あれでも2年前よりは柔らかくなったんだよね。四人とも。うちの代の総武中学がメチャクチャになっちゃったし……ウケないよ。マジで」

 

折本さんは遠い目を空に向けた………。

 

折本「中学3年の時なんだけどね?………」

 

 

 

side折本かおり(2年前)

 

私は昔から結構人気がある方だと思うし、クラスのムードメーカーだったと思う。

後でわかった事だけど、私自身の性格もあれどスタンドの能力がそれに輪をかけていたんだけど。

 

かおり「それある!」

 

クラスのみんなで雑談している時にこれをやるとみんなが盛り上がる。盛り上がり方はその時々で違う。楽しい時は楽しい時でみんな笑うし、怒ったときはみんなで怒る。そんな感じもあって今では「それある!」と言いながら相手に指を指すのが私のマイブームだった。

けど、そんなクラスのノリにまったく反応しない人達がいた。比企谷とジョースターだ。

この二人はお互い以外にはまったく反応しない。

同小の友達に話を聞いた限りだと、小学校の頃からそんな感じだったらしい。

1、2年の時は学期まるごといなかった時期もあるらしいけど。今年も休みがちであるみたいだし、普段からこいつらは何をしているんだろうと正直思う。

とはいえ、あることが無ければ私は特に二人の事を気にしなかったのかも知れない。

そのあることとは……放課後にみんなとお喋りしていて遅くなった私は鞄を教室に起きっぱなしだったことに気がついて戻った。するとそこには比企谷とジョースターがいて、二人の近くに幽霊が立っていた所を見てしまった事だ。

 

折本(オ、オカルトォォォ!?)

 

今ならそれがスタンドだということがわかるけど、当時の私にはそれが何なのかわからなかった。

 

静「……誰?そこにいるのは」

 

八幡「…………折本か」

 

二人は私に気が付くと幽霊を体の中にしまい、興味なさげに一瞥して何の事はないとりとめのない話を続ける。

 

折本「え……えっとさ……」

 

八幡「ふぁぁぁぁ………」

 

良く見ると比企谷は眠そうにあくびをする。ただでさえ人を寄せ付けない二人。ありもしないオカルトの話をしたところで頭がおかしい奴だと思われて終わりだろうと……。

今にして思えばそこで私はスタンドの事について話しておくべきだったと思う。そうしていたならば後々のトラブルは起きなかったかも知れなかった。

けど、さっきも言ったようにジョースターさん達は人を寄せ付けない雰囲気があり、同級生の中でもあまり評判は良くなかった。

ジョースターさんは見た目の美人さから多少は一目置かれていたけど、比企谷はその目付きの悪さから影で色々と言われていたし、同じ小学校の出身者からも孤立している。

年度の始めに行われた恒例の連絡先交換とかでも二人は嘘アドレスを教えて周りからひんしゅくを買っていた。

 

折本「ねえ、二人して何してたの?」

 

私は誰とでも変わらない態度で二人に馴れ馴れしく声をかける。元々私はサバサバ系を目指して人のプライベートゾーンを踏み越えていくスタンスだ。こうしていれば大抵の人とは仲良く出来る。

 

静「別に何でもないですよ。たまたま暇な日に比企谷さんとお喋りしていただけです。幼なじみを待ちながらですが(よそ行きモード)」

 

八幡「…………」

 

答えたのはジョースターさんで、比企谷は特に反応してこなかった。腐った目でボーッと窓の外を見ている。

その態度の悪さに少しばかりムッとしたけど、こんな人はいくらでもいる。興味ないふりしてわざと冷たくしてくる男子なんて私の周りには呆れるほどいるのだから、比企谷もそんな人間の一人だろう。

康穂ちゃんに当時の事を話したら……

 

康穂「あー……それ、本当にハッチは興味なかったんだと思う……特にあの時は色々とあったから……」

 

小学生の頃から比企谷達は彼らに対してムカついていた人達に嫌がらせをされていたみたい。中には上手く隠蔽していたけど暴力沙汰に発展して返り討ちにしていたみたいで、そんな事が何度もあるうちにほとんど日本の学校に嫌気を差していたらしい。

 

静「それで折本さん。何かご用でも?」

 

折本「いやぁ……アハハハハ。忘れ物を取りに来たら二人がいたからさ。ちょっと挨拶でもって……」

 

静「そうですか。ではお気をつけてお帰り下さい。私達はもう少しここで用事があるので」

 

折本「私も一緒にいていい?」

 

あの幽霊の事が気になる私はちょっとだけ話をしてみようと思って聞いてみたが……

 

静「いえいえ。私達と話していても面白く無いですよ?私達は皆さんとは趣味が合わないようですから」

 

折本「えー?いーじゃん!少しだけお喋りするだけだしさ。案外趣味が合うかも知れないよ?」

 

静「お互い知らないだけだからですか?だからわかり合えると?」

 

折本「そう!それある!」

 

私がそう言って指をジョースターさんに指す。すると、ジョースターさんの雰囲気ががらりと変わった。

 

静「目障りだからとっとと帰れっつってんのがわからないのかっつーの」

 

折本「え?」

 

今思い返せばジョースターさんは内心でイライラしていたのだと思う。そのイライラを私は加速させてしまった。自分でも気が付かなかったアースブルース69の能力で。

だから普段は猫を被っているジョースターさんの仮面が剥がれ、素のジョースターさんが出てきたんだと思う。

 

八幡(うつら…うつら…)

 

元々眠そうにしていた比企谷は更に眠そうになっており、そのまま寝てしまい兼ねない状態になった。よくピリピリし始めた空気の中で眠れるなと内心ムカついたけど、これも私の能力が比企谷の眠気を加速させたんだと今ならわかる。それが余計に事態を拗らせるとも知らないで。

 

静「………失礼しました。ですがご存知のとおり、私達はあまり学校の人とは関わり合いたく無いのです」

 

折本「そ、そうなんだ……あ、でもさ、メアドくらい交換しない?それくらいなら良いでしょ?」

 

静「………良いでしょう」

 

そう言ってジョースターさんはルーズリーフを取り出してメアドを書く。

 

静「ただ、今は家に携帯を忘れて来ていますので」

 

はぁ………これは嘘だね。また嘘アドレスかぁ。

 

静「ほら、ハッチも」

 

八幡「んん?おう………」

 

比企谷も寝惚け眼でアドレスを書き始め、そして折り畳んで私に差し出してまたうつらうつらと始めた。

 

静「では折本さん。お気をつけてお帰り下さい♪」

 

折本「う、うん。今夜辺りにでもメールを送るから」

 

静「そうですか」

 

そう言って私は教室を出る。

二人からは特に反応は無かった。途中で2年と1年の美少女として有名な一色いろはと比企谷の妹とすれ違った。軽く挨拶をしてみると、二人とも返してくれはするものの、特に私には興味が無いという感じだった。

ジョースターの友達ってこんなのばっかりだよね?

いつもの事なので私は特に気にせず、そのまま友達と合流して適当に寄り道をする。途中でメアドの話になったけれど……。

 

「どうせまたいつもの嘘アドレスでしょ?かおりも止めておきなよ。あんなの相手にするの。なんかめんどくさそうじゃん?」

 

「黒い噂もあるしさー」

 

「もしこれで本当のメアドだったらさー、比企谷はかおりに気があるとか?」

 

折本「アハハハハ!それある!あるかも!」

 

「あの顔で?あの態度で?アハハハハ!」

 

このときもスタンドが発動していた。みんな比企谷やジョースターにはムカついていたんだと思う。そして加速したテンションは私が興味を無くせば治まるけれど、その加速したテンションで交わされた会話が無くなる訳ではない。それがまた、トラブルに発展する原因の1つとは私は考えてもいなかった。

 

そしてその夜………

 

折本「あ、そう言えば夜にメールを送るからって言っておいたっけ。どうせ嘘アドレスだと思うけど」

 

私は最初にジョースターさんのメアドにメールを送ってみるものの………。

メーラーダエモン……つまり存在しないアドレスという返信が返ってきた。やっぱり……。

無駄だろうけど、一応比企谷のアドレスにも送ってみるかな……。

……………………

あれ?メーラーダエモンからのメールが来ない?どういうこと?

 

ピンピロンピロリン♪

 

比企谷八幡『誰だ?』

 

折本「あれ?比企谷の方は本物のアドレス?」

 

マジで比企谷が私に気が?

これが使い方によっては私自身にも害を及ぼす可能性のあるアースブルース69がきっかけの事件の幕開けになるなんて、私は思ってもみなかった。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

折本事件のフラグ回収回です。
興味本意が事態を悪化させてしまうという典型的なパターンです。

それでは次回もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。