side川崎沙希
杜王町ー図書館
戸塚「あれ?川崎さん?」
アーシスの東方仗助会長の故郷にやってくるという突然のイベントでM県S市の杜王町にやって来たあたし達。前世にここに来たことがあるというけーちゃんの案内であたし達兄弟はこの杜王町の図書館まで来ていた。
戸塚「川崎さんもここに来ていたんだ」
沙希「勉強がてら絵本でも弟やけーちゃんに読んであげようと思って。戸塚は?」
戸塚「僕はあることを調べに来たんだ。ほら、ここって杜王町の名所でもあるんだって。知ってた?」
沙希「ああ、知ってるよ。『呪いの本』が置かれているって噂の図書館でしょ?」
だからこそあたしはここに来た。そういうオカルト紛いの話はあたし達波紋使いやスタンド使いには特に縁のある話だ。
呪いの本だと言うならば、人に害を成す前に処理をしなければならない。本がスタンドならばあたし達に何か出来るかも知れないからだ。
沙希「あんたもその調査?」
戸塚「うん。考える事は同じだね?」
沙希「………何でそんな事を?」
戸塚「僕にとっては当たり前なんだけどなぁ……ほら、アーシスって母体はクリスタル・クルセイダーズって言うけどさ、元々はジョースター家やSPW財団がやっていた事を体系化した組織でしょ?ジョセフの時代から僕の前世がやっていたことだったんだよ。柱の一族を発見したりとか。それが原因でストレイツォさんがあんなことになるとは思いもよらなかったけどね」
スピードワゴンは偉くなってもそういうことは自ら赴いてやっていたんだと材木座から聞いたことがある。だとしたらあたしは戸塚に対して……いや、スピードワゴンに対して頭を下げなければならない。
沙希「戸塚……あたしはあんたにツェペリとして謝らなければいけないね」
戸塚「ツェペリとして?」
沙希「そう。ツェペリはスピードワゴンを侮っていた。いざとなったら逃げ出す……そんな人間だと思っていた」
戸塚「それは古城の時に聞いたような気がしたけど…」
沙希「でも、それだけじゃあなかった。スピードワゴンはそれ以上の事をした。それが波紋の一族の悲願を果たすきっかけになるなんて……あたしはスピードワゴンに対して感謝をするしかない…」
戸塚「頭を上げてよ川崎さん」
頭をあげると戸塚は眩しい笑顔を向けてくる。
戸塚「スピードワゴンだったらこう言うよ。『俺はジョースターさんに出来る事をしただけだぜ?』ってね。ただ、ジョースターさんが好きだっただけなんだよ。スピードワゴンは恐怖の心よりも、ジョースターさんが好きな気持ちの方が勝っていたってだけなんだ。それが死ぬまで変わらなかっただけ。それがなかったんなら、ツェペリさんのいうようにいざとならなくても逃げ出していたかもね?」
あたしはきょとんとしてしまう。
戸塚「難しく考えすぎなんだよ。川崎さんもツェペリさんも。それよりもさ、せっかく来たんだから調べない?例の『呪いの本』の事をさ」
沙希「あ、うん……そうだね………」
結構本気で頭を下げたというのに、戸塚はそれをさらりと流してしまう。
それどころか、ツェペリの見たてた人物像で正解だったとまで言うなんて………。
京華「さーちゃん。続きは?」
大志「けーちゃん。さーちゃんは調べものがあるんだって。続きは俺が読んであげるよ。ほら、お前も!」
川崎弟「えー!でもたーちゃんは国語苦手じゃん。総武こーこーあぶないってねーちゃん言ってたし。ニョホッ♪」
下の弟が大志をからかう。その『ニョホッ♪』はいつか直させないといけない癖だよね。
京華「んー。無駄だと思うんだけどなぁ……さーちゃんの調べもの」
???
けーちゃん、何かを知っているっぽい感じだね。
気にはなったけど、あたしと戸塚は件の本を探すが、一般図書の中にそれらしいものは見当たらない。
戸塚「……『呪いの本』……と言われているからには貸し出し禁止の本なのかも………司書さんに聞いてみよう」
沙希「そうだね……」
あたし達は司書さんのいるカウンターまで行く。
沙希「すみません。1つお尋ねしたいのですが……」
司書「はい?あら、美人のお姉さんと可愛い妹さんね?」
沙希「姉弟じゃあ無いから。同級生なんですけど?」
それに、そんな事を言ったら………
戸塚「ああん!?姉ちゃん、男だってのが見てわからねぇのかぁ!?どう見たって男じゃあねぇか!さらって広瀬川に沈めてやろうか!?ああん!?」
沙希「お、落ち着け!戸塚!あんたが男らしいってのはあたしらがよくわかってるから!」
司書「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!」
女の子と間違われると途端に戸塚はチンピラ根性が出てくる。
あたしは後ろから羽交い締めにして戸塚を止める。
ホール・シンクスを出すな!
うわっ!あぶなっ!
下手にラケットのガットに当たると能力によってクルクル回る羽目になるから厄介だ。
司書「ふぅ………ふぅ………なによこの子……まるで仗助君のような人だわ………」
沙希「東方会長をご存知なんですか?」
司書「ご存知も何も………杜王町で東方仗助さんを知らない人がいるわけないじゃい。それに、私は仗助君の同級生だったし。あーあ、あの頃狙ってたんだけどなぁ。もっと押せば良かったかなぁ。今頃玉の輿だったかも?でも、あの時は色々あったからなぁ…」
そう言えば聞いたことがある。東方会長は学生時代、すごくモテていたって。静・ジョースターがいなくて良かったよ。間違いなく暴れる人間がもう一人増えていた。
それにお姉さん、結婚してるでしょ?旦那さんが泣きますよ?
司書「それにしても会長?あんた達こそ仗助さんの知り合い?」
沙希「ええ。東方会長はあたし達の部活の特別顧問なので」
司書「特別顧問!?仗助君が!?」
沙希「東方会長の妹があたしの同級生なんで、PTA会長をやってるんですよ。あたし達が杜王町にいるのも東方会長の招待なんです」
司書「へぇ……あの仗助君が……わからないものねぇ。妹がいたなんて事も初めて知ったわ………」
それが静・ジョースターとは言わない方が良いだろう。
ジョースター家の複雑な家庭は一応は伏せられているわけだし。
まったく………けーちゃんから初めて聞かされた時は本当に呆れたよ。
司書「で?この図書館には………もしかして……『呪いの本』のこと?」
沙希「ええ……」
司書「やだ、あなた達の部活ってもしかしてオカルト部か何か?」
沙希「違います」
とはいえ、あながち間違いでもないかも知れない。
波紋使いにしてもスタンド使いにしてもオカルトそのものの力だしね。
司書「冗談よ、冗談。『呪いの本』はオカルトマニアとかには有名な話なのよ?『アンジェロ岩』『ボヨヨン岬』『オーソンの幻の道』『妖怪洋館』『鉄塔の家』『カツアゲロード』とかと並んでね。杜王町七不思議の1つとして有名だわ。だからその手のマニアは本が寄贈されてから17年経った今でも毎週のように全国から来るわね。その半年後には飛び降り死亡事件があったから、エニグマの呪いか?とも言われたらしいしね』
17年前……確か吉良吉影事件と言われる杜王町のスタンド使いによる連続殺人事件が起きた時期。つまりは東方会長がジョジョだったころの時代だ。
司書「今日はそういうマニアはいないなら待ってて。今持ってくるから。でも、『呪いの本』は貸し出し禁止なの。特にあの本は持ち帰ろうとする人が多すぎるから、職員が見ている前で読むようにしてるの。だからオープン席の方で読んでくれる?」
司書さんはすぐに本を持ってきて僕たちに渡してくる。
本のタイトルはエニグマ……と書かれていた。
エニグマ?どこかで聞いたことがあるような……。それもつい最近。
司書「それと、はいこれ」
戸塚「これは?」
司書さんは一冊の冊子も渡してきた。
司書「エニグマの本を読みたいと言ってきた人達は大抵読んだ後に質問してくるのよ。寄贈されてから最初の数年は図書館側も丁寧に受け答えしていたようだけど、いちいち対応していたらこっちの仕事も滞るでしょ?もうその当時の職員は誰もいないしね。それで作られたのがエニグマに関して予想される質問に対してのQ&Aの冊子ってわけ」
沙希「これに書かれていない質問は?」
司書「そんなの知らないわよ。こっちは専門家じゃあないし。それに載っている事以外は一切合切知りませんってね。もう一度言うけど、もう17年前の話よ?誰もいないし、私達だって答えたくてもその冊子に書かれている事以外は何も知らないの。あたしの1つ上の先輩がこの図書館で自殺をしたこともあって当時の館長は辞任したし、気味悪がって市内のよその図書館に配置換えとか退職とか……あとは行方不明とかになっちゃったりとかして……。その自殺事件も友達の彼氏だったし、その友達も直前に父親やその愛人が変死でしょ?更に子供を妊娠して転校しちゃったしね……あの頃はこの街も色々あったのよ」
つまりこれ以上の情報はこの人に聞いても特に引き出せないってわけか……。
それに、その変死や自殺についても何か裏がありそうだよね……。
あたしと戸塚はエニグマの本と冊子を見比べる。時々苦しげな声が聞こえることと、あるページが何だか顔のように見えるページ以外は特に何もない。
戸塚「あれ?これって………」
沙希「ん?」
戸塚「東方会長が八幡の小説をユニコーンにした物にそっくり………もしかして……」
戸塚は冊子を見る。
戸塚の目線の先には「提供者 宮本輝之輔」と書かれていた。
戸塚「宮本輝之輔……ねぇ。確かその名前は……」
戸塚はスマホをいじり始め、そして………
戸塚「あった………」
戸塚はそのページをあたしに見せる。
宮本輝之輔……1999年、杜王図書館に呪いの本と呼ばれる『エニグマ』を寄贈した後、行方不明となる。一説には彼本人ではなく、他の誰かが彼の名前を騙って寄贈したのでは無いのかと言われている。2006年。行方不明になってから7年が経過したことにより認定死亡となる。
1999年の杜王町は行方不明事件が多発し、原因・犯人などは判明していない。この宮本輝之輔氏についても事件の被害者なのではないのかと言われており……
戸塚「1999年の杜王町はスタンド使いの殺人鬼、吉良吉影が跋扈していた時代。それを解決したのが東方会長達だったけど……」
沙希「じゃあ、宮本輝之輔さんは吉良の被害者?」
戸塚「いや。多分、その逆だよ。吉良の協力者だったんだ。そしてこのエニグマは……この呪いの本は宮本輝之輔本人。ユニコーンと同じように東方会長に本にされちゃった宮本さん本人なんだ。この本を本当にこの図書館に寄贈したのは東方会長か空条博士……もしかしたらジョセフかもしれない………」
すごいね。事実かどうかはわからないけど、そこまで見破るんだ……。すごいよスピードワゴン。
京華「クスクス……だからさーちゃんもさいちゃんも無駄だって言ったじゃん。さいちゃんのゆーとーりだよ?この本は仗助ちゃんが倒したスタンド使い本人なんだ」
沙希「けーちゃん!知ってたの?」
京華「うん!ジョーちゃんから聞いてたー!」
けーちゃんがエニグマの本に触れる。
京華「この人はね?仗助ちゃんのママ、朋子ちゃんとこーちゃんを人質に取ったんだって。だから家族や友達を傷つけられて怒った仗助ちゃんがお仕置きしたの!メッだよ?エニグマちゃん?」
家族に手を出されたジョースター家は恐ろしい。
何でも東方会長のおじいさんを殺した犯人も同じようにされた経緯があるとか。5年前のアメリカでも東方会長は静・ジョースターに手を出した相手を岩にして宇宙に放逐したのだとか……。
こう言うところは東方会長もジョースターの血を色濃く継いでいる。
戸塚「そうだったんだ…だからこんなものがあってもジョースター家は動かなかったんだね」
そう言って戸塚は本と冊子をカウンターに返す。
これをどうこうしようなんて気はないらしい。
戸塚「この本をどうするかを決める権利は東方会長しか無いからね」
そしてしばらく戸塚はあたしの姉弟達に本を読んであげてから、次に行きたい場所に行くと言い始めた。
特に他に行きたいところがなかったあたし達は戸塚に付いていく。その先は……
「ぶどうが丘総合病院」
沙希「病院?」
戸塚「うん。ここはスピードワゴン系の病院じゃあ無いからね。他の医療の現場も見てみたかったんだ」
沙希「病院……ねぇ」
あたしも確かに医療系を志望する学生だ。それは前世に深く関わりがある。
??「おや?お前達は………」
沙希「あなたは………確か文化祭の時に総武高校にいらしていた……」
??「おう!やっぱりアーシスの人間か!」
戸塚「あなたは確か………」
??「噴上裕也ってんだ。一応、仗助のダチだぜ?康一や億泰ほど親しくはねぇけどよ」
噴上裕也さん……聞いたことがある。
確か運送会社を杜王町で旗揚げして以来、財団の東北支部と専属の契約を交わし、めきめきと力を付けている噴上運輸……通称ハイウェイ・スター急便の社長だ。
東方会長、音石明さんに並んで杜王町に錦を飾ったとして有名な人だったかな?
戸塚「戸塚彩加です」
沙希「川崎沙希」
京華「けーかはねー、川崎けーか!よろしくね!?ゆーちゃん」
大志「川崎大志っす。よろしくお願いします」
川崎弟「……どうも。川崎です」
あたし達四姉弟と戸塚が挨拶をする。
噴上「ああ。億泰や音石から聞いてるぜ?大したルーキーが千葉に集まってるってよ」
噴上さんは独特のタトゥーを上機嫌に撫でながら弟やけーちゃんを撫でて笑う。
戸塚「ところで、噴上さんはどうして病院に?」
噴上「ああ……俺の嫁の一人が調子悪いみたいでな。その付き添いだ。この病院には世話になってるからなぁ。虹村京の事件の時も、ここに運ばれたっけ。億泰の奴が未起隆と組んで俺の病室まで入って来やがってよ…」
嫁の一人って………。
大志「確かアーシスのハーレム王……そんな話を聞いたことが………」
沙希「こら!大志!」
大志「いや!悪い意味じゃあ無いですよ?素直に尊敬してるんっすから!」
失礼な事を口走った大志を嗜めると、噴上さんは別段気にした様子も見せないで高らかに笑った。
噴上「仗助の野郎か?そんな事を言う奴は?まぁ、間違いじゃあ無いぜ?結局3人も女を囲ってそれぞれ子供を産ませたことは確かだからよ。でも、後悔はしていねぇぜ?3人ともかけがえのない大事な嫁だからよ」
噴上さんの瞳は優しげな瞳になる。法律上の事や世間的な目から見れば許されない事かもしれないけど、それらから批判的な目で見られても良い覚悟をもって今の生活を選んだんだ。それはそれですごい勇気だと思う。
沙希「奥さんのお見舞い、ご一緒しても?」
噴上「ああ、構わねぇぜ?アーシスの後輩なら大歓迎だ」
あたし達は噴上さんに付いていく。しかし、向かった病棟は………
沙希「産婦人科?」
噴上「まぁ……年甲斐もなく頑張っちまってな。けど、産まれてくる子供に問題があるみたいなんだよ……」
案内された部屋に入る。
噴上「よぉ、調子はどうだ?アケミ」
アケミ「ユウちゃん、来てくれたんだ!うれしー。そっちの子達は?」
噴上「アーシスの後輩だよ。千葉から杜王町に遊びに来ていたところを偶然会ってな。見舞いに付き合ってくれているんだ」
アケミ「ユウちゃんの後輩?へー……」
確かに調子が悪そうだね。顔色は良くないし、お腹の子供も……このままでは母子ともに危ない。高齢出産になるだろうし……ここは……。
沙希「噴上さん。奥さんの治療、あたしにやらせてもらって構いませんか?」
噴上「沙希が?治療って………」
沙希「コォォォォォ………」
バチバチ……あたしは波紋の呼吸を整え、そしてアケミさんに当てる。
噴上「これは………波紋!?何をしているんだ!?」
沙希「あたしはツェペリ。ジョナサン・ジョースターに波紋を教えたツェペリの転生」
戸塚「波紋の扱いについては小町ちゃんとは対照的とも言われています。あくまでもその強さを……柱の一族と戦う為に力を求めた小町ちゃんとは対照的に、川崎さんはその扱いを……技量を突き詰めた波紋を使います。その技量はジョセフ・ジョースターさんや八幡を上回るんです」
噴上「あ、あのジョースターさんを!?でもよぉ…」
沙希「ツェペリ男爵が元々波紋の道に進んだのは、こういう力を欲していたから……」
噴上「こういう力!?」
沙希「壊血病……今から150年前までの船乗り達の職業病と言われたその病気は、当時の医療ではどうにも出来なかった。けど、ツェペリ男爵はその不治の病気とも言われていた壊血病を治す波紋の一族の治療を見て、その力に魅入られた……結局は石仮面の事を知り、戦う為の波紋法の道に進んでしまったツェペリ男爵…あたしの前世だったけど、本来やりたかった波紋はこういう力だった」
だから医療の道を模索した。漠然とだったけど、あの仙道の事が忘れられなかったのかも知れない。
アケミ「体が……すごく軽い……まるでトラサルディーに行った後のように………お腹の子供も……何か喜んでいるみたい!もう大丈夫だって!」
噴上「ホントか!アケミ!」
沙希「本当は一色のナイチンゲールが理想なんだろうけどね?今度話しておきますよ。あたしは……」
戸塚「違うよ!川崎さん!君は今、すごいことをやったんだよ!」
そう言うと戸塚はあたしの手を握って詰め寄ってくる。
ちょっ!ちょっと!手!手ぇぇぇぇ!
戸塚「……川崎さん………僕と一緒に……歩んでいかない?僕には君が必要なんだ!」
それ、聞き方次第じゃプロポーズだよ!突然何を言い出すんだ戸塚!
沙希「へ?ちょっと戸塚!それ、どういう……」
戸塚「スタンドに頼らない、新たな医療を僕は見た気がするよ!確かに波紋法の治療はナイチンゲール・エメラルドの力に劣るかも知れない。だけど、それはいろはちゃんの…エリナさんでしか出来ない、エリナさんだけが使える治療法。それでは医療は発展しない!だけど波紋法は違う!波紋法は才能に左右こそされど、一人だけの特別な力じゃあない!川崎さん!君はジョースターさんに波紋法を教えた達人なんだ!君になら、戦うだけじゃあない、本当の意味で人を救う波紋を作り出せるかも知れない!」
へ?波紋法の新しい発展法?
戸塚「そうだよ……何で今まで気が付かなかったんだ。医療の発展と波紋法の発展……こんなに相性が良い組み合わせがあったんじゃあないか……川崎さんの波紋の技術……僕が目指したい一番の理想がこんなに近くにあったなんて……」
沙希「あ、ああ……そういう事か……ビックリした……あたしはてっきり………」
戸塚「え?あ………」
戸塚はパッと手を離し、さっきまでの勢いはどこへ行ったのやら、モジモジとし始めた。あたしもそれを見て、冷めかけていた顔がまた熱くなるのを感じる。
ここまで誰かに詰め寄られたのは始めてかもしれない。大志以外では。
大志「ちっ……姉ちゃんを取られてたまるか……」
京華「だーめ。たーちゃんはリサリサ様あたりがお似合いだよ?じょーちゃんとはーちゃんが黙ってれば……だけど。さーちゃんとさいちゃん、お似合いかもー!」
な、な、な、な………けーちゃん!何を言って!
噴上「おお、コレが今の時代の青春ってやつか。甘酸っぱくて見てられねぇぜ!な?アケミ?」
アケミ「若い頃を思い出しちゃうよね?」
噴上さん達まで!ちょっと!誰か止めてよ!なんか急に戸塚を意識しちゃうじゃあないか!
でも………波紋と医療のミックスか……。
閉鎖的な既存の波紋の一族にはない考え方だよ。SPW財団の発展は、ロバート・E・O・スピードワゴンは石油王だったと言う運や経営が上手かっただけで大きくなったわけではない……と言うことか。
今日は一緒に行動できて良かった。エニグマの事を自力でたどり着いた事と言い、その発想力といい……。
もしかしたら、ありかもね?
女の子っぽいけど芯が強い戸塚と家庭的だけど男っぽい雰囲気のあたし。どこかチグハグなあたし達だけど……。
今日、この杜王町で……あたしは前から知っていたはずの気になる男の子を……見つけた。
←To be continued
はい、今回はここまでです。
何かと空気になりがちだった戸塚と沙希を別の形で活躍させてみました。
ツェペリが波紋の一族に魅せられるきっかけ、それとSPW財団の本来の姿……それを思い出した結果の二人の進路だったのですが、きっかけが欲しくてこのような形にしました。
トツハチならぬトツサキも、何かきっかけがあれば出来るのではないかと思いましたが、杜王町でそれが思い付くとは………。。
はい。トツサキは前々からアリだとは思ってました。
なお、吉良吉影から半年後の自殺事件とは「THE・BOOK」の事ですが、ご存知の方はいますでしょうか?
そちらもちょこっと触れていきます。
それでは次回もよろしくお願いいたします。