青狸はスタンド能力ネタの宝庫ですね?
というか、神荒木先生ももしかしたら青狸が元ネタのスタンドがあったり?
ウェザー・リポートはお天気ボックスですし、アヌビス神は名刀電光丸ですし……。
side比企谷八幡
俺は波紋とザ・ワールドの能力を駆使しながら走り、隠れ、そしてタイミングを見計らいながら敵の分隊の陣地に飛び込み、一当てか二当てをして掻き回す。
米軍の数は多くない。多かったとしてもこの人達を形作る物は所詮は役者のコピー。本物の兵士ではないので動きとかは散漫だ。所詮はエキストラのモブ達。戦争映画のモブならばいざ知らず、ハリウッドアクション映画の役者ならば敵じゃあない。
八幡「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」
弾を節約しつつ、更に敵から弾を補充。
八幡(3、2、1……ゼロ)
カウントが正しければ使えるハズだ。
八幡「ジェムストーン・ザ・ワールド!」
ブウウウウウン………。
時を止め、そして離脱。
八幡(8秒前……7、6……)
貴重な8秒だ。逃げることに集中しなければならない。今は映画の中に取り込まれている俺だが、もしこれが現実に影響を及ぼしていたらどうなのだろうか?
そして、映画の外のスクリーンではどうなっているのかどうでも良いことを考えてしまう。
八幡(っと!集中集中!3秒前、2、1…)
ブウウウウウン!
八幡(しまった!秒数を見誤った!)
米軍兵『いたぞ!あそこだ!』
八幡『ザ・ジェムストーン!』
ダダダダダダダ!
一斉に撃たれる敵の自動小銃。
T・G『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!』
音速の拳が今は頼もしい。
ザ・ジェムストーンの基本スペックがスピード、精密性共に最高値でなければ間違いなく致命的なミスとなっていたに違いない。
八幡(7秒…6、5………)
くそっ!自力で脱出するしかない!
八幡「幻影の波紋!」
射線から辛うじて逃げ出し、幻影の波紋で姿を消す。
そして波紋の力を駆使してセーフポイントに戻る。
ピシッ!
八幡(くっ!足に弾を食らった!2秒前…1……)
八幡『ジェムストーン・ザ・ワールド!』
ブウウウウウン………
何とか時を止め、安全圏へと戻る。
康穂達がいるポイント。それが一番安全な位置だ。
八幡「ガァッ!」
足にかすった傷をハンカチで止血し、波紋で回復力を促進させる。少しはましだろう。
葉山「ヒキタニ。負傷したのか?」
八幡「ああ……止められる時間を見謝っていた」
脳内で動きながら秒数をカウントするのは一苦労だ。特に何度も時間を止めていると、時折わからなくなってしまう。
葉山「連続して時を止めたらどうだ?」
八幡「…………出来ねぇんだよ」
葉山「何?!」
八幡「お前はこう思っているんだろ?8秒後に時間が動き出したのならば、動き出した直後にもう一度時間を止めれば良い………と」
葉山「あ、ああ………」
八幡「出来ていたらとっくにそうしている。連続して時を止める事は不可能なんだよ。そんなこと、今まで考えた事が無かったとでも思うか?」
ザ・ワールドの時を止める能力の顕著な弱点。それは連続して時を止める事が不可能な事。そして……そのクールタイムは止めた時と同じだけの時間。だから俺は時が動き出した後も秒数をカウントしていた。
クールタイムが終わり、再び時を止める事が可能になるまでの時間を。
そして、小出しに時を止め、連続で使用することも不可能。止める時間を小出しにして時を余らせようと、その小出しにした秒数をキッチリおかないと再びザ・ワールドを使うことは出来ない。満タンでなければ時を止められないッ!
それがザ・ワールドの最大の弱点。
八幡「そこまで万能な能力ならば、ディオは承太郎に負けてはいないし、承太郎達が逃げる間もなく館の中で全滅させていたんだよ。ジジイが言っていただろう?完璧な能力なんて物は存在しない!無敵のザ・ワールドだって何かしら弱点は存在する」
悔しい事にな。
だから俺も承太郎もここぞというタイミングででしか時を止める能力を使わない。
八幡「どこまで可能か、弱点は何か……。自分の能力なら限界を知ることが必須だろ?時を止める事について考えれる事は一通り試してみたんだよ」
時を止める……この一点に関しての『成長』は、どうやらここまでが俺の限界らしい。止められる時間は8秒まで。連続での使用は不可能。クールタイムは止めた時間に比例した同じ秒数。
救いなのはキッカリ8秒ではないということくらいだ。
何をどう頑張っても……五年前から時を止める能力の成長は何も無かった。
折本「それある!」
折本が混乱した敵陣に能力を浴びせる。
八幡「コォォォォ………」
葉山「ヒキタニ。手伝う。せめて同調だけでも」
八幡「助かる……ここで機動力を失うのはまずいからな」
葉山の能力ではこの状況を打開するのは無理があるだろう。葉山の能力は典型的な近距離パワー型だ。そして乱戦には向いていない。
康穂「ハッチ、敵の能力を破る位置までハッチにペイズリー・パークを付ければどうかな?」
ありがたい申し出ではある。あるが………。
八幡「この状況でか?偽物まで現れているんだぞ?ペイズリー・パークなしでお前らが生き残れる術は無いだろ」
仲町「………1つだけ、ある」
八幡「何をだ?」
仲町「私の能力が……私の能力は、音のスタンド」
八幡「康一さんのエコーズみたいな能力か?」
仲町「違うかな。似ているけど音としてのスタンド能力は私の方が上なんだよね。音を集める、音を消す、声を物理的に当てる。かおりのアースブルースと同じようにビジョンがないスタンドだから戦闘力は無いけどさ。スタンド名はラブ・ユー・クローズ。ペイズリー・パークに比べたら安全性は無いけど、音を消し、集める能力はしばらくステルス性を保てるはず……」
仲町が自らの能力を伝えて来た。
仲町のスタンド能力は康一さんの能力に比べると若干性質が違う。どちらが優れているかと聞かれると一長一短だろう。
だが、策敵やステルス性を重視するならば仲町のスタンド能力の方が便利だろう。
葉山「ならば俺は折本さんと仲町さん。ヒキタニは広瀬さんと一緒に行動するのはどうだろうか?」
八幡「何だと?お前も攻勢に出るってのか?フェニックスのαも出てきてるんだぞ?」
葉山「分かっている。でも、君だけに負担をかけているのが心苦しいんだ。戦える力があるのに、見ているだけの自分がもどかしい。君のように特殊な訓練を受けているわけでは無いけれど、力になることは出来ないか?」
……確かに俺単独で動くのはきつくなってきた。
康穂と俺ならばこの空間から脱出する為の手段を講じることが出来るだろう。
葉山の安全性が下がるのは不安だが……。
八幡「オフェンスは強くなるが、ディフェンスは弱まる。最悪は痛いだけじゃあ済まされない。その覚悟は出来ているな?葉山、折本、仲町」
葉山「俺は出来ている。行け!ヒキタニ!」
八幡「行くぞ!アーシス!スクランブル!康穂、ナビを頼んだぞ!」
康穂「オッケー!」
俺は康穂をおぶさり、その指示に従って走り出す。頼んだぞ、仲町。
side葉山隼人
仲町「ラブ・ユー・クローズ!」
仲町さんが能力を発現させる。ビジョンはないと言っていたが、イヤホンのような物が仲町さんの耳に装着される。あれが仲町さんのスタンドなのだろう。
仲町「私の能力は半径200メートルの音を全て収集し、そして半径5メートルの音を周囲に漏らさない。ペイズリー・パーク程では無いにしても、今の状況には有効な力だよ」
本当にそんな便利な力があるのだろうか?
葉山「…………!!……………!」
俺が声を発したにも関わらず、声が全く出なかった。完全に無音の世界が展開されている。
そして、仲町さんは携帯で文字を打ち、内容を見せる。
仲町『もうスタンドは発現している。この中で音を出せるのはこのイヤホンだけ。でも、これも万能じゃあ無いんだよね』
俺も携帯を取りだし、文字をおこす。
葉山『弱点があるってこと?』
仲町『そう。例えば言語。私は日本語しか喋ることが出来ないから、声は聞こえても内容は全くわからない。葉山くんはわかる?』
俺は首を振る。残念だが、学校で習う程度の英語しか喋ることは出来ない。
仲町『じゃあ、どうしようもないね。ウケる』
ウケないよ。その辺は友達の折本さんと同じだね。
仲町『あと、ミュート圏内に入ったら相手も無音になる。範囲内のオンオフは自由に出来ない』
葉山『どんなスタンドでも必ず弱点は存在するってことか……』
だけど、それだけでも有難い能力だ。
俺達は隠れながら、最初の音がした地点へ向かう。そこにはαと思わしき東方会長がいた。
葉山(オーラル・シガレッツ!あれは偽物!だったら嘘の東方会長!嘘は……消す!)
仲町さんに付いてきてもらい、俺は東方会長のαを攻撃する。
葉山(オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!)
俺のラッシュが会長のαを殴る。すると、致命傷ではないのにも関わらず、αは炎となって消える。
やっぱりな。フェニックスのαはオーラル・シガレッツが天敵。本物か偽物かはオーラル・シガレッツで触れば良いんだ……それに、もしかしたら……。
葉山『仲町さん。少数の敵のいる位置を教えて欲しい。俺の能力ならいけるかもしれない』
仲町『葉山くん……あれもいける?』
仲町さんが指を指すと、そこにはメカメカしい巨大な何かが存在していた。あ、あれも映画の登場キャラなのか?どういう映画なんだ!
side比企谷八幡
康穂「ハッチ!右にダッシュ!」
八幡「おう!」
さすがはペイズリー・パークだ。
敵に遭遇しないか、もしくは圧倒的に有利な奇襲ポジションへと導いてくれる。
映画ヒロイン『何っ!?あなたは敵!?』
八幡『何もしなければこっちも……』
映画ヒロイン『攻撃しなければ……やられる!』
ですよねー。敵の能力なんだから設定とかそういうのは都合良くいじられますよねー。知ってた。
八幡『ていっ!』
ポンッ!
相手が射ってくる前に射撃。でも、ヒロイン補正か何かは知らないが、簡単に当たってくれない。しかも……
映画中ボス『死ねぇ!イレギュラー!』
八幡『何で不倶戴天のヒロインと共闘して襲って来るかなぁ?』
ビームみたいなエネルギー銃で俺を襲ってくる映画の敵の参謀的な存在。
康穂「ハッチ!」
康穂がどこから取り出したのかグレネードを渡してくる。あー、選択肢ね。
八幡「無駄ぁ!」
物陰に隠れるついでにグレネードのピンを抜いて投げる。
ドォォォォォォン!
グレネードは通称パイナップル型。爆発で相手を殺傷するのではなく、爆発した破片で殺傷するグレネードだ。
中ボス『きかぁぁぁぁぬ!』
ヒロイン『あ、危なかった……』
物語補正うぜぇ……
八幡『良いから、とっとと死ね。雑魚ども』
時間を止め、まずは中ボスに対して……
T・G『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!』
無駄無駄ラッシュで10階のガラスを突き破り、そして外へと放逐。材木座のような奴なら無事かも知れないが、こいつは無理だろう。
八幡「そして時は動き出す」
中ボス『Oh……NO!何故!?私はもっとかっこよく、華々しく散る役どころのはずがぁぁぁぁ!』
知らねぇよ。下に落ちてザクロにでもなってろ。
八幡『次はお前だ』
ヒロイン『い、イヤァァァ!今時ヒロインが死ぬなんて流行らないのよ!』
八幡『残念だったな。キャスト変更だ。お前はヒロインぶったただの雑魚敵。ヒロインはあの娘に変更されたんだ』
俺が康穂を指差し、デタラメを口にする。
ヒロイン『嘘!嘘よ!私が全米の期待を背負ったヒロインよぉぉぉぉ!』
八幡『良くある事だ。制作者の都合でヒロインが途中変更され、そして元々のヒロインは死ぬ……なんて事はな。俺と康穂がこの映画の世界に召喚された時点で、お前らは既に脇役に押し込められたんだよ』
俺は混乱するヒロインに迫る。
ヒロインは確かに欧米系美人の今をときめくハリウッドスターが主演女優だ。
だが、ご本人様ならともかく、こいつは敵のスタンド使いが作った虚像。
何より、俺の主観で見ればいろはや康穂に比べたらただ美人なだけの娼婦にも劣る。
八幡『
T・G『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!』
同じくヒロインもガラスを突き破り、落下していく。
康穂「ハッチ、これだけは言わせて?」
八幡「ん?」
康穂「血も涙も無いとはハッチの事だよね?あの女優、結構好きなんだけど?」
八幡「俺には康穂の方がよっぽど魅力的だ」
康穂「だからそういうことはイーハに言いなって!ところでさ、財団のニューヨーク本部ってこんなに低い位置にあるの?外からだと30階くらいはあったよね?」
確かにこんな低い位置に会長室があるはずがない。
何度も来ているからわかっている。いったいどうなっているんだ?
主人公『危ない!ここから早く出るんだ!奴等の最終兵器が起動する!』
なんかZガンダムか何かでクワトロが背中に背負ってコロニー内で飛行していたバーニアみたいな物を背負った主人公が警告してくる。
あれ?もしかしてこのシーンって……爆発シーン!?
やばっ!
八幡「にげるんだよぉぉぉ!」
←To be continued
はい、今回はここまでです。
ザ・ワールドの弱点は本作のオリジナルですが、あながち間違いではないと思います。
連発が可能ならばエジプトで承太郎達は全滅しているでしょうし、吉良やプッチとの戦いで承太郎はもっと楽に倒しているでしょう。
8秒以内のスタンドパワー内で連発が可能な成長をさせるか、もしくはスタンドパワーが満タンになるまで使用不能な弱点にするかを悩みましたが、後者にしました。
何かしら弱点を抱えているのがスタンドというものです。前者だと余りにもチートだと判断し、満タンになるまで使用不能という制限を儲ける事にしました。
一方で仲町のスタンドの元ネタがわかるかたはいますでしょうか?
まだ使っていない能力が青狸の秘密道具からヒントをもらった能力です。
それでは次回もよろしくお願いいたします。