やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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忍び寄る悪意は刻一刻と迫っています!


ダブルデート当日

side比企谷八幡

 

葉山達と遊びに行く日、当日になるまで特にその事に触れることはなかった。連絡手段が無いこともあるのだが、最近は偽物騒ぎのせいでアーシスが徐々に不穏な空気になってきているのもある。

全員のところに現れている。

ユグドラシルの能力は相当に厄介だと言わざるを得ない。

英雄……過去の存在達が本物か偽物かはすぐにわかるとしても、それを撃破するのも容易ではない。

スタンド使いの戦いは相性と機転で決まる。それぞれの機転が自分達に牙を剥くなんて誰が想像できたであろうか?

結果、疑心暗鬼の雨あられである。

今、ジョルノ達がフェニックスを探しているが、そうそう見つかるものではない。

こんな気の長い敵は今まで見たことがない。

登校し、いつものようにすっと周囲の空気に同化して教室へと入っていく。

自分の席についてしばし。

葉山もまたいつものように教室の後方で、戸部や相模ら友人達に囲まれている。普段通り何やらお喋りしていて、今日、他の女の子達と遊びに行くような雰囲気は微塵も感じられない。

おそらく、そういうのに慣れているんだろう。そういう面ではジジイに匹敵するな。

葉山は俺に気付くと、机の間を縫ってやってきた。

 

葉山「君のレクイエムの名前は?」

 

八幡「ザ・ジュエル」

 

ここで間違ってもふざけてはいけない。ふざけてしまうと本気のドンパチが始まってしまう。これは俺が本物かどうかを確認する最近では当たり前の儀式なのだ。

葉山が緊張を解いて話し掛けてくる。

 

葉山「今日なんだけど、何時くらいに出る?」

 

何だその脈絡の無さは。というか一緒に行く気?

 

八幡「お前、部活は?」

 

今日は平日だし、普通であれば葉山には部活がある、まさかそれが終わるまで待てというのだろうか?仕事も今日に合わせて一段落させているわけだし、無意味に奉仕部に顔を出せば修行だ。

だが、葉山はこともなげに言う。

 

葉山「休みなんだ。グラウンドも混んでいるからたまにそういう日がある」

 

確かにうちの学校はさしてグラウンドが広くない。そこにサッカー部の他に、野球部、陸上部、ラグビー部がひしめき合っている。たまにそういう日もあるのだろう。

 

八幡「ああ、そう。……じゃあ集合場所だけ教えてくれね?いろはと行くから」

 

どっちにしてもわざわざ学校から千葉まで一緒に行く必要はない。何人かアーシス実働部隊も動くし、その中にはいろはも入っている。

それに、あまり長くこの事について話す気も起きない。何故なら海老名がメガネを光らせ、ジュルリとよだれをすすっていたからだ。

 

三浦「………海老名。擬態」

 

言うと葉山も腐の呪いと視線を感じ取ったのか、あっさり引き下がり、代わりに携帯電話を取り出した。

 

葉山「そうか。一応、連絡先を聞いておいて良いかな?」

 

八幡「教えただろ?特務用」

 

葉山「いや。プライベート用の方を教えて欲しいんだけど?」

 

八幡「えー?そういうのは事務所を通してからにしてもらわないと………」

 

葉山「そ、そうか……偉くなるとプライベートも色々と制限があるものなんだな?」

 

八幡「いや、特には。アイドルじゃああるまいし、そんなところまでは制限が付くわけないだろ。多分、きっと、メイビー」

 

ゴン!

 

葉山「本気で迂闊だったと思った俺の反省を返せ」

 

八幡「いやぁ、最近は徐倫並みにいい反応をしてくれて嬉しいわ。ハッ!これがお前の言うみんな仲良くというやつか!実に素晴らしい!今後も頼むぞ?ジョジョには言っておく!」

 

葉山「それだけは断固として断る!陽乃さん以上に容赦が無さそうだ!」

 

八幡「大丈夫大丈夫。壊すまではやらないと………思うかも知れないし、思わないかも知れない」

 

ゴン!

 

葉山「そこは『やらないと誓う』と言うところだろ!何で思うとか中途半端な上に、それすらも自信なさげに言うんだよ!」

 

八幡「お前が仕事で俺らとかち合った時は『逃げるんだよォォォ!』と『あ~ばよォォォ♪とっつぁァァァ~ん』とどっちが良い?」

 

ゴン!

 

葉山「そもそもかち合うなよ。しかも同い年だろ。そのとっつぁァァァ~んって何だ。俺は○形警部で君は○パン三世か?」

 

八幡「ブラボー!オー!ブラボー!」

 

ゴン!

 

葉山「良いから連絡先を教えてくれないか?」

 

八幡「ちっ………」

 

プリントの裏にさらっと自分の電話番号を書いた。

 

葉山「ちょっと待ってくれ」

 

葉山は手早くその番号を入力し……

ゴン!

っと俺の頭に拳骨を落とした。

 

葉山「特務用の番号じゃあないか!」

 

八幡「良くわかったな」

 

葉山「打っている間に気が付くに決まってる!その番号は登録されているからな!」

 

仕方がない。俺は次の番号を先程の下に書く。

葉山はそれを入力し、そして発信する。

 

『誇りの道を往くものに太陽のかがやきを♪』

 

無事に着信したか。ピッ!

 

八幡「はい、SPW財団関東支部支部長、比企谷八幡です。ただ今就業時間外となっておりますのでこちらの番号は控えさせて頂きます。急用の方につきましては関東支部総務までご連絡を………」

 

ゴン!

 

はい。オチが読めた方はごめんなさい。仕事用の携帯です。

 

葉山「ヒキタニ。次は無いからな?次はオーラル・シガレッツだからな?」

 

八幡「わーったよ。ほれ」

 

シガられても嫌なので、俺は今度こそ嘘偽りなくプライベート用の俺の携帯の番号を書く。

 

葉山「今度こそ本当だな?」

 

八幡「八幡嘘つかない」

 

葉山「舌の根が乾かない内にどの口が言うのやら。その言葉を言う人間がもっとも信用できないよ」

 

良くわかっているじゃあないか。実にその通りだ。

嘘をつかない……なんて言葉はもっとも嘘つきの発する言葉だ。人間は生きていく上で、どこかで必ず嘘をつく。

そのつもりが無かったにしても、結果的に嘘となってしまうことだって少なからずある。

自分が正しいと思っているものは、往々にしてまちがっているのだ。ソースは俺。

葉山は番号を入れて発信する。

 

『break down!break down!』

 

今度こそ俺のプライベート用の携帯が鳴る。

 

八幡「拒否設定。これで……」

 

ゴン!

 

葉山「やると思ったよ!」

 

読まれた……だと?葉山に……俺の行動が?

 

八幡「冗談はそこまでにして、コレがお前の番号な?登録しとくわ」

 

葉山「番号だけって言うのが、君らしいな」

 

八幡「番号を教えるのは許可する!ただし!メールアドレスは許可しない!」

 

葉山「………何だそのテンションは?」

 

しまった。葉山にマン・イン・ザ・ミラーのネタが通用するわけがなかった。

滑るとギャグは通用しない。俺の一方的な葉山をイジル至福の時間は終わりを告げた。

もう俺からのおふざけがないと葉山は悟ると、登録の為に指を動かす。

 

葉山「アドレスは教えてくれないのか?」

 

八幡「何かどうでも良い内容で連続メールとかしてきそうな予感がしてな」

 

葉山「戸部とかならともかく、俺は必要な時くらいしか自分からはメールしないよ」

 

八幡「ソースはあれ」

 

俺は由比ヶ浜に視線を向ける。

由比ヶ浜から送られる雪ノ下へのメール内容がそういう内容だったと『ザ・フラック』の時にそれを聞いた。

 

葉山「女子ならばそれくらいが普通だろ?」

 

そうかぁ?

 

八幡「さすがはリア充。よくご存知で」

 

葉山「本当のリア充である君に言われてもな……君は一色や小町さんとのメールもそうなのか?」

 

八幡「俺がリア充?ないない。それにな?……何を言っているふざけるな小町はともかくいろはとのメールは丸々一晩やっていても飽きることなんて絶対にあり得ないしまだしたりないまであるが他の男とそうしていると思うと嫉妬で心身ともにザ・ジュエル化する自信があるから葉山はいろはとのアドレスはおろか電話番号すらも教えることは絶対に許さんから無理です。ごめんなさい」

 

葉山「………それをリア充って言うんじゃあないか?君にとって……リア充ってのはどういうものなんだ?」

 

葉山からそういうのを質問をされるとは思わなかったな………そうだな。俺のイメージするリア充ってのは……。

 

八幡「なんか人が集まってウェイウェイやっていて、何人も異性同姓を侍らせてワイワイやってるのがそうなんじゃあないのか?ディオとかお前のように」

 

葉山「じゃあジョナサン・ジョースターや空条博士なんかはどうなんだ?」

 

そうだな……

 

八幡「俺からしてみたら少数精鋭っていうか、数こそ少ないものの、本物って感じだな」

 

葉山「……俺から言わせればそれこそが真の意味でリア充だと思うけどな。俺は………ああいうのをみんなでわかち合ってやっていきたい……。顔色を伺いながらじゃあなくて……本音を言いながら……」

 

八幡「………戸部の時とかは?あれからどう考えていたんだ?」

 

葉山「……戸部が自力で到達してしまったけど、壊れてしまうなら、それで一旦関係を壊してしまえば良い。その上で言いたい放題言えるような関係を再構築する。一時的には敵対したとしても……。そうすればより深く、みんなより深く、一歩進んだ仲良くなれる」

 

八幡「難しいと思うが?」

 

そんな理想的に上手く行くものか。拗れればとことん拗れる。

 

葉山「だが……君達は体現している。そうだろ?君は俺を含めて………全員と敵対し、その上で関係を築いてきた人間だ。骨折したところが再び継いだ時、より強く、太くなり、強固になるように……俺にはそれが羨ましいんだ……」

 

八幡「それは………かなり特殊だぞ?より強固な関係と言うものは、共通な何かが敵だからこそ成り立っている。お前と俺だって、ウルフスという共通の敵がいるからこそ成り立ったものだしな。ウルフスがいなければわかったものじゃあない」

 

ジョースターだってそうだ。ディオ、カーズ、吉良、ディアボロ……。

俺が関わってからはプッチ、汐華、ウルフス……。そういうのがいたからこそ今の関係があり、良くも悪くもわかり合い、受け入れることによって本物となることが出来た。もし、それらがなかったとしたらならば……どうなっていたんだろうか……。

 

葉山「……だったら共通の敵でも作るかな?比企谷。共通の敵になってくれないか?」

 

八幡「ばぁか。とっくに総武高校では俺は大半の生徒の共通の敵だ。風化しただけであって、文化祭や体育祭の後なんて正にそれだろ?それでも全部が共通の敵を前に仲良くなってないんなら、やっぱり俺達の場合は特殊なんだろ」

 

それこそ俺とジョジョを筆頭に何度総武高校の敵に回ったというのだろうか?

 

葉山「ははは。それもそうだな。特殊だ。本当に……。一歩進んだみんな仲良く…。それが出来て、人類が共に進めれば良いなと……思ってしまうんだ……」

 

………葉山、その言葉の意味は………とてつもなく大きいんだぞ………。

お前の言っていることは、ガ○ダムで言うならば……カミー○・ビダンの領域に進むという事なんだ。俺達みたいなア○ロ・レイではなく……。

だからこそ俺は………お前に…………。

カミー○を見たク○トロ・バ○ーナ……いや、シ○アというのはこういう気分だったかもしれない。

少なくとも……俺ではない。

俺はどこまでもア○ロでありシ○アに過ぎない。そして、葉山が俺に望むものが予想通りならば……。

 

葉山「じゃあ、また後で」

 

葉山は考え込んだ俺に対し、これ以上の問答をすることなく自分の席へと戻る。俺はそれを気にすることなく頬杖をついて目をつぶった。

これから千葉に行くまで、あと大体九時間くらいか。

 

八幡(俺がシ○アであるならば、ウルフスはシロ○コやハ○ーンってところだな。カ○ーユやジ○ドーは…渡さんぞ…)

 

ただの仕事では無くなってきたな。

加速していく○○への攻防。

 

八幡(真実への道標は……真の意味で真実に到達するべきは……その為にはやっぱり、真実とさせるべきでは無いものは……)

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

八幡は何を考え、何を目指しているのか。
八幡は真実とは何だと考えているのか?

それでは恒例の。

葉山と接触しているのが都合の悪いと思っているのは由比ヶ浜が見ていたから(ただし、多分に八幡に後ろめたさがあるもの)→海老名のいつものが発動していたから。

八幡の葉山いじりはオリジナル

そこから先のアレコレもオリジナル

番号だけを葉山に教えたのは原作通り


それでは次回もよろしくお願いいたします。

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